【完結】売られる為に召喚された後天性サキュバスの俺は、魔物嫌いな溺愛調教師と期限付き契約を交わす

秘喰鳥(性癖:両片思い&すれ違いBL)

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9.売られる為に召喚された後天性サキュバスの俺は、魔物嫌いな溺愛調教師と永遠の契約を交わす

9-2.売られる為に召喚された後天性サキュバスの俺は、魔物嫌いな溺愛調教師と永遠の契約を交わす

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「正体がバレないように、ずっと認識阻害の仮面をしてたからね。やっと取れるよ」
「今更、なにが目的だ。貴族の館で俺を騙しやがって、無力を装いやがってよ!」

まだ青かった俺は、貴族の館に囚われていた魔物を守っていた時期があった。
特に美しく無力な天使の幼体は、貴族共に抗う俺に心底懐いていたが。

「僕自身に、戦う力は全くないよ。でも魔物達に、貴族の壊滅を願われたから」
「……なるほど。天使は、神に他者への願いを叶えさせる力があんだったな」

希少種の天使は数が少なく、人間には存在すら疑われている魔物だった。
だが神の末端である奴らは、最も高い潜在能力を秘めている。

「そう。後は貴族達に支配されていたカリタスを解放して、家門を崩壊させたんだ」
「で、役目を終えた天使サマがなんでまだいるんだよ。神の元へ帰れよ」

だが貴族に捕まっていた時とは違い、既に成体となったコイツに保護は必要ない。
今更俺に擦り寄ってくる理由が分からず、背筋に薄ら寒いものを感じている。

そして直感は正しく、クピドは儚げな笑顔を湛えながら顔をすり寄せてきた。

「やだなぁ、お兄様が壊したんじゃん。僕は神の道具で、碌な自我もなかったのに」
「なに気色悪いこと言ってんだ、テメェ。……まさか」

今でも不愛想を通り越した冷徹なツラが、緩やかに綻んでいった日々を覚えている。
だが天使は人の形をしているだけで、本来感情など持たないことに今更気づいた。

「血も繋がってないのに、あの館で守ってくれた。だから僕は恋しちゃったんだ」
(コイツ、ブッ壊れてやがる! 天使の形をした、別の何かに成り果ててやがる!)

クピドの瞳は恋を覚えた女のように輝き、だがそれだけではない光を帯びていた。
俺は怖気を感じて必死に身を捩るが、拘束具が軋むだけで自由は手に入らない。

「それで弱ったオレを、競売場で競り落としたってことか! ナメんじゃねぇぞ!」
「勘違いしないで。そんな簡単に、お兄様を手に入れたんじゃない」

クピドは俺の手を取って恍惚と頬擦るが、目が尋常ではない熱を帯びている。
天使らしい純真さは消え失せ、代わりに人間のような狂気が渦巻いていた。

「元々学校を作ったのだって、お兄様が服従魔法を学びにくるって考えたからだよ」
(この場所自体が、罠ってことか。じゃあカリタスを特待生として招き入れたのも)

偶然だと思っていた全てが、天使による手引きだったと思い知らされる。
そして神の権能を濫用した結果、コイツは執着深い悪魔に変質していた。

「魔法は使えても、僕自体は虚弱だからね。監視役として契約していたんだ」
(全部、コイツの手の中だったってことか。つか奥にいるの、貴族共じゃねぇか)

視線を逸らすとクピドの後ろに、複数の老人が並んでいることに気付いた。
だが目に生気はなく、明らかに正常な意識を奪われている。

「うるさい人間は、みんな傀儡にしたよ。いつも隠れてるから、誰も気づかない」
(コイツ、想像以上にヤバい奴だ。小せぇ時の記憶しかねぇから舐めてたが)

クピドは警戒する俺に構わず、指同士を絡めて愛おしげに弄っていた。
教師の面も既に脱ぎ捨て、悍ましい本性が露わになっていく。

「だから二人で帰って、昔みたいに暮らそうね。学校はお付きの人、っていうか魔法執行官が引き取るし」

クピドの背後には白い法衣を着た教師が並び、俺達の会話を監視している。
恐らくコイツらはクピドの手先であり、看守でもあったのだろう。

(もう俺に拒否権はねぇ。しかもコイツの倫理観は、人とも魔物とも違う)

神の手から逃れた天使は、道徳心が未熟なまま成長を遂げてしまった。
だが天上の権能すら振り翳せる今、止められる者は存在しない。

「でも今度は、僕がお兄ちゃん! 飼うからには、ずっと大切にしてあげるね!」



【Side リベラ】

ディコラルタさんが俺の身嗜みを整え終えても、カリタスは戻ってこなかった。
なので合流を諦め、一人で待ち合わせ場所の喫茶店に向かおうとする。

しかしその道中で目が覚めるような美貌の集団を目撃し、納得してしまった。

(カリタス、また魔物たちに群がられてる。でも卒業するし、最後の機会なのか)

カリタスを囲んだ魔物達は花束や記念品を片手に、何度も別れを惜しんでいた。
だが涙ぐんでいる者は一人もおらず、誰も諦めていない様子が窺える。

(けどもう、俺だって譲れない。だって、カリタスが好きなんだから)

以前なら気後れして身を引いていたが、その方が傷つく事をもう知っている。
だから俺は一瞬だけ息を整えてから、意を決して集団の中に割り込んだ。
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