21 / 48
5.売られる為に召喚された後天性サキュバスの俺は、魔物嫌いな溺愛調教師に甘やかされて困惑する
5-2.売られる為に召喚された後天性サキュバスの俺は、魔物嫌いな溺愛調教師に甘やかされて困惑する
しおりを挟む
深い眠りにつく直前のような心地の中で、そっと触れた感触を思い出す。
単純に当たっただけだと思っていたが、当の本人は酷く狼狽えていた。
「性的な意図で行った訳ではない、だから忘れてくれ! どうかしていた!」
カリタスは後ずさったまま壁際まで移動し、釈明しようと声を張り上げている。
けど俺は酷い事をされた訳でもないし、そんなに謝られる理由が分からない。
「もしかして俺のことを愛玩動物だと思ってる? 確かに無力な淫魔だけどさ」
「違う、君は人間だ! ……ただ、無防備な姿が愛らしくて」
責めているつもりは全くないが、カリタスの声は段々と小さくなってしまう。
顔も伏せてしまったから、俺は寝台から降りて彼の元へ向かっていった。
「ずっと警戒してたもんね。でもカリタスは怖い事しないから、気が抜けちゃった」
「……その甘やかな姿、他人には見せないでくれ。奪おうとする輩が増えてしまう」
しゃがみこんで覗き込むと、カリタスは指の隙間から俺を見つめてくる。
だから安心させたくて微笑むと、彼の耳にまで熱を帯びた赤が拡がった。
「カリタスだけだよ、こんなに信頼してるの。それに絶対、守ってくれるでしょ」
「当然だ。……私の手元にいる限り、絶対に守り抜いてみせる」
ようやく顔から手を離したカリタスが、俺の頬を優しく撫でてくれる。
その指に頬を擦り寄せると、悩ましげな溜息が耳をくすぐった。
(だいぶ絆されてくれてる。これならすぐに、捨てられる事はないかな)
カリタスから魔力を受け取るようになってから、俺以上に彼の調子が良くなった。
今は戦闘授業の中間試験真っ最中だが、以前にも増して大暴れしている。
(カリタス、絶好調だな。準備なしの試験なのに、一人で無双してる)
俺はいつも通り上着を被せられ、多人数を相手取る彼の影で戦いを見守っていた。
最初こそ狙われる事もあったが、カリタスの敵意が向くので今では無視されている。
(ヴァントスも新しい魔物を連れて、周囲の被害も構わず暴れてるし。……あ)
意外にも調達された新しい魔物は、拘束具を取りつけられていなかった。
代わりに手綱も完全に離され、手当たり次第に暴れていたが。
「なんで急に、主人の命令聞かなくなんだよ! さっきまで従ってただろうが!」
「服従していたのではなく、矛先が向かなかっただけだ。完全に舐められているぞ」
高見の見物を決め込んでいたヴァントスに、彼の従魔が不意に襲いかかってきた。
間一髪で回避していたが、その爪は地面に大きな亀裂を作っている。
「血統書付きの魔物なんだから、無駄に終わってたまるかよ! 魔道具で拘束し」
(うわ、魔物が拘束具を引き千切った。ヴァントスの顔、真っ青だ)
蠢く黒い布が彼の従魔に襲い掛かるが、魔力を纏った爪で薙ぎ払われた。
拘束具は形を維持できなくなり、床に落ちて踏み躙られる。
そして従魔が主導権を奪おうと、ヴァントスにゆっくりと詰め寄って――。
「退いていろ、ヴァントス。お前では実力不足だ」
乱戦を抜け出したカリタスが、ヴァントスと魔物の間に割り込んだ。
そして借り物の棍を振りまわし、魔物の脳天に一撃を叩き込む。
(震えながら倒れたから、脳震盪を起こしたのかな。うわ、痛そう)
棒状の武器は致命傷こそ与えられないが、意識を刈り取るのには適していた。
授業での借り物だがカリタスは気に入ったようで、見事使いこなしている。
「やはり殴打武器は、殺害目的でない時に便利だな。威力の割に威圧感もない」
「……礼は言わねぇぞ、頼んでないからな」
上機嫌なカリタスに対し、ヴァントスは不貞腐れたように顔を背けている。
だが言葉の応酬にはならず、代わりにヴァントスの体が床に沈んだ。
「試験の達成条件だから不要だ、それはお前もだが」
「は、……痛ぇ!」
カリタスによって振り回されていた棍が、ヴァントスの後頭部に直撃する。
そして教室全体に、彼の支配的な魔力が満ち溢れた。
「《敗者と認める者はひれ伏せ、戦いたい者だけ立ち上がれ》」
服従魔法が生徒たちに襲い掛かり、次々と地面に這いつくばっていく。
ヴァントスだけ物理要因だが、結局全員が床に膝をついていた。
「今回の勝者はカリタス、それ以外の生徒は補習だ。後ほど詳細を説明する」
「先生、納得できません! 他の組に比べて、試験の難易度が高すぎます!」
だが教師が戦闘終了の鐘を打ち鳴らすと、即座に生徒から文句が噴出する。
しかし教師は淡々と、その不満を切り捨てていった。
「だからこそ、魔物を含めた全員での襲撃を認めたんだ。それで納得しただろう」
単純に当たっただけだと思っていたが、当の本人は酷く狼狽えていた。
「性的な意図で行った訳ではない、だから忘れてくれ! どうかしていた!」
カリタスは後ずさったまま壁際まで移動し、釈明しようと声を張り上げている。
けど俺は酷い事をされた訳でもないし、そんなに謝られる理由が分からない。
「もしかして俺のことを愛玩動物だと思ってる? 確かに無力な淫魔だけどさ」
「違う、君は人間だ! ……ただ、無防備な姿が愛らしくて」
責めているつもりは全くないが、カリタスの声は段々と小さくなってしまう。
顔も伏せてしまったから、俺は寝台から降りて彼の元へ向かっていった。
「ずっと警戒してたもんね。でもカリタスは怖い事しないから、気が抜けちゃった」
「……その甘やかな姿、他人には見せないでくれ。奪おうとする輩が増えてしまう」
しゃがみこんで覗き込むと、カリタスは指の隙間から俺を見つめてくる。
だから安心させたくて微笑むと、彼の耳にまで熱を帯びた赤が拡がった。
「カリタスだけだよ、こんなに信頼してるの。それに絶対、守ってくれるでしょ」
「当然だ。……私の手元にいる限り、絶対に守り抜いてみせる」
ようやく顔から手を離したカリタスが、俺の頬を優しく撫でてくれる。
その指に頬を擦り寄せると、悩ましげな溜息が耳をくすぐった。
(だいぶ絆されてくれてる。これならすぐに、捨てられる事はないかな)
カリタスから魔力を受け取るようになってから、俺以上に彼の調子が良くなった。
今は戦闘授業の中間試験真っ最中だが、以前にも増して大暴れしている。
(カリタス、絶好調だな。準備なしの試験なのに、一人で無双してる)
俺はいつも通り上着を被せられ、多人数を相手取る彼の影で戦いを見守っていた。
最初こそ狙われる事もあったが、カリタスの敵意が向くので今では無視されている。
(ヴァントスも新しい魔物を連れて、周囲の被害も構わず暴れてるし。……あ)
意外にも調達された新しい魔物は、拘束具を取りつけられていなかった。
代わりに手綱も完全に離され、手当たり次第に暴れていたが。
「なんで急に、主人の命令聞かなくなんだよ! さっきまで従ってただろうが!」
「服従していたのではなく、矛先が向かなかっただけだ。完全に舐められているぞ」
高見の見物を決め込んでいたヴァントスに、彼の従魔が不意に襲いかかってきた。
間一髪で回避していたが、その爪は地面に大きな亀裂を作っている。
「血統書付きの魔物なんだから、無駄に終わってたまるかよ! 魔道具で拘束し」
(うわ、魔物が拘束具を引き千切った。ヴァントスの顔、真っ青だ)
蠢く黒い布が彼の従魔に襲い掛かるが、魔力を纏った爪で薙ぎ払われた。
拘束具は形を維持できなくなり、床に落ちて踏み躙られる。
そして従魔が主導権を奪おうと、ヴァントスにゆっくりと詰め寄って――。
「退いていろ、ヴァントス。お前では実力不足だ」
乱戦を抜け出したカリタスが、ヴァントスと魔物の間に割り込んだ。
そして借り物の棍を振りまわし、魔物の脳天に一撃を叩き込む。
(震えながら倒れたから、脳震盪を起こしたのかな。うわ、痛そう)
棒状の武器は致命傷こそ与えられないが、意識を刈り取るのには適していた。
授業での借り物だがカリタスは気に入ったようで、見事使いこなしている。
「やはり殴打武器は、殺害目的でない時に便利だな。威力の割に威圧感もない」
「……礼は言わねぇぞ、頼んでないからな」
上機嫌なカリタスに対し、ヴァントスは不貞腐れたように顔を背けている。
だが言葉の応酬にはならず、代わりにヴァントスの体が床に沈んだ。
「試験の達成条件だから不要だ、それはお前もだが」
「は、……痛ぇ!」
カリタスによって振り回されていた棍が、ヴァントスの後頭部に直撃する。
そして教室全体に、彼の支配的な魔力が満ち溢れた。
「《敗者と認める者はひれ伏せ、戦いたい者だけ立ち上がれ》」
服従魔法が生徒たちに襲い掛かり、次々と地面に這いつくばっていく。
ヴァントスだけ物理要因だが、結局全員が床に膝をついていた。
「今回の勝者はカリタス、それ以外の生徒は補習だ。後ほど詳細を説明する」
「先生、納得できません! 他の組に比べて、試験の難易度が高すぎます!」
だが教師が戦闘終了の鐘を打ち鳴らすと、即座に生徒から文句が噴出する。
しかし教師は淡々と、その不満を切り捨てていった。
「だからこそ、魔物を含めた全員での襲撃を認めたんだ。それで納得しただろう」
11
あなたにおすすめの小説
番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か
雪兎
BL
第二性が存在する世界。
Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。
しかし入学初日、彼の前に現れたのは――
幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。
成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。
だが湊だけが知っている。
彼が異常なほど執着深いことを。
「大丈夫、全部管理してあげる」
「君が困らないようにしてるだけだよ」
座席、時間割、交友関係、体調管理。
いつの間にか整えられていく環境。
逃げ場のない距離。
番を拒みたいΩと、手放す気のないα。
これは保護か、それとも束縛か。
閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。
虚ろな檻と翡翠の魔石
篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」
不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。
待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。
しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。
「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」
記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。
呪われた辺境伯は、異世界転生者を手放さない
波崎 亨璃
BL
ーーー呪われた辺境伯に捕まったのは、俺の方だった。
異世界に迷い込んだ駆真は「呪われた辺境伯」と呼ばれるレオニスの領地に落ちてしまう。
強すぎる魔力のせいで、人を近づけることができないレオニス。
彼に触れれば衰弱し、最悪の場合、命を落とす。
しかしカルマだけはなぜかその影響を一切受けなかった。その事実に気づいたレオニスは次第にカルマを手放さなくなっていく。
「俺に触れられるのは、お前だけだ」
呪いよりも重い執着と孤独から始まる、救済BL。
となります。
僕の恋人は、超イケメン!!
八乙女 忍
BL
僕は、普通の高校2年生。そんな僕にある日恋人ができた!それは超イケメンのモテモテ男子、あまりにもモテるため女の子に嫌気をさして、偽者の恋人同士になってほしいとお願いされる。最初は、嘘から始まった恋人ごっこがだんだん本気になっていく。お互いに本気になっていくが・・・二人とも、どうすれば良いのかわからない。この後、僕たちはどうなって行くのかな?
【新版】転生悪役モブは溺愛されんでいいので死にたくない!
煮卵
BL
ゲーム会社に勤めていた俺はゲームの世界の『婚約破棄』イベントの混乱で殺されてしまうモブに転生した。
処刑の原因となる婚約破棄を避けるべく王子に友人として接近。
なんか数ヶ月おきに繰り返される「恋人や出会いのためのお祭り」をできる限り第二皇子と過ごし、
婚約破棄の原因となる主人公と出会うきっかけを徹底的に排除する。
最近では監視をつけるまでもなくいつも一緒にいたいと言い出すようになった・・・
やんごとなき血筋のハンサムな王子様を淑女たちから遠ざけ男の俺とばかり過ごすように
仕向けるのはちょっと申し訳ない気もしたが、俺の運命のためだ。仕方あるまい。
クレバーな立ち振る舞いにより、俺の死亡フラグは完全に回避された・・・
と思ったら、婚約の儀の当日、「私には思い人がいるのです」
と言いやがる!一体誰だ!?
その日の夜、俺はゲームの告白イベントがある薔薇園に呼び出されて・・・
ーーーーーーーー
この作品は以前投稿した「転生悪役モブは溺愛されんで良いので死にたくない!」に
加筆修正を加えたものです。
リュシアンの転生前の設定や主人公二人の出会いのシーンを追加し、
あまり描けていなかったキャラクターのシーンを追加しています。
展開が少し変わっていますので新しい小説として投稿しています。
続編出ました
転生悪役令嬢は溺愛されんでいいので推しカプを見守りたい! https://www.alphapolis.co.jp/novel/687110240/826989668
ーーーー
校正・文体の調整に生成AIを利用しています。
短編版【けもみみ番外編】卒業の朝〜政略結婚するつもりで別れを告げた宰相子息ユリウスは黒豹エドワードの策略に嵌る〜
降魔 鬼灯
BL
銀の髪が美しい銀狼獣人ユリウスは宰相家の一人息子だ。
留学中、同室になった黒豹獣人のエドワードと深い仲になる。
子供の頃からエドワードに想いを寄せていたが、自国では同性の婚姻は認められていない。しかも、文官トップの宰相家と武官トップの騎士団長家の仲は険悪だ。
エドワードとは身体だけの関係。そう言い聞かせて、一人息子のユリウスは、帰国を期にエドワードと別れ政略結婚をする決心をする。
一方、エドワードは……。
けもみみ番外編
クロードとアンドレアに振り回される学友2人のお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる