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最終章 最高の逆転劇
81話 梅干し泥棒と闇商人の店
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ミタカさんはシリンキ村から東へ五キロの村に暮らしていた。俺はその村に行くと、彼女の家を訪ねた。
彼女は俺の訪問に驚いていたが、俺が泥棒を捕まえたいというと、渋々力を貸してくれた。
彼女はかつて幽霊だったこともあり、(同時にツンデレでもあり、メイドでもあり、ゾンビでもあった)浮遊能力を持っていた。ミタカさんの浮遊能力を使えば、地面を走るより早く移動できる。そのうえ人探しは空からの方が効率的だ。
彼女は俺の手を握ると、ふっと上空十五メートルのところまで浮遊した。それから、風に乗るように、のどかな田園風景の中を飛び始めた。
「まったく、あんたの頼み事っていつも突拍子がないのよねえ。牛糞を浮かせろって言われたかと思えば、今度は梅干し泥棒を探せだなんて、こっちはからかわれてる気分よ」
ミタカさんは不機嫌そうに唇を尖らせた。
「すみません……」
「それに頼み事をするなら普段から親しくしておくものよ? あの一件以来、一度も顔を出さなかったくせに、急に現れたら俺を飛ばしてくれだなんて、厚かましいんだから」
そういう割には、どこか嬉しそうだった。
ミタカさんとは二三度しか会っていなかったが、その二三度が印象的だったし、彼女の喜怒哀楽の場に立ち会ったため、親近感がわいているというか、他人の気がしない。俺は彼女のことが気に入っていた。
彼女が俺のことをどう思っているのかまでは分からないが、顔を見るのも嫌というわけではないのだろう。俺を王都まで連れて行くとなると、張り切って化粧をして、隣のおばあさんに赤ん坊を預けていた。
「じゃあ、たまには遊びに行ってもいいでんすか?」
「当然でしょ、頼み事をするなら、こっちの退屈しのぎにもなってほしいわよ。それにこっちは新天地で、知り合いもいないんだからね」
なんだか言い訳がましい口調だった。
俺とミタカさんは王都の前までくると、一度地上に降り立ち、城門から中に入った。王都に上空から侵入するのは禁止されている。しかし、王都の上空を飛ぶのは違法ではない。俺は王都に入ると、再び空高く浮遊し、梅干し泥棒の姿を探す。
「あれ!」
俺は市場の裏通りにある歓楽街を指さした。そこはもともと処刑場だったといわれる陰気な場所で、市場のアーケードが邪魔して、昼間でも日の差さないところだった。
その薄暗い道を、あの水飲み場で見かけた男が歩いている。男は娼館や質屋のある通りを歩くと、ぷいっと一軒の建物の中に入っていった。
ミタカさんは俺が指さしたところに降り立つと、男が入った建物に視線を向ける。
「今の男が例の梅干し泥棒?」
「遠目からでしたが、顔もよく似ていましたし、歩き方が似ているような気がしたんです」
俺は水飲み場で見かけた男を思い出した。あの俯きがちで、人目を避けるような歩き方、それでいて常に周囲に気を配っている。なんとなく近寄りがたい雰囲気をまとっているところがよく似ていた。
「ふーん。で、ここは何の建物なわけ?」
「さあ……何かお店のようにも見えますけど、看板は出ていませんし、ショーケースがあるわけでもありませんね」
「そうね。会員制のクラブと言われれば、そんな気もするけど、どっちにしても入るのには勇気がいるわね」
俺とミタカさんが、遠目から男が入っていったドアをうかがっていたときだった。
「そこは闇商人の店だと聞いたことがある」
後ろから落ち着いた女性の声が聞こえ、俺は振り返った。
ミタカさんはシリンキ村から東へ五キロの村に暮らしていた。俺はその村に行くと、彼女の家を訪ねた。
彼女は俺の訪問に驚いていたが、俺が泥棒を捕まえたいというと、渋々力を貸してくれた。
彼女はかつて幽霊だったこともあり、(同時にツンデレでもあり、メイドでもあり、ゾンビでもあった)浮遊能力を持っていた。ミタカさんの浮遊能力を使えば、地面を走るより早く移動できる。そのうえ人探しは空からの方が効率的だ。
彼女は俺の手を握ると、ふっと上空十五メートルのところまで浮遊した。それから、風に乗るように、のどかな田園風景の中を飛び始めた。
「まったく、あんたの頼み事っていつも突拍子がないのよねえ。牛糞を浮かせろって言われたかと思えば、今度は梅干し泥棒を探せだなんて、こっちはからかわれてる気分よ」
ミタカさんは不機嫌そうに唇を尖らせた。
「すみません……」
「それに頼み事をするなら普段から親しくしておくものよ? あの一件以来、一度も顔を出さなかったくせに、急に現れたら俺を飛ばしてくれだなんて、厚かましいんだから」
そういう割には、どこか嬉しそうだった。
ミタカさんとは二三度しか会っていなかったが、その二三度が印象的だったし、彼女の喜怒哀楽の場に立ち会ったため、親近感がわいているというか、他人の気がしない。俺は彼女のことが気に入っていた。
彼女が俺のことをどう思っているのかまでは分からないが、顔を見るのも嫌というわけではないのだろう。俺を王都まで連れて行くとなると、張り切って化粧をして、隣のおばあさんに赤ん坊を預けていた。
「じゃあ、たまには遊びに行ってもいいでんすか?」
「当然でしょ、頼み事をするなら、こっちの退屈しのぎにもなってほしいわよ。それにこっちは新天地で、知り合いもいないんだからね」
なんだか言い訳がましい口調だった。
俺とミタカさんは王都の前までくると、一度地上に降り立ち、城門から中に入った。王都に上空から侵入するのは禁止されている。しかし、王都の上空を飛ぶのは違法ではない。俺は王都に入ると、再び空高く浮遊し、梅干し泥棒の姿を探す。
「あれ!」
俺は市場の裏通りにある歓楽街を指さした。そこはもともと処刑場だったといわれる陰気な場所で、市場のアーケードが邪魔して、昼間でも日の差さないところだった。
その薄暗い道を、あの水飲み場で見かけた男が歩いている。男は娼館や質屋のある通りを歩くと、ぷいっと一軒の建物の中に入っていった。
ミタカさんは俺が指さしたところに降り立つと、男が入った建物に視線を向ける。
「今の男が例の梅干し泥棒?」
「遠目からでしたが、顔もよく似ていましたし、歩き方が似ているような気がしたんです」
俺は水飲み場で見かけた男を思い出した。あの俯きがちで、人目を避けるような歩き方、それでいて常に周囲に気を配っている。なんとなく近寄りがたい雰囲気をまとっているところがよく似ていた。
「ふーん。で、ここは何の建物なわけ?」
「さあ……何かお店のようにも見えますけど、看板は出ていませんし、ショーケースがあるわけでもありませんね」
「そうね。会員制のクラブと言われれば、そんな気もするけど、どっちにしても入るのには勇気がいるわね」
俺とミタカさんが、遠目から男が入っていったドアをうかがっていたときだった。
「そこは闇商人の店だと聞いたことがある」
後ろから落ち着いた女性の声が聞こえ、俺は振り返った。
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