ハートキラーズ

十月の兎

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3.零永軍の誓い

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トラフ「さて、私は旅に出ないし、それに、いや、早めに休むとするか、」



トラフは壇上から降り軽く伸びをし自分の部屋へ向かった、



「おい、」



トラフの部屋の前には



「こんばんは!」


「おせぇぞジジイ」


「なんで2人がいるんだ」



トラフは頭を抱える



「俺は親には言ってきた、レッタは」


「私はちょうど親がユースへ旅行に行っているので外出予定がなかったんです」


「そうだったのか、いや、まて、俺の部屋の前にいる意味がさっぱりわからん」



トラフが顔をしかめると、2人はニヤニヤとカバンから黒いガラスの瓶を取り出した



「おいジジイ、お前の部屋は出入りがほとんどないことは知ってんだぞ」


「私たちも軍用倉庫からこれ持ってくるの苦労したんですからねぇ?」


「お前ら、ほんとアホだな」



だが愛すべきあほだ、そして一生の宝だ、俺はいい部下を持ってしまったな



「ジジイ俺にアホって言ったな!」


「そうですよ!カルラならともかく私までアホってなんなんですか」


「レッタはともかくカルラは先日心塔しんとうしたばかりだろう、酒なんて飲めるのか」


「当たり前だ、俺は最強なんだからな」


「いいから早くしましょうよ!私こんな日の時まで取っておいたんですから」


「それいつのだよ、とにかく話は入ってからにしよう」



45歳の男の狭い部屋に3人入り酒を酌み交わす

ある者は信頼を深めるために

ある者は忠誠を確かめるように

ある者は真意を見定めるために


「皆の無事を祈って、乾杯」

「「乾杯!」」



互いに、互いの意思を交わすように、

と言っても若いふたりは直ぐに潰れてしまった、五月蝿いやつがいなくなったトラフは、不気味なまでに光る月を見ながら、ちびちびと飲み明かした







「諸君、先日も話したように君たちにはコーステッドとの不戦条約のための架け橋になって頂く、コーステッドにはこの国にはないものがたくさんあるだろう、今回コーステッドとはもちろん戦争目的ではない、貴様らの行動に問題が怒らないことを願っている、くれぐれも粗相のないように頼む、」


軍隊長が壇上から降りる


入れ替わりでレッタが上がる


「私達はこの国を平和に導くための力がなければならない!忠誠を誓え!発展を願え!己の力を信じ国に仕え!意思を継げ!誇りを持て!この国に魂を捧げろ!」



オオー!と歓声が上がる、歓声と言うよりは雄叫びなのだが


しかしさすがレッタと言うべきか、軍といえど他人の集まり、それをここまで奮い立たせることが出来るのは才能と褒められる部分であり、団結力を高めることも見込める、



「さすがレッタだな」


「お前もそう思うか」


「当たり前だろ、俺には集団をまとめる力なんてねぇよ、もし俺が女だったら尚更な」



そう、レッタはなのだ、女性は軍事国家での立ち位置は低い、だが彼女には実力がある、



「俺にも、無理だろうな、」


「当たり前だろじじいに出来るわけねぇ」


「俺らには、いや、ここにいる誰にも出来ねぇよ、だからみんなレッタについて行く、彼女は俺がいなきゃいい軍師になっていただろうな」


「ジジイがいなかったら?なんで、」


「こんな老害、上も下も動かしにくいだろ」


「・・・黙れ」


「は?」


「ジジイのことをバカにしていいやつはいねぇ、たとえ本人だとしてもだ、そんなことするやつは零永軍全員で叩き潰す、ジジイはこの軍に大切なんだ、俺は上手く言えねぇけどよ、レッタもそう思ってる」


「そうか、すまなかったな、俺も少し気が抜けていたようだ」


「2人して何話してたんですか」



レッタが戻ってくる、その顔は、少し不機嫌なようだった



「私を除け者にして楽しいですか」


「いや、そんなことない、」


「そうだよレッタ、」


「なんかずるいです、まぁいいですけどね!」



ぐぉんぐぉんと音を鳴らしながら遊空船が広場へ飛んできた、それはまるで本当に空の上に船が浮いてるように見えた、


「すごい!あれが遊空船ですか!あれに乗れるなんて、なんだかわくわくしますね」


「おい、レッタ、お前は絶対エンジンルームと制御室には入るなよ、あと厨房もだ」


「えー、なんでですか?いいじゃないですか、一生に一度あるかないかですよ?」


「分解癖を直してからにしろ」


「ジジイも細けぇな」


「エンジンルームを飛んでいる時に分解すると地面に叩きつけられるぞ」


「レッタは絶対に入れないように誓います、」


「ちょっとカルラまで!ひどい!」


「はは、落ち着け、カルラがいれば大丈夫だろう、」



トラフは船の方を横目に眺めてみる

外側は銀で装飾を施されている、銀は古来から魔力の伝達や効率が良いため、よく使われている

そこに、紫色の魔力が流れている、ぼんやりとしか見えていないが、あれがきっと浮力に変換されているのだろう



「レッタ、?」


「何も問題ありません、火薬臭もなしです、ですが、」



レッタはぐっと口を紡ぐ、普段は目を見て話す彼女が、目線を逸らしたことに、トラフは心底驚いた



「なにか、あったか」


「いえ、これは、女の勘、と言うべきでしょうが、なにか、とても嫌な予感がします」
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