【完結】売られる為に召喚された後天性サキュバスの俺は、魔物嫌いな溺愛調教師と期限付き契約を交わす

秘喰鳥(性癖:両片思い&すれ違いBL)

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7.売られる為に召喚された後天性サキュバスの俺は、魔物嫌いな溺愛調教師のせいで情緒不安定に陥る

7-5.売られる為に召喚された後天性サキュバスの俺は、魔物嫌いな溺愛調教師のせいで情緒不安定に陥る

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度重なる襲撃を重く見たカリタスは、俺を授業に連れ出さなくなった。
一緒にいる時は大事に扱われているが、離れている時間はどうしても長くなる。

しかしこの状況は、俺にとって好都合でもあった。

(一人の時間で、俺は隠れて調べ物ができる。今までは踏ん切りつかなかったけど)

卒業まではカリタスが守ってくれるからと、心の奥底ではずっと後回しにしていた。
けれど世界は容赦なく、俺達を陥れようとしてくるから。

(強い魔物になる為の情報は、ずっと考えている。けど有効な一手が思いつかない)

祝祭で身体が変化してから、俺は後天性サキュバスが魔物に変化できる事を知った。
自分の意思では制御できない、防御本能による副産物ではあったけど。

(後天性サキュバスの体は虚弱だし、研究も進んでない。でも諦めたくない)

魔物になれる下地はあるし、薬学科なら変化薬なども校内で販売している。
問題はこの不安定な体が、強い副作用に耐えられるかどうかだけど。

(カリタスは魔物嫌いだし、助けは求められない。というか変化したら離れないと)

彼の従魔として側にいるなら、俺は弱いままでいる必要があった。
それが暗黙の契約条件だったが、実は遵守する必要もなくなっている。

(試験が終わって、卒業資格は揃ったも同然。俺は既に用済みなんだ)

ただ契約期間が終わっていないから、俺は約束通り守られているだけ。
こっちから破棄する分には、もうカリタスに迷惑は掛からない。

……そんな言い訳が頭を占めていたが、扉を叩く音が聞こえて我に返った。

「カリタス様、いらっしゃいます? あ、扉は開けなくて大丈夫ですよ」
(アルランネさんだ、俺も謝らないとな)

騒動後はカリタスに軟禁され、喫茶店の人とは話す機会が全く作れなかった。
既に主人から謝罪は済んでいる気はするが、元凶が謝罪なしは有り得ない。

「俺ならいるけど、伝言ある? あと何度もお店に迷惑掛けて本当にごめんなさい」
「お、リベラ様がいらっしゃいましたか。お気になさらず、悪いのは誘拐犯ですよ」

愛想と商魂に溢れたアルランネさんは、俺達が気に病む必要などないと軽く返す。
だが乱闘騒ぎで個室庭園が破損し、野次馬の対応にも追われていただろうに。

「それより保護魔術を施した庭園を作りましたので、お二人でご来店くださいね!」
「カリタスには、伝えておくよ。……そうだ、聞きたいことがあるんだけど良い?」

結局出資者のカリタスに良く伝えることが、彼らにとって一番の補償になるだろう。
ただ俺はもう行けないだろうから、これが彼との最後の会話になるかもしれない。

そう考えると、逆に薬学生である彼に聞いておきたいことが湧いてきた。

「私で分かることでしたら、遠慮なく。魔物化を治癒する薬は扱っていませんが」
「違う。薬学科に所属してるなら、変化薬に詳しいんじゃないかと思って」

彼らは治療薬を主に学んでいるが、特殊効果を促す品も履修しているはずだ。
だが薬自体は存在しても、俺の方が客として不十分であることを忘れていた。

「……取り扱いはありますが、カリタス様の許可がないとお教え出来かねます」
「まぁ、そうだよね。変なこと聞いてごめん、今度お店に行かせてもらうね」

俺は飼われている魔物の立場だから、意思決定には主人の許可が必要だった。
だが今までカリタスに甘やかされ過ぎて、当然の制約が頭から抜け落ちている。

「力になれず申し訳ありませんが、今後ともご贔屓に。本当にお待ちしていますよ」

彼も危ない橋は避けたいのだろう、愛想はそのままに丁重な断りを挟んでくる。
そしてお土産のお菓子を扉に掛けた後、彼は足早に部屋から離れていった。

(これは仕方ない。というか強化薬、俺じゃ手が出ないくらい高いんだった)

カリタスに依存するつもりはなかったのに、既に金銭感覚すら狂っていた。
不自由なく与えられ続けた結果、まともな思考すら保てなくなっている。

(でも戦えない魔物が、金銭を得るのは難しい。性を売るのは本末転倒だし)

けどカリタスを介さない交流先を持っていないから、碌な仕事先も思いつかない。
今の体たらくを考えれば、すぐにでも行動を起こさないといけないのに。

……そして何も策が打てないまま、部屋の主が帰還してしまう。

(カリタス、部屋に帰ってきた。でも話し声が聞こえる、誰かと一緒にいるのかな)

そういえば今日は帰宅時間が遅く、部屋に来訪したアルランネさんも空振っていた。
だが扉に耳をつけると、俺が知らない相手に絡まれているのが聞こえてくる。

「頼むよカリタス! 君のサキュバスの魔力を、ほんの少し譲ってほしいんだ!」
「却下だ。魅了の力があるものを、簡単に譲り渡すことはできない」

相手は同級生のようだが、何かしらの依頼を突っぱねられているらしい。
彼は相手にされず、最終的に鼻先で扉を閉められてしまっていた。

「おかえり、カリタス。あと後天性サキュバスの魔力って、そんなに需要あるの?」
「ただいま、リベラ。惚れ薬が主だが、最近は酒に混ぜて楽しむ用途があるらしい」

お土産を抱えて帰ってきたカリタスは、もう片方の腕で俺を抱き上げる。
そのまま椅子に座り、ため息を吐きながら俺の肩に顔を埋めてきた。

「へぇ、そうなんだ。でも学生だとお酒は飲めないでしょ、醸造所に流すとか?」
「いや、校内の奥深くに闇市がある。そこの不良生徒が買い求めているそうだ」

慣れない対人関係の疲れを吐き出したいカリタスは、いつもより饒舌に語り出す。
だが俺には重要な情報源だから、違和感がない範囲で話に集中していた。

(よし、需要を見つけた。また一人になったら、こっそり見に行ってみよう)

 ディコラルタさんが姿隠しの上着を作ってくれたから、今は一人でも出歩ける。
後は機会を見極めながら、慎重に行動すれば問題ないはずだ。
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