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70:解かれた境界
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森の入口。
倒れ、砕け、文字の割れた立て札の前に、
フードを深くかぶった一団が静かに立っていた。
風が吹くたび、木屑が転がる。
「……折れているな」
低い声の男が、立て札を見下ろした。
感情は読み取れない。だが、警戒を含んだ声だった。
「しかも、根元からだ」
別の者がしゃがみ込み、地面に散った破片を拾い上げる。
指先でなぞるように、刻まれた文字を確かめていた。
「……文字が割れている」
拾い上げられたのは、かつて警告を示していた二文字。
――“禁ず”。
その二文字は、真っ二つに裂けていた。
「偶然ではあるまいな」
「はい」
短く答えた者が、周囲を一瞥する。
「立て札だけではありません。
結界も、完全に破壊されています」
その言葉に、空気が一段、重くなる。
「あの結界は――」
「普通の魔法では壊せない」
被せるように、別の声。
「術式は古い。
神殿式でも、王国式でもない」
「力で押し切った形跡もない」
「……妙だ」
誰かが、地面に残った痕跡を指さす。
土は荒れていない。
戦闘の跡も、魔力の乱れもない。
それなのに、結界だけが解かれている。
「敵は、店主だけではない」
「この場所には、別の手が入っている」
一瞬、沈黙。
その間に、森の奥から――
何かがこちらを“見ている”ような気配が、微かに揺れた。
「……この場所は、なにかがおかしい」
フードの一人が、懐から一枚のカードを取り出す。
古びた紙片。
しかし、触れた瞬間、淡く光を帯びた。
「判断を」
カードを掲げた者が、低く告げる。
「長引くと、こちらが滅ぶ」
「……なぜだ」
「分からない」
正直な答えだった。
「だが、カードがそう示している」
「原因不明、結果のみ確定か」
再び、沈黙。
そのとき――
森の奥で、枝がわずかに揺れた。
誰も気づかないほどの、小さな音。
だが、確かに“笑うような気配”が混じっていた。
「……早急に対応する必要があるな」
「同意します」
その返答は、即座だった。
彼らはまだ気づいていない。
結界を壊した“それ”が、
すでに次の一手を楽しむように、森の中で息を潜めていることを。
倒れ、砕け、文字の割れた立て札の前に、
フードを深くかぶった一団が静かに立っていた。
風が吹くたび、木屑が転がる。
「……折れているな」
低い声の男が、立て札を見下ろした。
感情は読み取れない。だが、警戒を含んだ声だった。
「しかも、根元からだ」
別の者がしゃがみ込み、地面に散った破片を拾い上げる。
指先でなぞるように、刻まれた文字を確かめていた。
「……文字が割れている」
拾い上げられたのは、かつて警告を示していた二文字。
――“禁ず”。
その二文字は、真っ二つに裂けていた。
「偶然ではあるまいな」
「はい」
短く答えた者が、周囲を一瞥する。
「立て札だけではありません。
結界も、完全に破壊されています」
その言葉に、空気が一段、重くなる。
「あの結界は――」
「普通の魔法では壊せない」
被せるように、別の声。
「術式は古い。
神殿式でも、王国式でもない」
「力で押し切った形跡もない」
「……妙だ」
誰かが、地面に残った痕跡を指さす。
土は荒れていない。
戦闘の跡も、魔力の乱れもない。
それなのに、結界だけが解かれている。
「敵は、店主だけではない」
「この場所には、別の手が入っている」
一瞬、沈黙。
その間に、森の奥から――
何かがこちらを“見ている”ような気配が、微かに揺れた。
「……この場所は、なにかがおかしい」
フードの一人が、懐から一枚のカードを取り出す。
古びた紙片。
しかし、触れた瞬間、淡く光を帯びた。
「判断を」
カードを掲げた者が、低く告げる。
「長引くと、こちらが滅ぶ」
「……なぜだ」
「分からない」
正直な答えだった。
「だが、カードがそう示している」
「原因不明、結果のみ確定か」
再び、沈黙。
そのとき――
森の奥で、枝がわずかに揺れた。
誰も気づかないほどの、小さな音。
だが、確かに“笑うような気配”が混じっていた。
「……早急に対応する必要があるな」
「同意します」
その返答は、即座だった。
彼らはまだ気づいていない。
結界を壊した“それ”が、
すでに次の一手を楽しむように、森の中で息を潜めていることを。
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