【完結】売られる為に召喚された後天性サキュバスの俺は、魔物嫌いな溺愛調教師と期限付き契約を交わす

秘喰鳥(性癖:両片思い&すれ違いBL)

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7.売られる為に召喚された後天性サキュバスの俺は、魔物嫌いな溺愛調教師のせいで情緒不安定に陥る

7-6.売られる為に召喚された後天性サキュバスの俺は、魔物嫌いな溺愛調教師のせいで情緒不安定に陥る

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カリタスの授業が連続する日を狙い、俺は学校の奥深くにある闇市場へ潜り込んだ。
二度と見たくなかった競売場の側を抜け、顔を隠しながら足を進める。

(校内に、こんな薄暗い店があったんだ。怪しい魔法道具も並んでる)

ここでは効能が規定以上に高かったり、未認可の違法品が平然と売られていた。
故に求める人たちも顔を隠し、俺が紛れ込んでも気に留める人はいない。

(いや、興味引かれてる場合じゃない。さっさと魔力売って、部屋に戻らないと)

でも危険な場所なのは確かだが、今の俺には魅力的に映る物も多く存在する。
眺めている時間はないから、足早に薬探しへ戻ろうとするけれど。

「テメェ、こんなところで何してやがる。本当にカリタスに捨てられたのか」
(うわ、ヴァントス! そっか、普段はこういう場所にいるのか)

姿隠しの衣装も完全ではないから、ある程度の関わりがあれば特定されてしまう。
カリタスやディコラルタさんはいないと思っていたが、彼の事は失念していた。 

だがヴァントスが掴みかかってくることはなく、気怠げに俺の側へ寄ってきた。

「裏側にいると、タチ悪ィのに喰われんぞ。それとも用事でもあんのか?」
「……いやに親切だね。そっちこそ、なに考えてるの」

商品だった俺には感情などないだろうが、彼はカリタスに強い敵意を持っている。
その従魔になら、捕らえて嫌がらせくらいはしてきそうなものだったが。 

「カリタスが絡んでなきゃ、雑魚に興味ないだけだ。それともまた売られてぇのか」
「違う。やる事が終わったら、さっさと帰るよ」

気まぐれで話しかけてきただけなら、互いに時間の無駄だからと立ち去ろうとする。
だがすれ違い様に足で通り道を塞がれ、暗い好奇心に満ちた目で見下ろされた。 

「こんな場所に、マジで用があんのかよ。気が変わった、面倒見てやる」
「なにを企んでるの。元々一人で来たんだから、手伝いなんか必要ない」

彼の性格から裏があるのは明白で、警戒した俺は距離を取ろうとする。
しかし土地勘もない場所だから、どこに逃げていいかも分からない。 

「お前が足向けてる先、薬物中毒の魔物が徘徊してんぞ。そこが目的地なのか」
「……魔物の素材を扱ってる、お店を教えてほしい。お金が必要なんだ」

最悪だがこの場所で一番頼れるのは、目の前でにやついているヴァントスだった。
彼の目的が分からない以上、素直に頼るのは賭けだったけど。 

「サキュバスの魔力か、最近脱法酒が流行ってるからな。来い、案内してやる」

俺が承諾した瞬間、ヴァントスが闇市場を先導するように歩き出す。
間違いなくただの親切ではないが、今は彼に縋るのが最善でもあった。 



並んで歩いていても仲が良い訳じゃないから、会話が全く弾まない。
代わりに普段は有り得ない距離感だから、姿が間近で眺められた。

(ヴァントス、全身傷だらけだ。近づいてみて、初めて気づいたけど)

長い髪に隠された青白い肌の隙間から、全身を覆う程の傷跡が見え隠れしている。
血が残る真新しい物もあるが、それ以上に深く抉れたままの痕が気になった。

「なに見てんだ、クソガキ。見せモンじゃねえぞ」
「違うよ、その傷で良く生きてるなって」

俺の視線に気づいていたヴァントスが、舌打ちしながら睨みつけてくる。
だが皮膚まで奪い去った裂け目を見ると、致命傷に思えて仕方がない。

「ガキの頃に反抗して、鞭で叩かれた痕だ。死んでも残るんだよ、こういうのは」

不躾に眺めた事を怒るかと思ったが、ヴァントスは遠い目で傷を撫でるだけだった。
だがそこから感情を読み取る事は出来ず、やはり会話も続く事はなかった。



ヴァントスが訪れたのは質屋等ではなく、違法酒を自作する酒場だった。
教室の一つを占領したそこは、酩酊した生徒で溢れ返っている。 

(本当に売れた、それも高額で。俺だけじゃ、足元見られたんだろうけど)

勘定台で金貨が入った袋を、俺は現実感がないまま受け取っている。
魔力は二つ返事で購入され、魔法酒の材料として引き取られていった。

「しかしヴァントス、お前に連れがいるなんて珍しいな。遂に相棒を作ったのか」
「まさか、ただ興味あることが出てきたからな。ちょっと泳がせることにした」

ヴァントスは交渉を眺めながら酒を煽り、邪魔が入らないよう睨みを効かせている。
おかげで俺はお金を手に入れられたが、分け前の要求すらないのが気味悪い。

だが今は、贅沢に相手を選べる立場じゃなかった。

「で、テメェはその金を何に使うんだ。カリタスへの贈り物とかじゃないだろ」
「まだ考え中。強化薬とか欲しいんだけど、耐えられるか分かんないし」

ヴァントスの興が乗っているうちに、俺はできる限り情報を引き出そうと試みる。
その為にはこっち側の情報開示も必須だから、慎重に言葉を選んでいくが。

「なら体液摂取のが相性いいだろ。直接ヤるのが一番だが、飲精でも「絶対嫌だ! 血液とかじゃダメなの!?」」

しかし大切に保護されて生きてきた俺は、許容範囲があまりにも狭かった。
この期に及んで、まだ身を代償にする決意ができていない。

(何度も覚悟したけど、直前で折れてしまう。それが当然だとは思うけど)

普通の人間として生きる夢を、まだ俺は捨てられていなかった。
それに振り回される周囲が、溜まったものじゃないのも理解してるけど。

「……まぁ今のテメェじゃ精神的にも、それが限界だろうな。あとうるせぇ」
「でも魔物の血液なら、ここに売ってるかな。あれ変化薬の原料でしょ」

幸い企みを抱えたヴァントスなら、利用するのに罪悪感を感じずに済む。
それに彼が持つ裏側の知識は、表の立場じゃ手に入らないから。

「勝手に走りまわんなクソガキィ! 自分の種族分かってんのか!?」
「早く帰らないと、カリタスが戻ってきちゃうんだよ! 急がないと!」

俺は金貨袋を握り締め、闇市場に向かおうと椅子から飛び降りる。
それを見たヴァントスは慌てて酒を煽り、俺の後を追ってきた。

「それにヴァントスだって、俺のこと気になるんでしょ」
「言うじゃねえか、メスガキ」

振り返り様に挑発すると、彼は食いつく振りで返してくる。
多分水面下では、俺を餌にする機会を窺っているのだろうけど。

(今はそれでいい、俺に興味がある内は利用することが出来るから)

ヴァントスの気が変わらないうちに、俺は目的地へ駆け込んでいく。
残された時間はあと僅かで、多少の危険は呑み込まないといけない。

けれどうまくいけば、状況を逆転出来る可能性も充分にあった。

(そして今度は俺が、狩る側になるんだ。そうすれば、もう怯えずに済む)

可能なら、交渉自体を踏み倒せるような強大な存在になりたい。
あの日競売場で、全てに跪かせたカリタスのように。

(そうなれたら、カリタスには絶対に嫌われる。でも一緒にはいられないんだから)

カリタスは既に卒業資格を得たし、俺も力を手に入れれば互いの願いが成就する。
そうすれば契約期間終了を待たずに離れたって、後腐れもないはずだった。
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