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最終章 最高の逆転劇
90話 俺とミーノの逃避行
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先頭の男がそう言って、いっきに距離を詰める。それに続いて、他の連中も拳を振りかぶった。俺は観念して目をつぶった。もう駄目だと思った。
リンチはほとんど集団ヒステリーのようなもので、蹴る殴るをしている本人が、自分がどこをどんなふうに蹴ってるかさえ分かっていないことがあるという。ただうねりのような狂暴性に身を任せ、後は真ん中でうずくまる者に暴虐を加える。だから、集団リンチのほとんどは被害者を殺すつもりなどないし、殺すほどのことをしたという意識もない。
俺は先頭の男の言葉を聞いて、よかった、半殺しで済んだとは思っていなかった。誰もが半殺しで許してやろうと思っていながら、半殺しで済まないのが集団リンチなのだ。よほど暴力に慣れたものがプロ意識をもって痛めつけようとしない限り、焼けつくようなアドレナリンが通り過ぎた後には、真ん中の者は死んでいる。
俺はもう抵抗もできないまま、最初の一撃を受け入れるしかなかった。
目を閉じ、体を丸め急所をかばい、この大勢の怒りをやり過ごすつもりだった。
しかし、誰かが背後から俺の手を掴むと、俺を村人の輪から引きずり出してくれた。
「ヤグラ君! 逃げますよ!!」
誰かが甲高い声でそう叫んだ。
俺はその小さい背中に引きずられるように走った。
「ミーノ!!」
「もう、だから一人で帰っちゃ駄目だって言ったじゃないですか」
ミーノはそう言いながら、おばあさんが茶漬けを啜っているちゃぶ台を飛び越え、外に飛び出した。すでに真っ暗になった坂道を山の方に向かって走り出した。
「ちょっと……良いのか? ミーノ」
俺は走りながらミーノの表情を盗み見た。
「何がです?」
「あそこまでいって、俺をかばったら、ミーノも同罪だぞ?」
「分かってますよ。村の人たちは優しいですけど、ここまで来たら、さすがに許してはくれません」
「どうするんだ?」
「どうしたらいいんでしょうね。でも、ヤグラ君が殺されるのを黙って見てるなんてできませんでしたから。それに、何があってもヤグラ君の味方でいるって約束しましたからね?」
「そうはいっても……」
俺は背後に目をやった。若い連中は近所の家から提灯や松明を借りると、火打石を回して火をつけはじめていた。
先頭にいた男が、後ろの男に叫んでいる。
「おい、山狩りだぞ!! 村長に言って残った連中を集めろ。女には飯を焚かせて握り飯を作らせろ!! 動ける奴らで今から追う。残りの者は、後から来い!!」
俺とミーノはその声を聞きながら山に分け入っていく。ミーノは顔にびっしょりと汗をかいている。それでいて、顔の血の気は引き、顔は青白いと通り越して黄色っぽくなっている。唇は紫色をして、ブルブルと震えていた。
「大丈夫か? ミーノ」
俺はそう声をかけた。
「大丈夫なわけないでしょう? 山狩りですよ?」
「どうすればいい?」
「分かりませんよ。とにかく逃げて、みんなが冷静になるのを待つしかありません。それから、もう一度謝って、弁償することを約束するしかないでしょう? でも、今、見つかったら、そんな機会すら与えてくれません。その場で殴り殺されてもおかしくありませんから」
「そうだよな……」
リンチはほとんど集団ヒステリーのようなもので、蹴る殴るをしている本人が、自分がどこをどんなふうに蹴ってるかさえ分かっていないことがあるという。ただうねりのような狂暴性に身を任せ、後は真ん中でうずくまる者に暴虐を加える。だから、集団リンチのほとんどは被害者を殺すつもりなどないし、殺すほどのことをしたという意識もない。
俺は先頭の男の言葉を聞いて、よかった、半殺しで済んだとは思っていなかった。誰もが半殺しで許してやろうと思っていながら、半殺しで済まないのが集団リンチなのだ。よほど暴力に慣れたものがプロ意識をもって痛めつけようとしない限り、焼けつくようなアドレナリンが通り過ぎた後には、真ん中の者は死んでいる。
俺はもう抵抗もできないまま、最初の一撃を受け入れるしかなかった。
目を閉じ、体を丸め急所をかばい、この大勢の怒りをやり過ごすつもりだった。
しかし、誰かが背後から俺の手を掴むと、俺を村人の輪から引きずり出してくれた。
「ヤグラ君! 逃げますよ!!」
誰かが甲高い声でそう叫んだ。
俺はその小さい背中に引きずられるように走った。
「ミーノ!!」
「もう、だから一人で帰っちゃ駄目だって言ったじゃないですか」
ミーノはそう言いながら、おばあさんが茶漬けを啜っているちゃぶ台を飛び越え、外に飛び出した。すでに真っ暗になった坂道を山の方に向かって走り出した。
「ちょっと……良いのか? ミーノ」
俺は走りながらミーノの表情を盗み見た。
「何がです?」
「あそこまでいって、俺をかばったら、ミーノも同罪だぞ?」
「分かってますよ。村の人たちは優しいですけど、ここまで来たら、さすがに許してはくれません」
「どうするんだ?」
「どうしたらいいんでしょうね。でも、ヤグラ君が殺されるのを黙って見てるなんてできませんでしたから。それに、何があってもヤグラ君の味方でいるって約束しましたからね?」
「そうはいっても……」
俺は背後に目をやった。若い連中は近所の家から提灯や松明を借りると、火打石を回して火をつけはじめていた。
先頭にいた男が、後ろの男に叫んでいる。
「おい、山狩りだぞ!! 村長に言って残った連中を集めろ。女には飯を焚かせて握り飯を作らせろ!! 動ける奴らで今から追う。残りの者は、後から来い!!」
俺とミーノはその声を聞きながら山に分け入っていく。ミーノは顔にびっしょりと汗をかいている。それでいて、顔の血の気は引き、顔は青白いと通り越して黄色っぽくなっている。唇は紫色をして、ブルブルと震えていた。
「大丈夫か? ミーノ」
俺はそう声をかけた。
「大丈夫なわけないでしょう? 山狩りですよ?」
「どうすればいい?」
「分かりませんよ。とにかく逃げて、みんなが冷静になるのを待つしかありません。それから、もう一度謝って、弁償することを約束するしかないでしょう? でも、今、見つかったら、そんな機会すら与えてくれません。その場で殴り殺されてもおかしくありませんから」
「そうだよな……」
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