【完結】魔力至上主義の異世界に転生した魔力なしの俺は、依存系最強魔法使いに溺愛される

秘喰鳥(性癖:両片思い&すれ違いBL)

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1.魔法契約編

13-4.魔法使いの舞踏会編4

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 魔法使いが言葉を交わす間を通り抜け、俺たちはホールへと向かう。
 そこは絢爛な魔法と牽制の魔力が飛び交い、混迷を極めていた。

「元々魔法使いの舞踏会は己を魔力で飾り、力を誇示する場なんですよ」
「確かに、色んな魔力が拮抗してるね」

 舞踏場は煌びやかなように見えて、吐き気を催すほど息苦しい。
 魔力が濃密に渦巻いて、隙あらば他者を押し潰そうとしていた。

(スヴィーレネスが守ってくれてるけど、やっぱり魔力なしの俺にはキツいな)

 外套が魔力から守ってくれているが、不快感を完全に拭い去ることはできない。
 それもスヴィーレネスは分かっているのか、俺の耳にそっと唇を寄せてきた。

「すぐに魔力を塗り替えますから、少しだけ我慢してくださいね」
「塗り替え、って」

 最後まで言い切る前に、舞踏場の空気が一変する。
 様々な魔力で彩られていた会場が、一瞬にしてスヴィーレネスの魔力に染まった。

(場が、スヴィーレネスの魔力威圧で制圧された。魔法使いたちが膝をついていく)

 拮抗していた魔力が崩れて、誰が一番強いかを一瞬で分からされる。
 けれどそれは、俺も例外ではない。

(魔力を向けられていないのに、気持ちが悪い)

 これだけ強い魔力が振りまかれると、余波だけで魔力なしは耐えられなくなる。
 息苦しい感覚に加えて、意識が朦朧としてきた。

「これで彼らも、特級魔法使いの存在を思い知るでしょう。……オルディール?」
(スヴィーレネスは悪くない、けど)

 力の差が大きすぎて、一緒に行動するのも難しい。
 どうしても足を引っ張って、スヴィーレネスの行動を制限してしまう。

「っすぐに家に戻りましょう、アナタも休まなければ」

 公爵邸に帰る為の転移魔法に使われる魔力ですら、今の俺を蝕んでいく。
 助けるための行為だと分かっているのに、それすら受け入れない体質が憎かった。



 公爵邸に戻ると寝台に降ろされ、分厚い魔力防御布を何重にも張られた。
 おかげで体調は楽になったけど、スヴィーレネスの姿が見えなくなる。

「なにかあったら呼んでください。公爵邸なら、どこにいても声は拾えるので」
「待って、いかないで。スヴィーレネス」

 曖昧になった意識は不安に弱くなり、子供のようなか細い声しか出せなくなる。
 寝台から離れようとするスヴィーレネスの袖を探り、必死に引き留めようとした。

「ワタクシがいたら、魔力酔いが酷くなるでしょう」
「でも、大丈夫になりたい。スヴィーレネスは俺を守ろうとしてくれてるから」

 天幕の奥から息を呑んだ気配がするが、返事はまだ返されない。
 だから俺は今のうちに、隠していた信頼を伝えなければならなかった。

「俺だって、ちゃんとスヴィーレネスを受け入れたい。けど体が拒否するんだ」

 もう彼自身に対する嫌悪感はないが、どうしても付随する魔力が苦手だった。
 優しさや慈しみを向けられても、体は彼への拒絶反応を見せてしまう。

「ねぇ、俺、どうしたらいい?」

 泣いてはいないけれど、視界が滲んでスヴィーレネスが見えない。
 けれど彼が困惑しているのは、震えた声からも伝わった。

「……方法はあります、でも」
「じゃあそれをして。スヴィーレネスの魔力を、もう拒絶したくない」

 袖を引いて頼み込むと、躊躇いがちに手が握り返される。
 けれど彼自身は未だ幕の向こうにいて、表情を窺うことはできない。

「あんまり煽るようなこと、言うもんじゃありませんよ」
「でも、やだ」

 短い言葉で駄々を捏ねて、手繰り寄せたスヴィーレネスの指先に口づける。
 それを嫌がらずに受け入れたから、勝算はあると思っている。

「警告は、しましたからね」
「いいよ、好きにして。……ん、う」

 遂に指が唇から外されて、本人が幕の中へと入ってくる。
 引き寄せられる腕に抵抗せずにいたら、唇がそっと押し付けられた。

(口から直接、魔力を流し込まれた)

 僅かに触れた舌先から魔力が譲渡され、ゆっくりと体に馴染んでいく。
 拒否感が消えて、代わりに気持ち良い甘さが浸食してくる。

「ワタクシの魔力を経口摂取させました。これで拒否反応が起きにくくなります」
「なんで、目を逸らしてるの。スヴィーレネス」

 快楽に負けてもう一度したいと強請るが、唇に指を当てて止められた。
 けれど彼も我慢しているらしく、瞳に熱が渦巻いている。

「いや、本当に良くないことなんですよ。これ」

 そう言いながら指が何度も唇をなぞるから、軽く咥えて気を引こうとする。
 けれどそれ以上は手を出されず、頬を緩く撫でられただけだった。

「後でエンヴェレジオに怒られるなぁ、間違いなく」

 指を食む俺を、スヴィーレネスは蕩けた瞳で見つめている。
 だからこの夜は幕の中で、俺が眠るまで緩く触れ合い続けた。
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