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7話
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ドンッだかバンッだかゴンッだか判別がつかないすごい音を立てて、重い木の扉が壁に叩きつけられた。
静寂を破った勢いのあるその音にビクッと肩を揺らし、恐る恐る入り口の方を窺い見る。
「……レオ様」
開け放たれたその場所に、思いもかけなかった人の姿を認めて目を瞠った。
走ってきたのか、軽く息を乱したその人の愛称を思わず口にしてしまった自分に気づいて唇を引き結ぶ。
僕に関する悪い噂が立ち始めた頃に『お前にその名を呼ぶ資格はない』と告げられてから、ずっとそれに従ってきたのに。
ビックリしすぎると咄嗟に出るもんなんだなぁー……。とか、他人事のように考えつつも、また理不尽に詰められても困る。
「申し訳ありません」
指摘される前にとりあえず謝っておくかと先手を打った。
でも本人は『レオ様』呼びを咎めるでもなく、むしろ何を言っているんだと言わんばかりの顰めっ面で僕を見つめてきた。
「それで。レオンハルト様、いかがなさいました?」
わけがわからないものの怒られなかっただけよしとして、動揺を抑え込んで改めて声をかけると、途端にその顔がムッとしたように歪められる。
「婚約者以外の男と、二人っきりで室内に籠るとはどういう了見だ」
……それ、あんたが言うか。
不機嫌そうな低い声で、けどどこか言い難そうな口調で紡がれたソレに、内心呆れ果ててツッコみを入れそうになりながらも笑顔を取り繕う。
ここでつられて不機嫌になったり、同じ土俵に立って責めたりすると、かえって疚しいことがありました感が出そうな気がしたため努めて穏やかに言葉を発した。
「ケルネールス様はそんな軽薄な方ではありませんよ。先生にここの片付けを頼まれたもののご覧の通りの状況ですし、僕が困っているのを見かねて手助けしてくださっただけです。そもそも僕に下心を持って近づこうとする人なんかいるはずないじゃないですか」
特に、貴方から見放された今となってはなんの利用価値もないんですから。
言ってて虚しくなる。
そんなふうに、嘆息混じりに吐いたセリフに一瞬。ケルネールス様の目が泳いだ。
慌てて相手を見上げ、さらに若干顔を背けられるに至って冷や汗が浮く。
……え、待って。違うよね?下心とか……。駆け引きとか。そういうのとは一切無縁な人だと思ってたんだけど、違うの??これが僕を油断させるためとか、王太子殿下の婚約者の座から完全に引き摺り降ろすための作戦だったとか言われたら、部屋で一人になった瞬間泣く自信がある。
縋るように見てしまった僕の方を一瞥して、気まずそうに自身の首を撫でたケルネールス様が小さく息を吐いた。
「エ、……あー……、見るからに、困っている様子だったからな。手を貸すのは当然だろう」
そして気を取りなおすような咳払いののち、後ろめたさなんか微塵もないむしろ堂々とした態度でレオンハルト様に返してくれたことにホッとする。
よかった。あらぬ疑いを抱いたせいでうっかり人間不信になるとこだった。
あと、期待しない。期待して裏切られるとかなり辛いのは学習済みだったから、いらぬ期待も抱かないでおこう。急に態度が変わった理由とか、むしろどうでもいい。多分、過度に期待せず真相を知らないでいる方が心穏やかに過ごせそう。
ってことで、僕の気持ちにもひと段落がついた。それと。
「誤解は解けましたか?」
そもそも、他に好きな人がいて婚約者を婚約者として扱ってこなかった人が、今さら何をそんな気にする必要があるんだ。
言いがかりにも等しいことを言われて気分は良くなかったが、こっちはこっちで深く考えない方がいいような気がする。その度に振り回されるのも癪だし。
笑顔の圧を加えて隠すことなく『見ての通り忙しいんです!手伝う気がないなら早くどっか行ってくれませんか?』を何重にも何重にもマイルドにした言葉で伝えると、しばらくパクパク口を開閉しているだけだったレオンハルト様が堪りかねたように、
「……もういいっ!!」
と怒鳴って、そのあと感じ悪く鼻を鳴らした。
まさかの。短期間で二度も聞くことになろうとは的なセリフの『もういい!』……。
癇癪を越えて、駄々っ子ムーブか??そんなタイプの人だったっけ??
まわりに侍らす人が変わると、つられて性格も変わんのかな……もしかして。
なに、もういいって。自分から絡んできておいて、その捨て台詞はどうかと思う。
出ていく気満々なところ悪いけど、……ケルネールス様の顔を是非とも振り返って見てやってほしい。一目でいいから。
自分の主からあらぬ疑いをかけられた挙句に八つ当たりみたいなものを受けて、なにがなにやら……って感じの。この人のここまでの困惑顔、僕も初めて見たんだけど。
せめてフォローの一つもしていってくれないもんかな。そんな感想を心の内で呟いている最中。
「あー!レオ!!こんなところにいたんだ!!」
室内に漂う微妙な空気を打ち壊すような甲高い甘え声が廊下の向こうから聞こえてきた。
「教室にも食堂にもいなかったから探しちゃった。早くお茶しに行こうよ」
開け放たれたままだったそこから、ピョコピョコ弾むような足取りで荒れた部屋に入ってきたパージュが蕩けるような笑顔を浮かべてレオンハルト様の腕にしがみ付く。
割り切っているとはいえ見ていて面白い気分になれるわけでもないやり取りを横目に、片付けを続行するため床の本を2冊3冊と拾い上げた。
……あ。こんなとこにあった。
先生から聞いていた通りの繊細な刺繍が施された分厚い本。
ずっと読むのを楽しみにしていたはずのソレを見付けたのに、嬉しい以上に疲労感が募る。
「エーベル、手伝いにきたー……ぞ。……と。え、もしかして、お邪魔だった??」
「……そんなことない。助かった。そっち、頼んでもいい?」
出入り口を塞ぐように佇む二人に阻まれ一瞬足を止めたデュリオに、ケルネールス様がいるところよりも奥まった書架の前の床を指差して伝える。
パージュが来たからにはそっちに行くものと思い込んでいたケルネールス様は、人目も憚らずイチャつく二人に目もくれず、淡々と床板の発掘を進めてくれていた。
「聞いてたよりヤベェなこの部屋。あの先生、綺麗好きなイメージあったけどこっちが本性?」
入ってすぐの目につくところにいる二人はともかく、いるとは思ってもみなかったらしいケルネールス様の存在に気づいたデュリオが怪訝そうに眉を顰めたけど、黙って手を動かす相手の様子を見てすぐに警戒を解いたらしかった。
「どうだろ」
苦笑いで答えて、違和感を訴え始めた腰を伸ばしつつ探していた本が見つかったことを告げると、
「じゃあもう、テキトーなとこで切り上げてもいいんじゃね?無理だろ」
一つも手をつけないうちにデュリオがさっさと白旗を上げる。
「……まあ、そうだね。とりあえず、床が全部見えるようになったらやめようかな」
「床が全部って……どんだけ時間かかんだよ」
すでにウンザリした顔を見せるデュリオと僕が話していると突然、フワフワした何かが傍らを通り過ぎていった。
飛地のような本の合間を爪先で踏み、鳶色の癖っ毛を揺らしながらケルネールス様のところまで駆け寄っていったパージュが今までレオンハルト様にしていたのと同じようにその人の腕を取る。
「ルネも行こ!」
断られることなどないとわかっているからか、一緒に行くことが決定済みみたいな口調でケルネールス様の愛称を口にし、両手で掴んだ腕をグイグイと引いた。
「俺は……」
それに対してわずかに言い淀み、
「いや。今日はやめておこう。このあとイヴェリンも誘いに行くんだろ?三人で楽しんできてくれ」
ふっと目元を緩めてパージュに笑いかけながら、取られた手をさりげなく外していた。
「え~!なんで~?!」
「自分から手伝いを申し出ておきながら、途中で放り投げるのも気分が悪い」
拗ねるように頬を膨らませたパージュへと答えを返したケルネールス様の、共に行けない理由が理由だっただけに慌てて取りなす。
「ケルネールス様。デュリオも来てくれたことですし、もう十分助けていただいたので……」
気にせずパージュ様の方を優先してください!って言いたかったのに、ありありとした不満を浮かべたデュリオが僕の上着を引っ張って邪魔してきた。なんでだよ。
目で『なんだよ』と訴えかけるも、睨まれたデュリオは怯むことなく頑なに首を振る。そうこうしているうちに、
「二人より、三人でやる方が早いだろ」
当然のことのようにケルネールス様が言い放ち、
「あ、やっぱオレも頭数に入ってるんスね……ハイハイ」
心底嫌そうな顔をしたデュリオが項垂れて呟いた。
その反応……もしかしなくても、ケルネールス様が手伝ってくれるんなら自分はいなくてもいいか!みたいに思ってたな??
来てくれただけありがたいとはいえ、あまりに友達甲斐のないデュリオの発言を聞いて、真後ろに立つ身体目掛けて肘を叩き込む。
「……だってさぁ。この状態見て、やる気が起きるヤツいるか??」
グッとか声を詰まらせたあと、またブツブツ言い出した相手をスルーし、床の本を拾って埃を払った。
僕が耳を貸さなかったことで諦めたのか、深~いため息を吐きつつデュリオが離れていく。
こっそり様子を窺っていると渋々本に手を伸ばし、書いてあるコードを確かめ始めたのが見えて、渋っていた割に素直に従うその真面目さがなんともおかしかった。
友達甲斐がないとか一瞬でも考えてしまった自分を反省しつつも笑いを噛み殺し、再び身を屈めた時。
「次は絶対だからね!」
面白くなさそうなパージュの声が部屋の中に響いた。寂しそうな笑顔を浮かべてケルネールス様を見上げ、そう一言言い置いたその子がクルリと踵を返す。
行きと同じく爪先立ちで飛び跳ねるようにして戻ってきて、
「……悪役令息のクセに」
すれ違いざま。僕にしか聞こえないような憎々しげな小さな声でそう囁いて、振り向くこともなく一直線にレオンハルト様の腕に抱きつきにいく。
それを目で追って、止まりかけていた息を浅く吐き出した。
……今、悪役令息って言った??
言ったよね??え??
どういうことだ??
だって、それは……
静寂を破った勢いのあるその音にビクッと肩を揺らし、恐る恐る入り口の方を窺い見る。
「……レオ様」
開け放たれたその場所に、思いもかけなかった人の姿を認めて目を瞠った。
走ってきたのか、軽く息を乱したその人の愛称を思わず口にしてしまった自分に気づいて唇を引き結ぶ。
僕に関する悪い噂が立ち始めた頃に『お前にその名を呼ぶ資格はない』と告げられてから、ずっとそれに従ってきたのに。
ビックリしすぎると咄嗟に出るもんなんだなぁー……。とか、他人事のように考えつつも、また理不尽に詰められても困る。
「申し訳ありません」
指摘される前にとりあえず謝っておくかと先手を打った。
でも本人は『レオ様』呼びを咎めるでもなく、むしろ何を言っているんだと言わんばかりの顰めっ面で僕を見つめてきた。
「それで。レオンハルト様、いかがなさいました?」
わけがわからないものの怒られなかっただけよしとして、動揺を抑え込んで改めて声をかけると、途端にその顔がムッとしたように歪められる。
「婚約者以外の男と、二人っきりで室内に籠るとはどういう了見だ」
……それ、あんたが言うか。
不機嫌そうな低い声で、けどどこか言い難そうな口調で紡がれたソレに、内心呆れ果ててツッコみを入れそうになりながらも笑顔を取り繕う。
ここでつられて不機嫌になったり、同じ土俵に立って責めたりすると、かえって疚しいことがありました感が出そうな気がしたため努めて穏やかに言葉を発した。
「ケルネールス様はそんな軽薄な方ではありませんよ。先生にここの片付けを頼まれたもののご覧の通りの状況ですし、僕が困っているのを見かねて手助けしてくださっただけです。そもそも僕に下心を持って近づこうとする人なんかいるはずないじゃないですか」
特に、貴方から見放された今となってはなんの利用価値もないんですから。
言ってて虚しくなる。
そんなふうに、嘆息混じりに吐いたセリフに一瞬。ケルネールス様の目が泳いだ。
慌てて相手を見上げ、さらに若干顔を背けられるに至って冷や汗が浮く。
……え、待って。違うよね?下心とか……。駆け引きとか。そういうのとは一切無縁な人だと思ってたんだけど、違うの??これが僕を油断させるためとか、王太子殿下の婚約者の座から完全に引き摺り降ろすための作戦だったとか言われたら、部屋で一人になった瞬間泣く自信がある。
縋るように見てしまった僕の方を一瞥して、気まずそうに自身の首を撫でたケルネールス様が小さく息を吐いた。
「エ、……あー……、見るからに、困っている様子だったからな。手を貸すのは当然だろう」
そして気を取りなおすような咳払いののち、後ろめたさなんか微塵もないむしろ堂々とした態度でレオンハルト様に返してくれたことにホッとする。
よかった。あらぬ疑いを抱いたせいでうっかり人間不信になるとこだった。
あと、期待しない。期待して裏切られるとかなり辛いのは学習済みだったから、いらぬ期待も抱かないでおこう。急に態度が変わった理由とか、むしろどうでもいい。多分、過度に期待せず真相を知らないでいる方が心穏やかに過ごせそう。
ってことで、僕の気持ちにもひと段落がついた。それと。
「誤解は解けましたか?」
そもそも、他に好きな人がいて婚約者を婚約者として扱ってこなかった人が、今さら何をそんな気にする必要があるんだ。
言いがかりにも等しいことを言われて気分は良くなかったが、こっちはこっちで深く考えない方がいいような気がする。その度に振り回されるのも癪だし。
笑顔の圧を加えて隠すことなく『見ての通り忙しいんです!手伝う気がないなら早くどっか行ってくれませんか?』を何重にも何重にもマイルドにした言葉で伝えると、しばらくパクパク口を開閉しているだけだったレオンハルト様が堪りかねたように、
「……もういいっ!!」
と怒鳴って、そのあと感じ悪く鼻を鳴らした。
まさかの。短期間で二度も聞くことになろうとは的なセリフの『もういい!』……。
癇癪を越えて、駄々っ子ムーブか??そんなタイプの人だったっけ??
まわりに侍らす人が変わると、つられて性格も変わんのかな……もしかして。
なに、もういいって。自分から絡んできておいて、その捨て台詞はどうかと思う。
出ていく気満々なところ悪いけど、……ケルネールス様の顔を是非とも振り返って見てやってほしい。一目でいいから。
自分の主からあらぬ疑いをかけられた挙句に八つ当たりみたいなものを受けて、なにがなにやら……って感じの。この人のここまでの困惑顔、僕も初めて見たんだけど。
せめてフォローの一つもしていってくれないもんかな。そんな感想を心の内で呟いている最中。
「あー!レオ!!こんなところにいたんだ!!」
室内に漂う微妙な空気を打ち壊すような甲高い甘え声が廊下の向こうから聞こえてきた。
「教室にも食堂にもいなかったから探しちゃった。早くお茶しに行こうよ」
開け放たれたままだったそこから、ピョコピョコ弾むような足取りで荒れた部屋に入ってきたパージュが蕩けるような笑顔を浮かべてレオンハルト様の腕にしがみ付く。
割り切っているとはいえ見ていて面白い気分になれるわけでもないやり取りを横目に、片付けを続行するため床の本を2冊3冊と拾い上げた。
……あ。こんなとこにあった。
先生から聞いていた通りの繊細な刺繍が施された分厚い本。
ずっと読むのを楽しみにしていたはずのソレを見付けたのに、嬉しい以上に疲労感が募る。
「エーベル、手伝いにきたー……ぞ。……と。え、もしかして、お邪魔だった??」
「……そんなことない。助かった。そっち、頼んでもいい?」
出入り口を塞ぐように佇む二人に阻まれ一瞬足を止めたデュリオに、ケルネールス様がいるところよりも奥まった書架の前の床を指差して伝える。
パージュが来たからにはそっちに行くものと思い込んでいたケルネールス様は、人目も憚らずイチャつく二人に目もくれず、淡々と床板の発掘を進めてくれていた。
「聞いてたよりヤベェなこの部屋。あの先生、綺麗好きなイメージあったけどこっちが本性?」
入ってすぐの目につくところにいる二人はともかく、いるとは思ってもみなかったらしいケルネールス様の存在に気づいたデュリオが怪訝そうに眉を顰めたけど、黙って手を動かす相手の様子を見てすぐに警戒を解いたらしかった。
「どうだろ」
苦笑いで答えて、違和感を訴え始めた腰を伸ばしつつ探していた本が見つかったことを告げると、
「じゃあもう、テキトーなとこで切り上げてもいいんじゃね?無理だろ」
一つも手をつけないうちにデュリオがさっさと白旗を上げる。
「……まあ、そうだね。とりあえず、床が全部見えるようになったらやめようかな」
「床が全部って……どんだけ時間かかんだよ」
すでにウンザリした顔を見せるデュリオと僕が話していると突然、フワフワした何かが傍らを通り過ぎていった。
飛地のような本の合間を爪先で踏み、鳶色の癖っ毛を揺らしながらケルネールス様のところまで駆け寄っていったパージュが今までレオンハルト様にしていたのと同じようにその人の腕を取る。
「ルネも行こ!」
断られることなどないとわかっているからか、一緒に行くことが決定済みみたいな口調でケルネールス様の愛称を口にし、両手で掴んだ腕をグイグイと引いた。
「俺は……」
それに対してわずかに言い淀み、
「いや。今日はやめておこう。このあとイヴェリンも誘いに行くんだろ?三人で楽しんできてくれ」
ふっと目元を緩めてパージュに笑いかけながら、取られた手をさりげなく外していた。
「え~!なんで~?!」
「自分から手伝いを申し出ておきながら、途中で放り投げるのも気分が悪い」
拗ねるように頬を膨らませたパージュへと答えを返したケルネールス様の、共に行けない理由が理由だっただけに慌てて取りなす。
「ケルネールス様。デュリオも来てくれたことですし、もう十分助けていただいたので……」
気にせずパージュ様の方を優先してください!って言いたかったのに、ありありとした不満を浮かべたデュリオが僕の上着を引っ張って邪魔してきた。なんでだよ。
目で『なんだよ』と訴えかけるも、睨まれたデュリオは怯むことなく頑なに首を振る。そうこうしているうちに、
「二人より、三人でやる方が早いだろ」
当然のことのようにケルネールス様が言い放ち、
「あ、やっぱオレも頭数に入ってるんスね……ハイハイ」
心底嫌そうな顔をしたデュリオが項垂れて呟いた。
その反応……もしかしなくても、ケルネールス様が手伝ってくれるんなら自分はいなくてもいいか!みたいに思ってたな??
来てくれただけありがたいとはいえ、あまりに友達甲斐のないデュリオの発言を聞いて、真後ろに立つ身体目掛けて肘を叩き込む。
「……だってさぁ。この状態見て、やる気が起きるヤツいるか??」
グッとか声を詰まらせたあと、またブツブツ言い出した相手をスルーし、床の本を拾って埃を払った。
僕が耳を貸さなかったことで諦めたのか、深~いため息を吐きつつデュリオが離れていく。
こっそり様子を窺っていると渋々本に手を伸ばし、書いてあるコードを確かめ始めたのが見えて、渋っていた割に素直に従うその真面目さがなんともおかしかった。
友達甲斐がないとか一瞬でも考えてしまった自分を反省しつつも笑いを噛み殺し、再び身を屈めた時。
「次は絶対だからね!」
面白くなさそうなパージュの声が部屋の中に響いた。寂しそうな笑顔を浮かべてケルネールス様を見上げ、そう一言言い置いたその子がクルリと踵を返す。
行きと同じく爪先立ちで飛び跳ねるようにして戻ってきて、
「……悪役令息のクセに」
すれ違いざま。僕にしか聞こえないような憎々しげな小さな声でそう囁いて、振り向くこともなく一直線にレオンハルト様の腕に抱きつきにいく。
それを目で追って、止まりかけていた息を浅く吐き出した。
……今、悪役令息って言った??
言ったよね??え??
どういうことだ??
だって、それは……
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