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5.ボス、登場
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「はぁ? ワンダーランドが夜中に営業してる?」
クラスメイトの声が聞こえてきた。
「そうなんだよ。おれ見たんだよ。夜中の二時にメリーゴーランドの音が聞こえたんだ」
もうひとりのクラスメイトがそういった。
「ワンダーランドは午後八時までだろ? 二時にメリーゴーランドが動いてるわけないだろ」
「そうよ! 動いてるはずがないわ!」
そういって強引に話に入ってきたのは、白鳥さんだった。
彼女が白鳥桜子。
今日も今日とて、ツインテールの髪をゆらし、えらそうな表情で腰に手を当てている。
セーラー服は彼女のだけ、光って見えた。
ちなみに男女ともに指定の制服があるが、ここは公立の小学校だ。
毎日、私服を選ぶ必要がないのはいい。
「絶対に、やってない!」
白鳥さんが、大きな声でそういった。
途端に、ふたりのクラスメイトが黙り込む。
白鳥さんはふたりをにらみつけていう。
「夜中までワンダーランドがやっていたら、電気代が大変なことになるわ!」
そんな声が教室中に響いた。
クラスメイトたちは、何事かとそちらを見る。
白鳥さんは、注目を浴びていることを気にしてない様子だ。
「ふん! 変なうわさを流さないでちょうだい!」
それだけいうと、白鳥さんは教室を出て行った。
白鳥さんがいうように、ワンダーランドは夜中に営業しているわけがない。
「深夜営業の話は聞いたことがないもんね」
わたしが独り言のようにいうと、苺が口を開いた。
苺はちょっとだけ考えてからいう。
「案外、夜中にワンダーランドが勝手に動いてるのかもね」
苺の言葉に、「えっ?」とわたしは聞き返す。
「なーんて冗談」
苺はそういってにっこり笑った。
なんだ、ただの冗談かあ。
苺もホラーとか心霊に目覚めたのかと思っちゃった。
放課後には苺は、「じゃあ、買い物してから帰るからお先に」とニコニコしながら教室を出て行った。
ひとりでとぼとぼ帰るかと思って教室を出たその時。
「ちょっと来てくれ」
西園寺が、廊下でわたしを待っていて、わたしを廊下の隅に連れ出す。
それから声のトーンを落としていう。
「ちょっと調べたいことがある」
「えー、わたし用事あるんだけど」
「姫宮はさっき帰っただろ」
「別の用事があるの」
「じゃあ、なんで昼休みに姫宮を遊びに誘っていたんだ? 暇だからだろ?」
「盗み聞きしてたんだ……」
「ちがう。緒代の声は響くんだ。そしてデカい。だから嫌でも聞こえてくる」
わたしは、ため息をついて西園寺に聞く。
「調べたいことってなに?」
「昼休みに聞いたろ。『ワンダーランドのメリーゴーランドが深夜に動いてた』って」
「ああ……。でもそれは白鳥さんが否定してたじゃない」
「そうだけど、二組の奴らも、五年生も似たようなこといってる生徒がいた」
「じゃあ、深夜営業してるんじゃないの?」
「そういう情報はないな。その手の話は、西園寺旅館に真っ先に入ってくる」
「そうですか……」
「それなのに、おれもおれも両親も知らない。ってことは、わさを意図的に流している人物がいるってことだ」
「うわさ? なんのために?」
「それを調べるんだよ」
西園寺がそういったので、わたしはランドセルを背負い直す。
「そっか。じゃあ、ひとりで調べればいいよ」
「いやいや。そこは緒代の能力があったほうがいいだろ?」
「でも、わたしはお兄さんを探す手伝いはするけど、西園寺の興味本位の調べものの手伝いはしないよ」
「兄貴、この手の話が好きそうなんだよ」
「じゃあ、うわさをたどればお兄さんが関わっている可能性があるってこと?」
「もしかしたら、な」
わたしはそういって考える。
西園寺のお兄さんが見つかれば、わたしはこいつから解放されるんだよね。
じゃあ、さっさとお兄さんを探そう。
「わかった。ワンダーランドが夜中にやってるってうわさの真相を調べよう」
そのあと、西園寺と色々な生徒たちにワンダーランドのうわさのことを聞いてみた。
だけど、有力な情報は得られなかった。
ただ、「ワンダーランドが夜中にもやっている」とか、「おばけをみた」といううわさはあるらしい。
そうこうしているうちに、校舎に残っている生徒もどんどん少なくなっていく。
そんなわけで今日のところは解散、となった。
「こうなったら、夜中にワンダーランドに行ってみるしかないかなあ」
スニーカーに履き替えながらわたしがいうと、西園寺の動きがぴたりと止まる。
「そこまでする必要はない」
「だって、この件にお兄さんが関わってるのかもしれないんでしょ?」
「そうだけど……」
西園寺がもごもごとしゃべる。いつもの圧がない。
そういえば、西園寺は子供の頃からオバケが怖かったっけ。
「まさか。夜中になるとオバケが出るとでも思ってる?」
「んなわけあるか!」
「ムキなっちゃって。怖いなら怖いっていいなよ」
「べつに怖くない」
「二年生の遠足で遊園地に行った時、オバケ屋敷が怖くて入った瞬間に出てきたの誰だったかなあ」
「そんな大昔の話を持ち出すな」
「っていっても、四年前だけど」
「十分に昔だ」
西園寺はそれだけいうと、こう続けた。
「よし。そこまでいうならわかった」
西園寺は勢いをつけるかのようにいう。
「今夜、ワンダーランドに行くぞ」
「え、まさかわたしも?」
「当たり前だろ」
「夜中に抜け出したことがバレたら、お父さんとお母さんに怒られちゃうよ」
「バレずにやるんだよ」
「西園寺とちがって、わたしは緒代家のかわいいかわいい一人娘なんだよねー」
「明日の二時。ワンダーランドの門の前に集合な」
西園寺がそういって、すたすたと歩き出す。
それからぴたりと足を止めて、こう付け足す。
「どうしても抜け出せそうもないなら、スマホにメッセージしてくれ」
「えっ? 西園寺のIDとか知らないよ」
「上着のポケットを見ればわかる」
西園寺はそういって、今度こそ校舎を出て行った。
わたしは、上着のポケットに手を入れる。
そこにはノートを破いたような紙が一枚出てきた。
書かれてあったのは、スマホのメッセージのIDと西園寺航貴という名前。
「怖っ! いつのまに?!」
実は西園寺も、何かしらの超能力をつかえるんじゃないだろうか……。
クラスメイトの声が聞こえてきた。
「そうなんだよ。おれ見たんだよ。夜中の二時にメリーゴーランドの音が聞こえたんだ」
もうひとりのクラスメイトがそういった。
「ワンダーランドは午後八時までだろ? 二時にメリーゴーランドが動いてるわけないだろ」
「そうよ! 動いてるはずがないわ!」
そういって強引に話に入ってきたのは、白鳥さんだった。
彼女が白鳥桜子。
今日も今日とて、ツインテールの髪をゆらし、えらそうな表情で腰に手を当てている。
セーラー服は彼女のだけ、光って見えた。
ちなみに男女ともに指定の制服があるが、ここは公立の小学校だ。
毎日、私服を選ぶ必要がないのはいい。
「絶対に、やってない!」
白鳥さんが、大きな声でそういった。
途端に、ふたりのクラスメイトが黙り込む。
白鳥さんはふたりをにらみつけていう。
「夜中までワンダーランドがやっていたら、電気代が大変なことになるわ!」
そんな声が教室中に響いた。
クラスメイトたちは、何事かとそちらを見る。
白鳥さんは、注目を浴びていることを気にしてない様子だ。
「ふん! 変なうわさを流さないでちょうだい!」
それだけいうと、白鳥さんは教室を出て行った。
白鳥さんがいうように、ワンダーランドは夜中に営業しているわけがない。
「深夜営業の話は聞いたことがないもんね」
わたしが独り言のようにいうと、苺が口を開いた。
苺はちょっとだけ考えてからいう。
「案外、夜中にワンダーランドが勝手に動いてるのかもね」
苺の言葉に、「えっ?」とわたしは聞き返す。
「なーんて冗談」
苺はそういってにっこり笑った。
なんだ、ただの冗談かあ。
苺もホラーとか心霊に目覚めたのかと思っちゃった。
放課後には苺は、「じゃあ、買い物してから帰るからお先に」とニコニコしながら教室を出て行った。
ひとりでとぼとぼ帰るかと思って教室を出たその時。
「ちょっと来てくれ」
西園寺が、廊下でわたしを待っていて、わたしを廊下の隅に連れ出す。
それから声のトーンを落としていう。
「ちょっと調べたいことがある」
「えー、わたし用事あるんだけど」
「姫宮はさっき帰っただろ」
「別の用事があるの」
「じゃあ、なんで昼休みに姫宮を遊びに誘っていたんだ? 暇だからだろ?」
「盗み聞きしてたんだ……」
「ちがう。緒代の声は響くんだ。そしてデカい。だから嫌でも聞こえてくる」
わたしは、ため息をついて西園寺に聞く。
「調べたいことってなに?」
「昼休みに聞いたろ。『ワンダーランドのメリーゴーランドが深夜に動いてた』って」
「ああ……。でもそれは白鳥さんが否定してたじゃない」
「そうだけど、二組の奴らも、五年生も似たようなこといってる生徒がいた」
「じゃあ、深夜営業してるんじゃないの?」
「そういう情報はないな。その手の話は、西園寺旅館に真っ先に入ってくる」
「そうですか……」
「それなのに、おれもおれも両親も知らない。ってことは、わさを意図的に流している人物がいるってことだ」
「うわさ? なんのために?」
「それを調べるんだよ」
西園寺がそういったので、わたしはランドセルを背負い直す。
「そっか。じゃあ、ひとりで調べればいいよ」
「いやいや。そこは緒代の能力があったほうがいいだろ?」
「でも、わたしはお兄さんを探す手伝いはするけど、西園寺の興味本位の調べものの手伝いはしないよ」
「兄貴、この手の話が好きそうなんだよ」
「じゃあ、うわさをたどればお兄さんが関わっている可能性があるってこと?」
「もしかしたら、な」
わたしはそういって考える。
西園寺のお兄さんが見つかれば、わたしはこいつから解放されるんだよね。
じゃあ、さっさとお兄さんを探そう。
「わかった。ワンダーランドが夜中にやってるってうわさの真相を調べよう」
そのあと、西園寺と色々な生徒たちにワンダーランドのうわさのことを聞いてみた。
だけど、有力な情報は得られなかった。
ただ、「ワンダーランドが夜中にもやっている」とか、「おばけをみた」といううわさはあるらしい。
そうこうしているうちに、校舎に残っている生徒もどんどん少なくなっていく。
そんなわけで今日のところは解散、となった。
「こうなったら、夜中にワンダーランドに行ってみるしかないかなあ」
スニーカーに履き替えながらわたしがいうと、西園寺の動きがぴたりと止まる。
「そこまでする必要はない」
「だって、この件にお兄さんが関わってるのかもしれないんでしょ?」
「そうだけど……」
西園寺がもごもごとしゃべる。いつもの圧がない。
そういえば、西園寺は子供の頃からオバケが怖かったっけ。
「まさか。夜中になるとオバケが出るとでも思ってる?」
「んなわけあるか!」
「ムキなっちゃって。怖いなら怖いっていいなよ」
「べつに怖くない」
「二年生の遠足で遊園地に行った時、オバケ屋敷が怖くて入った瞬間に出てきたの誰だったかなあ」
「そんな大昔の話を持ち出すな」
「っていっても、四年前だけど」
「十分に昔だ」
西園寺はそれだけいうと、こう続けた。
「よし。そこまでいうならわかった」
西園寺は勢いをつけるかのようにいう。
「今夜、ワンダーランドに行くぞ」
「え、まさかわたしも?」
「当たり前だろ」
「夜中に抜け出したことがバレたら、お父さんとお母さんに怒られちゃうよ」
「バレずにやるんだよ」
「西園寺とちがって、わたしは緒代家のかわいいかわいい一人娘なんだよねー」
「明日の二時。ワンダーランドの門の前に集合な」
西園寺がそういって、すたすたと歩き出す。
それからぴたりと足を止めて、こう付け足す。
「どうしても抜け出せそうもないなら、スマホにメッセージしてくれ」
「えっ? 西園寺のIDとか知らないよ」
「上着のポケットを見ればわかる」
西園寺はそういって、今度こそ校舎を出て行った。
わたしは、上着のポケットに手を入れる。
そこにはノートを破いたような紙が一枚出てきた。
書かれてあったのは、スマホのメッセージのIDと西園寺航貴という名前。
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実は西園寺も、何かしらの超能力をつかえるんじゃないだろうか……。
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