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最終章 最高の逆転劇
89話 これじゃ俺が泥棒じゃないか!!
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「頼むからここは引いてくれ。第一、ここで俺とやりやってるうちに、誰かに見られたらどうする?」
「それはお前も同じだろ? お前は泥棒でなくちゃいけないんだ。ここで俺たちが話してるのを見られ、お前が泥棒じゃなかったと知られたら、決まりが悪いんじゃないか?」
俺はぐっと下唇を噛んだ。その通り、体裁が悪すぎる。ここでこの男を捕まえれば、梅干し泥棒の濡れ衣は晴らせるだろう。でも、それなら、俺が泥棒でないなら、あのとき顔についていた結び目はなんだという話になる。
ミーノがそれについて、説明を求めれば俺は消化管が上下逆についていて、本来徹底的に隠ぺいされるべきケツの穴が白昼堂々、顔の真ん中に居座っていることを打ち明けなければならない。
それは駄目だ……。いっそのことこの男を見逃すか? それともこの男の罪をもう一度被って、この事態をやりすごすか?
男は俺の葛藤を見透かすようににやにやと笑っている。
クソみたいな選択肢が頭の中をぐるぐる回っていた。どっちを選んでもよくなることはない。そして、あとはどっちを選べばより、失うものが少ないかだ。しかし、どっちを選んだところでクソだ。
俺は力なく視線を落とした。これは迷いですらない。ためらいだ。どうしようもない選択肢を前にただためらっているだけだった。
頭の中のことに気を取られ、俺は複数の足音が近づいてきているのに気が付かなかった。いや、すぐにその足音が意識にのぼった。しかし、それに気が付き、反応するのに、一瞬遅れてしまった。
「そうかい。そんなにこれが欲しいならお前に譲ってやるよ」
男は笑うと、梅干しのツボを放り投げた。ツボはくるくると回転しながら、宙を舞う。蓋がカタカタと揺れ、次第にツボとの間に隙間ができる。そこから梅干しが二、三粒飛び出した。俺はその梅干を空中でキャッチすると、そのままツボに手を伸ばす。蓋を覆いかぶせるように手の平で包み込んだ。
「おい、危ないだろうが!」
俺が前を向くと男はすでにいなくなっていた。男と入れ替わるように、大勢の足音が間近で響いてくる。
「急げ、今ばあさんの家に男が入っていったぞ」
「あのヤグラって野郎だ!」
「現場を抑えちゃ、ミーノちゃんも文句は言うまい!!」
村の若い連中から、入ってきた。一人や二人ではないようで、奥にある生垣にも濃い人影ができている。俺はなすすべもなく、台所に入ってくる男たちを迎え入れる。梅干しのツボを抱えたまま。
「とうとう尻尾を掴んだぞ」
一番初めに入ってきた男が俺の姿を見て言った。
さすがに言い逃れはできない状況だった。だって、俺は天下の大盗賊みたいに布切れで口元を覆っており、手には確かに梅干しのツボを持っている。
これじゃ俺が泥棒じゃないか!!
男は居間を通り抜けて、正面口から外に出たのだろう。耳の悪いおばあさんが、男の姿を目撃していなければ、この家には最初から俺しかいなかったことになる。
「ち、違うんですよ。俺は梅干しを盗んでません。ほら、現にここにあるじゃないですか」
「ああ。確かに盗んでないな。しかし、お前の手の中にあるんだから、盗もうとはしてた」
「盗もうともしてないんですよ。お願いです、俺の話を聞いてください」
「ああ、話はあとで聞いてやるよ。とにかく、この男に分からせてやれ」
村の若い連中がわっと台所になだれ込んでくる。俺は動揺して、後ずさった。
男たちは逃げ道を塞ぐように俺を取り囲んだ。
「お前たち、良いか? 半殺しだぞ? 完璧に殺しちゃ弁償させることもできねえからな」
「それはお前も同じだろ? お前は泥棒でなくちゃいけないんだ。ここで俺たちが話してるのを見られ、お前が泥棒じゃなかったと知られたら、決まりが悪いんじゃないか?」
俺はぐっと下唇を噛んだ。その通り、体裁が悪すぎる。ここでこの男を捕まえれば、梅干し泥棒の濡れ衣は晴らせるだろう。でも、それなら、俺が泥棒でないなら、あのとき顔についていた結び目はなんだという話になる。
ミーノがそれについて、説明を求めれば俺は消化管が上下逆についていて、本来徹底的に隠ぺいされるべきケツの穴が白昼堂々、顔の真ん中に居座っていることを打ち明けなければならない。
それは駄目だ……。いっそのことこの男を見逃すか? それともこの男の罪をもう一度被って、この事態をやりすごすか?
男は俺の葛藤を見透かすようににやにやと笑っている。
クソみたいな選択肢が頭の中をぐるぐる回っていた。どっちを選んでもよくなることはない。そして、あとはどっちを選べばより、失うものが少ないかだ。しかし、どっちを選んだところでクソだ。
俺は力なく視線を落とした。これは迷いですらない。ためらいだ。どうしようもない選択肢を前にただためらっているだけだった。
頭の中のことに気を取られ、俺は複数の足音が近づいてきているのに気が付かなかった。いや、すぐにその足音が意識にのぼった。しかし、それに気が付き、反応するのに、一瞬遅れてしまった。
「そうかい。そんなにこれが欲しいならお前に譲ってやるよ」
男は笑うと、梅干しのツボを放り投げた。ツボはくるくると回転しながら、宙を舞う。蓋がカタカタと揺れ、次第にツボとの間に隙間ができる。そこから梅干しが二、三粒飛び出した。俺はその梅干を空中でキャッチすると、そのままツボに手を伸ばす。蓋を覆いかぶせるように手の平で包み込んだ。
「おい、危ないだろうが!」
俺が前を向くと男はすでにいなくなっていた。男と入れ替わるように、大勢の足音が間近で響いてくる。
「急げ、今ばあさんの家に男が入っていったぞ」
「あのヤグラって野郎だ!」
「現場を抑えちゃ、ミーノちゃんも文句は言うまい!!」
村の若い連中から、入ってきた。一人や二人ではないようで、奥にある生垣にも濃い人影ができている。俺はなすすべもなく、台所に入ってくる男たちを迎え入れる。梅干しのツボを抱えたまま。
「とうとう尻尾を掴んだぞ」
一番初めに入ってきた男が俺の姿を見て言った。
さすがに言い逃れはできない状況だった。だって、俺は天下の大盗賊みたいに布切れで口元を覆っており、手には確かに梅干しのツボを持っている。
これじゃ俺が泥棒じゃないか!!
男は居間を通り抜けて、正面口から外に出たのだろう。耳の悪いおばあさんが、男の姿を目撃していなければ、この家には最初から俺しかいなかったことになる。
「ち、違うんですよ。俺は梅干しを盗んでません。ほら、現にここにあるじゃないですか」
「ああ。確かに盗んでないな。しかし、お前の手の中にあるんだから、盗もうとはしてた」
「盗もうともしてないんですよ。お願いです、俺の話を聞いてください」
「ああ、話はあとで聞いてやるよ。とにかく、この男に分からせてやれ」
村の若い連中がわっと台所になだれ込んでくる。俺は動揺して、後ずさった。
男たちは逃げ道を塞ぐように俺を取り囲んだ。
「お前たち、良いか? 半殺しだぞ? 完璧に殺しちゃ弁償させることもできねえからな」
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