【完結】売られる為に召喚された後天性サキュバスの俺は、魔物嫌いな溺愛調教師と期限付き契約を交わす

秘喰鳥(性癖:両片思い&すれ違いBL)

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3.売られる為に召喚された後天性サキュバスの俺は、魔物嫌いな溺愛調教師の友人に紹介される

3-2.売られる為に召喚された後天性サキュバスの俺は、魔物嫌いな溺愛調教師の友人に紹介される

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ディコラルタさんに渡された服は洒落ているが、カリタスは完全に着こなしていた。
彼は外見に頓着する性格じゃないが、元が整っているから服に着られる事もない。

「ちょっと派手だけど似合うね、格好いいよカリタス」
「そうなのか。服の良し悪しなど分からないから、他者の意見は参考になる」

褒められたのは満更でもないようで、カリタスは照れながら笑みを浮かべていた。
最近は表情を表に出すよう努力しているのか、以前よりも感情が読みやすい。

そして作業をしながら耳を傾けてたディコラルタさんも、横から話に交じってきた。

「アタシが作ってるのよ、似合うに決まってるわ! でも褒めてくれてありがと!」
「相変わらず自信家だな。しかし自分の店を持つなら、そうでないとダメなのか」

謙遜しない態度にカリタスが呆れ顔だが、気心が知れているのか雰囲気は悪くない。
けれどディコラルタさんの声が一段低くなり、流れが変わったことを暗に察する。

「そ、だから裏の店にも服を出してるんだけどね。でもそれを頼ってきたんでしょ」
「正確には、後天性サキュバスの知識を持っていると見込んでだ」

和気藹々とした空気は線引きされ、本題に入ったのだと理解する。
同時にディコラルタさんが、表側の服飾師ではないことも。

(じゃあこの人、娼館に衣装を卸してたりするのか。難しい立ち位置の人だ)

自分の店を持つという夢には、莫大なお金が必要な事が簡単に想像できる。
そして商品を必要とする場所が、清廉ではない可能性も充分有り得た。

――けど裏側の事情に精通している人こそ、今の俺には必要だった。

「抵抗あるなら、表の店に行った方がいいわよ。アタシが怖い気持ちも分かるし」
「大、丈夫です。ディコラルタさんが直接関わってないのは理解してます」

俺の反応にディコラルタさんは気遣ってくれたが、多少の闇は飲み込むべきだ。
それにカリタスとの関係を見ていると、彼自身が危ないようにも思えない。

「俺からも頼む、あの校医はやる気がなさすぎる。現状はお前が最適解なんだ」
「クピドは本当にダメね。校長兼任なのに、ヴァントスを野放しにしてるし」

そして校医への不信感は二人とも抱いており、共通の心配事として語られている。
ヴァントスの問題も耳にしているようで、重い溜息が耳を通り抜けていった。

「でも頭まで下げられたら、仕方ないわ。いいわよ、できる限り力になってあげる」
「すまない、恩に着る」

根負けした様子で頷いたディコラルタさんに、カリタスは深く感謝を述べている。
俺も続いて頭を下げると、「良い子ね」と髪をくしゃりと撫でられた。

「代わりに、しばらく着せ替え人形になりなさいよ。カリタス」
「……善処する、だが手加減はしてくれ」

そして報酬は着せ替えの権利になるようだが、カリタスは不服そうに了承していた。
けど契約に必要な事だから、彼には大人しく犠牲になってもらうしかない。

「じゃあリベラちゃん、肌を見せてくれるかしら。出血具合が知りたいの」
「いいですけど、もうクピド先生には治療はしてもらいましたよ」

そしてディコラルタさんが俺と目線を合わせながら、触れる許可を求めてくる。
でも手当する程の傷は残っていないから、気にする必要はないと考えるが。

「本当にカリタスの服でいいか最終判断したいの、下手な服は体が拒否しちゃうし」
「私も見繕ったが全滅だった。既にある服は問題なかったが、共通点が分からない」

俺が頷いたのを確認したディコラルタさんは、服を捲って丁寧に触診し始めた。
向き合い方は真面目そのもので、彼の方が校医に相応しいとすら思えてしまう。

けれど次の一言で、俺は委ねていた身を硬直させてしまった。

「本来サキュバスは、肌を隠すこと自体に抵抗感を覚えるの。例外が恋人の着衣」
「こ、恋人!?」

突然出てきた単語に動揺し、俺は椅子ごと後ろにひっくり返りそうになる。
幸い背もたれを掴んだカリタスによって救われたが、動悸は全く収まらない。

「落ち着けリベラ、多分言葉通りの意味じゃない」
「えぇ。サキュバスの恋人は、獲物の言い換えよ」

対して二人は全く動じておらず、冷静に説明し続けている。
どうやら俺が専門用語を誤認しただけらしいが、紛らわしいにも程がある。
だが過敏になってる今は、僅かな疑念にも反応せざるを得なかった。

「おまけに原種は本能に忠実だから、相手を絞り尽くしてしまうのよ」
「俺、カリタスを殺す気なんてない。変なことだってしないよ!」

動揺が収まらない俺は、必死に身の潔白を証明しようと声を上げ続けてしまう。
しかしディコラルタさんの目に疑惑は存在せず、代わりに心配が色づいていた。

「コイツは簡単に殺せやしないし、心配してないわ。後天性は事情が違うしね」
「原種は感情と性欲が直結している。だが後天性は、もっと複雑なのだろう」

後天性サキュバスが完全な淫魔とは違うことを、二人はちゃんと理解していた。
ようやく俺は過剰反応が収まり、今度は恥ずかしくなって身を竦めてしまう。

「リベラちゃん。アナタにとって、カリタスは他の人よりマシよね?」
「うん、この人はすごく優しいよ。俺が応えられてないだけ」

だがディコラルタさんの問いに対しては、躊躇うことなく答えられた。
対してカリタスは予想外だったのか、僅かに口が開いている。

「……少しでも、伝わっていたなら良かった。だから服を受け入れられたのか」
「人間性が強い、後天性サキュバスの大事な特徴よ。覚えておきなさい」

ディコラルタさんに肩を叩かれたカリタスは、少し遅れて嬉しそうに笑った。
その姿を見た俺は、自分の気持ちも案外届いていないものだと自覚する。

「でも良かったわね、カリタス。アンタが思っている程、怖がられてなくて」
「あぁ。信頼は目に見えないから、いつも不安でな」

こんな事で大袈裟なと思うと同時に、心配させる要因は俺の表現不足が大きい。
今後は言葉だけではなく、態度でも信頼を示した方が良いのかもしれない。
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