【完結】魔力至上主義の異世界に転生した魔力なしの俺は、依存系最強魔法使いに溺愛される

秘喰鳥(性癖:両片思い&すれ違いBL)

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1.魔法契約編

16-3.魔力の首輪編3

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「じゃあオルちゃん、魔力補給剤の作り方を教えるよ。でも使い方は守って」
「うん、分かってる」

 魔力なしの俺は魔力容量が少ないから、供給される魔力が少なくても満足する。
 だから薬を多量接種する機会はないし、迷惑を掛けない為にもする気はなかった。

「まず魔力供給以外で魔力を補給する方法だけど、無機物からの回収がお勧めかな」
「具体的に、なにから魔力を取ればいい?」

 量の差はあれど、この世界の魔力は意外と色々なところに存在している。
 だから地道に集めるなら、危険な橋を渡らずに済む方法もあるはずだ。

「加工のしやすさから、植物かな。飲んで回復できるから、接種も簡単だし」
「じゃあその材料を買いに行くのがいいのか、それとも採取とかできる?」

 大地から自生した植物であれば、魔力の拒否反応も起きないはずだ。
 公爵邸を離れれば稼ぐ手段がなくなるから、抑えられる出費は抑えたかった。

「どこにでも生えてるよ。公爵邸の庭でも、見たことあるし」
「じゃあ心配ないね」

 二人で窓を覗けば、庭に淡く輝く花が咲いているのが見えた。
 微弱な魔力量ではあるが、だからこそ素材としては最適なのだろう。

「でも補給剤の飲み過ぎは毒だから、最初は俺に相談して。最悪、生死に関わる」
「分かった、ありがとう」

 素直に礼を言うと、フィルトゥラムが「役に立てて良かった」と笑う。
 けれど騙しているような罪悪感も感じた俺は、まっすぐに彼を見れなかった。




 擦り切れた魔法薬の教本を借りて、俺はさっそく魔力補給剤を作り始める。
 お下がりの小鍋や瓶も貰ったから、すぐに作業に取り掛かれた。

(これで一人になっても大丈夫だ)

 珍しく魔力がないことが功を奏して、純粋な魔力補給剤が出来上がる。
 それを飲み干すと、渦巻いていた熱が少しだけマシになった。

(完全に疼きが止まったわけじゃないけど、十分耐えられる)

 最悪薬漬けになるかもしれないけれど、縋りつくような醜態は晒さずに済む。
 一人で完結する苦しみなら、他の人に迷惑は掛からない。

「あ、素材切れちゃった。追加で採取しないと」

 早く一人で生きれるようになりたくて、俺は安易な方法に飛びついてしまう。
 その悪癖は自覚していたけれど、治る気配はどこにも見当たらすにいる。



 そして公爵邸の庭で素材を採取していると、妖精や幻想生物が群がってきた。
 幸いスヴィーレネスの魔力が体に残っているから、干渉されはしないけど。

(でも全然、スヴィーレネスが話しかけて来なくなったな)

 元々俺から話しかけることは少なかったから、最近は会話らしい会話をしてない。
 エンヴェレジオさんも忙しいようで、めっきり公爵邸を訪れていなかった。

(絆されたな、俺。寂しいと思うなんて)

 一人で生きていくことを覚悟していたのに、短い期間で随分絆されてしまった。
 けれど感傷に浸る前に、聞き慣れない声と足音が耳を打つ。

「お前か、オルディールってのは」
「だ、れ」

 振り返ると二人組の薄汚れた魔法使いが、公爵邸に入ってきているのが見えた。
 草花を踏み荒らす足は靴を履いておらず、代わりに獣のような爪が覗いている。

「痩せたガキにしか見えねぇけど、こんなのを特級魔法使い様が囲ってんのか」
「ここ一応は公爵の家だし、なんか価値があるんだろ」

 値踏みするように眺めてくる彼らは、縄や薬品を手に持っている。
 そこから考えられる展開は物騒なものしかなく、俺の心臓は大きく脈打った。

(絶対に、近づいちゃいけない奴らだ)

 逃げなきゃいけないのは分かっているけど、足に力が入らず動けない。
 大した魔力は感じないけれど、体が怯えて言うことを聞かなかった。

「おい、暴れる前に鎮圧薬を打っとけ。傷つけたら俺たちがひき肉になる」
「そうだな、さっさとあの魔法使いに引き渡してずらかるか」

 悲鳴を上げる前に腕を掴まれ、鋭い痛みで針が刺されたことを理解する。
 遠ざかっていく意識の端で、彼らの会話が木霊した。

(誰かに売られるの、俺。まさか)

 普通であればわざわざ公爵邸に踏み入ってまで、魔力なしを狙う危険は冒さない。
 それでも俺を捕縛したのだから、個人的に狙っている奴がいることになる。

「ドミネロは生意気なガキだが、金払いは悪くないからな」
(あぁ、やっぱり)

 弟は俺を誘拐する為に、下級魔法使いを買収したらしい。
 一人では抵抗らしい抵抗もできず、遠ざかる公爵邸を眺めるしかなかった。



 次に目覚めたのは見知らぬ小屋の寝台で、かび臭い匂いが鼻を突く。
 俺が起き上がった音に気づいたのか、弟はすぐに近づいてきた。

「おはよう、お兄様。短い間に、随分スヴィーレネス様に可愛がられたんだね」
(ドミネロから強い魔力を感じる。でも前より、抵抗感が強い)

 スヴィーレネスと魔法契約してから、他の魔力を受け付けなくなった。
 それはドミネロも同じようで、不快げに顔を歪めている。

「お兄様の体から、僕以外の魔力を感じる。それがすごく嫌だ」

 ドミネロが寝台に乗り上げて、魔力で圧を掛けながら俺に触れてくる。
 拘束時に使われた薬が効いているせいで、その指を振り払えない。

「この魔力、お兄様には合わないから僕ので上書きしてあげるね」
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