ワンダーランドのおひざもと

花千世子

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15.落とし物預り所

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 そうだ、西園寺のいうとおりだ。
 大勢の客がいないと、落とし物預り所が成立しないわけじゃない。
 少なくても、お客さんを大事にしないと。
 そう思って歩いていると、さっそく落とし物を見つけた。
 そして物の思い出を見て、持ち主を探す。
 落とし物を持ち主に届けると、とても感謝をされた。
 この調子で、どんどん落とし物を拾って届けよう。

 なにせまだ離れの家が使える状態じゃない。
 母屋だと普通の玄関が広がっているだけだから、お店っぽくない(預り所はお店じゃないか)
 やっぱり、雰囲気って大事だから、できれば離れの家でやりたい。
 それには、まだまだ準備したことがある。先に大掃除が必要だけど。
 それまで待っているんじゃなく、自分で落とし物を拾って届ける。
 つまり、今はわたし自身が『落とし物預り所』なのだ。
 そうして、良い評判を広めていけば、本格的に離れの家で『落とし物預り所』をオープンした時に有利になりそうだ。

 落とし物がないかとキョロキョロとして歩いていると、地面に何かが落ちている。 
 それは青い宝石のついたきれいなペンダント。
 触れた途端、映像が見えた。

 三つ編みの女性がペンダントを大事にしている姿。
 それから、映像が新しくなる。
 三つ編みの女性がお年を召して、若い女性にペンダントを譲っていた。
 若い女性はうれしそうにペンダントを身につけた。

「おばあちゃん、ありがとう!」

 女性はそういうと、ペンダントにそっと触れた。
 そこで映像は終わった。

 初めて二人の持ち主の思い出を持っている物を見た。
 そっか。このペンダントは、おばあちゃんにもらった大切な物だったんだ。
 じゃあ、なおさら届けなきゃ!
 わたしは、急いで女性を探した。

 あちこち探してようやくカフェの窓際の席で、ため息をついている女性がいた。持ち主発見!
 わたしは、急いでカフェに入り、女性にペンダントを渡した。
 女性は、「えっ、あ、わたしの! でも、どこでってゆーか、えっ?」とおどろいている。
 そうだよね、なくしたと思ったらペンダントが戻ってきたんだもんね。おどろきもするか。

「あ、ありがとうね」

 女性はぎこちない笑顔でそういった。
 良いことをするって本当に気持ちいいなあ。これは癖になりそうだ。

 それからというもの、毎日、落とし物を探しては、持ち主に届けた。
 持ち主の顔がドアップ過ぎたり、見切れていたりする映像は苦労した。
 でも、なんとか探し出して、持ち主を見つけたのだ。

 お礼をいわれるたびに、わたしはうれしくなる。
 ああ、わたしでも役に立てることがあるんだと思える。
 わたしは、有栖町のお荷物なんかじゃない。
 こうして今、誰かの役に立っている。
 むしろ、今、一番仕事をしているのは、わたしなんじゃないだろうか?
 そんなふうに、調子に乗り始めた頃、事件は起きた。

「やり過ぎだ」

 わたしが独自で、『落とし物預り所』を始めて一週間が経過した時。
 登校中に西園寺に突然そういわれた。

「わたしなにかしたっけ?」
「落とし物を見つけた途端に落とし主に届けてるだろ」
「うん。そうだよ」

 わたしがうなずくと、西園寺はスマホの画面を見せてきた。
 SNSの投稿だ。
 そこにはこう書かれてあった。
  

  有栖町に観光した時に、亡き祖母からもらったペンダントを落としました。
  探しても見つからなくて、カフェでぼんやりしていたら
  女の子に「これあなたのですよね」とペンダントを渡されました。
  わたしは何もいってないのに……。
  とってもありがたいけど、ちょっとだけ不気味でした。

   
「えっ、不気味……?」

 わたしは驚いて、投稿を読み返す。
 確かにそこには、不気味と書かれている。
 そういえば、カフェでペンダントを女性に渡したことは覚えてる。
 今思えば、ぎこちない笑顔でお礼をいわれたけど。

「『落とし物預り所』ってのは、落とし物を預かる場所だろ。能力頼りでバンバン返していくものじゃないんじゃないか?」
「でも、持ち主が困ってるかと思って……」
「そういう時は、持ち主が何かを探している様子なら、『なにかお探しですか?』っていうんだ。それで、少しずつ落とし物の情報を聞き出して返す、それが自然だろ」
「なるほど! 西園寺は頭いーね!」
「考えればわかるだろ……」

 西園寺がため息をついたので、わたしは明るい声をつくっていう。

「でも、炎上したわけじゃないし」
「そうだけど、この投稿もわりとバズってる。有栖町ってきっちり書かれてるし、不気味だって思われるとよけいに人が来なくなるぞ」

 その言葉に、わたしは何もいい返すことができなかった。

 例の不気味と書かれた投稿は、どんどん拡散されていった。
 休み時間のたびに、SNSを確認したから間違いない。 
 投稿にはたくさんのコメントがついていた。
 炎上した遊園地がある場所ですね、とか、やっぱり行くのやめようかな、とかマイナスなコメントが多い。
 わたしは、ため息をつきながらコメントをざーっと確認していく。
 途中で胸が痛くなって見るのをやめた。

 ああ。わたしのせいで有栖町にマイナスイメージが……。
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