銃弾と攻撃魔法・無頼の少女

立川ありす

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第13章 神話怪盗ウィアードテールズ

戦闘2-1 ~銃技&戦闘魔術vs魔法少女

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 場繋ぎライブを控えた委員長。
 彼女を連れ出そうと、ウィアードテールに扮して梨崎邸に押し入った舞奈と明日香。
 だが公安の魔道士メイジを辛くも退けた2人とは別に、屋敷には何者かが侵入していた。

 宝物庫に赴いた舞奈たちを待ち受けていたのは、本物のウィアードテールだった。
 そして問答の末、神話怪盗ウィアードテールは舞奈たちに襲い掛かってきた。

「イッツ、ショータァイム!」
 ウィアードテールはステッキを振りまわしながら叫ぶ。
 途端、まばゆい七色の光が周囲を満たした。

 舞奈はとっさに顔をかばって目を守る。
 そしてウィアードテールの気配を探る。

 ……だが、いない。
 訝しみつつ目を開ける。

 世界は変容していた。
 正確には、目に映るすべてのものが歪んでいた。
 だだっ広い部屋に並んだガラスケースや、高い天井を支える柱、壁に飾られた絵画がぐにゃぐにゃと揺らめき、形を変える。

 舞奈はそれを、特殊な結界だと思った。

 だが、すぐに認識阻害の一種だと気づいた。
 目で見えるものと、空気の流れが教えてくれるものに差異があった。

 そう、宝物庫の内部は数分前と変わらない。
 先日に萩山光が使った、外側からは迷彩効果のある結界とは真逆だ。

 なるほどウィアードテールが操る混沌魔術は、狂気の魔術だ。
 認識阻害の手札も多い。

 舞奈たちにかけられた術も、そんな術のひとつ。
 幻を見せ、周囲を未知の空間だと錯覚させ、混乱させて精神力を削る魔術だ。

 この手の術が厄介なのは、精神攻撃の内容が対象の心からあらわれることだ。
 恐怖、絶望、種々様々な他の想い……術者の魔力を呼び水にして対象の記憶の底から感情の源を呼び起こし、幻覚として賦活する。

 以前に三剣悟の弟の刀也が美佳の魔力に乗っ取られた際、舞奈は美佳の幻を見た。
 舞奈の心の中の一番弱い部分から、懐かしい思い出が呼び起こされたのだ。

 実は4年生の頃にも、小夜子に同等の術をかけられて昏倒したことがある。

 直近では、滓田妖一との決戦で明日香がキムに類似の術をかけた。
 無敵の完全体へと転化したはずの奴は、一度は自身を滅ぼした小夜子の幻を記憶の奥底から呼び覚まされ、恐怖と絶望に負けて自壊した。

 それと同じ現象が、この後にくる。
 そう思った次の瞬間――

 ――にゃ~~

 みゃー子が鳴いた。

 ――にゃ~~
 ――にゃ~~

 ケースというケース。
 絵画という絵画。
 それらすべてに頭のおかしいクラスメートが映りこんでいた。

 視界いっぱいに溢れる沢山のみゃー子が、思い思いに珍妙な遊びに勤しんでいる。
 たしかに、これはわけがわからない。
 混乱した……というか困惑した。

 だが舞奈は礼儀正しく無視する。

 なるほどウィアードテールは舞奈たちを狂気で無力化したかったらしい。
 おそらく廊下の警官たちを昏倒させたのと同じように。

 だがバカにとって、狂気とは『わけがわからない』程度のものだ。
 考えることをしない陽キャの狂気は『軽い』。

 そもそも周囲のうねうねだって、ただ風景が揺れているだけだ。
 ……正直なところ、明日香が表で張った結界の方がよほど病的だと舞奈は思う。
 一体どんな鬱屈した人生を送ってきたのやら。

 それに対してちんけな狂気のできそこないを、舞奈の脳はみゃー子だと認識した。
 舞奈の脳内では、わけのわからないもの=みゃー子だ。
 そんなみゃー子の奇行に対する対処法を、舞奈は知っている。

 つまり気にしないことだ。

 ……そのようにして舞奈は対象を無力化する混沌魔術を防ぎ切ってしまった。
 みゃー子の奇行が、いわば狂気に対する予防接種になっていたらしい。
 その事実が、まったくもって気に入らなかった。

 側の明日香も憮然としているところを見ると、同じように乗り切ったらしい。

「うっそー!? あんたたち、なかなかやるわね」
 ウィアードテールは驚いてみせる。
 視界いっぱいのみゃー子が忽然と消え、周囲は元の宝物庫に戻る。

「軽く言いやがって」
 舞奈はウィアードテールをジト目で見やる。

 どうやら原理も知らずにこれをしていたらしい。
 流石は『バカ』だ。一方、

「そんなはずは……!?」
 ウィアードテールの肩で、ハリネズミが驚愕する。

 舞奈と明日香が狂気の魔術による精神介入を克服したと正しく理解したのだ。
 彼女は主と違って、混沌魔術について知っている。
 彼女が混沌魔術によって生み出された存在だからだ。

 だが、なんというか……

 この面子の中で、ハリネズミが一番まともなような気がして釈然としない。
 地球上で最も尋常ならざる魔術で創られたスードゥナチュラルなのに。
 そんな狂気とは違うが不愉快な舞奈の気持ちなどお構いなしに、

「こうなったら、接近戦よ!」
 ウィアードテールはステッキを構える。

「望むところだ!」
 舞奈は拳銃ジェリコ941を構える。

 そして、走り出したのは同時だった。
 舞奈の口元がへの字に歪む。
 たまたまタイミングが重なっただけで、断じて動き始めるリズムが同じ訳じゃない。

 一方、明日香は手近なケースの台座に身を潜ませて小型拳銃ワルサー PPKを構える。
 その周囲に氷の盾が出現し、主を守るように浮遊する。

 その間にも舞奈とウィアードテールは立ち並ぶ大型のケースの間を走る。

「えい! えい! えい! ……えいっ!!」
 ウィアードテールは走りながらステッキを振りまわす。
 異界の色に輝く槍が、速さも強さもタイミングもめちゃくちゃに放たれる。
 だが、すべてケースに当たって、弾けて消える。

「……あっぶねぇな」
 舞奈はケースの陰で身をかがめながら舌打ちする。

 あの光の槍は物理的な現象ではない。
 祓魔師エクソシストが放つ粒子ビームでもないし、レーザー光線でもない。
 狂気の魔力をそのまま槍の形に整形して放っている。

 だからエイリアニストにとって比較的、使いやすい術らしい。
 反撃する幻影の魔術に使われるのも同じ術だ。

 その効果のほどは、術者によって、あるいは状況によって千差万別。
 命中した敵を発狂させることも、鋭い槍にして貫くこともできる。

 障害物に当たった場合の反応も同じ。
 今回はケースに当たって消えたが、次の1発は貫通してくるかもしれない。
 1発ごとに何が起こるかわからない未知の魔弾に対して警戒を続けるのは、想像以上に神経をすり減らす。

 それでも普通の相手なら、相手の意図を察して対処することもできる。

 だが相手は『バカ』だ。
 定石も常識も通用しない相手の、手の内を見透かすことは不可能。
 銃声を聞いてから弾丸を避けるような、反応速度だけが勝負だ。

 そんな難敵が、舞奈を集中的に狙っているのが不幸中の幸いか。

 一方、明日香はケースの陰で様子をうかがっている。
 どちらかというと手を出すタイミングがわからないといった感じか。
 生真面目な彼女はバカとは相性が悪すぎる。

「あははははは! えい! えい! それそれー!!」
 ウィアードテールはケースの間を走り回りながら魔弾を撃ちまくる。
 そうする姿もバカ丸出しだ。

 彼女の行為が何かの策なのか、それともただ撃ちまくるのが楽しくなっただけなのかは常人には理解できない。

 あるいは、そんな彼女こそがエイリアニストの本質を体現しているのかもしれない。

 即ち狂気。

 美佳が狂気を捻じ伏せ、正気の支配下に置いていたのとは真逆。
 彼女はそれ自体が狂気なのだ。
 ……悪い意味で。
 いわゆる放送禁止用語の四文字のアレだ。

 そんなウィアードテールは不意に立ち止まる。
 舞奈は警戒する。
 透明な防弾ガラス越しに、不発弾のような敵を見据えて身構える。

 その目前で、ウィアードテールは跳躍した。
 ドレスで強化された身体能力によって、天井に迫るほど跳び上がる。
 巨大なケースを力任せに飛び越える算段か。

 舞奈は上に向かって身構える。
 脚力まかせの跳躍は、飛行の術と違って空中では動けない。
 だから引き金に力をこめ――

 ――だが撃たない。
 なぜなら次の瞬間、ウィアードテールの姿は消えた。
 天井の梁の隙間に吸いこまれるように転移したのだ。

 そして横に跳んだ舞奈の背後に出現し、

「ああっ! 避けた!」
 ステッキを振り下ろした格好のままバランスを崩してつんのめる。
 必殺の一撃のつもりで、後先考えずに思いきり殴りかかったのだろう。
 バカだから。
 それを舞奈は苦も無く避けたのだ。

 そんな舞奈は一挙動で立ち上がりつつウィアードテールの足を払う。

「ふぎゃっ!」
 仕掛けた舞奈が驚くくらい、抵抗もなく足払いが決まる。
 怪盗はアイドルとは程遠い悲鳴をあげて転倒する。

 舞奈は拳銃ジェリコ941を構え、そのまま至近距離で撃つ。

 容赦は無用。
 魔法少女はドレスに込められた非常に強力な付与魔法エンチャントメントで守られている。
 拳銃の大口径弾45ACP程度で傷つくことはない。
 むしろ、このくらいしないと付与魔法エンチャントメントを引きはがすことすらできない。

 だが次の瞬間、ウィアードテールの身体を異次元の色に輝く何かが覆う。
 輝くヴェールは大口径弾45ACPを受け止める。

「土神《ツァトグァ》の鎧か。……ま、そこまで上手くはいかんか」
 舌打ちしつつ跳び退る。

 エイリアニストが操る混沌魔術は3つの術に大別される。
 混沌と狂気の魔力を地水風火に転化する【汚染されたエレメントの生成】。
 魔力で空間と因果律を歪めることによる【混沌変化】。
 魔力を強化し、魔力と源を同じくする精神を操る【狂気による精神支配】。

 今までの戦い方からして、ステッキには後者2つの力しか込められていない。
 そう思っていた。

 だが、それは甘い考えだったらしい。
 切り札を温存するタイプとは思えないので、単に好きじゃないのだろうか。
 バカの考えることはわからん。

 それでも風神ハスター水神クトゥルー火神クトグァ土神ツァトグァはそれぞれ反発する。
 たとえ魔道具アーティファクトを介しても、それらの魔術を併用できるのは熟練の術者だけだ。
 こいつのことじゃない。
 それほど有用な情報じゃないかもしれないが、奴は炎の術だけは使えない。

「うぉーりゃー!」
 間抜けな声とともに、怪盗はステッキを振りかざして跳びかかってくる。
 舞奈は拳銃ジェリコ941の背で受け流す。

「うぉっとっとぉ!」
 ウィアードテールは悲鳴をあげつつ、バランスを崩して派手につんのめる。

 舞奈は困る。
 別に体術の心得があるわけでもないらしい。
 ノリだけで殴りかかってきたのだ。

 かと思えば物理法則を無視した動きで追撃を避け、逆に舞奈に蹴りを見舞う。

「野郎……!」
 セオリー度外視な相手の動きに、流石の舞奈も翻弄される。

 まあ無理もない。
 なにせ相手は混沌魔術の魔法少女だ。
 頭のネジが外れた陽キャの相手は一筋縄ではいかない。

 経験を積んだ公安の術者たちを奇策で破った舞奈だが、それでも定石に縛られていると自覚しないわけにはいかない。

 そう考えて口元を歪めた途端、

「それ!」
 ウィアードテールは跳び退りつつ、手にした何かを投げつけた。
 カードだ。
 予告状と同じデザインのカードをまとめて投てきしたのだ。

 異次元の彩色に輝く数多のカードの各々が、別の軌跡を描いて舞奈に襲い掛かる。
 普通の飛び方じゃない。
 風神ハスターの魔術によって誘導しているのだ。

 舞奈はカードの束を避けるように大きく跳び退る。
 その背後にはガラスケース。
 逃げ場はない。
 ウィアードテールはニヤリと笑う。だが、

「なんですって!?」
 ウィアードテールの肩のハリネズミが驚く。
 舞奈は笑う。

 なぜなら舞奈は身をよじり、最小限の動きでカードを避けたのだ。すべて。

 舞奈に剣は効かない。
 並外れた動体視力と身体能力、空気の流れすら読み取る鋭敏な感覚で避けるからだ。
 同じ理由で、岩の刃のような剣に似た術も通用しない。
 もちろんカードもだ。

 それでも一枚は小さなツインテールの端を薙ぐ。
 そして他のカードと同様に、硬質ガラスのケースに突き刺さる。
 奴は風神ハスターの魔術で誘導するだけでなく、土神《ツァトグァ》の魔術でカードを硬化した。
 かつて美佳が対物ライフルAR50の弾丸を強化したように。

「なんで避けるのよぉ!」
 ウィアードテールは癇癪をおこし、ステッキを振りかざして襲いかかる。
 それなりに高度な先ほどの攻撃の直後にこれだ。

 やれやれと苦笑しながら迎え撃つべく身構えた直後――

「――!?」
 舞奈たちの周囲に、数多の何かがあらわれた。
 幻影だ。
 すべてウィアードテルの姿をしている。

 またしても反撃する幻影の群?
 時間稼ぎか?

 ――否。

「今度は、お前か!?」
 少し離れたガラスケースめがけて怒鳴る。

 この大量の幻影を創ったのは明日香だ。
 先ほどから動きがないと思ったら、術を拡張すべく魔力を賦活していたらしい。

 それにしても、今度の明日香の幻術も酷い出来だ。
 生真面目で融通のきかない彼女は歌もヤバイが、絵心のなさも半端ない。

 現に周囲にあらわれた大量のウィアードテールも、胴の当たりが黒いからのドレスのつもりだろうことはなんとなくわかる。
 顔には誌面映えする大きな目のつもりか虫の複眼みたいな謎物体が2つ並んでいる。
 開いた口は怪物のように裂けていて、鋭いギザギザの歯が生えている。
 肌色をした手足の長さは左右まちまち。
 手にはステッキのつもりであろう禍々しい骨みたいな何かが握りしめられている。

 しかも辛うじてそれと分かるパーツはポニーテール。
 どうやら本物のウィアードテールの幻影を創ろうとしたらしい。

「お前まで、気でも狂ったのか?」
 舞奈は思わず困惑する。

 敵の幻影なんか大量に作られても、敵にとっては目くらましにならない。
 自分の幻影がどれほど大量に出現しても、自分は自分ひとりしかいないからだ。

 しかも今の奴には仲間もいない。

 そもそも奴には、自分の幻影を大量に作り出す手札がある。

 つまり百万歩譲って意図した幻影ができたとしても、こっちの邪魔にしかならない。
 まともな人間なら、そう考えるはずだ。だが、

「ムキー! 何であたしのニセモノがいるのよ!」
 ウィアードテールは舞奈に背を向け、全力で幻影に殴りかかった。

「……は?」
 戸惑う舞奈の目前で、

「わたしが作ったんじゃないのに! この! この! 消えなさい!」
「おちついてウィアードテール! それは今、相手をするべき敵じゃないわ」
 主の奇行をハリネズミがあわてて止める。

「……どういうことだ?」
 舞奈は油断なく身構えながらも、困惑を隠すのも忘れて背後に問う。

「……目につくものに、とりあえず反応すると思ったのよ」
 明日香も驚きを隠せぬ口調で答えた。
 どうやら明日香も、これが本当に効果があると確信まではしてなかったようだ。

「奴の動きがわかるのか?」
「……今ので確信できたわ。彼女の行動パターン、小室さんとほぼ同じよ」
「みゃー子と?」
 オウム返しにそう答え、「なるほどな」とひとりごちる。
 気づいてしまえば大したことはない。

「あー! 見つけた!」
「いや、さっきから同じ場所にいたろ!」
「ははーん、わかったわよ! ニセモノにまぎれて襲ってくるつもりだったのね!」
「なら、とっくにそうしてるって思わないのか!?」
「ムキー! 小学生のクセに生意気!」
 キレ気味に相手する舞奈めがけて、ウィアードテールは殴りかかる。

「この! このぉ!」
 角度による転移を使って間合いを詰めつつ、ステッキを無茶苦茶に振りまわす。
 至近距離から光の槍が、でたらめな方向に放たれる。だが、

「おおっと」
 舞奈はステップを踏みつつ、ウィアードテールの攻撃を避ける。

 なるほど。
 確かに、じゃれかかってくるみゃー子をあしらうのと同じ感覚でいける。

 頭がおかしいと言っても、別にランダムに動いている訳じゃない。
 常人とは違う定石に基づいて動いているのだ。
 彼女にとって、それは考えないで本能のままに動くことだ。

 すなわちみゃー子の言動。
 手足が2本ずつある人の身体で考えなしに動くと、似た挙動になるのかもしれない。

 だがウィアードテールも舞奈の攻撃を避ける。
 無駄に優れた直観は、舞奈にも似ているしみゃー子にも似ている。
 そんな攻防が繰り広げられる中、

「うわっ!!」
 背後から凄まじい熱。軽い痺れとオゾン臭。

 舞奈はあわてて床を転がる。
 その残像を、超巨大なプラズマの塊が飲みこんだ。

 舞奈は勢いのまま立ち上がる。
 そして背後に気配がないことに訝しむ。
 ちらりと背後に目をやると、明日香はいない。

 一瞬遅れて、今のプラズマがそうだと気づいた。
 明日香はプラズマの塊になって、いきなり舞奈の背後からぶちかましてきたのだ!

「おまえも大概だな!」
 嫌な汗を誤魔化すように、悪態をつきつつ目を戻す。すると……

「……あ」
 そこでは、ウィアードテールが吹き飛んでいた。
 先ほどのプラズマ塊に、半分ほどめりこむ体勢で。

 舞奈すら予想できなかった奇襲。
 それには、さしもののウィアードテールも対処できなかったようだ。

 怪盗をぶちかました雷塊は明日香の姿に戻って着地する。
 クロークの裏から、焼け焦げた4枚のドッグタグが落ちる。

 確か【雷跳ブリッツ・シュプルング】と言うのだと、以前に名前だけ聞いたことがある。
 稲妻に変じて突撃する術だ。
 公安の修験者が使っていた必殺の術を、明日香は急場で再現してみせたのだ。

 何食わぬ顔で歩いてくる明日香に、

「……そうやってみゃー子の真似ばっかりしてると、そのうち同類になるぞ」
 不機嫌な声色で軽口を叩く。

 先ほどは本気で肝を冷やした。
 ウィアードテールとの攻防より、友人の思わぬ一撃に驚いた。
 そんな動揺を無理やりに押し隠そうとする舞奈に向かって、

「理性的に考えた上で! これが最適な手段だって判断したのよ」
 明日香も不機嫌に文句言ってくる。普段と同じように。
 その背後に、

「むぎゅっ」
 ウィアードテールが、どさりと落ちた。

「ウィアードテール!」
 ハリネズミが叫ぶ。

 次の瞬間、怪盗の全身が魔法の光に覆われ、弾けた。
 その後には、漫画みたいな表情で目を回した長髪の少女が倒れていた。
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