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1.売られる為に召喚された後天性サキュバスの俺は、魔物嫌いな溺愛調教師と期限付き契約を交わす
1-4.売られる為に召喚された後天性サキュバスの俺は、魔物嫌いな溺愛調教師と期限付き契約を交わす
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(なるほど。つまり俺に期待しているのは、『なにもしないこと』か)
それならば無能な半淫魔を購入した理由にも、納得できる。
扱いやすさを優先した選択であれば、俺は適任だ。
「だからどうか、私の従魔になってくれないか。代わりに身の安全は保障する」
(正直素性が分からないから、即答は避けたい。けど今は、選べる立場でもない)
彼が横暴じゃない事は行動から察せるが、淫魔を購入したという事実が引っ掛かる。
選択肢を提示してくれている時点で、売られた存在には贅沢な悩みなんだろうけど。
(それに後ろ盾のない淫魔が逃げたところで、餌食になるのは分かり切ってる)
仮にカリタスが酷い人だったとしても、外の世界がマシな保証はどこにもない。
であれば交渉の場を与えてくれた彼に、向き合う方が利口な気がしてきた。
「分かった。カリタスの従魔になるよ。けど俺、本当になにも出来ないからね」
「構わない、協力に感謝する。では早速、魔法契約を結んでしまおう」
一瞬安堵したように息を吐いたカリタスは、立ち上がって俺の方へ体を傾けてくる。
そして探るように俺の首を撫で上げてくるが、怖くて椅子に縋りついてしまった。
「な、なにそれ。俺、約束で縛らなくても言うこと聞くよ! 絶対にだよ!」
「違う。所有先を示す事で、君の保護を行うんだ。だから受け入れてくれ」
カリタスは更に椅子の上に身を乗り出し、俺に覆い被さるように距離を縮めてくる。
俺は怯えて目の前の体を突き飛ばそうとするが、彼が動じることはなかった。
そして抵抗することもできないまま、長い指が襟の端を寛げ始める。
「やだ、なんで服を脱がすの!? やめて、俺はそんなことしたくない!」
「乱暴する気はないから落ち着いてくれ! じゃないと君を傷つけることになる!」
彼の指先から性的な意図は感じないが、服に手を掛けられては無抵抗でいられない。
けれど晒される肌の面積が徐々に増えて、混乱から涙が止められなくなる。
(触られて、嫌なのに気持ちいい! こんなの、俺の体じゃない!)
時折長い指が擦れるだけで、自分の喉から信じられないくらい甘い声が漏れ出る。
幸いにしてカリタスは大して反応せず、ずっと首元を触り続けていたけれど。
「君は純粋な淫魔じゃないから、こうしないと負荷が大きくなり過ぎるんだ!」
「うあ、熱い! 苦しい、もう嫌だ……!」
遂に痺れを切らしたのかカリタスは大きな両手で、俺の首を鷲掴みにした。
気道を潰す目的の力加減ではないが、その場所が強く熱を帯び始める。
「……ここまで来たら、一度に済ませた方が楽か」
「ひぅ、っあ」
指に沿って首を一周した熱が留まって、やがて焼けつくような痛みに変わった。
首を絞められている恐怖で、もはや碌に喋る事もできなくなる。
「済まない。これは完全に、私が判断を見誤った」
(首に魔力が集まって、息ができなくなる。溺れて、気が遠くな――)
けれど気を失う直前で熱の流入が治まり、急に呼吸が楽になる。
俺は空気を取り込みながら、脱力して椅子に寄りかかった。
「これで私の魔力痕がついた、不用意に手出しをされることもなくなるはずだ」
(けど、命を握られている感覚がする。逆らったら殺すって、脅かされてる)
熱だと思っていたのは彼の魔力で、俺は所有痕を刻み付けられたらしい。
だがそれは俺自身を深く傷つけて、主従関係を強く意識させてもいた。
「このカリタス、契約が続く限り君を守ると誓おう。不自由もさせない」
(そんなの信じられない、けど口にすることもできない)
要件が済んだカリタスは距離を取り、再び俺の前に跪いて形式的な誓いを立てる。
事情を知らずに見れば服従を約束しているように思えるが、実際の立場は真逆だ。
「……飼うからには、ちゃんと大切にしてよ」
「飼育する訳ではないが、最大限努力する」
だが性奴隷にされない時点で俺は幸運だし、もう現実を直視しないといけなかった。
異世界で淫魔に貶められ、契約に縋らないと生きれない存在になったということに。
それならば無能な半淫魔を購入した理由にも、納得できる。
扱いやすさを優先した選択であれば、俺は適任だ。
「だからどうか、私の従魔になってくれないか。代わりに身の安全は保障する」
(正直素性が分からないから、即答は避けたい。けど今は、選べる立場でもない)
彼が横暴じゃない事は行動から察せるが、淫魔を購入したという事実が引っ掛かる。
選択肢を提示してくれている時点で、売られた存在には贅沢な悩みなんだろうけど。
(それに後ろ盾のない淫魔が逃げたところで、餌食になるのは分かり切ってる)
仮にカリタスが酷い人だったとしても、外の世界がマシな保証はどこにもない。
であれば交渉の場を与えてくれた彼に、向き合う方が利口な気がしてきた。
「分かった。カリタスの従魔になるよ。けど俺、本当になにも出来ないからね」
「構わない、協力に感謝する。では早速、魔法契約を結んでしまおう」
一瞬安堵したように息を吐いたカリタスは、立ち上がって俺の方へ体を傾けてくる。
そして探るように俺の首を撫で上げてくるが、怖くて椅子に縋りついてしまった。
「な、なにそれ。俺、約束で縛らなくても言うこと聞くよ! 絶対にだよ!」
「違う。所有先を示す事で、君の保護を行うんだ。だから受け入れてくれ」
カリタスは更に椅子の上に身を乗り出し、俺に覆い被さるように距離を縮めてくる。
俺は怯えて目の前の体を突き飛ばそうとするが、彼が動じることはなかった。
そして抵抗することもできないまま、長い指が襟の端を寛げ始める。
「やだ、なんで服を脱がすの!? やめて、俺はそんなことしたくない!」
「乱暴する気はないから落ち着いてくれ! じゃないと君を傷つけることになる!」
彼の指先から性的な意図は感じないが、服に手を掛けられては無抵抗でいられない。
けれど晒される肌の面積が徐々に増えて、混乱から涙が止められなくなる。
(触られて、嫌なのに気持ちいい! こんなの、俺の体じゃない!)
時折長い指が擦れるだけで、自分の喉から信じられないくらい甘い声が漏れ出る。
幸いにしてカリタスは大して反応せず、ずっと首元を触り続けていたけれど。
「君は純粋な淫魔じゃないから、こうしないと負荷が大きくなり過ぎるんだ!」
「うあ、熱い! 苦しい、もう嫌だ……!」
遂に痺れを切らしたのかカリタスは大きな両手で、俺の首を鷲掴みにした。
気道を潰す目的の力加減ではないが、その場所が強く熱を帯び始める。
「……ここまで来たら、一度に済ませた方が楽か」
「ひぅ、っあ」
指に沿って首を一周した熱が留まって、やがて焼けつくような痛みに変わった。
首を絞められている恐怖で、もはや碌に喋る事もできなくなる。
「済まない。これは完全に、私が判断を見誤った」
(首に魔力が集まって、息ができなくなる。溺れて、気が遠くな――)
けれど気を失う直前で熱の流入が治まり、急に呼吸が楽になる。
俺は空気を取り込みながら、脱力して椅子に寄りかかった。
「これで私の魔力痕がついた、不用意に手出しをされることもなくなるはずだ」
(けど、命を握られている感覚がする。逆らったら殺すって、脅かされてる)
熱だと思っていたのは彼の魔力で、俺は所有痕を刻み付けられたらしい。
だがそれは俺自身を深く傷つけて、主従関係を強く意識させてもいた。
「このカリタス、契約が続く限り君を守ると誓おう。不自由もさせない」
(そんなの信じられない、けど口にすることもできない)
要件が済んだカリタスは距離を取り、再び俺の前に跪いて形式的な誓いを立てる。
事情を知らずに見れば服従を約束しているように思えるが、実際の立場は真逆だ。
「……飼うからには、ちゃんと大切にしてよ」
「飼育する訳ではないが、最大限努力する」
だが性奴隷にされない時点で俺は幸運だし、もう現実を直視しないといけなかった。
異世界で淫魔に貶められ、契約に縋らないと生きれない存在になったということに。
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