【完結】売られる為に召喚された後天性サキュバスの俺は、魔物嫌いな溺愛調教師と期限付き契約を交わす

秘喰鳥(性癖:両片思い&すれ違いBL)

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9.売られる為に召喚された後天性サキュバスの俺は、魔物嫌いな溺愛調教師と永遠の契約を交わす

9-3.売られる為に召喚された後天性サキュバスの俺は、魔物嫌いな溺愛調教師と永遠の契約を交わす

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「悪いが、君たちに応える気はない。だから道を開けてくれ、待ち人がいるんだ」
「ずっと想ってる、私の気持ちも汲んでくださいな。一度くらい、お相手を」

背が小さい俺は彼らの視界に入らず、まだ存在にすら気づかれてすらいない。
だから細い足の隙間を通り抜けて、なんとかカリタスの元へと辿り着いた。

「カリタス、迎えに来たよ。全然来ないから、様子見に来た」

群がる魔物には言及せず、カリタスの裾を掴んで視線を奪う。
すると彼は分かりやすく微笑み、俺の頭を撫でてくれた。

(でも周囲の目が殺意に満ちてる、後天性如きに掻っ攫われたら腹立つだろうけど)

嫉妬に染まっても魔物達は艶やかだが、俺よりも濃密な甘い魔力を纏っていた。
それでありながらも理性を保てる存在は、先天性サキュバスに他ならない。 

(でも隣に居続けたのは、俺だ。だから負い目は感じない、怖くはあるけど)

より原種に近い淫魔達は、期限切れを目前に手段を選ばない行動に出ている。
周囲の迷惑も構わずフェロモンを振りまき、そこに攻撃性も潜ませていた。 

「後天性さん、カリタス様はもう卒業したのよ。貴方はもう、役目を終えたの」
(サキュバスたちが、魔力で威圧してくる。気持ち悪い、自立していられない)

後天性より魔物に近い体質だから、先天性が操る魔力は数段階強力に発揮される。
だが自身も影響を受けながらも介入しようとするカリタスを、俺は制止した。 

「いい加減、本来の場所に戻りなさない。半端な淫売に相応しい、風俗店にね」
(俺には、応戦できる程の魔力はない。……でも、それでいいんだ)

誰にも反撃されない魔物は、場を掌握したと勘違いして更に増長していく。
だが他者の気を狂わせる程の魔力汚染こそが、俺の狙いだった。 

「先天性サキュバスを感知した、討伐に移行せよ! 絶対に潜伏させるな!」
(やっぱり、まだ警備隊が近くに残っていた)

逃げ出す野次馬とすれ違いながら、武装した魔法執行官が血眼で駆けつけてくる。
当然だ、だって先天性サキュバスは最優先の討伐対象に指定されている。

(古くから人の姿で紛れ込み、家門を食い荒らす魔物。クピド先生が言っていた話)

原種とは違い先天性は理性を持っているが、その分だけ悪知恵も良く働く。
正体を申告すれば保護されるが、それを嫌う者は裏の世界で生きるしかない。

(この先天性も、普通に指名手配犯なんだよな。人間には区別つかないけど)

貴族が手掛けた魔物の中で、先天性サキュバスの完成度は極めて高い。
故に制御されたフェロモンは、近似種以上でなければ嗅ぎ取れなかった。

(誤認討伐が枷だったけど、化けの皮が剥がれれば魔法執行官の独壇場だ)

苛烈な誘惑の痕跡は簡単には消せず、先天性サキュバスが次々と捕縛される。
対策を整えた部隊に色仕掛けは効かず、抵抗虚しく取り押さえられていくが。

「なんで私達ばっかり! 先天性だって、作られた被害者なのに!」
(最後の悪足掻きで、俺を狙ってきた。魔道具か!)

先天性は露出した胸の谷間から、小さな宝石を零れ落とす。
それは矢を模して俺の心臓を狙うが、直前でカリタスに掴み潰された。

「《私のリベラに、手を出したな》」

戦闘授業で単騎無双するカリタスに、奇襲でも先天性サキュバスが適う訳がない。
途端に誘惑フェロモンが、燃えるような魔力に塗り替えられていく。

「私に絡むだけなら、許容しようと考えていた。だが今の行動は、看過できない」

先天性サキュバスは怯えて腰を抜かし、射抜かれたように動けなくなる。
だが口元には笑みが残り、その目は輝く地面を睨んでいた。

――そして宝石の魔道具は、遅効性で発動する。

(破壊されることが前提の、誘惑魔術だ! 壊したと思ったから、油断した!)

砕けて砂になった宝石が魔法陣を描き、誘惑フェロモンで構成された檻を作り出す。
即座には突き飛ばされた俺は無事だが、逃げ遅れたカリタスが囚われてしまう。

(カリタスが魅了された、先天性サキュバスに操られる!)

桃色の檻は瞬時に破壊されたが、彼の瞳は濁った熱に浮かされていた。
鎮圧の中で落とされた剣を拾い、俺達に切っ先を振り翳すが。

「よそ見しないでよ、カリタス」

正気を失ったが故に彼の動きは鈍く、俺は剣の隙間を抜けて勢いよく抱きついた。
そして無意識の内に抱き上げられたので、肩に手を置いてその額に口づける。

「リベラ、今、何を……っ!?」
(カリタスって案外初心だから、額にキスしただけでも驚いてくれるよね。可愛い)

我に返ったカリタスが顔を赤く染め、先天性サキュバスの敗北が確定する。
彼を傀儡にしようと目論んだのだろうが、待っていたのは罪状の上塗りだけだ。

「違う、アタシ達じゃない! あの後天性サキュバスの仕業だ!」
「彼の誘惑フェロモンには合致しない。彼は管理保護時に、記録を提出している」

罪の擦り付けにも失敗し、先天性サキュバスたちは今度こそ連行されていく。
俺は以前にも同じ目に遭っているから、対応策は相談済だった。

(これで俺達に群がる奴も減るかな。って、アルランネさんが来てるじゃん)

そして事態が終息すると、魔法執行官の一人が小走りで近づいてくる。
後ろには喫茶店の青年がいて、どうやら迎えに来てくれたらしい。

「大事な話があるんだろう、行ってきなさいカリタス。ここは任せて大丈夫だから」
「は、はい。ありがとうございます、先輩方」

案内を終えた魔法執行官に一礼し、カリタスは俺を抱え直して喫茶店へ歩き出す。
真面目で実力のある彼は、既に最年少として可愛がられているらしい。

(無理してないか心配だったけど、杞憂かな。良かった)

卒業後は隠居すると聞いていたから、組織に所蔵すると聞いた時は驚いた。
だが年上達に構われているのを見ると、心配など不要だったようだ。
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