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4 奇跡の畑
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川のせせらぎが、静かに耳に届く。
森の中に差し込む朝の光が、木々の葉の間からこぼれ落ち、地面にまだら模様の影を作っていた。
その光の中で、俺は手のひらの上にある小さな種を見つめていた。
茶色くて、小さな種。
どこにでもありそうな、普通の野菜の種だ。
「……本当にできるのか?」
思わず独り言が漏れる。
普通なら、種を植えてもすぐには育たない。
土を耕し、水をやり、何日も世話をして――それでも芽が出るまでには時間がかかる。
ましてや収穫までとなれば、何週間、あるいは何ヶ月も必要だ。
それが当たり前だ。
だが、俺の頭の中には、あのスキルがある。
【生命活性】
土地や植物、生き物の生命力を高める力。
もしこのスキルが本当に植物にも効果があるなら――
もしかしたら。
「……やってみるか」
俺はしゃがみ込み、川の近くの土を手で掘った。
黒く、しっとりとした土。
指を差し込むと、柔らかく崩れる。
やっぱりいい土だ。
昨日触った時にも思ったが、この土地は栄養が豊富そうだ。
農業に向いている。
指で小さな穴を作り、その中に種を落とす。
そして軽く土をかぶせた。
ぽん、と手で叩いてならす。
「よし」
俺はゆっくり立ち上がった。
目の前には、たった今植えたばかりの小さな畑。
……いや、畑と呼ぶにはまだ早いか。
ただの土の上だ。
だが、ここから何かが始まる気がする。
俺はそっと手をかざした。
胸の奥にある魔力を意識する。
この感覚は、よく知っている。
勇者パーティーにいた三年間、何度も何度も使ってきた力だ。
仲間が傷つけば、俺が回復する。
それが回復術師の仕事だった。
「ヒール」
静かに魔法を唱える。
淡い光が、手のひらから広がった。
やわらかい光が、地面を包み込む。
その瞬間だった。
土が、わずかに動いた。
「……ん?」
俺は思わず身を乗り出す。
小さく盛り上がった土が、ゆっくりと割れる。
その隙間から――
小さな芽が顔を出した。
「おお……」
思わず声が漏れる。
芽は止まらない。
ぐん、と伸びる。
まるで、時間が急に早送りされたみたいだった。
葉が開く。
茎が太くなる。
「ちょ、ちょっと待て」
俺は目を疑った。
植物は、さらに成長を続ける。
葉がどんどん増えていく。
茎が太くなる。
根元が膨らみ始めた。
「……え?」
それは、明らかに野菜の形だった。
土の中で、実が大きくなっている。
成長は止まらない。
数秒後。
目の前には――立派な野菜が一本、生えていた。
ついさっき植えたばかりの種から。
「……」
俺はしばらく、言葉を失った。
信じられない。
さっき植えたばかりだ。
まだ一分も経っていない。
それなのに。
もう収穫できる。
「え、早すぎない?」
思わず声が出た。
俺は恐る恐る、その野菜の葉をつかんだ。
ぐっと引っ張る。
するり、と土から抜けた。
根はしっかり張っている。
どう見ても、立派な野菜だ。
「嘘だろ……」
俺は手の中の野菜をじっと見つめた。
大きさも、形も、完全に食べられる野菜だ。
……いや、それどころか。
王都の市場で見たものより、少し立派に見える。
「……食べてみるか」
俺は少し躊躇したあと、思い切ってかじった。
しゃくっ。
軽い音が、森の中に響く。
次の瞬間――
「……うまっ」
思わず声が漏れた。
みずみずしい。
口の中に、爽やかな甘さが広がる。
しかも、えぐみがほとんどない。
野菜特有の苦みも少ない。
むしろ――甘い。
俺はもう一口食べた。
しゃく、しゃく。
歯ごたえもいい。
体の中に、すっと力が入るような感覚まである。
「なんだこれ……」
思わず笑ってしまった。
こんなに美味しい野菜、王都でも食べたことがない。
しかもこれは――
たった今、俺が作った野菜だ。
俺は畑を見下ろした。
黒い土。
川の水。
そして、俺のスキル。
【生命活性】
植物の生命力を高める能力。
つまり――
「……これ」
俺はぽつりと呟いた。
「農業、めちゃくちゃ強いスキルなんじゃないか?」
普通の農家なら何ヶ月もかけて育てる作物。
それを俺は、数秒で作れる。
しかも味は、普通の野菜よりずっといい。
もしこれを続けたら――
食料には絶対困らない。
むしろ、余るかもしれない。
「……はは」
思わず笑いがこぼれた。
昨日まで、勇者パーティーにいた。
追放されて、森で野宿して。
人生終わったと思っていた。
それなのに。
今は――
畑を作っている。
しかも、とんでもない畑だ。
俺は手の中の野菜を見ながら、小さく呟いた。
「……もう少し、試してみるか」
もしこの力が本当に使えるなら。
この森での生活は――
思っていたより、ずっと面白いものになるかもしれない。
森の中に差し込む朝の光が、木々の葉の間からこぼれ落ち、地面にまだら模様の影を作っていた。
その光の中で、俺は手のひらの上にある小さな種を見つめていた。
茶色くて、小さな種。
どこにでもありそうな、普通の野菜の種だ。
「……本当にできるのか?」
思わず独り言が漏れる。
普通なら、種を植えてもすぐには育たない。
土を耕し、水をやり、何日も世話をして――それでも芽が出るまでには時間がかかる。
ましてや収穫までとなれば、何週間、あるいは何ヶ月も必要だ。
それが当たり前だ。
だが、俺の頭の中には、あのスキルがある。
【生命活性】
土地や植物、生き物の生命力を高める力。
もしこのスキルが本当に植物にも効果があるなら――
もしかしたら。
「……やってみるか」
俺はしゃがみ込み、川の近くの土を手で掘った。
黒く、しっとりとした土。
指を差し込むと、柔らかく崩れる。
やっぱりいい土だ。
昨日触った時にも思ったが、この土地は栄養が豊富そうだ。
農業に向いている。
指で小さな穴を作り、その中に種を落とす。
そして軽く土をかぶせた。
ぽん、と手で叩いてならす。
「よし」
俺はゆっくり立ち上がった。
目の前には、たった今植えたばかりの小さな畑。
……いや、畑と呼ぶにはまだ早いか。
ただの土の上だ。
だが、ここから何かが始まる気がする。
俺はそっと手をかざした。
胸の奥にある魔力を意識する。
この感覚は、よく知っている。
勇者パーティーにいた三年間、何度も何度も使ってきた力だ。
仲間が傷つけば、俺が回復する。
それが回復術師の仕事だった。
「ヒール」
静かに魔法を唱える。
淡い光が、手のひらから広がった。
やわらかい光が、地面を包み込む。
その瞬間だった。
土が、わずかに動いた。
「……ん?」
俺は思わず身を乗り出す。
小さく盛り上がった土が、ゆっくりと割れる。
その隙間から――
小さな芽が顔を出した。
「おお……」
思わず声が漏れる。
芽は止まらない。
ぐん、と伸びる。
まるで、時間が急に早送りされたみたいだった。
葉が開く。
茎が太くなる。
「ちょ、ちょっと待て」
俺は目を疑った。
植物は、さらに成長を続ける。
葉がどんどん増えていく。
茎が太くなる。
根元が膨らみ始めた。
「……え?」
それは、明らかに野菜の形だった。
土の中で、実が大きくなっている。
成長は止まらない。
数秒後。
目の前には――立派な野菜が一本、生えていた。
ついさっき植えたばかりの種から。
「……」
俺はしばらく、言葉を失った。
信じられない。
さっき植えたばかりだ。
まだ一分も経っていない。
それなのに。
もう収穫できる。
「え、早すぎない?」
思わず声が出た。
俺は恐る恐る、その野菜の葉をつかんだ。
ぐっと引っ張る。
するり、と土から抜けた。
根はしっかり張っている。
どう見ても、立派な野菜だ。
「嘘だろ……」
俺は手の中の野菜をじっと見つめた。
大きさも、形も、完全に食べられる野菜だ。
……いや、それどころか。
王都の市場で見たものより、少し立派に見える。
「……食べてみるか」
俺は少し躊躇したあと、思い切ってかじった。
しゃくっ。
軽い音が、森の中に響く。
次の瞬間――
「……うまっ」
思わず声が漏れた。
みずみずしい。
口の中に、爽やかな甘さが広がる。
しかも、えぐみがほとんどない。
野菜特有の苦みも少ない。
むしろ――甘い。
俺はもう一口食べた。
しゃく、しゃく。
歯ごたえもいい。
体の中に、すっと力が入るような感覚まである。
「なんだこれ……」
思わず笑ってしまった。
こんなに美味しい野菜、王都でも食べたことがない。
しかもこれは――
たった今、俺が作った野菜だ。
俺は畑を見下ろした。
黒い土。
川の水。
そして、俺のスキル。
【生命活性】
植物の生命力を高める能力。
つまり――
「……これ」
俺はぽつりと呟いた。
「農業、めちゃくちゃ強いスキルなんじゃないか?」
普通の農家なら何ヶ月もかけて育てる作物。
それを俺は、数秒で作れる。
しかも味は、普通の野菜よりずっといい。
もしこれを続けたら――
食料には絶対困らない。
むしろ、余るかもしれない。
「……はは」
思わず笑いがこぼれた。
昨日まで、勇者パーティーにいた。
追放されて、森で野宿して。
人生終わったと思っていた。
それなのに。
今は――
畑を作っている。
しかも、とんでもない畑だ。
俺は手の中の野菜を見ながら、小さく呟いた。
「……もう少し、試してみるか」
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この森での生活は――
思っていたより、ずっと面白いものになるかもしれない。
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