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7-2.妖精卿と誘拐編2【R-18:モブレ未遂、前戯まで】

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 ヴァルネラの様子がおかしくなってから、直接魔力を注がれる機会がなくなった。
 魔力を含んだ薬は与えられているが、無味無臭のそれから満足感は得られない。

「ねぇ、今日もしないの? ヴァルネラ」
「しませんよ。魔法の勉強をして、それでおしまいです」

 俺から分かりやすい誘いを掛けてみるが、ヴァルネラには軽く断られてしまう。
 表面上は穏やかだし魔法の授業はしてくれるが、接触は触れる程度に留められた。

「魔力補給薬じゃ足りませんか? 必要であれば、追加はできますが」
「ヴァルネラの魔力が一番馴染むし、量が足りないから。それでもくれないの?」

 俺が服を引っ張って要求してみても、ヴァルネラは困った顔で微笑むだけだった。
 彼も気持ちいいことが好きなはずなのに、頑なに手を出そうとはしてこない。

「求められるのは嬉しいんですが、今はまだ。……では魔物狩りに行ってきますね」

 額に軽い口づけだけ落として、ヴァルネラは逃げるように部屋を出ていく。
 俺は取り残された寝台の上で膝を抱え、足先を丸めた。

「……嫌われたかな、俺。ずっと文句ばっかだったし」

 翅と快楽でヴァルネラを繋ぎ止められると考えていたが、浅はかだった。
 あれだけ求められていた日々が嘘のように、今は淡白な対応ばかりされている。

(でもこのままじゃ、魔力が足りなくて翅が成長しない。もしこのままだったら)

 悪夢が現実になる可能性が脳裏をよぎるが、それを否定する材料が見つからない。
 翅は生えたが目に見える成長はなく、焦りの募る日々を続けている。

「ダメだ、翅がなくなるのだけは絶対。なにか、魔力があるものを」

 物足りずに寝台から降りて部屋を調べるが、目当ての物は見つからない。
 だが窓の外を見ると、鳥のような魔物が小動物を追い立てているのが見えた。

「……俺も狩りをしてみようかな。弱い魔物だったら、倒せるかもしれない」

 俺は魔力の放出しかできないが、火力を集中すれば殺傷能力を持たせられる。
 そう考えると途端に精神が攻撃性を帯びて、俺を玄関へと向かわせた。



 けれど施設や屋敷から出たことがなかった俺は、外の世界を甘く見ていた。
 門から顔を出した直後に、魔物ではなく人に捕まってしまう。

(くそ、甘かった。人だからって、無条件に信じられるわけじゃないのに)

 行商人と勘違いして近づいた男たちは魔物商で、親切そうな面影は残っていない。
 彼らは俺を羽交い絞めにして、馬車の中に無理やり引きずり込んできた。

「コイツ、半妖精か? でも妖精卿以外の存在なんて、聞いたことがねぇぞ」
「けれど翅の偽装なんて無理だろ。なんにせよ、とんでもない上物には違いない」

 魔力を使って撃退しようと試みたが、凶暴な魔物と対峙する男たちには通じない。
 恐怖と焦燥で魔力を集中することもできず、簡単に捕縛されてしまった。

「早く連れて行こうぜ。競売にかけて、貴族に売りつけるか!」

 目に布を巻かれて視界を遮られ、俺と興奮した男たちを乗せて馬車が走り出す。
 途中で翅を無遠慮に触られて背筋に怖気が走るが、どうすることもできない。

(多分ヴァルネラは助けに来てくれるけど、その時に翅がなかったら捨てられる。それだけは、なんとしてでも避けないと)

 翅を生やした俺だから価値があるのであって、なくなれば有象無象に成り果てる。
 だから俺は体を犠牲にしてでも、翅だけは守らなければならないと決意した。



 暗い荷台の中で一晩中揺られ続けた後、どこかの屋敷に運ばれて檻に入れられる。
 そこでは仮面をつけた貴族たちが、品定めをしながら囁きあっていた。

『信じられない、未確認の半妖精だなんて。これは値が付くのだろうか』
『これは手元に置いておくだけで、箔がつく。いくらでも金は引っ張れるな』
『愛玩目的でも、研究目的にも使えるな。まぁ結局、誰が一番高値を付けるかだが』

 目隠しを外された俺は欲に塗れた眼に囲まれ、商品として値踏みされる。
 見やすいように翅は特殊な針で固定され、碌に身動きも取れない。

(完全に物扱いだな、俺。でも存在が貴重過ぎて、乱雑に扱われないのが救いか)

 話を盗み聞きしたところ、翅があるのは現状俺かヴァルネラしかいないらしい。
 だから今までは手の届かない存在だったが、ここにきて間抜けが釣れた。

「でも翅が小さすぎるな。魔力供給薬で、披露までに成長促進させておけ」
「ほら飲め。欲しがってた魔力だ、全部飲み干せよ」

 見物客が引くと、見張りの男たちが俺の口元に薬瓶を押し付けてきた。
 噎せ返るような匂いに顔を背けるが、顎を掴まれて強引に飲まされる。

(いや、翅を育てたいのは本当だろうし、毒は入ってないだろう。それにヴァルネラも翅が育っている方が喜ぶか)

 そう思い直した俺は喉に流れ込む液体を無理やり飲み干し、何度も咳き込む。
 性欲を増進させる効果もあるのか、飲まされた液体は酷く体を火照らせた。

「んっ、んっ、……っはぁ」
「こいつ、随分色っぽいな。なぁ、少しだけ」

 欲情した俺に当てられたのか、一人の男が下卑た顔で手を伸ばしてくる。
 もう一人も止めることなく、翅を固定していた針を引き抜いた。

「そうだな。価値は翅が大半だろうし、体の方は傷つけなきゃ遊んでもいいだろ」
「っあ! や、なに!?」

 男たちは大して忠誠心もないようで、俺を乱暴に組み敷いていく。
 鼻息荒く衣服を剥がされ、床に四つ足で這いつくばらされる。

「商品に手を出すのか!? やだ、やめろよ……っ」
「穴の具合から見るに、初めてじゃなさそうだ。なら挿れてもいいだろ」

 男の手が体を這いまわって無遠慮に俺の尻を掴み、割り広げて確認してくる。
 俺は必死に抵抗したが、薬と恐怖のせいで体が上手く動かない。

「や、触るな! ……っあ、あ゛ぁっ!」
「そういや魔力を増やすのに、性行為が良いって聞いたな。ちょっと試してみるか」

 俺の自由を易々と制した男は、興奮しながら下肢の服を寛げて性器を露出させる。
 その光景に血の気が引いて、俺は必死になって足を暴れさせた。
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