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9.売られる為に召喚された後天性サキュバスの俺は、魔物嫌いな溺愛調教師と永遠の契約を交わす
9-4.売られる為に召喚された後天性サキュバスの俺は、魔物嫌いな溺愛調教師と永遠の契約を交わす
しおりを挟むカリタスの背中を叩く魔法執行官に見送られながら、俺達は喫茶店へと向かう。
アルランネさんの先導を邪魔をするものはなく、明らかに人払いがされていた。
「今日は魔法執行官の方々が、庭園を護衛してます。もう邪魔は入りませんからね」
隠し庭園の前で立ち止まったアルランネさんが振り返り、微笑んでから扉を開く。
だがカリタスはすぐに入らず、俺を抱えたまま頭を下げていた。
「毎回負担を掛けさせて、本当に済まない。何か礼をする事はできないだろうか」
「恩を売っておきたいだけなので、大丈夫ですよ。特にリベラ様にですが」
しかしカリタスに向いていた視線が俺に移り、少しだけ驚いて肩が跳ねる。
正直支払い能力がない淫魔になんて、彼は眼中にないと思っていたから。
「えっ、なんで俺? 全くお金とか持ってないんだけど」
「目的は別にあります。あと私、実は競売場にいたのですよ」
俺を捉えるアルランネさんの目には、普段にはない剣呑な輝きが宿っている。
カリタスの眼前でやる辺り、加害の意思はないのだろうけど。
(じゃあ俺、この人に買われる可能性もあったんだ。……うわっ!)
そして急に視界が暗くなって驚いたが、警戒したカリタスに深く抱き込まれていた。
彼が纏う魔力も攻撃性を含み、既に臨戦態勢に入っている。
「それで、今更その話をする理由はなんだ。無意味に空気を壊す奴じゃないだろう」
「お仕事の誘いですよ。お二人の関係が確定しそうなので、もう良いでしょう」
だがアルランネさんは少しも怯えず、むしろ楽しげに俺達を眺めていた。
正確には逃げ出したくなるような敵意を持つ、酷く攻撃的なカリタスを。
「もしかしてサキュバスの魔力狙い? 裏の方にも商品流してるの?」
「いいえ、副作用に対する鎮痛薬に加工しています。割と需要があるのですよ」
彼に提案されたのは真っ当な薬品開発だったが、それなら挑発する意味などない。
それに誘うには適した瞬間があったのに、俺が似た話をした時は断られていた。
「じゃあなんで、結局勧誘しなかったの? 二人で話す機会もあったじゃん」
「さすがに可哀想だったので。カリタス様のお顔をご覧ください」
上客を逃したくないのが理由かと思ったが、彼は小さく笑いながらカリタスを示す。
促された通りに顔を上げると、不安げに揺れる瞳と目が合った。
(酷く、泣きそうな表情をしてる。でもカリタス、なんでそんな顔をしてるの)
保有する魔力は攻撃的なのに、必死に感情を押し殺しているのが分かってしまう。
アルランネさんは昔話をしてるだけなのに、それに酷く怯えているようだった。
「い、行かないでくれ、リベラ。不自由は絶対にさせないから」
(あぁ、俺が心変わりすると思ってるのか。今までは契約で結ばれてたから)
稼げない俺に衣食住を与えることは、魔法契約の大きな価値となっていた。
だが働き口が見つかったとなれば、その必要性は薄れてしまう。
(だからカリタスと出会う前なら、ついて行ったと思う。でも今は)
カリタスは腕の中の俺を潰さないように、逃がさないように強く抱きしめてくる。
けれどその手は僅かに震えていて、余裕のない様子も伝わってきていた。
「大丈夫だよカリタス、行かないよ。どこにも」
「君の為に、色々用意したんだ。だから」
俺が強く抱き締め返しても、カリタスはうわ言のように言葉を繰り返している。
だから頭を撫でて慰めていると、アルランネさんが凛とした声で発破を掛けてきた。
「ほら、情けない顔してないで背筋を伸ばしなさい。散々練習したでしょうが」
「誰のせいで、こうなったと思ってるんだ……!」
俺に顔を埋めていたせいで丸まっていた背中を、カリタスは強く叩かれる。
だがその姿は客と店員ではなく、もっと親しい何かを思わせていた。
「リベラ様、私からも前祝いを。贈らせて頂くのは、魔法花束の技術です」
「アルランネに教えて貰って、不器用だが作れるようになったんだ」
お礼を言いながら受け取ったそれは、魔力で編まれた花の束だった。
所々に綻びもあるが、それがとてつもない愛おしさを感じさせる。
(俺が触れても、花束が枯れない。相当時間を掛けて魔力が編まれてるんだ)
俺は淫魔の性質を嫌悪し、他者から魔力を奪う事に怯えた時期があった。
それを覚えていて、彼は失われない造花を作ってくれたのだろうか。
「まぁ後は、彼の醜態も贈り物の一つです。良い姿でしょう」
「アルランネ! あまりからかわないでくれ、頼むから!」
そしてカリタスが構われ続ける姿は、もう共依存の必要性を匂わせない。
つまり俺の存在理由を問われるのと、同義でもあるのだけれど。
「それでは、どうぞごゆっくり。そして今後ともご贔屓に」
アルランネさんが深く一礼して、庭園の鍵を閉めて二人きりになる。
途端に静寂が訪れて、雰囲気が入れ替わるのを感じた。
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