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15話
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「一人で抱えて、辛かったね」
耳元に落とされた、ふわりと温かみを帯びる言葉にフッと全身の力が抜け、惚けたように自分の膝頭へと視線を落とす。
……と、膝の上で握った拳がかすかに震えているように見え、ぎこちなく手を開いて動かした。
いつの間にか冷え切っていた自分の手の上に、温かな兄様の手が重なる。そして、じわりと滲む体温を染み込ませるかのようにしてしっかりと握り締められた。
「夢の中でエルが見たものは、……そうだな。もう一つの現実、とでもいうべきものなのかな。既にだいぶ流れが変わってきてはいるけれど、起こり得ないと言い切ることも、今の段階ではまだできそうもない。が、その夢を見たあとのエルの行動と、ある意味異分子ともいえる俺の存在が介入しているせいか、殿下を含めたそれぞれの反応が、俺が知識として知っているものと随分異なってきている」
珍しく歯切れが悪くまわりくどい物言いで、考え考え話している様子の相手が僕の両手を掬うように握り直す。
「なによりも、だ。こんなに大切で、心の底から愛しく思っている可愛い可愛い弟を手に掛ける、なんてこと。俺にできると思うかい?」
「え」
「夢の中の『俺』ではなく。今、お前の目の前にいる兄様を見て考えてご覧」
小さい頃、不安に泣く僕を慰める時によくしてくれたようにコツンと額をくっつけて、あまりの近さに滲んで見える優しいアクアマリンの瞳がこちらの目を覗き込む。
「さぁ。エル。エルは、どう思う?」
まるで幼子をあやすような甘やかな声が大切そうに僕の名前を呼んだ。
「……僕は、」
「うん」
心の迷いを表すように喉が震え、けどそれすら受け止めるみたいにして兄様が小さく頷いてくれた。
そう、僕は……ずっと、怖かった。
兄様まで、みんなと同じように変わってしまったらどうしよう……って。
あの夢の中には出てこなかったクラスメイトたちですら、パージュが現れた途端手のひらを返すかのように一斉に僕に背を向けた。
あっという間に、みんなが変わってしまった。
変わらなかったのは、今じゃ唯一友達と呼べる存在のデュリオと。そして、今までと何一つ変わらず僕を大切な弟として見て接してくれる兄様。もし、この二人がいなかったらと思うだけでゾッとする。
なにより。
僕も同じように、家族として大切に思っている大好きな兄様。
その人が。あの夢の中では、無慈悲に。なんの躊躇いもなく。凍えるような瞳で『僕』を見据えて剣を振り下ろした。
今、こうして。僕の手を包む温かな両手を『僕』の血で濡らし、地べたを這う虫ケラを見るような目つきで死にゆく『僕』を見下ろしていた『あの人』の目と……
「……全然、違う」
囁きよりもさらに小さく。ぽそりと唇を動かすと、そのささやかな声すら拾い上げてくれたらしい相手の眦がゆるりと下りた。
「今、僕の目の前にいるこの兄様は、……やっぱり、僕の大好きな、自慢の兄様……です。僕にあんなこと、するはずがない」
「うん」
そう言って嬉しそうに微笑みながらもどこかホッとしたような空気を纏い、わずかに強張っていた表情を緩めた兄様が。
今度は怪訝そうに首を傾げて身を起こした。
「エルのそれは、俺たちが持っている転生前の記憶とはまた違うものなのかもしれないけど。……どうなんだろうね?辛い記憶も一緒に呼び覚ましてしまうんじゃないかと、今まで聞けずにいたんだ。この際だから、確認させてもらってもいいかい?」
さっき額を擦り付けられてた場所に残る温度と感触を確かめるように手のひらを押し当てて、頷くよりも曖昧に顎を引く。
僕の躊躇いを見透かすように頭を撫でられ、
「少しでも嫌だとか、怖いと思うような感覚があったらちゃんというんだよ。いいね?」
そう、念を押されて。また震えそうになった手を握り締め小さく頷いた。
「……うん」
「主に知りたいのは、夢に関することじゃないんだ。学園やそこで起こる出来事は一旦おいて、それ以外で。なにか、記憶に残っていることはあるかい?例えば、以前の家族のことだったり。住んでいた部屋だったり。通っていた学校の名前や、勤めていた会社名だったり」
「以前、……の家族??カイシャ……って、なんですか??」
「あー……。わかった。聞いた俺が悪かった。……そうか。…………そう、かぁ」
また知らない単語が出てきたぞ、とか思って聞き返したら。僕の方を痛ましげに見ていたその目が真ん丸くなって、そして……
なんっでよりにもよってそこの情報だけ与えるかなぁ、しかもあんな可憐で稚い護られて然るべき愛らしさマックスのさながら天使のような人懐っこさと可愛さを誇るどっからどう見ても庇護対象でしかない可愛い可愛いエーベルにさぁ……とか小声でブツブツ呟きながら両手で顔を覆ってガックリと項垂れて、膝につくほど背中を丸めた兄様が、ひどく疲れたようなため息を貴族にあるまじき音量で吐き出した。
正直、びっくりした。
「……まあ、そうだな。気を取り直して一つ一つ説明していこうか。まずは、この世界で転生という概念に一番近いのは『精霊返り』かもしれないね」
気を取り直して。の言葉通り、どこか釈然としない困ったような表情はそのままに、訥々と話し出した兄様が口にした言葉を繰り返す。
「精霊返り」
「そう。我が国、シャルノヴァの国教だ。人は死ぬと精霊となり各地を巡り、人々を助け人に幸いを呼び、やがて膨大な陽の力を蓄えた精霊は母の胎へと返り人の子となる……ってやつ」
「あぁ、はい」
「自国内の魔力持ちが消えて久しいこの国の教義としては多少不自然な感じがするけど、まだ魔力を持つ人間が普通にいた時代の名残なのかもね。魔力の素になるとも言われる精霊が、人の胎に宿ることで子を成せる。と考えられていたからこそ、魔力による妊娠……という、普通に考えたらあり得ないような技術もすんなり受け入れられたんだろう」
「兄様、……たちの認識としては、受け入れがたいもの、なんですか?」
今じゃ貴族だけでなく庶民の間でも当然の権利として、元々そうなるのが自然とでもいうように浸透している同性同士での婚姻や妊娠。
兄様の、どことなくそれに不自然さを感じているような物言いが少しだけ心に引っかかってしまい、まだ情報整理が追いついていないものの、それでも兄様が話してくれたことを疑っているわけじゃないってことをなんとか伝えてあげたくて、『たち』って言葉を付け足す。
と、兄様がほんの少しだけ答えあぐねるような様子を見せ、曖昧に微笑んだ。
「俺はこの世界で生まれ育って生活してきた側だからね。俺『たち』と、簡単には一括りにはできない部分はあるにはあるけど、兄様が元いた世界では言葉通りあり得ないことだったかな。でもどちらかといえば俺は、エルの兄でありハリスン公爵家嫡男デノラ・ハリスンとしての意識の方が強いから、この世界の常識や教えに違和感は抱いていないよ。転生前の知識と照らし合わせると『不自然』なことなんだろうな、程度の認識であって」
「そうなんだ」
所々、深く問い尋ねてみたいセリフはあった。けど、今のままじゃ理解できるかも怪しすぎる気がしてその部分は聞き流し、とりあえず兄様は最初から変わらず兄様のままだったという事実にホッと胸を撫で下ろす。
「うん。いい?続けるよ?」
「あ!はいっ」
ホッとした瞬間を狙ったように声をかけられ、咄嗟に勢い込んで返事をしたらクスリと笑われて。
思わず視線を尖らすと、宥めるように親指の腹で目元をひと撫でされた。
「兄様が元いた世界では生まれ変わり、ともいうんだけどね。別の世界で生きて一度死を迎え、それからここで新たな生を受け、エルが夢で見た『俺』とは異なる今の俺がある。別の世界で生きていた頃の記憶もまた同時に有していた、というのがこの世界に確かに在ったはずの『悪役令息の兄デノラ・ハリスン』という役割から外れてしまった主な理由だな。まあ、……つまりザックリ大雑把にまとめると。彼が口にした『転生者』というのは、その『もう一つの現実』で起こったはずの全てをあらかじめ知識として授けられた上で、この世に生まれ落ちた人間の総称。ということだ」
「なんでここまで色々言ってきたのに、いきなりザックリまとめようとするんですか……やっと理解できそうな感じになってきてたのに……」
「だからね。あのパージュも、『もう一つの現実』が辿る物語の結末や、この先『起こったであろうこと』などをあらかじめ把握しているということ」
今までのはなんだったんだ、って困惑と恨みがましさを込めた目で相手を軽く睨むと、僕とは真逆の。それはもうすっきりサッパリしたと言わんばかりに晴れやかな顔をした兄様にまた頭を撫でられた。
いくつになっても子供扱いが酷い。……それを嫌だと思わない僕も僕でどうなんだ、って話ではあるんだけど。
「ただ。把握している、とはいっても。それほど身構える必要もないんじゃないかな。さっきも言ったろう?俺が知っている世界の流れとは随分違ってきているって」
そう言われて、思い浮かぶのはここに来る途中僕たちのことを呼び止めたケルネールス様のあの、悪事を見咎められて叱られるのを待つ子供みたいな。決まりの悪そうな顔と、縋るような目つき。
もしかしたら。
兄様が知っていることに比べれば、僕が夢で見たあれらは兄様のいう『もう一つの現実』で起きていたことのほんの一部でしかないのかもしれないけど。
それでも、違うとハッキリわかるのは目の前のこの兄様だけじゃなく、ケルネールス様も。イヴェリン様も。……ジョゼフ様は、パージュとまだ出会ってもいないからなんとも言えないとはいえ。
よくよく考えて思い返してみれば、卒業パーティーの時に僕に婚約破棄を言い渡してくるはずのレオンハルト様の反応や態度ですら。
追体験のような感覚で頭の中を通り過ぎた、最悪な夢で無理矢理見させられた諸々とだいぶ異なっている気がしなくもない。
レオンハルト様の態度が冷たいのは夢で見たとおりではあるんだけど、夢の中の僕が一々腹を立てて関わりに行くからこそ、その度ギスギスした会話と雰囲気が発生していただけであって。向こうからの接触はほとんどなかったはず。
なのに、今は言い掛かりでしかないことをわざわざ僕のところにまで言いにくる始末。それを思えば。だいぶ、違う……よね??
イヴェリン様に至っては、今の今まで会話らしい会話をした覚えがないし。もちろんパージュが現れてから、の話ではあるけど。昔はごくごく良好な関係を築けていたと思う。でも今は。一定の距離を置いて遠くから探るような、何かを観察しているかのような目を向けられるだけ。
なんだけど……
「……僕も、そう思う」
「ん?」
「流れが、違うって話」
「ああ」
ポソポソ、っと唇を擦り合わせて囁くと。ふっと表情をやわらげて兄様が笑った。
「紅茶が冷めてしまったね」
「いいです。冷たい方が」
熱った口の中を潤すように、体温よりも低い紅茶を喉に通す。
乾きが癒えてホッと一息ついたところに、
「そうだ。一つ訂正しておかないといけないことがあった。少し前に俺が、パージュが魅了を使える可能性は低いと断言してしまったことは覚えているかい?……いや、有り得ないといって完全に否定したんだったかな」
同じようにカップを傾け、紅茶を一口飲んだ相手がそう切り出した。
「ごめんね、エル。俺はほんの少しだけ、お前に嘘をついた」
「え」
「魔力持ちでない者が魅了を使う方法」
「えっ」
突然の告白を聞いて呆気に取られ、まさかという思いで身を強ばらす。
「実はあるんだよ。一つだけ」
うちの家にとっての重大事項を打ち明ける時のような真剣な面持ちで声を潜めた兄様が、膝の上でゆっくりと指を組んだ。そして、重々しい態度はそのままに口を開く。
「彼の家の資力を前提とするならば、まず無理だろうと。端からそう決めつけていたんだが。パージュが転生者なら話が変わってくる」
「……兄様。なんか、いつの間にか呼び捨てに」
たった今気づいた変化に思わず指摘を入れると、イラズラっぽい笑みを浮かべた相手が至極楽しそうに片眉を上げた。
「エネミー判定がついたって言っただろ?呼び捨てでも上等なくらいだ。殿下に至っては、本当なら浮気性のクソ王子とでも正面切って罵ってやりたいくらいなんだがね。ほら、お互い立場ってものがあるから。まったく、貴族の世界は面倒事が多すぎて嫌になる」
「……ハハ」
……っていう空笑い以外で、どう返すのが正解なんだろ。これ。
煮え切らない僕の返しにも頓着せず、兄様が「まずは『しゅじんこうほせい』についてなんだけど」とか勝手に話を進め始めたものだから、たまらずアタフタ両手を振る。
「ま、……待ってっ」
「ああ、大丈夫大丈夫。さっきの話よりは込み入ったものじゃないから。『主人公補正』というのはね。簡単にいうと。この世界の『主人公』というだけで相手からの好感度、……っと。そうだな。んー……普通の好意だけではなく、恋心・恋情・愛情・性愛が育ちやすい条件が揃っている上に、一定の距離以上に近づいたり、その状態で言葉を交わしたり、相手と軽く触れ合ったりした場合、異常なほどの恋情を対象の心に植え付けられる素質を持っている、って感じかな。しかも、生まれながらにして」
「それって、……完全に魅了魔法なんじゃ、」
聞けば聞くほど頭を抱えたくなるパージュの、その存在自体の厄介さに軽く言葉を失っていると、
「似たようなものではあるだろうね。でも、魔法ではないよ。それよりずっと危険かもしれない。対象の視界に映り込む、それだけの行動で相手に恋心を芽生えさせることさえできるんだから」
兄様も難しげな顔つきで自分の顎に指を当てた。
「……こわぃ」
レオンハルト様をはじめ、周囲にいる人たちの態度の変化と僕への風当たりの強さの遍歴を頭の中で辿りながら、もしかしたらそこかしこに介在していたかもしれないパージュの影響に思いを馳せていたせいで語尾が引き攣れる。
「本当に。怖いよねぇ~。幸い俺は、精神が『もう一つの現実』内にいる俺じゃなかったからなのか、全くもって。1ミクロンたりとも。食指が動いた試しがないんだけどね。アレよりよっぽどエルの方が可愛らしいし魅力的だ。いや、あんなものと比べようとか考えること自体が烏滸がましい。今日も完ッ璧に!最高に可愛いよ、我が愛しの弟!」
「…………あ、りがとうごさいます?」
不安の方に傾いてた僕の気持ちを汲み取ってくれたのかと思いきや、なぜかいつも以上に大袈裟な褒め言葉を投げかけられて。
咄嗟に受け止めきれず、首が傾いだ。
あの、兄様。今。その兄バカ全開のセリフ、必要ありました??
一瞬思考が止まったおかげで、濁流のように押し寄せてきていた、アレも?コレも??っていう、どうやっても答えは得られないであろう無駄な疑心暗鬼からは抜け出せたけど。
「で、厄介ついでにこちらが本題だ。魔力関係なしに魅了を使える方法。これも『主人公補正』のうちなのか、それとも主人公の特権とでもいうのか。中には、使うことで好感度を上げる……つまりは、主人公への恋心を増幅させるアイテムなんかも出てくるんだけど。……まあ。こちらの世界の常識に当て嵌めると普通にアウトだね」
「……あうと、」
「うん。今回の場合は完全に違法」
気抜けた仕草で片手をヒラヒラ振ってみせた相手が、動作とは裏腹に強い口調で断言して深く頷く。
「今回、……って?」
「元々この世界で作られ取引されている物ではあるんだけどね。同時に。使用範囲からして厳しく規制されている劇物扱いの製品なんだよ」
─────────────────
長くなるからと2話に分けますと言い置いたはずが、後半も分断するハメになりました。
実質的な13話、前中後編の3話構成に。次でやっと王子が動きます。あと、本編も20話くらいで終わるかと。
遅々として進まない話にお付き合い下さって本当にありがとうございます。
耳元に落とされた、ふわりと温かみを帯びる言葉にフッと全身の力が抜け、惚けたように自分の膝頭へと視線を落とす。
……と、膝の上で握った拳がかすかに震えているように見え、ぎこちなく手を開いて動かした。
いつの間にか冷え切っていた自分の手の上に、温かな兄様の手が重なる。そして、じわりと滲む体温を染み込ませるかのようにしてしっかりと握り締められた。
「夢の中でエルが見たものは、……そうだな。もう一つの現実、とでもいうべきものなのかな。既にだいぶ流れが変わってきてはいるけれど、起こり得ないと言い切ることも、今の段階ではまだできそうもない。が、その夢を見たあとのエルの行動と、ある意味異分子ともいえる俺の存在が介入しているせいか、殿下を含めたそれぞれの反応が、俺が知識として知っているものと随分異なってきている」
珍しく歯切れが悪くまわりくどい物言いで、考え考え話している様子の相手が僕の両手を掬うように握り直す。
「なによりも、だ。こんなに大切で、心の底から愛しく思っている可愛い可愛い弟を手に掛ける、なんてこと。俺にできると思うかい?」
「え」
「夢の中の『俺』ではなく。今、お前の目の前にいる兄様を見て考えてご覧」
小さい頃、不安に泣く僕を慰める時によくしてくれたようにコツンと額をくっつけて、あまりの近さに滲んで見える優しいアクアマリンの瞳がこちらの目を覗き込む。
「さぁ。エル。エルは、どう思う?」
まるで幼子をあやすような甘やかな声が大切そうに僕の名前を呼んだ。
「……僕は、」
「うん」
心の迷いを表すように喉が震え、けどそれすら受け止めるみたいにして兄様が小さく頷いてくれた。
そう、僕は……ずっと、怖かった。
兄様まで、みんなと同じように変わってしまったらどうしよう……って。
あの夢の中には出てこなかったクラスメイトたちですら、パージュが現れた途端手のひらを返すかのように一斉に僕に背を向けた。
あっという間に、みんなが変わってしまった。
変わらなかったのは、今じゃ唯一友達と呼べる存在のデュリオと。そして、今までと何一つ変わらず僕を大切な弟として見て接してくれる兄様。もし、この二人がいなかったらと思うだけでゾッとする。
なにより。
僕も同じように、家族として大切に思っている大好きな兄様。
その人が。あの夢の中では、無慈悲に。なんの躊躇いもなく。凍えるような瞳で『僕』を見据えて剣を振り下ろした。
今、こうして。僕の手を包む温かな両手を『僕』の血で濡らし、地べたを這う虫ケラを見るような目つきで死にゆく『僕』を見下ろしていた『あの人』の目と……
「……全然、違う」
囁きよりもさらに小さく。ぽそりと唇を動かすと、そのささやかな声すら拾い上げてくれたらしい相手の眦がゆるりと下りた。
「今、僕の目の前にいるこの兄様は、……やっぱり、僕の大好きな、自慢の兄様……です。僕にあんなこと、するはずがない」
「うん」
そう言って嬉しそうに微笑みながらもどこかホッとしたような空気を纏い、わずかに強張っていた表情を緩めた兄様が。
今度は怪訝そうに首を傾げて身を起こした。
「エルのそれは、俺たちが持っている転生前の記憶とはまた違うものなのかもしれないけど。……どうなんだろうね?辛い記憶も一緒に呼び覚ましてしまうんじゃないかと、今まで聞けずにいたんだ。この際だから、確認させてもらってもいいかい?」
さっき額を擦り付けられてた場所に残る温度と感触を確かめるように手のひらを押し当てて、頷くよりも曖昧に顎を引く。
僕の躊躇いを見透かすように頭を撫でられ、
「少しでも嫌だとか、怖いと思うような感覚があったらちゃんというんだよ。いいね?」
そう、念を押されて。また震えそうになった手を握り締め小さく頷いた。
「……うん」
「主に知りたいのは、夢に関することじゃないんだ。学園やそこで起こる出来事は一旦おいて、それ以外で。なにか、記憶に残っていることはあるかい?例えば、以前の家族のことだったり。住んでいた部屋だったり。通っていた学校の名前や、勤めていた会社名だったり」
「以前、……の家族??カイシャ……って、なんですか??」
「あー……。わかった。聞いた俺が悪かった。……そうか。…………そう、かぁ」
また知らない単語が出てきたぞ、とか思って聞き返したら。僕の方を痛ましげに見ていたその目が真ん丸くなって、そして……
なんっでよりにもよってそこの情報だけ与えるかなぁ、しかもあんな可憐で稚い護られて然るべき愛らしさマックスのさながら天使のような人懐っこさと可愛さを誇るどっからどう見ても庇護対象でしかない可愛い可愛いエーベルにさぁ……とか小声でブツブツ呟きながら両手で顔を覆ってガックリと項垂れて、膝につくほど背中を丸めた兄様が、ひどく疲れたようなため息を貴族にあるまじき音量で吐き出した。
正直、びっくりした。
「……まあ、そうだな。気を取り直して一つ一つ説明していこうか。まずは、この世界で転生という概念に一番近いのは『精霊返り』かもしれないね」
気を取り直して。の言葉通り、どこか釈然としない困ったような表情はそのままに、訥々と話し出した兄様が口にした言葉を繰り返す。
「精霊返り」
「そう。我が国、シャルノヴァの国教だ。人は死ぬと精霊となり各地を巡り、人々を助け人に幸いを呼び、やがて膨大な陽の力を蓄えた精霊は母の胎へと返り人の子となる……ってやつ」
「あぁ、はい」
「自国内の魔力持ちが消えて久しいこの国の教義としては多少不自然な感じがするけど、まだ魔力を持つ人間が普通にいた時代の名残なのかもね。魔力の素になるとも言われる精霊が、人の胎に宿ることで子を成せる。と考えられていたからこそ、魔力による妊娠……という、普通に考えたらあり得ないような技術もすんなり受け入れられたんだろう」
「兄様、……たちの認識としては、受け入れがたいもの、なんですか?」
今じゃ貴族だけでなく庶民の間でも当然の権利として、元々そうなるのが自然とでもいうように浸透している同性同士での婚姻や妊娠。
兄様の、どことなくそれに不自然さを感じているような物言いが少しだけ心に引っかかってしまい、まだ情報整理が追いついていないものの、それでも兄様が話してくれたことを疑っているわけじゃないってことをなんとか伝えてあげたくて、『たち』って言葉を付け足す。
と、兄様がほんの少しだけ答えあぐねるような様子を見せ、曖昧に微笑んだ。
「俺はこの世界で生まれ育って生活してきた側だからね。俺『たち』と、簡単には一括りにはできない部分はあるにはあるけど、兄様が元いた世界では言葉通りあり得ないことだったかな。でもどちらかといえば俺は、エルの兄でありハリスン公爵家嫡男デノラ・ハリスンとしての意識の方が強いから、この世界の常識や教えに違和感は抱いていないよ。転生前の知識と照らし合わせると『不自然』なことなんだろうな、程度の認識であって」
「そうなんだ」
所々、深く問い尋ねてみたいセリフはあった。けど、今のままじゃ理解できるかも怪しすぎる気がしてその部分は聞き流し、とりあえず兄様は最初から変わらず兄様のままだったという事実にホッと胸を撫で下ろす。
「うん。いい?続けるよ?」
「あ!はいっ」
ホッとした瞬間を狙ったように声をかけられ、咄嗟に勢い込んで返事をしたらクスリと笑われて。
思わず視線を尖らすと、宥めるように親指の腹で目元をひと撫でされた。
「兄様が元いた世界では生まれ変わり、ともいうんだけどね。別の世界で生きて一度死を迎え、それからここで新たな生を受け、エルが夢で見た『俺』とは異なる今の俺がある。別の世界で生きていた頃の記憶もまた同時に有していた、というのがこの世界に確かに在ったはずの『悪役令息の兄デノラ・ハリスン』という役割から外れてしまった主な理由だな。まあ、……つまりザックリ大雑把にまとめると。彼が口にした『転生者』というのは、その『もう一つの現実』で起こったはずの全てをあらかじめ知識として授けられた上で、この世に生まれ落ちた人間の総称。ということだ」
「なんでここまで色々言ってきたのに、いきなりザックリまとめようとするんですか……やっと理解できそうな感じになってきてたのに……」
「だからね。あのパージュも、『もう一つの現実』が辿る物語の結末や、この先『起こったであろうこと』などをあらかじめ把握しているということ」
今までのはなんだったんだ、って困惑と恨みがましさを込めた目で相手を軽く睨むと、僕とは真逆の。それはもうすっきりサッパリしたと言わんばかりに晴れやかな顔をした兄様にまた頭を撫でられた。
いくつになっても子供扱いが酷い。……それを嫌だと思わない僕も僕でどうなんだ、って話ではあるんだけど。
「ただ。把握している、とはいっても。それほど身構える必要もないんじゃないかな。さっきも言ったろう?俺が知っている世界の流れとは随分違ってきているって」
そう言われて、思い浮かぶのはここに来る途中僕たちのことを呼び止めたケルネールス様のあの、悪事を見咎められて叱られるのを待つ子供みたいな。決まりの悪そうな顔と、縋るような目つき。
もしかしたら。
兄様が知っていることに比べれば、僕が夢で見たあれらは兄様のいう『もう一つの現実』で起きていたことのほんの一部でしかないのかもしれないけど。
それでも、違うとハッキリわかるのは目の前のこの兄様だけじゃなく、ケルネールス様も。イヴェリン様も。……ジョゼフ様は、パージュとまだ出会ってもいないからなんとも言えないとはいえ。
よくよく考えて思い返してみれば、卒業パーティーの時に僕に婚約破棄を言い渡してくるはずのレオンハルト様の反応や態度ですら。
追体験のような感覚で頭の中を通り過ぎた、最悪な夢で無理矢理見させられた諸々とだいぶ異なっている気がしなくもない。
レオンハルト様の態度が冷たいのは夢で見たとおりではあるんだけど、夢の中の僕が一々腹を立てて関わりに行くからこそ、その度ギスギスした会話と雰囲気が発生していただけであって。向こうからの接触はほとんどなかったはず。
なのに、今は言い掛かりでしかないことをわざわざ僕のところにまで言いにくる始末。それを思えば。だいぶ、違う……よね??
イヴェリン様に至っては、今の今まで会話らしい会話をした覚えがないし。もちろんパージュが現れてから、の話ではあるけど。昔はごくごく良好な関係を築けていたと思う。でも今は。一定の距離を置いて遠くから探るような、何かを観察しているかのような目を向けられるだけ。
なんだけど……
「……僕も、そう思う」
「ん?」
「流れが、違うって話」
「ああ」
ポソポソ、っと唇を擦り合わせて囁くと。ふっと表情をやわらげて兄様が笑った。
「紅茶が冷めてしまったね」
「いいです。冷たい方が」
熱った口の中を潤すように、体温よりも低い紅茶を喉に通す。
乾きが癒えてホッと一息ついたところに、
「そうだ。一つ訂正しておかないといけないことがあった。少し前に俺が、パージュが魅了を使える可能性は低いと断言してしまったことは覚えているかい?……いや、有り得ないといって完全に否定したんだったかな」
同じようにカップを傾け、紅茶を一口飲んだ相手がそう切り出した。
「ごめんね、エル。俺はほんの少しだけ、お前に嘘をついた」
「え」
「魔力持ちでない者が魅了を使う方法」
「えっ」
突然の告白を聞いて呆気に取られ、まさかという思いで身を強ばらす。
「実はあるんだよ。一つだけ」
うちの家にとっての重大事項を打ち明ける時のような真剣な面持ちで声を潜めた兄様が、膝の上でゆっくりと指を組んだ。そして、重々しい態度はそのままに口を開く。
「彼の家の資力を前提とするならば、まず無理だろうと。端からそう決めつけていたんだが。パージュが転生者なら話が変わってくる」
「……兄様。なんか、いつの間にか呼び捨てに」
たった今気づいた変化に思わず指摘を入れると、イラズラっぽい笑みを浮かべた相手が至極楽しそうに片眉を上げた。
「エネミー判定がついたって言っただろ?呼び捨てでも上等なくらいだ。殿下に至っては、本当なら浮気性のクソ王子とでも正面切って罵ってやりたいくらいなんだがね。ほら、お互い立場ってものがあるから。まったく、貴族の世界は面倒事が多すぎて嫌になる」
「……ハハ」
……っていう空笑い以外で、どう返すのが正解なんだろ。これ。
煮え切らない僕の返しにも頓着せず、兄様が「まずは『しゅじんこうほせい』についてなんだけど」とか勝手に話を進め始めたものだから、たまらずアタフタ両手を振る。
「ま、……待ってっ」
「ああ、大丈夫大丈夫。さっきの話よりは込み入ったものじゃないから。『主人公補正』というのはね。簡単にいうと。この世界の『主人公』というだけで相手からの好感度、……っと。そうだな。んー……普通の好意だけではなく、恋心・恋情・愛情・性愛が育ちやすい条件が揃っている上に、一定の距離以上に近づいたり、その状態で言葉を交わしたり、相手と軽く触れ合ったりした場合、異常なほどの恋情を対象の心に植え付けられる素質を持っている、って感じかな。しかも、生まれながらにして」
「それって、……完全に魅了魔法なんじゃ、」
聞けば聞くほど頭を抱えたくなるパージュの、その存在自体の厄介さに軽く言葉を失っていると、
「似たようなものではあるだろうね。でも、魔法ではないよ。それよりずっと危険かもしれない。対象の視界に映り込む、それだけの行動で相手に恋心を芽生えさせることさえできるんだから」
兄様も難しげな顔つきで自分の顎に指を当てた。
「……こわぃ」
レオンハルト様をはじめ、周囲にいる人たちの態度の変化と僕への風当たりの強さの遍歴を頭の中で辿りながら、もしかしたらそこかしこに介在していたかもしれないパージュの影響に思いを馳せていたせいで語尾が引き攣れる。
「本当に。怖いよねぇ~。幸い俺は、精神が『もう一つの現実』内にいる俺じゃなかったからなのか、全くもって。1ミクロンたりとも。食指が動いた試しがないんだけどね。アレよりよっぽどエルの方が可愛らしいし魅力的だ。いや、あんなものと比べようとか考えること自体が烏滸がましい。今日も完ッ璧に!最高に可愛いよ、我が愛しの弟!」
「…………あ、りがとうごさいます?」
不安の方に傾いてた僕の気持ちを汲み取ってくれたのかと思いきや、なぜかいつも以上に大袈裟な褒め言葉を投げかけられて。
咄嗟に受け止めきれず、首が傾いだ。
あの、兄様。今。その兄バカ全開のセリフ、必要ありました??
一瞬思考が止まったおかげで、濁流のように押し寄せてきていた、アレも?コレも??っていう、どうやっても答えは得られないであろう無駄な疑心暗鬼からは抜け出せたけど。
「で、厄介ついでにこちらが本題だ。魔力関係なしに魅了を使える方法。これも『主人公補正』のうちなのか、それとも主人公の特権とでもいうのか。中には、使うことで好感度を上げる……つまりは、主人公への恋心を増幅させるアイテムなんかも出てくるんだけど。……まあ。こちらの世界の常識に当て嵌めると普通にアウトだね」
「……あうと、」
「うん。今回の場合は完全に違法」
気抜けた仕草で片手をヒラヒラ振ってみせた相手が、動作とは裏腹に強い口調で断言して深く頷く。
「今回、……って?」
「元々この世界で作られ取引されている物ではあるんだけどね。同時に。使用範囲からして厳しく規制されている劇物扱いの製品なんだよ」
─────────────────
長くなるからと2話に分けますと言い置いたはずが、後半も分断するハメになりました。
実質的な13話、前中後編の3話構成に。次でやっと王子が動きます。あと、本編も20話くらいで終わるかと。
遅々として進まない話にお付き合い下さって本当にありがとうございます。
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復讐不向きな主人公×ツンツンクーデレな兄ちゃん
彼氏に遊ばれまくってきた主人公が彼氏の遊び相手に殺され、転生後、今度こそ性格が終わっている男共を粛清してやろうとするのに、情が湧いてなかなか上手くいかない。
そんな中、ゲームキャラで一番嫌いであったはずのゲスい悪役令息、今生では兄に当たる男ファルトの本性を知って愛情が芽生えてしまい——。
となるアレです。性癖。
何より、対人関係に恵まれなかったせいで歪んだ愛情を求め、与えてしまう二人が非常に好きなんですよね。
本当は義理の兄弟とかにしたほうが倫理観からすると良いのでしょうが、本能には抗えませんでした。
今日までの短編公募に間に合わなかったため供養。
プロットはあるので、ご好評でしたら続きも載せたいなと思っております。
性癖の近しい方に刺されば、非常に嬉しいです。
いいね、ご感想大変励みになります。ありがとうございます。
おしまいのそのあとは
makase
BL
悪役令息として転生してしまった神楽坂龍一郎は、心を入れ替え、主人公のよき友人になるよう努力していた。ところがこの選択肢が、神楽坂の大切な人を傷つける可能性が浮上する。困った神楽坂は、自分を犠牲にする道を歩みかけるが……
主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。
小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。
そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。
先輩×後輩
攻略キャラ×当て馬キャラ
総受けではありません。
嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。
ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。
だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。
え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。
でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!!
……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。
本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。
こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。
愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない
了承
BL
卒業パーティー。
皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。
青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。
皇子が目を向けた、その瞬間——。
「この瞬間だと思った。」
すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。
IFストーリーあり
誤字あれば報告お願いします!
メインキャラ達の様子がおかしい件について
白鳩 唯斗
BL
前世で遊んでいた乙女ゲームの世界に転生した。
サポートキャラとして、攻略対象キャラたちと過ごしていたフィンレーだが・・・・・・。
どうも攻略対象キャラ達の様子がおかしい。
ヒロインが登場しても、興味を示されないのだ。
世界を救うためにも、僕としては皆さん仲良くされて欲しいのですが・・・。
どうして僕の周りにメインキャラ達が集まるんですかっ!!
主人公が老若男女問わず好かれる話です。
登場キャラは全員闇を抱えています。
精神的に重めの描写、残酷な描写などがあります。
BL作品ですが、舞台が乙女ゲームなので、女性キャラも登場します。
恋愛というよりも、執着や依存といった重めの感情を主人公が向けられる作品となっております。
ミリしら作品の悪役令息に転生した。BL作品なんて聞いてない!
宵のうさぎ
BL
転生したけど、オタク御用達の青い店でポスターか店頭販促動画か何かで見たことがあるだけのミリしら作品の世界だった。
記憶が確かならば、ポスターの立ち位置からしてたぶん自分は悪役キャラっぽい。
内容は全然知らないけど、死んだりするのも嫌なので目立たないように生きていたのに、パーティーでなぜか断罪が始まった。
え、ここBL作品の世界なの!?
もしかしたら続けるかも
続いたら、原作受け(スパダリ/ソフトヤンデレ)×原作悪役(主人公)です
BL習作なのであたたかい目で見てください
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