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そして、俺はコンビニへ行った
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儀式は、夜明けとともに始まった。
神殿都市《コンビニ》の中央。
“方舟の核”と呼ばれる、
巨大なダンボールの心臓部が、光を放つ。
誰も知らない。
これが、
神話の終わりの儀式だということを。
リィナは、祈る。
神官たちは、詠唱する。
世界は、静かだった。
あまりにも、平和だった。
だからこそ――
この瞬間が、必要だった。
光が、弾けた。
世界が、一度、白くなる。
……そして。
俺は、床に転がっていた。
硬い石の床。
冷たい空気。
肺に、ちゃんと、空気が入る。
「……っ、げほ」
俺は、息をした。
体が、ある。
手がある。 足がある。 心臓が、ちゃんと鳴っている。
……戻ってきた。
誰も、俺を見ていなかった。
神殿の奥の、小さな礼拝室。
ただ、白い箱だけが、
“聖遺物”として、静かに置かれている。
世界は、
俺を“神”として、記憶している。
でも、俺は、ただの人間だ。
◇
数日後。
俺は、フードを深くかぶって、街を歩いていた。
誰も、俺だとは気づかない。
ただの、一般人。
……それで、いい。
俺は、足を止めた。
明るい看板。
自動ドア。
見慣れた、でも、世界で一番欲しかった場所。
コンビニ。
ドアが、開く。
「いらっしゃいませー」
その声を聞いた瞬間。
胸の奥が、ぎゅっと、熱くなった。
俺は、笑った。
「……ああ。
やっと、来れた」
カップ麺を手に取る。
おにぎりも取る。
デザートも取る。
神じゃない。
勇者でもない。
ただの、俺。
レジに向かいながら、
心の中で、そっと呟いた。
「……生きろ。死ぬな。
コンビニ行くまでは、生きろ」
それはもう、神託じゃない。
ただの、
人生でいちばん大事な、俺の座右の銘だ。
――完
神殿都市《コンビニ》の中央。
“方舟の核”と呼ばれる、
巨大なダンボールの心臓部が、光を放つ。
誰も知らない。
これが、
神話の終わりの儀式だということを。
リィナは、祈る。
神官たちは、詠唱する。
世界は、静かだった。
あまりにも、平和だった。
だからこそ――
この瞬間が、必要だった。
光が、弾けた。
世界が、一度、白くなる。
……そして。
俺は、床に転がっていた。
硬い石の床。
冷たい空気。
肺に、ちゃんと、空気が入る。
「……っ、げほ」
俺は、息をした。
体が、ある。
手がある。 足がある。 心臓が、ちゃんと鳴っている。
……戻ってきた。
誰も、俺を見ていなかった。
神殿の奥の、小さな礼拝室。
ただ、白い箱だけが、
“聖遺物”として、静かに置かれている。
世界は、
俺を“神”として、記憶している。
でも、俺は、ただの人間だ。
◇
数日後。
俺は、フードを深くかぶって、街を歩いていた。
誰も、俺だとは気づかない。
ただの、一般人。
……それで、いい。
俺は、足を止めた。
明るい看板。
自動ドア。
見慣れた、でも、世界で一番欲しかった場所。
コンビニ。
ドアが、開く。
「いらっしゃいませー」
その声を聞いた瞬間。
胸の奥が、ぎゅっと、熱くなった。
俺は、笑った。
「……ああ。
やっと、来れた」
カップ麺を手に取る。
おにぎりも取る。
デザートも取る。
神じゃない。
勇者でもない。
ただの、俺。
レジに向かいながら、
心の中で、そっと呟いた。
「……生きろ。死ぬな。
コンビニ行くまでは、生きろ」
それはもう、神託じゃない。
ただの、
人生でいちばん大事な、俺の座右の銘だ。
――完
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