神の国から逃げた神さまが、こっそり日本の家に住まうことになりました。

羽鶴 舞

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13.神さまがやっと……

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 1年かかり、僕も4年生になった。
 コノハのお陰で、自分のやりたいことが見つけ、念願の会社に内定を取ったのだ。 
 
「ねっ? 何事もやってみるといいんだよ!」

 にっこりと微笑むコノハは、僕の頭にポンポンとされた。
 神さまだし、歳としては神さまの方が上だということを理解している僕は、素直に受けておくことにした。

 そんな時に、思兼神オモイカネ様がやってきた。

「アキラよ、久しぶりだな。……さて、神さまよ、神の法の模擬試験をやるぞ!」

 コノハはうんと、真剣な眼差しでうなずいた。
 まるで人生にかけるかように、こぶしをギュッと握っていた。

「ほう! 前と比べて気持ちが引き締まってるな」

 コノハの成長に感心したのか、思兼神様は懐から神の法の問題用紙と解答用紙をテーブルの上に置く。
 
「さて、神の法の模擬試験を始めよう。――ではっ、はじめっ!」


 数時間後──。

 思兼神様は解答用紙を採点していて、コノハは緊張しているのかずっと正座をしている。
 採点が終わり、思兼神様が結果を発表する! と声高らかに宣言した。

 うう……神の法を教えた僕でも緊張するなぁ。
 コノハもドキドキと、胸の鼓動が高まっていた。

「神さまよ! 満点だ! すごいじゃないかっ!」

 ついに、神の法の模擬試験に合格できたのだ!

「やったぁ! アキラっ! 合格できたよっ!」 

 コノハは嬉しさあまりに、喜びの舞で踊っている。

 喜ぶコノハを見た僕は、やりがいを感じた。
 思兼神様から授かった分厚い本を全て覚えたコノハは、やはり神さまだと僕は理解できた。
 難解な文字がずら――っと書かれている神の法の本は分厚く、一般の人が読むと投げ出したくなるほどの分量の多さだった。
 だが、名付けたのは僕だ。
 責任をもって、ずっと辞書をひいて調べていたりして、神の法をコノハに教えていたのだから。
 長い一年だった。

 そんな時、1つ気付いたことがある。
 難解な文字から分かりやすい文章へ変換するように、仕上げたということを。
 僕は子どもたちに分かりやすい教科書を作り上げることが、一番やりたいことなのでは! と発見した。
 あれから、仕事を探し出し、ついに内定とったのだ。
 

 思兼神様は、神さまがやっと一人前に……と涙を流すほど、感動していた。
 
 僕の方に振り返って、ガシッと僕の手を握り、歓喜に浸りすぎたのか、目が真っ赤になっていた。
 
「感謝する! これで神さまは名を授かるだろう。日本は安泰だ!」

 だが、コノハは悲しげな表情を顔に浮かべてはうつむいていた。

 そうか、達成した今は、コノハとはお別れになるのか。
 ここは僕がフォローしよう。
 
「コノハ、1年間はすごく楽しかったよ。コノハのお陰で、僕のやりたいことが見つかったし、いい思い出をありがとう。神さま、ありがとうございました!」

 そう告げた僕はなぜか、両目からしょっぱい水がボロボロと出ていることに気付く。
 コノハもグシグシと、涙がすごく出ていた。
 
「ゔぇぇーん! アキラっ! あたしも寂しいよっ! あと、迷惑をかけてごめんなさいっ!」

 泣きじゃくるコノハは僕をぎゅっと、抱きしめる。
 それはそうだよね。この一年間は、コノハと共に暮らしていたのだから。テレビに映っている漫才のコントショーを見ては笑いあったり、一緒に絵を描いたりしていた。
 コノハと香織ちゃんとタケルと4人でネズミ―ランドに行ったこともあったな。
 何かひらめいた僕は、コノハに案を持ち出す。

「香織ちゃんとタケルを呼んで、コノハと一緒に食べに行きたいんだけど、いいかな?」

「うんっ! 最後だから、お願いっ」
 
 コノハは手を合わせながら、頭を縦に振った。 
 そんな折、耳にした思兼神様がアドバイスを出す。

「天照大神様と寿老人様も誘うぞ。もう二度と会えないのだ。一生に一度だけの会食となるだろう。明日が最後になる」

 思兼神様の言葉を受け入れた僕は、悲しみと寂しさを背負うような重みを感じた。
 そうだ。コノハとは、一生会えなくなる。この思い出を作って、大事にしたいと決心する。

 そう決めた僕は、ポケットからスマホを取り出し、香織ちゃんとタケルに電話した。

『もしもし、香織ちゃん。明日は予定ある? コノハが明日、神の国へ帰るみたいで、お別れ会をしたいんだ』

『お別れ会? いったいどうしたの?』

 これまでの事情を説明した。

『なるほど……コノハちゃんは神様になるんだね。必ず行くわ! もう二度と会えないでしょう?』

 香織ちゃんは参加することになった。次はタケルだ。

『もしもし、アキラだよ』

『おお、アキラ! 珍しいな。何か問題があったのか?』

 タケルにも、コノハが神の国へ帰ることを説明した。

『これは一生に一度というか、こんな場面は滅多にないぞ! 絶対行くから、明日の詳細を教えてくれ!』

『うん、分かった! 詳細はメールするよ!』

 2人に電話を済ませた僕は、コノハに振り向く。

「コノハ、香織ちゃんとタケルは明日来るよ』

 そう告げると、コノハがすごく喜んでいた。

「アキラっ! ありがとうぅ! あたしは好かれて幸せだぁ!」

 いつものように振る舞うコノハに、僕は和やかな笑みを浮かべた。

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