【完結】体を代償に魔法の才能を得る俺は、無邪気で嫉妬深い妖精卿に執着されている

秘喰鳥(性癖:両片思い&すれ違いBL)

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4-1.妖精卿と魔法の練習編1【R-15:疑似性交】

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 お互いに意思疎通に務めようと決め、さっそく俺は意見を伝えていた。
 けれど早々に食い違い、ヴァルネラに抗議の声を上げられる。

「え、一緒に寝ちゃダメなんですか!? 同じ屋敷に住んでいるのに!」
「俺だって一人の時間が欲しいし、四六時中一緒は疲れるから」

 今までは行為の後も一緒に寝ていたが、干渉されずに休みたい時だってある。
 屋敷は豪邸と言えるくらい広いし、この程度の要求は許してほしかった。

「……分かりました、貴方が嫌なことはしません」
「寝てる間に、逃げたりなんてしないよ」

 唇を尖らせながら了承したヴァルネラは、納得しきれない顔で嫌々頷く。
 子供っぽい膨れ面は愛らしいが、彼は妖精卿なのでそこで終わってはくれない。

「そんなことしたら地の果てまで追いかけて、妖精化させますからね」
「不安なのは分かるけど、あんまり怖いこと言わないでよ」

 不穏な発言に俺が半眼を向けると、ヴァルネラは拗ねた顔を返してくる。
 本当は了承したくなかったと、その表情がありありと物語っていた。

「ずっと目の届く場所にいてほしいくらいなんです。我慢してるんですよ、私」
「ヴァルネラばかりには合わせられないし、そんな関係は続かないよ」

 俺がいつ魔法を使えるかは分からないし、お互いが嫌いになるのは避けたい。
 そして譲歩できる範囲で歩み寄るには、こういう細やかな調整は欠かせなかった。

「……じゃあどこまで、私は我慢し続ければいいんですか」
「それはこれから、妥協点を見つけていこう。どうせ長い付き合いになるんだしさ」

 けれど俺が長期戦を覚悟しながら話を進めると、彼は途端に嬉しそうに首肯する。
 綻んだ表情に嘘はなさそうだが、俺には心変わりした理由が分からなかった。

「! そうですね、えぇ、ぜひ!」
「なに、そんなに話し合いが嬉しいの?」

 急に機嫌が良くなった理由がそれしか思いつかず、俺は不思議に思って尋ねる。
 すると更に笑みを深くして、ヴァルネラは幸せそうに頷いた。

「はい! いつも気づくと手遅れになってるので、だから話し合いが嬉しくて!」
(力があっても、幸せにはなれないものなんだな。それでも羨ましいけど)

 いっそ無垢だとも形容できる様相だが、過去の経験が彼の心を歪ませている。
 重い感情は執着心に変貌し、俺をこの場に留めようという思考に繋がっていた。

「俺は勝手にはいなくならないよ。ちゃんとした魔法も教えてもらわないとだし」
「あ、じゃあ魔力の発露から試してみますか。これならすぐにできますよ」

 利害の契約を交わしてからのヴァルネラは、魔法を教えることにも協力的だった。
 魔力の制御が未熟な俺に合わせて、懇切丁寧に教えようと目を輝かせている。

「発露ってことは、体の外に魔力を出すってこと?」
「そうです。全ての魔法の基礎で、ここから無数の魔法に発展していくんです!」

 ヴァルネラが魔力を放出すると、それは様々な姿に変化して存在を誇示した。
 燭台に灯り、庭の花に降り注ぎ、積みあがった書類を舞い上がらせる。

「なら体内の魔力を感知して、外に引きずり出す感じにすればいいのかな」
「出力が大きいと怪我をするので、最初は糸のようにするといいですよ」

 成果を手早く求める俺を諫めるように、ヴァルネラは優しく語りかけてくる。
 彼の言うことは一理あり、俺は慎重に体内の魔力を手繰り始めた。

「……うまくいかない、なんで」
「内側で魔力が散っているみたいですね。結果として、出力量に足りていない」

 けれどいくら意識をしても魔力は霧散して、指先から僅かな成果も現れない。
 体ばかりが火照っていき、焦りと苛立ちで俺は唇を強く噛んだ。

「あんなに頑張って、魔力を受け入れたのに」
「まだ諦めるには早いですよ、私がお手伝いしてもいいですか」

 俺の拗ねた呟きを励ますように、様子を見ていたヴァルネラが提案してくる。
 魔法の知識は彼の方が間違いなく深いから、俺は素直に頷いて教えを乞う。

「うん、お願い。……え、ちょっと重いんだけど」
「私の魔力の流れを、真似した方がいいと思いまして。後ろから失礼しますよ」

 俺が了承を聞いたヴァルネラが、後ろから抱き着くように覆い被さってくる。
 体重は掛けられていないが、手先まで密着する体位に思わず困惑してしまった。

「ちょっと、そんなに圧し掛からないでよ。っていうかこんな体勢でやるの?」
「こっちの方が分かりやすいですから。いっそ四つん這いになりましょうか」

 背後から耳元で囁かれるとくすぐったくなり、俺は膝を崩して床に這いつくばる。
 その上にヴァルネラが乗っかると、自分が組み伏せられていることに気づいた。

(動物の交尾みたいで、恥ずかしいなこれ。でも自分じゃうまくできそうにないし)

 魔力の感覚に疎い俺では一人で問題を解決できないし、今は他者を頼るしかない。
 そうこうしている間に背中からヴァルネラの魔力が巡るのを感じ、俺は目を閉じて受け入れようと努めた。

「では心臓から腕に魔力を通すので、真似してください」
「んっ、あ、なんかあったかい……」

 魔力がヴァルネラの胸から指先に向かっていき、俺は後を追いかけようと藻掻く。
 体内で散っていた魔力が束ねられて、外側への道筋を辿り出した。

「ではその流れを体の外まで引き出してください。いけますか?」
「……できそう、体が熱い。 っ、あ、なんか引っ張られてる!」

 指先まで到達した魔力が形を成すが、そこで塞き止められて熱が体に溜まり出す。
 出口を求めるもどかしさに息が揺れて、ヴァルネラにまで興奮を促した。

「私が外側から、魔力を誘導しています。そのまま感覚を委ねて。……くっ」
「ん、あ、これ、きてる……! 魔力が溢れ、あっ、……っ!」

 隙間なく密着した体勢が疑似的な行為を思わせて、ヴァルネラの腰も動き出す。
 けれど本格的な動作になる前に、俺の指先から細い魔力が噴出した。

「一瞬ですけど、魔力が発露しましたね。これがいずれ、魔法になっていくのです」

 初々しい魔力の発露に気づいたヴァルネラは、正気を取り戻して俺から離れる。
 追っていた熱が離れたことに寂しさを感じながら、俺も床に転がった。
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