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3.売られる為に召喚された後天性サキュバスの俺は、魔物嫌いな溺愛調教師の友人に紹介される
3-1.売られる為に召喚された後天性サキュバスの俺は、魔物嫌いな溺愛調教師の友人に紹介される
しおりを挟むカリタスと生活を始めて数日が経過し、不足している生活雑貨が浮き彫りになる。
今後授業に参加することを考えると、特に服装問題は早く解決すべき事柄だった。
「部屋の外に出る為の服を用意した、気になった物から試着してみてくれ」
「だからって洋服掛けを何台も引っ張ってくるのは、やりすぎじゃない?」
先日服の素材が合わずに出血した俺の事を、カリタスは心底気に病んでいた。
結果衣装収集に余念がなくなり、異常な量の服を部屋に持ち込んでいる。
「リベラの体質を考えると試す種類は多い方がいい、むしろ足りるだろうか」
「ごめんね、面倒掛けちゃって。それにお金は大丈夫なの?」
渡された物は見るからに上等な品であり、決して安い買い物ではなかったはずだ。
だがカリタスは大した問題ではないと、軽く首を振って否定する。
「時折警備隊の魔物討伐を手伝っているんだが、割と実入りがいいから問題ない」
(確かにあの強さだと、引く手は数多だろうな。服従魔法も使えるんだし)
俺を襲った魔物を一人で退散させた実績を考えれば、納得のいく稼ぎ方だった。
彼は浪費家じゃないし、魔法で生活してるから多分消費も抑えられている。
(とはいえ俺が自由に使えるお金じゃないから、勘違いしないでおくべきだ)
過分に援助されているのは、あくまで契約履行に必要だから。
俺自身を気に入って、貢いでいる訳では決してない。
だが契約の為だと考えれば、逆に気が楽になっていく。
「気に入った物を購入する仕組みだし、必要経費と報酬の一部だと考えてくれ」
「確かに、この格好じゃ授業に出れないしね。分かった、色々着てみるよ」
もはや部屋の中が服屋のような有様だが、全てに目を通そうと決意する。
それに服選びも契約の内だと考えれば、自然と気持ちが切り替わった。
しかし気持ち悪くなるほど着替えても、体質に適合する服は見つからない。
どれも柔らかい生地が使われているのに、少し経つと痛みが走ってしまう。
(なんかどの服も、肌が受け付けない感じがする。しかも露出度が低い服ほど、っ)
出来る限り肌が出ない服を着たいのに、分厚くてしっかりした物ほど体が拒絶する。
大量にあった服も既に選別され、後は試着している分だけとなってしまった。
「この服も無理そうだな。次の服は、……今ので最後か。他の店にも依頼しよう」
「全部が我慢できないほど痛い訳じゃないし、その中から選ぶよ。大丈夫」
しかし遠慮する俺の反応に、カリタスの方が納得する様子を見せない。
一瞬考え事に頭を沈ませていたが、何か思いついたらしく顔を上げる。
「毎日使用するものは、不満があると嫌になるぞ。そうだ、奴を頼ってみるか」
「校内に頼りになる人がいるの? それともお店関係者?」
でもカリタスが解決手段として他者を絡めてきた事に、俺は内心驚いていた。
今まで他人の気配を感じなかったし、交流を避けているように見えたから。
だが解決策を思いついた彼は、既に出かける準備を始めている。
「同学年に、服飾を嗜んでいる奴がいる。奴なら、状況を打破できるかもしれない」
そして隠すように俺を抱えたカリタスが、人通りの少ない廊下を選んで進んでいく。
やがて武骨な魔物科を抜け、華やかな雰囲気の漂う服飾科に辿り着いた。
「いるか、ディコラルタ。頼みごとがあるんだが」
(大量の布や糸が並べられてる、それに人や魔物の彫像もたくさんある)
空き教室の中は作業所のような乱雑さで、所狭しと物で溢れかえっていた。
奥に人影が一つ佇んでいるが、声に気づくと小走りに近づいてくる。
(ディコラルタ、ってあの人か。でも凄い人だな、黒いメイクと派手な衣装だ)
カリタスに近い長身を持つ細身の男性だが、真っ黒な化粧で顔を彩っていた。
そして表情は驚きに染まっているが、直後に攻撃的な目つきに変化する。
「待って、ウソでしょ!? アンタ本当に後天性サキュバスに手を出したの!?」
「待て、落ち着け、変な噂を真に受けてないか!? 私は性目的で買ったわけじゃ」
女性的な口調で騒ぐ青年に対し、カリタスが慌てて声を上げている。
だが肩を強く掴まれて逃げられず、俺も抱えられたまま一緒に震えあがっていた。
「信じらんない、最低! アンタはそういうことしないと思ってたのに!」
「話を聞いてくれ! 今日はこの子の服を仕立てに来たんだ!」
だがカリタスの言葉に、青年は振り上げていた手を止める。
そして俺を眺め、今度はぶつぶつと何かを呟いていた。
「え、この子、服を着てるじゃない。じゃあアンタを信頼してるってこと? でも」
(本当になんなんだ、この人。カリタスは状況を打破できるかもって言ってたけど)
奇抜な外見にも度肝を抜かれたが、青年の中身はそれ以上に強烈だった。
けど彼が選ばれたということは、それなりの理由もあるはずで。
「……今の言い方だと俺、カリタスの服なら着れるように聞こえますけど」
「後天性サキュバスは特殊なのよ、純粋な人でも淫魔でもないから」
試しに俺が疑問を投げかけてみると、知識に裏付けされた言葉が返ってくる。
そしてようやく落ち着いたのか、快活に笑って挨拶をしてきた。
「あ、自己紹介が遅れたわね。アタシはディコラルタ、服飾師志望の学生よ!」
元は明るい性格なのか、人が変わったように好意的な笑みを浮かべている。
対して解放されたカリタスは、疲れ果てた様子でため息を吐いていた。
「でも事情は大体分かったわ。じゃあカリタス、服を脱ぎなさない」
「やりたいことは分かるが、服に手を掛けるな! 自分で渡すから!」
そして俺を椅子に座らせた後、ディコラルタさんは追い剥ぎを仕掛けていた。
標的にされたカリタスは激しく抵抗しているが、既に半裸に剥かれている。
(あのカリタスが好き勝手されてる、凄い人だ)
普段は大人びた雰囲気を纏っているカリタスだが、今は年相応に幼く見える。
結局上半身の服は奪われ、代わりの衣装が押し付けられていた。
「じゃあアンタは新作着てて。あ、連れの子も待っててね!」
「相変わらず、嵐のような奴だな……」
満足した様子でディコラルタさんは奥へ戻り、ぐったりしたカリタスが戻ってくる。
だが均整の取れた体に目を奪われ、俺は労いの言葉をうまく掛けられなかった。
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