【完結】魔力至上主義の異世界に転生した魔力なしの俺は、依存系最強魔法使いに溺愛される

秘喰鳥(性癖:両片思い&すれ違いBL)

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1.魔法契約編

19-3.新たな愛し仔と破局編3

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「好きって気持ちだけで、ここまで追って来たんだ」

 スヴィーレネスへの好意を隠そうとしないドーリィは、目を焼くほど眩しい。
 それは魔法と同じくらい、俺には手に入れることが難しいものだった。

「あとドミネロさんが手引きしてくれた。オルディールさんを取り戻したいって」
(まだ俺に執着してたんだ、ドミネロ。じゃあ俺のことも受け入れてくれるな)

 忌まわしかったはずの弟の名前が、今は天啓のように感じる。
 同時に逃げ出すなら、今が絶好の機会だとも理解した。

「大人しく公爵邸から出ていくなら、手を貸すよ。僕も少しなら小細工できる」
「なにか計画があるの?」

 可憐な少年の言葉に、俺はどんどん乗せられていく。
 全てドーリィの手の内なのかもしれないけど、それでもいい。
 元々手段を選べるほど、強くはないのだから。

「オルディールさんの魔力を、僕に渡して。真似て、放出してるから」
「確かにそれなら、魔力感知でも俺がいるように錯覚するのか」

 すらすらと伝えられていく計画から、彼の覚悟が伝わってくる。
 きっとたくさん考えて、悩み抜いて決めたことなのだろう。

「あと僕の魔力を溜めた石を渡すから、それをオルディールさんが持っていって」
「なるほど。これで入れ替わっても、すぐには分からないね」

 魔力感知への対応ができているなら、即座に露見することはない。
 俺が公爵邸から消えるまでの、時間稼ぎにはなるだろう。

(スヴィーレネスの為にも、この方がいいんだろうな)

 ドーリィは可愛げのない、疑心を持った俺よりずっといい子だ。
 素直じゃなくて、魔法の才能もない俺なんかよりずっと。

「分かった。俺、ここから出ていくよ」

 決意を口にするとドーリィが柔らかく微笑み、俺も解放されたような心地になる。
 けれど胸の痛みだけが残り続けて、どうしても消える気配は感じられなかった。




 スヴィーレネスが戻ってくる前に、俺はここから出ていかなければならない。
 けれど彼が戻ってくる気配はなく、引き留めるものはなにもなかった。

「気をつけて。僕はオルディールさんに、怪我とかしてほしいわけじゃないんだ」
(この子、本当にスヴィーレネスが好きなだけなんだな)

 馬車に辿り着くまで襲われないようにと、ドーリィが保護魔法を掛けてくれる。
 その表情には申し訳なさが滲んでおり、本来の彼が優しい性格だと察せられた。

(良かったじゃん、スヴィーレネス。ちゃんと好きになってくれる人が来てくれて)

 スヴィーレネスには色々貰ったけど、俺は言葉すらまともに返せなかった。
 彼が欲しいものは察していたのに、なけなしの矜持すら捨てられずに終わる。

(最後まで、本当になにも返せなかったな。でも、もういいか)

 足枷はとうに外されているが、また俺は信頼を裏切ることになる。
 今度こそ許されないだろうが、もう見向きもされなくなるから関係ない。

(だって俺より、ずっといい子が現れてしまった)

 今は大切にされているけど、それは替えが効かない存在だったから。
 価値があるのは俺自身ではなく、付随する環境でしかなかったんだ。



 一人で公爵邸を離れて、俺は指示された場所へと向かう。
 しばらく走ると馬車が見えて、見覚えのある家門が刻まれているのが分かった。

「お兄様、こっち!」
「わざわざ迎えにきたんだ、ドミネロ」

 馬車の扉が開くと、弟が勢いよく出迎えた。
 俺をきつく抱きしめ、離そうとしない。

「少しでも早く、お兄様に会いたかったから」
「それで、俺をどうしたいの?」

 引きずり込まれるように馬車に乗せられ、ドミネロに抱きすくめられる。
 背後で扉が閉まった音に、いよいよ後戻りできないと覚悟を決めた。

「命令したい、支配したい。やっぱりお兄様じゃないとダメだった」
(だと思った)

 スヴィーレネスが抱える本能は、当然ドミネロも持っている。
 けれど弟に、本能を制御するほどの精神力はなかった。

「他の魔力なしも試したけど、みんな合わなかった。壊れちゃったのもあるけどね」
「魔力の相性が合わないと、先に精神が壊れるから」

 つまり俺は長く虐げられても精神が壊れなかったから、ドミネロと相性がいい。
 以前なら最悪だと吐き捨てていただろうけど、今となっては救いだ。

「でもお兄様、戻ってこないと思ってた。スヴィーレネス様の方がいいって」
「ううん、俺には過ぎた人だったよ」

 いいか悪いかで言えば、俺には勿体ないほどいい人だった。
 この世界で魔力なしを慈しむ魔法使いなんて、奇跡のような存在だ。

 ……けど優しさを享受するだけの日々は、真綿で首を絞められるようでもあった。

「じゃあ俺たち、ちょうどいいのかな」
「多分ね」

 暴力的な魔法使いと役に立たない愛し仔なら、ちょうど釣り合いは取れる。
 どうしようもなく堕落した関係で、けれど薄暗い安心感はそう簡単に手放せない。

「いいよ、酷くして。もう俺も逃げないから」

 短くも暖かい日々を忘れたくて、俺は自由を許す。
 そんなものなくたって、ドミネロは好きにやるだろうけど。

「やったぁ! お兄様、大好き!」
(好き、か。俺もどこかで、一言くらい言えば良かった)

 魔力供給の時なら言い訳だってできたのに、最後まで口にしなかった言葉。
 けれど彼への思いだけは、いつも奥底で揺らいでいる。

(認めるしかない、俺はスヴィーレネスが好きだった)

 抗いがたい支配欲求を捻じ伏せて、常に俺を大切してくれた魔法使い。
 見込みもないのに根気強く魔法を教えて、尊厳を守ってくれた人。

(けど俺じゃ、幸せにできない人でもあったんだ)

 スヴィーレネスは優しいから、俺を受け入れてくれていた。
 けれど俺自身が、それを享受するのをもう許せなかった。
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