ワンダーランドのおひざもと

花千世子

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11.炎上

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 気分よく家に帰ったのに、部屋に戻った瞬間に憂鬱な気分になる。
 家にスマホを忘れたので確認したら、西園寺からのメッセージが何通も入っている。

「なんなのよ……」

 西園寺からのメッセージは立て続けに来ている。

【ネットでヤバい投稿を見つけたんだ】
【SNSにワンダーランドのことが書かれてある】
【おい、まだ寝てるのか?】

 わたしは返事をする。

【スマホ、部屋に忘れてた】

 西園寺からの返事はすぐにきた。

【寝てたんなら素直にいえばいいだろ】
【寝たんじゃないってば! 散歩してたの!】
【そうか。そんなことより、大変なんだ】

 西園寺のメッセージと共に、URLが送りつけられてきた。
 わたしは、そのURLをタップ。
 次の瞬間、画面を見て、わたしは自分の目を疑った。

 月曜日、六年一組のへ教室へ入ると騒がしかった。

「ワンダーランドがSNSで炎上したらしいね」
「知ってる。スタッフの態度が最悪だったって」

 教室では男子も女子も大騒ぎしているけど、無理もないと思う。

 昨日、西園寺から送られてきたURLのリンク先は、SNSのアカウントだった。
 そのアカウントには、ワンダーランドに行ったら、スタッフにヒドイ対応をされた、もう二度と行かない。
 写真と共に、そんな投稿がされていたのだ。
 投稿によれば、スタッフがぶつかってきて眼鏡を壊された。
 それなのに、謝罪もされないうえに、スタッフに逆切れされたという。
 その時のやりとりの音声も録音し、投稿といっしょにアップロードされていた。
 聞いてみたけど、「やってない」と一点張りのスタッフ。
 スタッフの口調は、確かに怖いと感じるものだった。

 その投稿はまたたくまに拡散され、ワンダーランドは大炎上。
 もう二度と行かない。
 大好きだったけど、もう嫌いです。
 そんな批判で溢れた。
 ひどい対応をされた、という書き込みが投稿されたのは、金曜の夜十時。
 つまり昨日、お客さんがいつもより少ないと感じたのは気のせいじゃなかったようだ。
 日曜日もお客さんは少ないなあと思った。
 まあ、わたしには関係のないことだけど。

「ワンダーランドにお客さんが減ったら、困っちゃうな……」

 休み時間に苺が、ため息混じりにそういった。

「ワンダーランドに来る人が減っても、『ひめみや』のいちご大福の人気は変わりないでしょ?」

 わたしがいうと、苺は首を左右に振る。

「そんなことないの。やっぱり、ワンダーランドに来る人が偶然、店に寄ってくれるってことが多くて……」
「へぇ。そうなんだ……」
「それに今は、ネットやSNSで写真を見た、評判を聞いたとかで、店に来ることも多い。だから、炎上ってのは一番マズいんだよ」

 そういって話に割って入ってきたのは、西園寺だった。

「なに盗み聞きしてるのよ」

 わたしがそういって西園寺をにらみつけても、奴は動じない。

「でも、ワンダーランドのスタッフがあんなにヒドイ対応をするなんて、信じられない」

 苺がそういって、うつむいた。
 すると、西園寺がぽつりとつぶやく。

「あれ、本当か?」
「本当なわけないでしょ!」

 甲高い声は教室中に響いた。
 白鳥桜子、登場。
 白鳥さんも、盗み聞きしてたんだ……。

「うちのスタッフはパパが直々にしっかりと教育してるの! あんな態度とるはずがないわ!」
「でも、実際に音声が……」

 クラスの中の勇敢な男子が、白鳥さんにそういった。
 彼女は、その男子を思い切りにらみつけてからいう。

「あんなの、うちにケチをつけたい人間が勝手に作った音声に決まってるでしょ!」

 そんなめちゃくちゃな……。
 わたしがそんなことを考えていると、西園寺がいう。

「確かにその可能性はあるな」
「本気でいってる?」

 わたしが驚いて聞き返すと、西園寺はまじめな顔でうなずいた。

「白鳥のいってることは、一理あると思うんだ」

 放課後の教室は、わたしと西園寺のふたりだけ。
 西園寺が、「放課後に教室にいてくれ」というから、炎上の件だろうなあとは思ったけど。
 それにしたって西園寺とこうも毎日、顔を突き合わせていると、ため息も出る。

「ワンダーランドにケチをつけたい人が、音声を勝手に作ったんじゃないかって?」
「ああ。実際、あの音声は一部始終の会話じゃない。話はだいぶ途中だし、ごく一部の音声のみだ」

 西園寺は椅子から飛び降りてから続ける。

「だから、音声を録音した側の都合の良いところだけを編集して、アップロードした可能性がある」
「でも……。スタッフの人、すごく怒ってたじゃん」
「そりゃあ、めちゃくちゃ失礼な客をずっと相手にしてたら、だれだってああなる」
「なるほど。わざとスタッフを怒らせることをした可能性があるってことね」
「そう。だけど、何も証拠がない」
「証拠、ねえ」
「そこで、緒代の出番ってわけだ」

 西園寺がそういってにやりと笑った。

「え、やだよー。勝手に調べなよ」

 わたしがいうと、西園寺が口を開く。

「そもそもワンダーランドの炎上は、他人事じゃないだろ」
「他人事だよ」
「ワンダーランドに人が来なくなったら、有栖町の観光客が減る」
「そうだね」
「そうなると、西園寺旅館だけじゃなく、姫宮の店だって経営が傾きかねない」
「はっ! それはダメ! よし、犯人を見つけよう」

 わたしはそういうと勢いよく立ち上がった。

「単純だな……。ってゆーか、投稿者をもう犯人扱いかよ」

 西園寺が呆れたようにわたしを見た。
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