僕らが転生した理由 〜異世界転生した先は赤い地球〜神々に弄ばれた人間の物語

空 朱春

文字の大きさ
22 / 23
第二章

21 『虐め』

しおりを挟む
 その光景を目にして僕は顔を顰めた――

 校舎内の広い廊下で三人の人間が一人の魔族囲んでいる。
 黒いツノの生えた魔族を床に座らせ、拳で顔を殴っている。そして一人の人間が魔族の黒い角を持ち腹に蹴りをいれた。
 頭痛がした――昔の記憶がフラッシュバックして、ふと嫌な記憶が蘇る。

 あそこにいるのは僕かもしれない。

 いや以前は僕だったんだ。

 何の抵抗もできず、ただされるがままに殴られ蹴られていた。まるでサンドバッグ状態だ。やられた側にしかわからない辛さと痛み――死ぬ覚悟までしたんだ。

 自分では止められなかった――きっと彼もそうだろう。
 以前の僕は『やめてほしい』という言葉が最大限の防御だった。
 でもやめてくれと言えば更に殴られる。次にやめてという時には更に殴られるという覚悟が必要になる。これは止まらない負の連鎖なんだ。

 この光景を目にしてどうすべきか。
 放っておくのか――止めに入るのか――
 僕が思っていたこと、僕が求めていたことをしてあげるべきじゃないのか?

 僕があの時求めていたこと、それは――
「やめろよ」
 僕はボソッと呟いた。
 これじゃだめだ。

「やめろよ!」
 僕は声を大きくした。
 虐めを受けた時求めていた時、誰かに手を差し伸べてもらいたかった。誰かの手を掴みたかった。

「…………」
「あー、いいとこだったのに萎えた」
 魔族を囲っていた一人がこちらを向いた。手に持っていたのは黒い角だった。
「それ、彼のじゃないか?」
「ああ、これか?」
 彼は見せびらかすように手に持った角をこちらに向けた。
「……返せよ」
「はぁー。おい知ってるか? コイツらのツノっていうのは威嚇なんだよ。敵に対する武器として争いに使う為の道具みたいなもん。そんな危険なもの放っておくわけにいかないだろ? 平和主義で平等なこの国で。俺らは皆んなのためにコイツの角を折ったんだよ」

 彼はため息を吐き最もらしい言っているが、だからといって殴り蹴る必要はない。手に持っている角それが全てを物語っている。

 すると僕の後ろにいたヘルヴィンが耳元で呟いた。
「あれはさっき言ったように疾うの昔の話だね。今はなんの危険もないとちゃんと証明されているよ。魔族の角も痛覚はあるから相当痛かっただろうね」

 痛いよな……角だって体の一部だもんな。
 アイツの言っていることが事実がどうかは知らない。でもやっていることは許されることじゃない。
 指一本へし折ってやりたいが、このいじめを止めるのが優先だ。
「とにかく角を返せ、もういいだろ」

 するといじめをしている彼らの中からもう一人の男が僕に向かって話しかけてきた。
「あれ? お前エーデル・アイビスか?」
 ……誰だ? 僕を知っているのか?
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
ファンタジー
 毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 連載時、HOT 1位ありがとうございました! その他、多数投稿しています。 こちらもよろしくお願いします! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

異世界の片隅で引き篭りたい少女。

月芝
ファンタジー
玄関開けたら一分で異世界!  見知らぬオッサンに雑に扱われただけでも腹立たしいのに 初っ端から詰んでいる状況下に放り出されて、 さすがにこれは無理じゃないかな? という出オチ感漂う能力で過ごす新生活。 生態系の最下層から成り上がらずに、こっそりと世界の片隅で心穏やかに過ごしたい。 世界が私を見捨てるのならば、私も世界を見捨ててやろうと森の奥に引き篭った少女。 なのに世界が私を放っておいてくれない。 自分にかまうな、近寄るな、勝手に幻想を押しつけるな。 それから私を聖女と呼ぶんじゃねぇ! 己の平穏のために、ふざけた能力でわりと真面目に頑張る少女の物語。 ※本作主人公は極端に他者との関わりを避けます。あとトキメキLOVEもハーレムもありません。 ですので濃厚なヒューマンドラマとか、心の葛藤とか、胸の成長なんかは期待しないで下さい。  

処理中です...