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6-2.妖精卿と羽化編2【R-18:騎乗位1】

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「それ、下手な誘い文句よりも効くんで勘弁していただけませんか……!?」
「本当だ、また元気になってきてる。でも好都合だから、もっと頂戴」

 俺は慌てるヴァルネラを座らせて、その上に膝立ちで乗り上げた。
 そして彼に片手で掴まり、もう片方の手で後孔を解し始める。

「な、なにをするつもりですか。目が据わってますよグレイシス」
「動かないで。俺が上に跨って、直接魔力をもらうからさ」

 自分で後孔を解すのは初めてで、どこか座りが悪くて動きが緩慢になってしまう。
 見かねたヴァルネラが手伝おうとしてくるが、俺は首を振ってそれを拒んだ。

「え、そんな、こっちから手伝うことも許されないんですか!?」
「だってヴァルネラ、夢中になったら俺の言うこと聞いてくれないじゃん」

 ヴァルネラに主導権が渡れば、行為を有耶無耶にされてしまう可能性が高い。
 だから俺はなんとか彼を言いくるめて、自分の思う通りにことを進めたかった。

「待ってください、今日の貴方おかしいですよ! なにを焦ってるんですか!?」
「別に焦ってなんかいない。ヴァルネラは黙って、気持ちよくなってて」

 俺はヴァルネラの制止を振り切り、勃ち上がったものを手で支えて後孔へ導く。
 そしてゆっくりと腰を下ろし、彼のものを内側で咥え込もうとした。

「ダメです、そのままじゃ痛い思いをするだけですよ! 濡らしてもいないのに!」
「今までの経験で広がってるし、平気。でも、うまく入らない……!」

 ちゃんと穴は広げたはずなのに、彼の先端が滑ってなかなか入っていかない。
 だから跨った状態で腰を揺らすと、ようやく先端が入り口に引っかかった。

「どう、して、奥まで入らないの。後ろだって、ちゃんと広げたのに」
「せめて体を支えさせてください、このままでは本当に怪我をしてしまいますから」

 そう言ってヴァルネラは俺の腰を掴もうとするが、俺は頑なに拒否をする。
 彼の言うことは正しいが、俺はもっと魔力を取り入れないといけない。

「俺、ちゃんとできるよ、だから止めないで。……っい、た!」

 強引に腰を落とそうとしたせいで膝が滑り、想定外の部分まで自重で沈み込む。
 その拍子に鋭い痛みが走り、中を擦る快楽と混ざり合って頭が痺れた。

(入ったけど、中が切れた。でも血で滑りがよくなるし、早く奥まで入れないと)

 俺は意を決して再び腰を落とそうとするが、またヴァルネラが邪魔をしてくる。
 彼は強制的に俺の腰を掴んで持ち上げ、語気を強くして戒めてきた。

「グレイシス! もう止めなさい! こんなの自傷行為ですよ!」
「やっ!? なんで怒るの!? 俺、悪い事してない!」

 俺は苛立ちに任せてヴァルネラに嚙みつくが、彼は怯まずに俺を叱りつける。
 けれどその顔には滅多にない怒りが滲んでいて、俺は口を噤んでしまった。

「貴方が、いえ、私が痛いからです。入れる側にも、負担はあるんですよ」
「それは、……その、ごめん」

 痛みを堪えているのは彼も同じだったと気付き、俺は浅はかさを思い知らされる。
 急速に頭が冷えて反省するが、離そうとした体は抱き竦められた。

「しばらくはこのままでいましょう。効率は落ちますが、魔力譲渡はできますから」
「……分かった、お願い」

 俺は半端に挿入した体勢を保ちながら、ヴァルネラの方へと体を傾けていく。
 すると背中に腕がまわされて、ぴったりと胸同士が密着した。

(体があったかくなってきた。それになんだか、落ち着く気がする)

 お互いの体温と鼓動が伝わってきて、俺の中にあった焦りや緊張が解れていく。
 魔力の為の性交をしてるはずなのに、効果のない抱擁で心が落ち着いてしまった。

「……ヴァルネラ、離れて。もう動けるから」
「まだこのままで。今は、貴方を離したくないです」

 ずっとこうしてはいられないと俺が身動ごうとするが、彼は腕を緩めてくれない。
 むしろ離すまいと一層強く抱きしめられ、俺は錯覚を起こしそうになった。

「同類候補に言うことじゃないでしょ、それ……」
「私にとっては、貴方が誰より大事ですから」

 困惑には至極真面目な表情で返され、俺はどんな顔をしていいか分からなくなる。
 現状俺が一番同類になる可能性があるから、そう言われるのは分かるけど。

(でも見込みがないって判断されたら、きっと俺は見放される)

 魔法の練習はしているが満足な成果は得られず、自暴自棄になる夢をたまに見る。
 けれどもっと質が悪いのは、最後には救われて目が覚めることだった。

(体を重ねると、情を錯覚するから厄介だ。魔力の為だって分かり切っているのに)

 彼が求めているのは俺自身ではなく、彼の孤独を癒せる同類という存在だ。
 けれどそんなことを考えてると、ヴァルネラが俺の頬を包んで目を合わせてきた。

「……グレイシス、私を見て。ずっと別のことを考えてるでしょう」
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