【完結】魔力至上主義の異世界に転生した魔力なしの俺は、依存系最強魔法使いに溺愛される

秘喰鳥(性癖:両片思い&すれ違いBL)

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2.魔法契約の裏側編

7-2.聞き込み調査と人嫌いの魔法使い編2

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「オルディールの笑顔で、面倒な輩が魅了されたらどうするんですか!」
「魔法契約もしてないのに、それはないでしょ。そもそも笑うの苦手だし」

 スヴィーレネスは相変わらず独占欲に囚われているが、その危険性は殆どない。
 それに俺は負の感情なら浮かぶが、良い感情というものを表すのは不得手だった。
 この世界に生きてからあまり笑顔になった記憶はないし、最近は特に縁がない。

「確かに全然、笑ってくれませんね。オルディール」
「それはスヴィーレネスが、怒らせるようなことばっかするからでしょ」

 不服そうな顔でスヴィーレネスが見つめてくるが、これは俺が悪いわけじゃない。
 俺だって彼がここまで暴れなければ、もう少し態度を軟化させていたのだから。

 そして平行線の俺たちを尻目に、ヴェセルは飲んだくれている男に声を掛ける。

「なぁ旦那ー、襲撃事件についてなんか知らねえ? 一杯おごるぜ?」
「話題には上がるな。そこのお兄さんが聞いてくれたら、思い出すかもしれんが」

 そういうと酒を煽った男は、スヴィーレネスを無遠慮に指差す。
 急に指名された本人は驚き、形の良い目を見開いていた。

「えっ、なんでワタクシ」
「そりゃ、顔がいいからでしょ」

 人は性別関わらず端正な顔に弱く、スヴィーレネスはそれに該当する。
 好みがあるとはいえ、彼の顔は大抵好意的に受け取られた。

「さっそく出番っスね! 公爵様、頼みますよ!」
「……まぁ、手伝うのが同行条件ですもんね」

 そしてヴェセルに後押しされ、スヴィーレネスは頼んだ酒を片手に微笑む。
 それだけで横にいた給仕はひっくり返り、目の前の男は息を呑んだ。

 ――久々に見る、手に届かない貴婦人のような美しい青年の姿がそこにはあった。

「ご主人、話を聞かせていただけるとありがたいのですが」

 普段はしない愛想笑いを浮かべて、スヴィーレネスが話を聞き出そうとする。
 けれど彼は服を強く掴み、少し声が上ずっていた。

(スヴィーレネス、震えてる。人嫌いだから無理してるのか)

 すっかり忘れていたが、彼はほとんど街にすら出ないほどの人嫌いだった。
 俺は辛いことを頼んでしまったと後悔するが、先に男が食いついてしまう。

「なっ、なんでも聞いてくれ! あ、でもそれなら俺の部屋で」
「話すだけなら、ここでも構わないでしょ」

 スヴィーレネスに伸ばされる武骨な腕を、俺が弾き飛ばす。
 すると男が睨み、乱暴に俺の髪を掴もうとしてきた。

「なんだ、このガキ「待った待った、いったん落ち着いて!」」

 危うい雰囲気を察したヴェセルが間に入り込み、俺たちが近づかないようにする。
 そして後ろで魔力威圧を発動しかけたスヴィーレネスに声を掛け、撤退を命じた。

「この男、オルディールに「公爵様、仕切り直し! 宿屋で作戦会議しよう!」」

 ヴェセルは睨み合う俺を担ぎ、スヴィーレネスの襟首を掴んで酒場を飛び出す。
 後ろから追いかけてくる下卑た声には、俺が怒鳴り返した。

「綺麗なお兄さん、いつでも部屋で待って「結構だ!!」」

 いくら交渉だとはいえ、あんな奴のところにスヴィーレネスを行かせられない。
 それなら後で怒られるとしても、俺はこの場を壊すことを選びたかった。



 近くの宿屋の一室に滑り込んだ俺たちは、ようやく息を整える。
 そして冷静になったところで、俺はヴェセルに頭を下げた。

「ごめん、俺がめちゃくちゃにした。でも黙っていられなかった」
「いや俺も無茶ぶりしちまった。公爵様、かなり顔色悪くなってたもんな」

 申し訳なさそうなヴェセルの言う通り、スヴィーレネスの顔色は薄くなっている。
 呼吸も不規則で、明らかに無理しているのが分かってしまった。

「……ワタクシなら大丈夫です、まだ行けます。だから連れていってください」
「置いてったりしねーから、少し休んでてくれよ! オルディール君と一緒にさ!」

 縋るような目のスヴィーレネスを押さえたヴェセルは、俺たちを寝台に座らせる。
 不意に近づいた距離に俺は立ち上がりかけたが、不安げな彼を見て腰を落とした。

「分かった。二人で、部屋でおとなしくしてる」
「夕方には、戻ってくるからな! 終わったらみんなでメシ食おうな!」

 俺が頷いたのを確認したヴェセルは、再び走って酒場に向かった。
 悔しいが、彼一人で行った方が問題は起こらずに済むだろう。

「スヴィーレネス、少し横になりなよ。顔色、本当に悪いから」
「休んでる間に、どこかに行ったりしませんか」

 スヴィーレネスは寝台に座りこそしたが、転がる様子は見せない。
 ただ俺をじっと眺めて、視線で留めようとしていた。

「できないよ。前よりマシとはいえ、そんなに魔法使えるわけじゃないし」

 彼は俺がいなくなることを恐れているが、俺だって単独行動はできれば避けたい。
 それに実力不足はもちろん、体調不良者を置いていく気にもならなかった。
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