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第三話 それでも、俺は間違っていない
二
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「申しわけありません。私のせいで、お武家さまをこんな目に……」
男は両手をついて頭を下げた。
「何と申しあげてよいのか」
「かまわない。俺もおぬしも、とりあえず無事だったからな」
そこで、五郎はくしゃみをした。布団に押さえる手に力が入る。
男と出会ったあの日、五郎は彼を助けて川に落ちた。幸い川岸が近かったので、自力で這い上がられたが、身体が冷えたおかげで、一瞬で風邪を引いてしまった。身体を引きずって、何とか屋敷に戻ると、熱が出て、しばらくは何もできず、ただ布団でうなされていた。落ち着いたのは三日前のことで、昨日になって、ようやく半身を起こせるようになった。
回復した五郎は、男が見舞いに来ていることを知り、会うことを決めた。
本当は床払いするつもりだったが、拓之進に落ち着くまでは横になっているべきと言われて、布団に押し込まれた。彼自身は会うことにも反対だったらしい。
気持ちはわかる。ひどい目に会ったのは、確かだ。
だが、結果として、誰も命を落とさずに済んだ。
「今はそのことを喜ぼう」
「そうです。心中はいけません。絶対に」
傍らに立った拓之進が声をかけた。その顔は強ばっている。
彼は五郎が熱を出している間、つきっきりで面倒を見ていた。ほとんど眠っていないようで、弓子やおせんも心配していた。
「待っている人がいるのですから、その人たちの事を考えてください。お願いですから」
「はい。もう、このようなことは……」
男はさらに頭を下げた。彼は名前を怡与蔵といい、長谷川町で相模屋という小間物問屋を営んでいた。
若く見えたので、年齢をたずねたところ、二十一歳だと言う。三年前に父親が亡くなり、その跡を継いでいた。周辺の小間物屋では、一番、年少で、何かと教えを乞う立場にある。身なりが整っていたのも、小間物屋の主なら、ある意味、当然と言えた。
彼の話によれば、本銀町四丁目で仕事の話をしたあと、何も考えずに歩いていたら、いつの間にか鳥越橋に来ていたとのことだった。
「欄干にもたれながら水面を見ていたら、どうでもよくなりまして」
「それで、飛び込むとはなあ。巻き込まれた方はたまらない」
「本当に、申しわけありません」
「あの、どうして、川に飛び込もうなどと思ったのですか」
拓之進は怡与蔵に顔を寄せて、話しかけた。
「聞かせてください」
「ですが、それは、こちらの事情ですので」
「一人で抱えこむのは、よくありません」
拓之進は、正面から怡与蔵を見た。
「じっと考えこんでいると、身体に毒がたまり、おかしくなります。楽しいのに笑えなくなり、哀しいのに泣けなくなります。そうなる前に、相手が誰でもいいので、話せることは話すのです。そうして、気持ちを軽くするのです」
「気持ちを、軽く……」
「それが大事なのです」
怡与蔵は、しばらくうつむいていた。その頬を涙がつたう。
嗚咽が聞こえたが、五郎も拓之進もなにも言わずに、彼を見ていた。
「すみません。お見苦しいところを」
「かまいません」
「では、お言葉に甘えまして。いささか長い話になりますが」
そう前置きして、怡与蔵は話しはじめた。
彼の営む相模屋は、上方から飾り物を仕入れて、馴染みの小間物屋に卸す生業をしていた。父親が京の生まれで、江戸に移ってからも地元の職人とのつながりがあり、良質な飾り物を手に入れられたことが、よい仕事につながった。元手は少なく、習慣も違う江戸では苦労もあったようだが、商いは順調に拡大し、商家だけでなく、武家との取引もおこなうようになった。
十年前、芝口から現在の長谷川町に店を移したのも、名の知れた旗本との商いが拡大し、さらなる儲けが見込めたためだった。
「わたしの目から見ても、父上は素晴らしい商人でした」
怡与蔵の言葉には、熱がこもっていた。
「時の流れを正しく見られ、父上が流行ると感じた品は驚くほどの勢いで売れました。五年前に銀の髪飾りが流行ったのですが、父は事前にそれを見抜いて、京から大量に仕入れていました。あまりににも多かったので、これはむずかしいと私などは思ったのですが、売り出したら、三ヶ月もしないうちになくなり、注文を追加せねばならないほどでした。その次の年に袋物が流行った時も同じでして、知り合いの娘さんとの話から売れると見抜いて、仕入れをおこない、大儲けしました」
「すごいな、それは」
「本当に、素晴らしかったのです。なのに、私ときたら、まったく駄目で」
怡与蔵はうつむいた。身体の熱が一気に下がる。
「父が死んだのは、三年前のことです。急な病で、寝込んでから息を引き取るまで、十日とかかりませんでした。家の者はただ見ているだけで、ろくに看病もできませんでした。私もそうです」
「そうか」
「正直、父が亡くなった時は、駄目だと思いました。同じことができるとは、とうてい思えませんでしたから」
気持ちはよくわかる。五郎も勘三郎が死んだ時には、同じことを思った。止水流はこれで終わりと考えて、絶望した。
実際、五郎の場合にはうまくいかなかった。しかし……。
「おぬしは、何とかやってきた。店が残っていることがその証だ」
「必死に、それこそ寝る間も惜しんで、やってきました。手は抜かなかったつもりです。ですが、売上は下がる一方で、今年の夏に仕入れた飾り物もさっぱり売れませんでした。去年の半分にもならず、付き合いのあったお店からも商いを断られてしまいました」
「厳しい話だな」
「この間も古くからの馴染みを訪ねて、新しい品物を持っていったのですが、もう付き合いはできないと言われまして。十年もうちの飾り物を扱ってくださったのですが、まるで相手にされませんでした。本当に私は駄目です。父上の名を穢すだけです」
胸に痛みが走る。
五郎も父の思いを守れなかった。もう少し技量があれば、今でも道場は人であふれていたはずだ。輝きを消したのが自分だと思うと、ひどくつらい。
「どうしていいのかわからず、江戸の町をうろついていたら、いつの間にか、鳥越橋にいました。飛び込むつもりなどなかったのですが、気がついたら、ふらふらと……」
「まあ、たいしたことがなくてよかった」
「井ノ瀬様にはご迷惑をおかけしました。本当に申し訳なく思っています」
「いいさ。俺はこうして生きている。気にするな」
五郎はわざと笑って応じたが、怡与蔵の表情は曇ったままだった。
「このままですと、父の蓄えはなくなり、二十年つづいてきた店は駄目になります」
彼の言葉には、深い絶望があった。
「せっかく、ここまで父が大きくしてくれた店を、何もしないままにつぶしてしまうとは。情けないにもほどがあります。いったい、どうすればいいのか」
真面目に懸命にやってきたが、才のなさから結果を出せなかった。そのつらさは、五郎が一番、よく知っている。
「どうして、品物が売れなくなってしまったのですか」
拓之進が訊ねた。
「何が悪かったのでしょう」
「色々とあるのですが、他の商人が手前どもの真似をするようになったのが大きいとみております」
怡与蔵は、懐から平打の櫛を取りだした。
「これは、京の商人が作った一品です。手前どもは、事前にお客様から、こうしたものがほしいと聞き、職人とやりとりして、形を決めます」
「見事な細工だな。素晴らしい」
「手間も時間もかかりますが、その分だけ、できはよくなります。これは父上がはじめたやり方で、うまくいっていたのですが、最近、それを聞きつけた江戸の小間物問屋が同じやり方で商いを広げ、手前どものなじみを奪ったのです。懇意にしていたお武家さまとの商いも、先日、横から取られてしまいました」
立てつづけに客を奪われて、相模屋は行き詰まった。売上は落ち、美しい飾り物も店で埃をかぶるようになった。
「職人も引き抜かれてしまって。もうお終いです」
若い店主はうなだれた。疲労の陰が横顔から消えることはない。
絶望は深い。このままでは、どこかで人生を投げ出す。それは、自分が最もよく知っている。
五郎は、思わず腹をなでる。
やはり放っておけない。
そう思ったとき、五郎は怡与蔵に身体をよせて、その肩を叩いた。
「そうか。なら、俺が手を貸すよ」
「え?」
「商いがうまくいくように、あちこちで話をしてみようと思う。たいしたことはできないけれどさ」
「い、いえ、何とも、それは……」
「待ってください。五郎さん」
思いのほか、強い声が響いた。拓之進だ。
「それはやめましょう。私は反対です」
「どうしてだよ。かわいそうだと思わないのか」
「思います。せっかくがんばってきたのにうまくいかないのは憐れで、できることなら、手を貸したいと思います」
「だったら」
「ですが、私らは武家で、商人のやり方はまったくわからないのです。何をどこに持っていって、どう売ればいいのか、まるで知らないのに、余計な口を出せば、物事を悪くするだけです。怡与蔵さんの足を引っぱって、どうするのです」
急所を突かれて、五郎は絶句した。
「店をよくするのは、怡与蔵さんとお店の人の頑張り次第です。私たちにできるのは、皆さんを励ますことぐらいです」
「じゃあ、何もするなと。見捨てろと」
「そうではないのです。ただ、勝手に口を出しても、よくないと言いたいのです」
「同じことだよ。俺は嫌だよ」
五郎は立ちあがった。ふらつくが気にしてはいられない。
「向こうで話をしよう。こんな奴と話をしても仕方ない」
怡与蔵は二人を交互に見ていたが、五郎が重ねて声をかけると、ゆっくり立ちあがった。五郎が部屋を出ると、そのまま後をついてくる。
襖を閉ざす直前、火鉢の向こう側に座る拓之進の姿が見えた。
その表情は寂しげで、さながら親に見捨てられた子供のようだった。
男は両手をついて頭を下げた。
「何と申しあげてよいのか」
「かまわない。俺もおぬしも、とりあえず無事だったからな」
そこで、五郎はくしゃみをした。布団に押さえる手に力が入る。
男と出会ったあの日、五郎は彼を助けて川に落ちた。幸い川岸が近かったので、自力で這い上がられたが、身体が冷えたおかげで、一瞬で風邪を引いてしまった。身体を引きずって、何とか屋敷に戻ると、熱が出て、しばらくは何もできず、ただ布団でうなされていた。落ち着いたのは三日前のことで、昨日になって、ようやく半身を起こせるようになった。
回復した五郎は、男が見舞いに来ていることを知り、会うことを決めた。
本当は床払いするつもりだったが、拓之進に落ち着くまでは横になっているべきと言われて、布団に押し込まれた。彼自身は会うことにも反対だったらしい。
気持ちはわかる。ひどい目に会ったのは、確かだ。
だが、結果として、誰も命を落とさずに済んだ。
「今はそのことを喜ぼう」
「そうです。心中はいけません。絶対に」
傍らに立った拓之進が声をかけた。その顔は強ばっている。
彼は五郎が熱を出している間、つきっきりで面倒を見ていた。ほとんど眠っていないようで、弓子やおせんも心配していた。
「待っている人がいるのですから、その人たちの事を考えてください。お願いですから」
「はい。もう、このようなことは……」
男はさらに頭を下げた。彼は名前を怡与蔵といい、長谷川町で相模屋という小間物問屋を営んでいた。
若く見えたので、年齢をたずねたところ、二十一歳だと言う。三年前に父親が亡くなり、その跡を継いでいた。周辺の小間物屋では、一番、年少で、何かと教えを乞う立場にある。身なりが整っていたのも、小間物屋の主なら、ある意味、当然と言えた。
彼の話によれば、本銀町四丁目で仕事の話をしたあと、何も考えずに歩いていたら、いつの間にか鳥越橋に来ていたとのことだった。
「欄干にもたれながら水面を見ていたら、どうでもよくなりまして」
「それで、飛び込むとはなあ。巻き込まれた方はたまらない」
「本当に、申しわけありません」
「あの、どうして、川に飛び込もうなどと思ったのですか」
拓之進は怡与蔵に顔を寄せて、話しかけた。
「聞かせてください」
「ですが、それは、こちらの事情ですので」
「一人で抱えこむのは、よくありません」
拓之進は、正面から怡与蔵を見た。
「じっと考えこんでいると、身体に毒がたまり、おかしくなります。楽しいのに笑えなくなり、哀しいのに泣けなくなります。そうなる前に、相手が誰でもいいので、話せることは話すのです。そうして、気持ちを軽くするのです」
「気持ちを、軽く……」
「それが大事なのです」
怡与蔵は、しばらくうつむいていた。その頬を涙がつたう。
嗚咽が聞こえたが、五郎も拓之進もなにも言わずに、彼を見ていた。
「すみません。お見苦しいところを」
「かまいません」
「では、お言葉に甘えまして。いささか長い話になりますが」
そう前置きして、怡与蔵は話しはじめた。
彼の営む相模屋は、上方から飾り物を仕入れて、馴染みの小間物屋に卸す生業をしていた。父親が京の生まれで、江戸に移ってからも地元の職人とのつながりがあり、良質な飾り物を手に入れられたことが、よい仕事につながった。元手は少なく、習慣も違う江戸では苦労もあったようだが、商いは順調に拡大し、商家だけでなく、武家との取引もおこなうようになった。
十年前、芝口から現在の長谷川町に店を移したのも、名の知れた旗本との商いが拡大し、さらなる儲けが見込めたためだった。
「わたしの目から見ても、父上は素晴らしい商人でした」
怡与蔵の言葉には、熱がこもっていた。
「時の流れを正しく見られ、父上が流行ると感じた品は驚くほどの勢いで売れました。五年前に銀の髪飾りが流行ったのですが、父は事前にそれを見抜いて、京から大量に仕入れていました。あまりににも多かったので、これはむずかしいと私などは思ったのですが、売り出したら、三ヶ月もしないうちになくなり、注文を追加せねばならないほどでした。その次の年に袋物が流行った時も同じでして、知り合いの娘さんとの話から売れると見抜いて、仕入れをおこない、大儲けしました」
「すごいな、それは」
「本当に、素晴らしかったのです。なのに、私ときたら、まったく駄目で」
怡与蔵はうつむいた。身体の熱が一気に下がる。
「父が死んだのは、三年前のことです。急な病で、寝込んでから息を引き取るまで、十日とかかりませんでした。家の者はただ見ているだけで、ろくに看病もできませんでした。私もそうです」
「そうか」
「正直、父が亡くなった時は、駄目だと思いました。同じことができるとは、とうてい思えませんでしたから」
気持ちはよくわかる。五郎も勘三郎が死んだ時には、同じことを思った。止水流はこれで終わりと考えて、絶望した。
実際、五郎の場合にはうまくいかなかった。しかし……。
「おぬしは、何とかやってきた。店が残っていることがその証だ」
「必死に、それこそ寝る間も惜しんで、やってきました。手は抜かなかったつもりです。ですが、売上は下がる一方で、今年の夏に仕入れた飾り物もさっぱり売れませんでした。去年の半分にもならず、付き合いのあったお店からも商いを断られてしまいました」
「厳しい話だな」
「この間も古くからの馴染みを訪ねて、新しい品物を持っていったのですが、もう付き合いはできないと言われまして。十年もうちの飾り物を扱ってくださったのですが、まるで相手にされませんでした。本当に私は駄目です。父上の名を穢すだけです」
胸に痛みが走る。
五郎も父の思いを守れなかった。もう少し技量があれば、今でも道場は人であふれていたはずだ。輝きを消したのが自分だと思うと、ひどくつらい。
「どうしていいのかわからず、江戸の町をうろついていたら、いつの間にか、鳥越橋にいました。飛び込むつもりなどなかったのですが、気がついたら、ふらふらと……」
「まあ、たいしたことがなくてよかった」
「井ノ瀬様にはご迷惑をおかけしました。本当に申し訳なく思っています」
「いいさ。俺はこうして生きている。気にするな」
五郎はわざと笑って応じたが、怡与蔵の表情は曇ったままだった。
「このままですと、父の蓄えはなくなり、二十年つづいてきた店は駄目になります」
彼の言葉には、深い絶望があった。
「せっかく、ここまで父が大きくしてくれた店を、何もしないままにつぶしてしまうとは。情けないにもほどがあります。いったい、どうすればいいのか」
真面目に懸命にやってきたが、才のなさから結果を出せなかった。そのつらさは、五郎が一番、よく知っている。
「どうして、品物が売れなくなってしまったのですか」
拓之進が訊ねた。
「何が悪かったのでしょう」
「色々とあるのですが、他の商人が手前どもの真似をするようになったのが大きいとみております」
怡与蔵は、懐から平打の櫛を取りだした。
「これは、京の商人が作った一品です。手前どもは、事前にお客様から、こうしたものがほしいと聞き、職人とやりとりして、形を決めます」
「見事な細工だな。素晴らしい」
「手間も時間もかかりますが、その分だけ、できはよくなります。これは父上がはじめたやり方で、うまくいっていたのですが、最近、それを聞きつけた江戸の小間物問屋が同じやり方で商いを広げ、手前どものなじみを奪ったのです。懇意にしていたお武家さまとの商いも、先日、横から取られてしまいました」
立てつづけに客を奪われて、相模屋は行き詰まった。売上は落ち、美しい飾り物も店で埃をかぶるようになった。
「職人も引き抜かれてしまって。もうお終いです」
若い店主はうなだれた。疲労の陰が横顔から消えることはない。
絶望は深い。このままでは、どこかで人生を投げ出す。それは、自分が最もよく知っている。
五郎は、思わず腹をなでる。
やはり放っておけない。
そう思ったとき、五郎は怡与蔵に身体をよせて、その肩を叩いた。
「そうか。なら、俺が手を貸すよ」
「え?」
「商いがうまくいくように、あちこちで話をしてみようと思う。たいしたことはできないけれどさ」
「い、いえ、何とも、それは……」
「待ってください。五郎さん」
思いのほか、強い声が響いた。拓之進だ。
「それはやめましょう。私は反対です」
「どうしてだよ。かわいそうだと思わないのか」
「思います。せっかくがんばってきたのにうまくいかないのは憐れで、できることなら、手を貸したいと思います」
「だったら」
「ですが、私らは武家で、商人のやり方はまったくわからないのです。何をどこに持っていって、どう売ればいいのか、まるで知らないのに、余計な口を出せば、物事を悪くするだけです。怡与蔵さんの足を引っぱって、どうするのです」
急所を突かれて、五郎は絶句した。
「店をよくするのは、怡与蔵さんとお店の人の頑張り次第です。私たちにできるのは、皆さんを励ますことぐらいです」
「じゃあ、何もするなと。見捨てろと」
「そうではないのです。ただ、勝手に口を出しても、よくないと言いたいのです」
「同じことだよ。俺は嫌だよ」
五郎は立ちあがった。ふらつくが気にしてはいられない。
「向こうで話をしよう。こんな奴と話をしても仕方ない」
怡与蔵は二人を交互に見ていたが、五郎が重ねて声をかけると、ゆっくり立ちあがった。五郎が部屋を出ると、そのまま後をついてくる。
襖を閉ざす直前、火鉢の向こう側に座る拓之進の姿が見えた。
その表情は寂しげで、さながら親に見捨てられた子供のようだった。
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