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第15章 舞奈の長い日曜日
優雅な日曜の午後に
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日曜の午後に誘拐された麗華と、彼女を救うべく廃工場に侵入した舞奈。
脱出しようとする2人の前に立ちふさがる誘拐犯の白人男たち。
さらに彼らの用心棒であるロシアの超能力者サーシャは、超能力によって鋼鉄の騎士レディ・アレクサンドラに変身して舞奈に襲いかかる。
だが機械の力で襲い来る彼女を倒し、戦闘を終わらせたのは明日香の歌だった。
そんな惨事の半刻ほど後。
「終わってみると、案外あっけないものだなあ」
明日香の歌で疲労困憊した状態のまま、舞奈はやれやれとひとりごちる。
その目前で諜報部の大人たちが、拘束した白人男たちを手際よく護送用の車に運ぶ。
マイクロバスを改修したのだろう数人が乗れる大型車だ。
いつものゴミ収集車に偽装した回収車じゃないのは、白人男たちが(一般人に手を出して怪人に認定されたとはいえ)煙草を吸わない人間の異能力者だからだ。
レディ・アレクサンドラから元に戻った(衰弱で術が解けた?)サーシャは、ミスター・イアソンとシャドウ・ザ・シャークが受け持っている。
一緒に駆けつけてくれた小夜子とサチは諜報部の所属だ。
なので同僚を手伝っている。
荒事に慣れたベティとクレアも同様。
警備員たちの指揮を執るのは、工場内から何食わぬ顔で出てきた明日香だ。
カラオケで対戦相手の全員をノックアウトした彼女に、何か言ってやろうと思った。
だが、そんな気も起きないくらい今の舞奈は衰弱していた。
舞奈たちが(というか明日香が……)無力化した誘拐犯たち。
当然だが彼らは怪人と認定された。
なので怪人の収容施設がある県の支部へと送られる。
新開発区の怪異への警戒を旨とした巣黒支部に、異能力者を長期間の拘束/収容できる施設がないからだ。
「にしても、なにやってるんだあれは?」
舞奈が首をかしげながら見やる先。
護送車に運びこまれた白人男たちは、顔に大きめのゴーグルをはめられている。
黒くて分厚くて少しメカニカルな雰囲気の、携帯かタブレット端末を思わせる代物。
それ以外の拘束具は一切使用されていない。
手錠もだ。
にもかかわらず、男たちは巨大なゴーグルをしたまま大人しく座っている。
というより眠っているようにも見える。
「……異能力者や術者のための拘束具なのだよ」
背後からかけられた声に見やると、糸目の女子高生がいた。
ニュットである。
舞奈は一瞬、糸目を睨む。
彼女にも言いたいことがいろいろある。
元より日曜日に舞奈が旧市街地に赴いたそもそもの発端は彼女の酔狂だ。
だが今日はそれ以外にいろいろありすぎた。
今さら蒸し返すのも面倒だ。なので、
「大丈夫なのか?」
思った疑問をそのまま口に出す。
なにせ見た目は何の変哲もないゴーグルだ。
目を覚まして外されたら拘束の意味がないように思える。
そんなふうに首をかしげる舞奈に、ニュットは内心のわからない表情のまま、
「拘束用バーチャルギア。【精神幽閉】の魔術が焼きつけられた魔道具なのだ」
「……高等魔術か?」
「うむ。対象の精神を魔法的な牢獄に閉じこめる術なのだよ」
例によって聞いたことのない魔術用語で解説を始める。
舞奈はやれやれと口元を歪める。
「……催眠術みたいなものってことか?」
「まあ、そうなのだかな。通常の催眠術と違って、ギアを通じてオンラインサーバーと接続して牢の情報強度を補強しているのだ」
「……わかる言葉で説明してくれ」
「機械装置と魔法の合わせ技で、対象の意識をバーチャル空間に閉じこめるのだ。魔法や異能力で脱出しようとしても仮想空間内で発動するから不発に終わるのだよ」
「……」
ニュットの説明を無理やりに理解しようと頭をひねる。
だが少し考えてあきらめる。
用語が変わっただけで意味不明なのは変わらない。
それでも、その何がしかの理論により、男たちの異能を封じているのだと理解する。
ある種の術や異能に対しては、牢も手錠も無力だ。
それらへの対抗策として術者が常に隣に控えて消去を続けるのも現実的じゃない。
その折衷案として専用の魔道具を使っているのだろう。
「要は魔法使い用の牢屋って訳か」
「そんなもんなのだよ」
結局、先にニュットが言ったような雑な総括を述べてみる。
その上で、わかったようなわからないような表情をして拘束用バーチャルギアとやらをしばらく眺め、飽きて麗華の姿を探す。
麗華様は音楽の時間と同様に、上下の口から泡水を吹いて気絶していた。
そんな彼女を駆けつけたデニスとジャネットと共に、楓と紅葉が介抱している。
まあ楓はこんなでも【高度な生命操作】技術を持つウアブ魔術師だ。
加えて医術の心得もある。
そんな彼女の様子から、大事はなさそうだと判断して舞奈も一安心する。
そもそも麗華は男たちには何もされていない。
今日もまた麗華様にいちばん酷いことをしたのは明日香だ。
やれやれ、まったく。
苦笑しながら救護の様子を見ていると、側に巨躯の気配が立った。
スーツ姿のアーガス氏である。
自分たちの仕事は終わったらしい。
「なんだその……待たせてスマン」
言いつつ舞奈はバツが悪そうな顔をしてポリポリと頭をかいてみせる。
そうしながら視線だけで周囲を見回す。
彼を小一時間ほど公園に置き去りにした元凶は見当たらない。
「気にしないでくれたまえ。シャドウ・ザ・シャークはいつもああなんだ」
「あの野郎、普段からああなのか……」
アーガス氏は変わらず人の良い笑みを返す。
ダイナミックに後退した生え際から覗くデコがキラリと光る。
そんな彼が自由すぎるKAGEを相手にどれほど苦労してるか想像し、苦笑する。
「むしろ非があるのは君をシャドウ・ザ・シャークの気まぐれにつき合わせてしまった我々の側だ。それにヴィランの対処まで押しつけてしまった」
「それこそ構わんさ。いつものことだ」
自分の苦労には構わず律義に頭を下げるアーガス氏に、舞奈は答えて苦笑する。
トラブルに巻きこまれるなんて、舞奈にとっては日常茶飯事だ。
舞奈は鬼じゃないので友人が困っていれば手くらい貸すし、最強なので余人が解決不可能な難事も易々とねじ伏せてしまえる。
その結果、皆からは別の厄介事への対処を期待される。
堂々巡りだ。
だが、まあ、そんな暮らしも慣れてしまえば退屈しなくて良いやと思える。
幸か不幸か舞奈は勘も察しも良いので、予測し得る次のトラブルを効率よく片付けるべく留意することもできる。
なので何食わぬ顔で、
「あんたが追ってたヴィランってのは、奴のことか?」
問いかける。
彼がこの国の、この街に来た理由。
そして『シロネン』でしていた電話の内容。
それがレディ・アレクサンドラのことを指しているのなら彼の目的は果たされ、舞奈が予想されたトラブルは早くも終息したことになる。だが、
「……それについては後々に話させてもらおう。今は少しばかり時間が欲しい」
金髪マッチョは歯切れ悪く答えた。
彼にしては珍しい。
……否。根が正直な彼らしい挙動ではある。
嘘をつくのはもとより、誤魔化すのも下手なのだ。
つまり、彼がわざわざ海を渡って追ってきたヴィランは彼女の他にいる。
だが今、この場で彼を問い詰める理由がないのも事実だ。
舞奈も今は時間が欲しい。
なにせ今日は朝からトラブル続きだったのだ。
自分から藪を突いておかわりをもらいたいとは思わない。だから、
「へいへい、了解」
軽薄な笑みを浮かべつつ軽く答え、
「代わりに、シャドウ・ザ・シャークさんの居場所を教えちゃあくれないか? 流石に奴には言いたいことが山ほどある」
「彼女なら先ほど帰った」
「なんだと!? あの野郎、最後まで人をコケにしやがって!」
やりたい放題して帰って行ったKAGEを思い出して、地団太を踏んだ。
……そういえば舞奈は何か忘れている気がした。
だが覚えていないのなら大したことじゃないのだろうと思いなおす。
何しろ今日は、朝からいろいろなことがありすぎた。
もうトラブルは腹いっぱいだ。
そうこうするうちに諜報部の皆は撤収。
桂木姉妹とデニスとジャネットは麗華を家に連れて行った。
なので舞奈もアーガス氏に別れを告げ、朝方からトラブルを片付け続けてようやく手に入れた平穏をかみしめながら帰路に就いた。
その様にして皆が去った廃工場の屋根の上で、
「……」
トタンの屋根を覆った錆を、錆食い虫が食んでいた。
錆びかけたトタンを尻尾の先でさらに錆びさせ、錆を食う。
朝方に新開発区の廃ビルで舞奈のジャケットに潜りこんだ錆食い虫。
工場の倉庫室で放たれ、移動しつつ錆びたダクトホースを喰っていたところに明日香の歌にあてられ、魔力が凝固して形作られた構造体を危うく破壊されそうになった。
本能的に室外へと逃れた虫は、そこにも錆があったので食事を再開していた。
この虫、新開発区に湧き出る怪異の中では無害な部類に入る。
例えば舞奈のアパートは庭に咲いている百合によって守られているから平気だ。
百合の何割かが所持する【断罪発破】が怪異を追い払うからだ。
だが実のところ、まっとうな街を徘徊されると割と困ったことになる。
旧市街地のビルや家は、怪異とも異能とも無縁な普通の建物だ、
金属を錆びさせる虫の存在を想定して建てられてはいない。
それに旧市街地には異能の百合も咲かない。
このまま錆食い虫が放置されると、遠からず付近で正体不明の倒壊事故が頻発することになるだろう。そんな地味に危険な虫を、
パシィッ!
猫が仕留めた。
讃原町を縄張りにしている野良のシャム猫だ。
人には登れぬ廃工場の屋根の上も、猫にとっては散歩の道すがらだ。
なので暴れる虫を、シャム猫は前足で押さえて楽しそうに弄ぶ。
姿形は上品でも所詮は猫だ。
なので気が済んだ後はむしゃむしゃと食べる。
もちろん猫に、人間の街や住処を怪異から守ろうという気概はない。
ただ縄張りを散歩していて、魔力が香る美味しそうな虫を見つけて、食べた。
人にとって厄介な虫も、猫にとってはおやつだ。
新開発区に住まう友人から話は聞いていたものの、実際に食すると感動もひとしお。
そんな猫は優雅な午後のおやつに満足すると、誰もいない虚空を見やり、
「ナァ~~」
見た目通りに美しく通りの良い声で鳴いた。
まるで、そこにはいない誰かに何かを伝えようとするかのように。
だが動物と意思疎通できる少数の術者は知っている。
霊格の高い猫たちが、魔法的なネットワークを形成していることを――
――貴婦人より皆へ。讃原の近くの倉庫街で、驚くようなものを見つけましたわ
――ネコポチ。なに?
――ルージュ。なぁに?
――廃工場のひとつで、以前にルージュが言っていた『死の歌』が歌われましたの
――ネコポチ。こわい!
――ルージュ。あの恐ろしい音色が、学校以外で鳴り響くなんて!
――弁財天。讃原町は危険なところなんだナ
――桜ちゃん家のミケだよ。うん。危険だね……
――けど悪いことだけじゃありませんわ。歌の後には美味虫があらわれましたの
――公園のボス。羨ましいぜ。俺はカモっぽい金髪マッチョ人間に餌をもらい損ねた
――桜ちゃん家のミケだよ。朝飯はサッカーボールが吹っ飛ばした。昼はなかった……
――新開発区の名もなき黒猫。あれは新開発区の食い物だぞ。そこにいたのか?
――バースト。誰かが作ったんじゃないかにゃー?
――新開発区の名もなき黒猫。そんなの作れるのはおまえの家の人間くらいだろう
――美味なる魔力が香る外国産の人間と……そういえば志門舞奈人間がいましたわ
――ネコポチ。志門舞奈人間!
――新開発区の名もなき黒猫。志門舞奈人間!
――バースト。家主の桂木紅葉人間がいつも言ってる。志門舞奈人間はすごい奴だって
――公園のボス。そうなのか?
――ルージュ。うん。友達の一ノ瀬えり子人間も言ってる!
――バースト。ゴリラも言ってる
――そう、志門舞奈人間が行く所では何時もファンタスティックな何かが起こるわ
――ネコポチ。志門舞奈人間!
――新開発区の名もなき黒猫。志門舞奈人間!
――弁財天。そういえば美味虫は美味かったかナ? 饅頭より美味かったのかナ?
――その名に違わず、うっとりするような美味でしたわ。まるで魔法が使えそうなほど
――ルージュ。いいなー。ボクも魔法が使える美味虫が食べたい!
――ネコポチ。ボクも食べたい!
――「「「おまえが言うなネコポチ!」」」
と、まあ、そんなこんなで夕方。
統零町の、新開発区寄りに位置するゴーストタウンの一角。
看板の『画廊・ケリー』のネオンが消えかけた店の中で、
「……てなことがあったんだよ」
「しもん! だいかつやくだな!」
「大変だったわね」
来客用の丸テーブルを挟んで、舞奈とリコはスミス手製の夕飯を食べる。
そうしながら、舞奈は今日一日で解決した数々のトラブルのことを話していた。
食事中に少しばかり行儀が悪いが、リコやスミスが活躍譚を楽しそうに聞いてくれるので少しは苦労が報われた気がした。
リコは市場から戻ったスミスと3人で昼食を楽しんだ後、友人と遊んでいたらしい。
具体的には委員長と桜と2人の妹。
どうやら桜は『シロネン』で舞奈と別れた後、教会へ向かったらしい。
そして委員長と合流した後、近場の友人と遊ぶことにしたのだ。
実は以前、その面子に数名を加えたメンバーでツチノコ探しをしている最中、暴徒に襲われたことがあった。
だが今回は居合わせた奈良坂を保護者代わりに河原で楽しく遊んでいたらしい。
トラブルが舞奈の側に集中したからという訳でもないだろうが、まあ幼い友人が日曜を楽しく過ごせたのならいいやと思う。
そんな話を肴にしたメインディッシュは、甘辛く香るスペアリブだ。
スミスが朝の市場で仕入れてくれた骨付き肉。
そいつがじっくりと煮こまれ、スミス特製のコクのあるソースに絡まって皿に並ぶ様は、まるで魔力を使わない魔法の様だと思える。
そんな魔法のスペアリブに破顔しつつ、ナイフで器用に骨からはがして口に運び、
「にせスミスはミスター・イアソンだったのかー」
「知ってるのか? ミスター・イアソン」
問いかける。
リコも未就学児の割に舞奈と同じくらいに器用に骨付き肉を食する。
そうしながら舞奈とは別の日曜日に満ち足りたようなニコニコ笑顔で、
「うん! すごくゆうめいなヒーローなんだぞ! マミとマコがいってた!」
「……そうかい」
元気に答える。
対して舞奈は何食わぬ表情を作って答える。
ミスター・イアソン。
世界的に有名なアメリカンヒーロー。
彼のことを知らなかったのは舞奈ひとりらしい……。
「けど、お友達ちゃんが無事でよかったわ」
「まあな」
スミスの言葉に苦笑する。
まあ相手が有名人だなんてことは知らなくたって問題ない。
感銘を与えることも、力を借りることもできる。
今日一日で、舞奈はそれを証明してみせた……と思う。
「それにしても犯人も災難ね。米国のヒーローに加えて志門ちゃんに出くわすなんて」
「あたしは別に、行く先々で悪人をぶちのめして回ってる訳じゃないぞ。誘拐なんかしなけりゃいいんだ」
むくれて、だが、ふと気づく。
ニュットの悪戯に端を発した舞奈のトラブル続きの日曜日。
だが本当の事の発端は、ソォナムあたりの預言だったのではないかと今は思う。
白人の犯罪者グループに女子小学生が誘拐されるビジョン。
その未来を穏便な方向に修正するために、彼女らは手を尽くしてくれた。
その結果、あの時に、舞奈は麗華を救える場所にいることができた。
すべてが偶然だったと考えるよりは、そのほうが自然だ。
まあピタゴラスイッチみたいに持って回った手段が、あの結果になるために本当に必要だったのか、あるいはニュットの傍迷惑な道楽だったのかは一考の余地があるが。
だがまあ、その是非も今となってはどうでもいいことに思える。
今日一日で、舞奈はやるべき仕事を完璧にこなしたと自負できる。
その結果、少なくとも舞奈の知る限りの範囲ですべてが丸く収まった。
それ以上の事に気をもんでも仕方がない。
だから今はただ、スミスの絶品スペアリブを頬張る。
十分な運動をした後の肉が五臓六腑に染み渡る。
うーん、美味い!
そうやって腹がくちくなり、十分にくつろいだ舞奈は『画廊・ケリー』を後にした。
帰りの道中で毒犬の群に襲われた以外は、特に何事もなくアパートに帰宅した。
そして管理人に挨拶し、部屋で健康体操をしてからシャワーを浴びた。
昼間にいろいろありすぎたせいか、ベッドに入ってすぐに寝た。
そうやって、舞奈の長い日曜日は幕を閉じた。
脱出しようとする2人の前に立ちふさがる誘拐犯の白人男たち。
さらに彼らの用心棒であるロシアの超能力者サーシャは、超能力によって鋼鉄の騎士レディ・アレクサンドラに変身して舞奈に襲いかかる。
だが機械の力で襲い来る彼女を倒し、戦闘を終わらせたのは明日香の歌だった。
そんな惨事の半刻ほど後。
「終わってみると、案外あっけないものだなあ」
明日香の歌で疲労困憊した状態のまま、舞奈はやれやれとひとりごちる。
その目前で諜報部の大人たちが、拘束した白人男たちを手際よく護送用の車に運ぶ。
マイクロバスを改修したのだろう数人が乗れる大型車だ。
いつものゴミ収集車に偽装した回収車じゃないのは、白人男たちが(一般人に手を出して怪人に認定されたとはいえ)煙草を吸わない人間の異能力者だからだ。
レディ・アレクサンドラから元に戻った(衰弱で術が解けた?)サーシャは、ミスター・イアソンとシャドウ・ザ・シャークが受け持っている。
一緒に駆けつけてくれた小夜子とサチは諜報部の所属だ。
なので同僚を手伝っている。
荒事に慣れたベティとクレアも同様。
警備員たちの指揮を執るのは、工場内から何食わぬ顔で出てきた明日香だ。
カラオケで対戦相手の全員をノックアウトした彼女に、何か言ってやろうと思った。
だが、そんな気も起きないくらい今の舞奈は衰弱していた。
舞奈たちが(というか明日香が……)無力化した誘拐犯たち。
当然だが彼らは怪人と認定された。
なので怪人の収容施設がある県の支部へと送られる。
新開発区の怪異への警戒を旨とした巣黒支部に、異能力者を長期間の拘束/収容できる施設がないからだ。
「にしても、なにやってるんだあれは?」
舞奈が首をかしげながら見やる先。
護送車に運びこまれた白人男たちは、顔に大きめのゴーグルをはめられている。
黒くて分厚くて少しメカニカルな雰囲気の、携帯かタブレット端末を思わせる代物。
それ以外の拘束具は一切使用されていない。
手錠もだ。
にもかかわらず、男たちは巨大なゴーグルをしたまま大人しく座っている。
というより眠っているようにも見える。
「……異能力者や術者のための拘束具なのだよ」
背後からかけられた声に見やると、糸目の女子高生がいた。
ニュットである。
舞奈は一瞬、糸目を睨む。
彼女にも言いたいことがいろいろある。
元より日曜日に舞奈が旧市街地に赴いたそもそもの発端は彼女の酔狂だ。
だが今日はそれ以外にいろいろありすぎた。
今さら蒸し返すのも面倒だ。なので、
「大丈夫なのか?」
思った疑問をそのまま口に出す。
なにせ見た目は何の変哲もないゴーグルだ。
目を覚まして外されたら拘束の意味がないように思える。
そんなふうに首をかしげる舞奈に、ニュットは内心のわからない表情のまま、
「拘束用バーチャルギア。【精神幽閉】の魔術が焼きつけられた魔道具なのだ」
「……高等魔術か?」
「うむ。対象の精神を魔法的な牢獄に閉じこめる術なのだよ」
例によって聞いたことのない魔術用語で解説を始める。
舞奈はやれやれと口元を歪める。
「……催眠術みたいなものってことか?」
「まあ、そうなのだかな。通常の催眠術と違って、ギアを通じてオンラインサーバーと接続して牢の情報強度を補強しているのだ」
「……わかる言葉で説明してくれ」
「機械装置と魔法の合わせ技で、対象の意識をバーチャル空間に閉じこめるのだ。魔法や異能力で脱出しようとしても仮想空間内で発動するから不発に終わるのだよ」
「……」
ニュットの説明を無理やりに理解しようと頭をひねる。
だが少し考えてあきらめる。
用語が変わっただけで意味不明なのは変わらない。
それでも、その何がしかの理論により、男たちの異能を封じているのだと理解する。
ある種の術や異能に対しては、牢も手錠も無力だ。
それらへの対抗策として術者が常に隣に控えて消去を続けるのも現実的じゃない。
その折衷案として専用の魔道具を使っているのだろう。
「要は魔法使い用の牢屋って訳か」
「そんなもんなのだよ」
結局、先にニュットが言ったような雑な総括を述べてみる。
その上で、わかったようなわからないような表情をして拘束用バーチャルギアとやらをしばらく眺め、飽きて麗華の姿を探す。
麗華様は音楽の時間と同様に、上下の口から泡水を吹いて気絶していた。
そんな彼女を駆けつけたデニスとジャネットと共に、楓と紅葉が介抱している。
まあ楓はこんなでも【高度な生命操作】技術を持つウアブ魔術師だ。
加えて医術の心得もある。
そんな彼女の様子から、大事はなさそうだと判断して舞奈も一安心する。
そもそも麗華は男たちには何もされていない。
今日もまた麗華様にいちばん酷いことをしたのは明日香だ。
やれやれ、まったく。
苦笑しながら救護の様子を見ていると、側に巨躯の気配が立った。
スーツ姿のアーガス氏である。
自分たちの仕事は終わったらしい。
「なんだその……待たせてスマン」
言いつつ舞奈はバツが悪そうな顔をしてポリポリと頭をかいてみせる。
そうしながら視線だけで周囲を見回す。
彼を小一時間ほど公園に置き去りにした元凶は見当たらない。
「気にしないでくれたまえ。シャドウ・ザ・シャークはいつもああなんだ」
「あの野郎、普段からああなのか……」
アーガス氏は変わらず人の良い笑みを返す。
ダイナミックに後退した生え際から覗くデコがキラリと光る。
そんな彼が自由すぎるKAGEを相手にどれほど苦労してるか想像し、苦笑する。
「むしろ非があるのは君をシャドウ・ザ・シャークの気まぐれにつき合わせてしまった我々の側だ。それにヴィランの対処まで押しつけてしまった」
「それこそ構わんさ。いつものことだ」
自分の苦労には構わず律義に頭を下げるアーガス氏に、舞奈は答えて苦笑する。
トラブルに巻きこまれるなんて、舞奈にとっては日常茶飯事だ。
舞奈は鬼じゃないので友人が困っていれば手くらい貸すし、最強なので余人が解決不可能な難事も易々とねじ伏せてしまえる。
その結果、皆からは別の厄介事への対処を期待される。
堂々巡りだ。
だが、まあ、そんな暮らしも慣れてしまえば退屈しなくて良いやと思える。
幸か不幸か舞奈は勘も察しも良いので、予測し得る次のトラブルを効率よく片付けるべく留意することもできる。
なので何食わぬ顔で、
「あんたが追ってたヴィランってのは、奴のことか?」
問いかける。
彼がこの国の、この街に来た理由。
そして『シロネン』でしていた電話の内容。
それがレディ・アレクサンドラのことを指しているのなら彼の目的は果たされ、舞奈が予想されたトラブルは早くも終息したことになる。だが、
「……それについては後々に話させてもらおう。今は少しばかり時間が欲しい」
金髪マッチョは歯切れ悪く答えた。
彼にしては珍しい。
……否。根が正直な彼らしい挙動ではある。
嘘をつくのはもとより、誤魔化すのも下手なのだ。
つまり、彼がわざわざ海を渡って追ってきたヴィランは彼女の他にいる。
だが今、この場で彼を問い詰める理由がないのも事実だ。
舞奈も今は時間が欲しい。
なにせ今日は朝からトラブル続きだったのだ。
自分から藪を突いておかわりをもらいたいとは思わない。だから、
「へいへい、了解」
軽薄な笑みを浮かべつつ軽く答え、
「代わりに、シャドウ・ザ・シャークさんの居場所を教えちゃあくれないか? 流石に奴には言いたいことが山ほどある」
「彼女なら先ほど帰った」
「なんだと!? あの野郎、最後まで人をコケにしやがって!」
やりたい放題して帰って行ったKAGEを思い出して、地団太を踏んだ。
……そういえば舞奈は何か忘れている気がした。
だが覚えていないのなら大したことじゃないのだろうと思いなおす。
何しろ今日は、朝からいろいろなことがありすぎた。
もうトラブルは腹いっぱいだ。
そうこうするうちに諜報部の皆は撤収。
桂木姉妹とデニスとジャネットは麗華を家に連れて行った。
なので舞奈もアーガス氏に別れを告げ、朝方からトラブルを片付け続けてようやく手に入れた平穏をかみしめながら帰路に就いた。
その様にして皆が去った廃工場の屋根の上で、
「……」
トタンの屋根を覆った錆を、錆食い虫が食んでいた。
錆びかけたトタンを尻尾の先でさらに錆びさせ、錆を食う。
朝方に新開発区の廃ビルで舞奈のジャケットに潜りこんだ錆食い虫。
工場の倉庫室で放たれ、移動しつつ錆びたダクトホースを喰っていたところに明日香の歌にあてられ、魔力が凝固して形作られた構造体を危うく破壊されそうになった。
本能的に室外へと逃れた虫は、そこにも錆があったので食事を再開していた。
この虫、新開発区に湧き出る怪異の中では無害な部類に入る。
例えば舞奈のアパートは庭に咲いている百合によって守られているから平気だ。
百合の何割かが所持する【断罪発破】が怪異を追い払うからだ。
だが実のところ、まっとうな街を徘徊されると割と困ったことになる。
旧市街地のビルや家は、怪異とも異能とも無縁な普通の建物だ、
金属を錆びさせる虫の存在を想定して建てられてはいない。
それに旧市街地には異能の百合も咲かない。
このまま錆食い虫が放置されると、遠からず付近で正体不明の倒壊事故が頻発することになるだろう。そんな地味に危険な虫を、
パシィッ!
猫が仕留めた。
讃原町を縄張りにしている野良のシャム猫だ。
人には登れぬ廃工場の屋根の上も、猫にとっては散歩の道すがらだ。
なので暴れる虫を、シャム猫は前足で押さえて楽しそうに弄ぶ。
姿形は上品でも所詮は猫だ。
なので気が済んだ後はむしゃむしゃと食べる。
もちろん猫に、人間の街や住処を怪異から守ろうという気概はない。
ただ縄張りを散歩していて、魔力が香る美味しそうな虫を見つけて、食べた。
人にとって厄介な虫も、猫にとってはおやつだ。
新開発区に住まう友人から話は聞いていたものの、実際に食すると感動もひとしお。
そんな猫は優雅な午後のおやつに満足すると、誰もいない虚空を見やり、
「ナァ~~」
見た目通りに美しく通りの良い声で鳴いた。
まるで、そこにはいない誰かに何かを伝えようとするかのように。
だが動物と意思疎通できる少数の術者は知っている。
霊格の高い猫たちが、魔法的なネットワークを形成していることを――
――貴婦人より皆へ。讃原の近くの倉庫街で、驚くようなものを見つけましたわ
――ネコポチ。なに?
――ルージュ。なぁに?
――廃工場のひとつで、以前にルージュが言っていた『死の歌』が歌われましたの
――ネコポチ。こわい!
――ルージュ。あの恐ろしい音色が、学校以外で鳴り響くなんて!
――弁財天。讃原町は危険なところなんだナ
――桜ちゃん家のミケだよ。うん。危険だね……
――けど悪いことだけじゃありませんわ。歌の後には美味虫があらわれましたの
――公園のボス。羨ましいぜ。俺はカモっぽい金髪マッチョ人間に餌をもらい損ねた
――桜ちゃん家のミケだよ。朝飯はサッカーボールが吹っ飛ばした。昼はなかった……
――新開発区の名もなき黒猫。あれは新開発区の食い物だぞ。そこにいたのか?
――バースト。誰かが作ったんじゃないかにゃー?
――新開発区の名もなき黒猫。そんなの作れるのはおまえの家の人間くらいだろう
――美味なる魔力が香る外国産の人間と……そういえば志門舞奈人間がいましたわ
――ネコポチ。志門舞奈人間!
――新開発区の名もなき黒猫。志門舞奈人間!
――バースト。家主の桂木紅葉人間がいつも言ってる。志門舞奈人間はすごい奴だって
――公園のボス。そうなのか?
――ルージュ。うん。友達の一ノ瀬えり子人間も言ってる!
――バースト。ゴリラも言ってる
――そう、志門舞奈人間が行く所では何時もファンタスティックな何かが起こるわ
――ネコポチ。志門舞奈人間!
――新開発区の名もなき黒猫。志門舞奈人間!
――弁財天。そういえば美味虫は美味かったかナ? 饅頭より美味かったのかナ?
――その名に違わず、うっとりするような美味でしたわ。まるで魔法が使えそうなほど
――ルージュ。いいなー。ボクも魔法が使える美味虫が食べたい!
――ネコポチ。ボクも食べたい!
――「「「おまえが言うなネコポチ!」」」
と、まあ、そんなこんなで夕方。
統零町の、新開発区寄りに位置するゴーストタウンの一角。
看板の『画廊・ケリー』のネオンが消えかけた店の中で、
「……てなことがあったんだよ」
「しもん! だいかつやくだな!」
「大変だったわね」
来客用の丸テーブルを挟んで、舞奈とリコはスミス手製の夕飯を食べる。
そうしながら、舞奈は今日一日で解決した数々のトラブルのことを話していた。
食事中に少しばかり行儀が悪いが、リコやスミスが活躍譚を楽しそうに聞いてくれるので少しは苦労が報われた気がした。
リコは市場から戻ったスミスと3人で昼食を楽しんだ後、友人と遊んでいたらしい。
具体的には委員長と桜と2人の妹。
どうやら桜は『シロネン』で舞奈と別れた後、教会へ向かったらしい。
そして委員長と合流した後、近場の友人と遊ぶことにしたのだ。
実は以前、その面子に数名を加えたメンバーでツチノコ探しをしている最中、暴徒に襲われたことがあった。
だが今回は居合わせた奈良坂を保護者代わりに河原で楽しく遊んでいたらしい。
トラブルが舞奈の側に集中したからという訳でもないだろうが、まあ幼い友人が日曜を楽しく過ごせたのならいいやと思う。
そんな話を肴にしたメインディッシュは、甘辛く香るスペアリブだ。
スミスが朝の市場で仕入れてくれた骨付き肉。
そいつがじっくりと煮こまれ、スミス特製のコクのあるソースに絡まって皿に並ぶ様は、まるで魔力を使わない魔法の様だと思える。
そんな魔法のスペアリブに破顔しつつ、ナイフで器用に骨からはがして口に運び、
「にせスミスはミスター・イアソンだったのかー」
「知ってるのか? ミスター・イアソン」
問いかける。
リコも未就学児の割に舞奈と同じくらいに器用に骨付き肉を食する。
そうしながら舞奈とは別の日曜日に満ち足りたようなニコニコ笑顔で、
「うん! すごくゆうめいなヒーローなんだぞ! マミとマコがいってた!」
「……そうかい」
元気に答える。
対して舞奈は何食わぬ表情を作って答える。
ミスター・イアソン。
世界的に有名なアメリカンヒーロー。
彼のことを知らなかったのは舞奈ひとりらしい……。
「けど、お友達ちゃんが無事でよかったわ」
「まあな」
スミスの言葉に苦笑する。
まあ相手が有名人だなんてことは知らなくたって問題ない。
感銘を与えることも、力を借りることもできる。
今日一日で、舞奈はそれを証明してみせた……と思う。
「それにしても犯人も災難ね。米国のヒーローに加えて志門ちゃんに出くわすなんて」
「あたしは別に、行く先々で悪人をぶちのめして回ってる訳じゃないぞ。誘拐なんかしなけりゃいいんだ」
むくれて、だが、ふと気づく。
ニュットの悪戯に端を発した舞奈のトラブル続きの日曜日。
だが本当の事の発端は、ソォナムあたりの預言だったのではないかと今は思う。
白人の犯罪者グループに女子小学生が誘拐されるビジョン。
その未来を穏便な方向に修正するために、彼女らは手を尽くしてくれた。
その結果、あの時に、舞奈は麗華を救える場所にいることができた。
すべてが偶然だったと考えるよりは、そのほうが自然だ。
まあピタゴラスイッチみたいに持って回った手段が、あの結果になるために本当に必要だったのか、あるいはニュットの傍迷惑な道楽だったのかは一考の余地があるが。
だがまあ、その是非も今となってはどうでもいいことに思える。
今日一日で、舞奈はやるべき仕事を完璧にこなしたと自負できる。
その結果、少なくとも舞奈の知る限りの範囲ですべてが丸く収まった。
それ以上の事に気をもんでも仕方がない。
だから今はただ、スミスの絶品スペアリブを頬張る。
十分な運動をした後の肉が五臓六腑に染み渡る。
うーん、美味い!
そうやって腹がくちくなり、十分にくつろいだ舞奈は『画廊・ケリー』を後にした。
帰りの道中で毒犬の群に襲われた以外は、特に何事もなくアパートに帰宅した。
そして管理人に挨拶し、部屋で健康体操をしてからシャワーを浴びた。
昼間にいろいろありすぎたせいか、ベッドに入ってすぐに寝た。
そうやって、舞奈の長い日曜日は幕を閉じた。
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