僕らが転生した理由 〜異世界転生した先は赤い地球〜神々に弄ばれた人間の物語

空 朱春

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第一章

8 見知らぬ力

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 学校入学までの一ヶ月間僕がすべきこと。
 ――それは鍛錬だった。

 クラウスの仕事が休みの日は家の庭で鍛錬をする。
 それ以外の日は師匠が僕を鍛えてくれるそうだ。
 師匠か……どんな人だろう。

 家の庭は所々芝生があり大きな木が一本立っている、人が乗れるくらいの岩もある。岩や木に登り小さい頃はよくアルメリアと遊んでいた。剣を振り回しても余裕があるくらい大きな広々とした庭だ。

「エーデル。いくぞ」
 クラウスが真剣な表情でいう。

「OKダディ」

 数日家族と過ごしてみてわかったことがある。
 クラウスはジョークが通じる父だと言うこと。真面目且つ誠実でありながら、家族に笑顔をもたらすムードメーカー、とても素晴らしい父親だ。
 それに乗せられて僕も少しジョークを覚えた。前世では使う機会のなかったジョークだが、不思議なことにジョークとは周りをを笑顔にする素敵なものだった。それを教えてくれたのは父――クラウスだ。
 OKダディというのもクラウスから授かった言葉だ。

 ――さて、ここからは真面目に行こうか。

 庭に出て、僕とクラウスは木刀を持ち距離を置いた。そして互いに木刀を構えて、呼吸を整える。

 まず最初に軽く試合のような事をする。そして僕は毎回必ず負ける。
それからクラウスに優位点や改善点の指導を受ける。

 記憶によるとエーデルはそこそこ強い方だとクラウスに褒められていた。さすがにクラウスには敵わなかったようだが……それもそのはず、大人と子供の力には差がありすぎる。それに経験も違う。クラウスは日々魔物と戦っている。剣を持つことの覚悟も違う。

 ――でも僕はもっと違う。
 何故ならば……剣なんか持ったことない!
 痛いのも嫌い! 木刀とはいえ痛いじゃん? どうやって扱うんだよ! そもそも危ないじゃん?!
 前世ではよくバッドやパイプで殴られていたけど……いや、それも嫌だったけどさ? 
 実戦で剣なんて真っ先に首が無くなりそうだ……。

「エーデル、何を考えている?」
 クラウスは真剣な眼差しで僕を見て言う。

(うわー、パパ怖い……やばい……無理)

 どうせ負ける、どうせ痛いんだ。痛いだけで済むなら安いもんだろう――もう覚悟を決めよう。

「ごめんなさい。もう大丈夫です」

 もう一度――呼吸を整える。
 目を閉じてスーッと息を吸う。それから息を止めて止めて3秒経ったと同時に目を開けて――走り出す。

 クラウスもこちらに向かって走ってきている――徐々に距離が縮むと同時に緊張が走る。
 お? あれ? 意外と……クラウスの動きがスローモーションで見える。
 ――遂にクラウスが至近距離まで来た!
 ――クラウスは上から振りかざしてくるのか……
 ならその前に――横に切る!
 僕は握りしめた木刀を左に構えて右に――
 一振り。
「エイッ」


 ドオォォオオオオオオオオン



「…………え?」
 ――目の前は砂埃で見えなかった。

「…………え?」
 なんか木刀に感触というか…振りごたえはあったんだけど…
 なんかすごい音しなかった?
 なんだ? 木刀を振りかざした時に、風が――
 風が木刀の動きに付いてくる感覚……クラウスの木刀にぶつかって……その後――

 ていうか、パパどこ?!

 家の庭ある大きな木の方を見た。
 今は砂埃で見えづらいが、風が砂埃を追い払い、徐々に人影が見えてきた。
 誰かが座り込んでいる。どこか見たことのある面影ーー

 そこにいたのはクラウスだった。

「エーデル? あなた? 大丈夫? なんだか物凄い音が……キャー!」
 カルラとアルメリアが心配で家から飛び出してきたようだ。
 カルラはクラウスの元に駆け寄った。

「あなた? 大丈夫なの?」
「お兄ちゃん何があったの?」

「……いや、それが僕もびっくりして」

「イテテッ」
「あなた?!」「パパ?!」

「――アハハッ、大丈夫だ。なんとかな……」
 (……これって僕がやったのか?
 僕がクラウスに剣を振るったから……
 ――何が……どうなってる? こんな……力……なんで……。……いらない)

「……ごめんなさい、ごめんなさい」
 僕は座り込みクラウスに土下座をした。必死に謝った。
 ――訳がわからない。だが人を傷つけたことに変わりはない。せっかく家族ができたのに――嫌われる。
「ごめんなさい――本当に……本当にごめんなさい……」
 どうしたらいいんだ? これじゃ、俺が嫌いないじめっ子と変わらないじゃないか……。
 おれがこっち側になってどうするんだよ。

 これは所謂、チートってやつだ。
転生して力を得た。小説やラノベの世界でよくみるやつだ。本当に非現実的だな。こんなこと本当にあるんだ……。

 だがこれは決して――家族に使っていい力じゃないだろう…………。
 知らなかった。そんなの通用しない、命に関わる問題だ。
 自分の無知さに腹が立つ。
 本当に僕は何やってんだ……

「本当に……ごめんなさい……本当に……」
「エーデル」
 
 この時の僕は家族の声なんて聞こえなかった。頭の中はどうしようと言う気持ちでいっぱいで、耳に声が届いていない。声がこもって聞こえる――そんな感覚だ。
 それよりもただただ謝りたくて、嫌われたくなくて、自分のやったことの責任をどう取るかを考えることに必死だった。

「本当に……ごめんなさ……」
「エーデル」
クラウスが声を張り上げた。
「ハッ、ハイ」
僕はクラウスの顔を見れないままだ。クラウスだけじゃない、カルラやアルメリアも家族に怖い思いをさせたんじゃないかと――僕は僕が恐ろしい。

「顔を上げなさい」
「はい、パパ」
 恐る恐る顔を見上げると空は雲ひとつない快晴で、太陽は眩しくて直視できない。その太陽を隠すかの様にクラウスは顔を覗かせ、僕の目の前で――フッと笑った。

「OKダディだろ?」

 僕の目から涙が溢れた。
 この一瞬で許された感じがした――それに甘えてしまったが故の涙だ。
 クラウスはエーデルを抱きしめて言う。
「エーデル、違うんだ。説明してなかったパパが悪い。
本当は言うべきだとも思ったんだが、まずはお前の力を試してみたくてな」

 ――説明ってなんのことだよ……
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