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3.西園寺の頼み事
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「サイコメトリー」
西園寺がぽつりとつぶやいたので、わたしはハッと我に返る。
「さいこ……なに?」
「サイコメトリー」
「なにそれ?」
「物に触れると、所有者の情報を読み取ることができる超能力」
「へぇ。そんな超能力あるんだ」
「ある。緒代の能力と似てるだろ」
「うーん。ちょっとちがうけど」
わたしはそういってから、ハッとして手で自分の口をおおう。
西園寺は呆れたようにわたしを見る。
「やっぱりな。まさか自分で白状するとは思わなかった」
「だからわたしにそんな能力はないんだって!」
「強情だな。まあいいけど」
西園寺はそういうと、紙袋を取り出す。
白地に真ん中に苺を抱いたウサギのマークの袋を、わたしはよく知っている。
それから甘い香りが漂う。
これは……!
「『ひめみや』の苺大福!」
わたしが思わず大声を上げる。
だって『ひめみや』の苺大福は大好物だから!
「まだ中見せてないのに、よく分かったな」
西園寺が呆れたようにいう。
「だって、苺の匂いしたから」
「鼻が良すぎて怖ぇよ……」
「それ西園寺が買ってきたの?」
「いや。お茶屋のおばさんからもらった」
西園寺はそういうと、中から一つを取り出してわたしの手の上に乗せる。
「やる」
「いーの?」
「ああ」
「ありがとー!」
わたしはそういうと、さっそく苺大福を食べる。
『ひめみや』の苺大福は、買ってすぐに食べるのが一番おいしい。
ふわふわの餅と甘いあんこ、甘酸っぱい苺が最高に合う!
この世で一番おいしい!
わたしが幸せな気持ちになっていると、西園寺が口を開く。
「食べたな」
西園寺の意味深な笑顔に、ぎくりとする。
まっ、まさか毒入り?!
……ってさすがにそんなわけないか。
でも、西園寺が何かを企んでいる顔をしている。
これは嫌な予感しかしない。
「なに? 食べちゃダメだった?」
「いや、食べてくれたほうがおれにとっては好都合だ」
「一体なにを企んでるの?」
「企んでない。ちょっとした人探しを頼みたいだけだ」
「人探し? どういうこと?」
「そのままの意味。行方の分からない人を探してほしい」
「そんなの警察とか探偵とかに任せればいーじゃん」
「大事にもしたくないし、金もない。そもそも警察は動かないだろうな」
西園寺は、無表情のままでこう続けた。
「二年前に家を出ていったきりの兄貴を探す手伝いをしてほしい」
「お兄さんまだ帰ってきてないの?」
西園寺家のお兄さん(長男)は、二年前に「じゃ、後はよろしくねー」とか軽いノリでこの町を出て行ったのだ。
だから行方不明という深刻なものではなく、明るい家出というイメージ。
「どこにいるか手掛かりがない。だから緒代の能力は役に立つ」
「だからわたしは、能力なんてないってば」
「苺大福、もう一個どうだ?」
「手伝うけど~」
「チョロいな」
西園寺はそういって笑った。
まんまと西園寺に乗せられた……。
いや、乗せられたというよりは食べ物に釣られたというか……。
あの苺大福には、いろいろな意味で勝てないんだよね。
ノリで西園寺の手伝いをすることになったけど、面倒くさいなあ。
でも一度やるといったことを取り消すのも、なんだか嫌なんだよね。
わたしはそんなことを考えつつ、とぼとぼと家に帰った。
大通りに面したわたしの家――緒代家も、他の店や家と同じようにオシャレな家だ。
レモン色の壁にオレンジ色の屋根で外観だけなら、新築ですてきな家に見える。
でも、それは見た目だけの話。
中身は築七十年越えの古い家だ。
わたしの家は別に古民家カフェを経営しているわけじゃない。なんの商売もしていない。
父は町役場勤務だし、母はスーパーで働いている。
もちろん、それだって立派な仕事。
だけど観光地の、おまけに大通りに面した家がただの民家ってのもね……。
他はみんなお店だから、たまに観光客が「なんのお店なんですかー?」って聞いてくる。
その時に、「普通の家です」というと、残念そうに帰っていく。
それを見るたびに、なんだか申し訳ない気分にすらなる。
そんなことを思い出して、また気分が落ち込む。
両親が今からでも何かお店を始めてほしい、なんて非現実的なことは思わない。
せめて心穏やかに暮らしたいと思っていたのに、変な能力に目覚めてしまった。
おまけに落とし物を届けただけなのに、まんまと能力を当てらるし。
しかも、西園寺のお兄さん探しの手伝いをさせられるなんて。
「あー、もう!」
わたしは大きな声でいうと、自室に寝転んだ。
西園寺の話によれば、お兄さんは大学を卒業したあと、「旅に出る」とかいって出て行ったらしい。
旅先から定期的にポストカードが届くから、生きてはいるそうだけど。
それなら、西園寺がお兄さんの心配をする必要はなさそうだけどなあ。
ただの旅行じゃん。
西園寺がぽつりとつぶやいたので、わたしはハッと我に返る。
「さいこ……なに?」
「サイコメトリー」
「なにそれ?」
「物に触れると、所有者の情報を読み取ることができる超能力」
「へぇ。そんな超能力あるんだ」
「ある。緒代の能力と似てるだろ」
「うーん。ちょっとちがうけど」
わたしはそういってから、ハッとして手で自分の口をおおう。
西園寺は呆れたようにわたしを見る。
「やっぱりな。まさか自分で白状するとは思わなかった」
「だからわたしにそんな能力はないんだって!」
「強情だな。まあいいけど」
西園寺はそういうと、紙袋を取り出す。
白地に真ん中に苺を抱いたウサギのマークの袋を、わたしはよく知っている。
それから甘い香りが漂う。
これは……!
「『ひめみや』の苺大福!」
わたしが思わず大声を上げる。
だって『ひめみや』の苺大福は大好物だから!
「まだ中見せてないのに、よく分かったな」
西園寺が呆れたようにいう。
「だって、苺の匂いしたから」
「鼻が良すぎて怖ぇよ……」
「それ西園寺が買ってきたの?」
「いや。お茶屋のおばさんからもらった」
西園寺はそういうと、中から一つを取り出してわたしの手の上に乗せる。
「やる」
「いーの?」
「ああ」
「ありがとー!」
わたしはそういうと、さっそく苺大福を食べる。
『ひめみや』の苺大福は、買ってすぐに食べるのが一番おいしい。
ふわふわの餅と甘いあんこ、甘酸っぱい苺が最高に合う!
この世で一番おいしい!
わたしが幸せな気持ちになっていると、西園寺が口を開く。
「食べたな」
西園寺の意味深な笑顔に、ぎくりとする。
まっ、まさか毒入り?!
……ってさすがにそんなわけないか。
でも、西園寺が何かを企んでいる顔をしている。
これは嫌な予感しかしない。
「なに? 食べちゃダメだった?」
「いや、食べてくれたほうがおれにとっては好都合だ」
「一体なにを企んでるの?」
「企んでない。ちょっとした人探しを頼みたいだけだ」
「人探し? どういうこと?」
「そのままの意味。行方の分からない人を探してほしい」
「そんなの警察とか探偵とかに任せればいーじゃん」
「大事にもしたくないし、金もない。そもそも警察は動かないだろうな」
西園寺は、無表情のままでこう続けた。
「二年前に家を出ていったきりの兄貴を探す手伝いをしてほしい」
「お兄さんまだ帰ってきてないの?」
西園寺家のお兄さん(長男)は、二年前に「じゃ、後はよろしくねー」とか軽いノリでこの町を出て行ったのだ。
だから行方不明という深刻なものではなく、明るい家出というイメージ。
「どこにいるか手掛かりがない。だから緒代の能力は役に立つ」
「だからわたしは、能力なんてないってば」
「苺大福、もう一個どうだ?」
「手伝うけど~」
「チョロいな」
西園寺はそういって笑った。
まんまと西園寺に乗せられた……。
いや、乗せられたというよりは食べ物に釣られたというか……。
あの苺大福には、いろいろな意味で勝てないんだよね。
ノリで西園寺の手伝いをすることになったけど、面倒くさいなあ。
でも一度やるといったことを取り消すのも、なんだか嫌なんだよね。
わたしはそんなことを考えつつ、とぼとぼと家に帰った。
大通りに面したわたしの家――緒代家も、他の店や家と同じようにオシャレな家だ。
レモン色の壁にオレンジ色の屋根で外観だけなら、新築ですてきな家に見える。
でも、それは見た目だけの話。
中身は築七十年越えの古い家だ。
わたしの家は別に古民家カフェを経営しているわけじゃない。なんの商売もしていない。
父は町役場勤務だし、母はスーパーで働いている。
もちろん、それだって立派な仕事。
だけど観光地の、おまけに大通りに面した家がただの民家ってのもね……。
他はみんなお店だから、たまに観光客が「なんのお店なんですかー?」って聞いてくる。
その時に、「普通の家です」というと、残念そうに帰っていく。
それを見るたびに、なんだか申し訳ない気分にすらなる。
そんなことを思い出して、また気分が落ち込む。
両親が今からでも何かお店を始めてほしい、なんて非現実的なことは思わない。
せめて心穏やかに暮らしたいと思っていたのに、変な能力に目覚めてしまった。
おまけに落とし物を届けただけなのに、まんまと能力を当てらるし。
しかも、西園寺のお兄さん探しの手伝いをさせられるなんて。
「あー、もう!」
わたしは大きな声でいうと、自室に寝転んだ。
西園寺の話によれば、お兄さんは大学を卒業したあと、「旅に出る」とかいって出て行ったらしい。
旅先から定期的にポストカードが届くから、生きてはいるそうだけど。
それなら、西園寺がお兄さんの心配をする必要はなさそうだけどなあ。
ただの旅行じゃん。
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