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3 森の探索
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小鳥のさえずりが、耳元でやけに近く聞こえた。
「……ん」
まぶたの裏に、やわらかな光が差し込んでくる。
ゆっくりと目を開けると、木々の隙間から朝日が差し込んでいた。
「朝……か」
体を起こすと、肩にかけていた毛布がするりと落ちる。
森の朝の空気は冷たい。けれど、不思議と嫌な寒さではなかった。澄んだ空気は胸いっぱいに吸い込むと気持ちがいい。
「んー……」
俺は大きく背伸びをした。
昨日は森の地面でそのまま寝てしまった。体が痛くなるかと思ったが、意外とそうでもない。
むしろ――。
「……なんか、体軽いな」
王都で暮らしていた時よりも、よく眠れた気がする。
辺りは静かだった。
王都の朝とは全然違う。
馬車の音も、人の話し声もない。
聞こえるのは風が木の葉を揺らす音と、小鳥の鳴き声だけだ。
森の中の静けさは、どこか落ち着く。
ぼんやりと辺りを見回していると、ふと昨日の出来事を思い出した。
枯れた土地。
そこに回復魔法を使ったら――草原になった。
「……夢じゃないよな」
半信半疑のまま立ち上がり、昨日魔法を使った場所へ目を向ける。
そこには、昨日と同じように青々とした草が広がっていた。
朝露をまとった草が、きらきらと光っている。
間違いない。
昨日まで枯れていた場所だ。
俺は草を一本摘み取ってみた。
指先に伝わる、しっかりとした感触。
葉は柔らかく、生命力に満ちている。
「やっぱり本当か……」
思わず小さく笑った。
頭の中に浮かぶ言葉。
【生命活性】
土地、植物、生き物の生命力を高めるスキル。
正直、まだ実感は湧いていない。
でも、目の前の光景がそれを証明している。
「もしこれが本当に使えるなら……」
昨日、ふと思いついたことがある。
――畑だ。
植物の成長を早めることができるなら、作物を育てられるかもしれない。
食べ物を自分で作れる。
それだけで、生きていく難易度はぐっと下がる。
「まずは周りを調べるか」
ここがどんな場所なのか、まだよく分かっていない。
水があるのか。
食べられるものがあるのか。
危険な魔物がいるのか。
何も知らないまま生活するのは危ない。
俺は軽く荷物を背負い、森の奥へと歩き出した。
朝の森は、思っていたより明るかった。
高い木々が立ち並んでいるが、枝の隙間から太陽の光が差し込んでいる。
その光が、地面にまだら模様の影を落としていた。
足元には落ち葉が積もっている。
踏むたびに、さくりと乾いた音がした。
しばらく歩いていると――
さらさら、と小さな音が耳に入った。
「……水?」
耳を澄ます。
間違いない。
水の流れる音だ。
音のする方向へ進んでいくと、やがて木々が少し開けた場所に出た。
そこには、小さな川が流れていた。
「おお……」
思わず声が漏れる。
川の水は驚くほど透明だった。
底に転がっている小石まで、はっきり見える。
俺はしゃがみ込み、両手で水をすくった。
口に運ぶ。
「……冷たい」
喉を通る水が、体の奥まで染み渡る。
そして――
「うまい」
思わず笑ってしまった。
王都で飲んでいた水よりも、よっぽど美味しい。
「これなら水には困らないな」
水場があるというだけで、生存率は大きく変わる。
作物を育てるにも、水は必要だ。
俺は川沿いをゆっくり歩いた。
その時、近くの木に赤い実がなっているのが目に入った。
「ん?」
近づいてみる。
丸い実が、枝にいくつもぶら下がっていた。
見覚えがある。
確か、森に生える野生の果実だ。
俺は一つ取ってみた。
少し躊躇したが、思い切ってかじる。
「……甘い」
思ったより美味しかった。
ほんのり酸味はあるが、十分食べられる。
「果物もあるのか」
水がある。
果物もある。
思っていたより、この森は恵まれているのかもしれない。
そのまま周囲を見回していると、ふと足元の地面が気になった。
しゃがんで、土を触る。
黒い。
しっとりとしていて、柔らかい。
指で崩すと、ほろほろと細かく崩れた。
「……いい土だ」
昔、農家の人が言っていた。
いい土は黒い、と。
栄養が多い証拠らしい。
つまり――
「畑に向いてるってことか」
俺は周囲を見渡した。
川の近くには、比較的平らな土地が広がっている。
木を少し切れば、畑を作ることもできそうだ。
「ここ……いい場所かもしれないな」
水がある。
果物がある。
土もいい。
辺境の森にしては、かなり条件がいい。
その時だった。
足元の草の中に、小さな緑の葉が見えた。
「……ん?」
しゃがんでよく見る。
地面に低く広がる葉。
形に見覚えがあった。
「これ……野菜じゃないか?」
王都の市場で見たことがある。
畑で育てる野菜の葉だ。
つまり、この森には――野生の野菜が生えている。
俺は慎重にその植物を掘り起こしてみた。
根元には、小さな実がついている。
そしてその近くの地面には、小さな種がいくつか落ちていた。
「種……」
俺はそれを手に取った。
小さくて、茶色い種。
普通なら、これを植えても収穫まで何ヶ月もかかる。
でも――。
俺の頭の中には、あのスキルがある。
【生命活性】
もしこれを使ったら、どうなる?
心臓が、どくんと大きく鳴った。
「……試してみるか」
俺は種を握りしめた。
川の近くの平らな土地を見つめる。
畑。
作物。
森での生活。
もしかしたら――
ここから、全部始まるのかもしれない。
俺は少しだけ口元を緩めた。
「……ん」
まぶたの裏に、やわらかな光が差し込んでくる。
ゆっくりと目を開けると、木々の隙間から朝日が差し込んでいた。
「朝……か」
体を起こすと、肩にかけていた毛布がするりと落ちる。
森の朝の空気は冷たい。けれど、不思議と嫌な寒さではなかった。澄んだ空気は胸いっぱいに吸い込むと気持ちがいい。
「んー……」
俺は大きく背伸びをした。
昨日は森の地面でそのまま寝てしまった。体が痛くなるかと思ったが、意外とそうでもない。
むしろ――。
「……なんか、体軽いな」
王都で暮らしていた時よりも、よく眠れた気がする。
辺りは静かだった。
王都の朝とは全然違う。
馬車の音も、人の話し声もない。
聞こえるのは風が木の葉を揺らす音と、小鳥の鳴き声だけだ。
森の中の静けさは、どこか落ち着く。
ぼんやりと辺りを見回していると、ふと昨日の出来事を思い出した。
枯れた土地。
そこに回復魔法を使ったら――草原になった。
「……夢じゃないよな」
半信半疑のまま立ち上がり、昨日魔法を使った場所へ目を向ける。
そこには、昨日と同じように青々とした草が広がっていた。
朝露をまとった草が、きらきらと光っている。
間違いない。
昨日まで枯れていた場所だ。
俺は草を一本摘み取ってみた。
指先に伝わる、しっかりとした感触。
葉は柔らかく、生命力に満ちている。
「やっぱり本当か……」
思わず小さく笑った。
頭の中に浮かぶ言葉。
【生命活性】
土地、植物、生き物の生命力を高めるスキル。
正直、まだ実感は湧いていない。
でも、目の前の光景がそれを証明している。
「もしこれが本当に使えるなら……」
昨日、ふと思いついたことがある。
――畑だ。
植物の成長を早めることができるなら、作物を育てられるかもしれない。
食べ物を自分で作れる。
それだけで、生きていく難易度はぐっと下がる。
「まずは周りを調べるか」
ここがどんな場所なのか、まだよく分かっていない。
水があるのか。
食べられるものがあるのか。
危険な魔物がいるのか。
何も知らないまま生活するのは危ない。
俺は軽く荷物を背負い、森の奥へと歩き出した。
朝の森は、思っていたより明るかった。
高い木々が立ち並んでいるが、枝の隙間から太陽の光が差し込んでいる。
その光が、地面にまだら模様の影を落としていた。
足元には落ち葉が積もっている。
踏むたびに、さくりと乾いた音がした。
しばらく歩いていると――
さらさら、と小さな音が耳に入った。
「……水?」
耳を澄ます。
間違いない。
水の流れる音だ。
音のする方向へ進んでいくと、やがて木々が少し開けた場所に出た。
そこには、小さな川が流れていた。
「おお……」
思わず声が漏れる。
川の水は驚くほど透明だった。
底に転がっている小石まで、はっきり見える。
俺はしゃがみ込み、両手で水をすくった。
口に運ぶ。
「……冷たい」
喉を通る水が、体の奥まで染み渡る。
そして――
「うまい」
思わず笑ってしまった。
王都で飲んでいた水よりも、よっぽど美味しい。
「これなら水には困らないな」
水場があるというだけで、生存率は大きく変わる。
作物を育てるにも、水は必要だ。
俺は川沿いをゆっくり歩いた。
その時、近くの木に赤い実がなっているのが目に入った。
「ん?」
近づいてみる。
丸い実が、枝にいくつもぶら下がっていた。
見覚えがある。
確か、森に生える野生の果実だ。
俺は一つ取ってみた。
少し躊躇したが、思い切ってかじる。
「……甘い」
思ったより美味しかった。
ほんのり酸味はあるが、十分食べられる。
「果物もあるのか」
水がある。
果物もある。
思っていたより、この森は恵まれているのかもしれない。
そのまま周囲を見回していると、ふと足元の地面が気になった。
しゃがんで、土を触る。
黒い。
しっとりとしていて、柔らかい。
指で崩すと、ほろほろと細かく崩れた。
「……いい土だ」
昔、農家の人が言っていた。
いい土は黒い、と。
栄養が多い証拠らしい。
つまり――
「畑に向いてるってことか」
俺は周囲を見渡した。
川の近くには、比較的平らな土地が広がっている。
木を少し切れば、畑を作ることもできそうだ。
「ここ……いい場所かもしれないな」
水がある。
果物がある。
土もいい。
辺境の森にしては、かなり条件がいい。
その時だった。
足元の草の中に、小さな緑の葉が見えた。
「……ん?」
しゃがんでよく見る。
地面に低く広がる葉。
形に見覚えがあった。
「これ……野菜じゃないか?」
王都の市場で見たことがある。
畑で育てる野菜の葉だ。
つまり、この森には――野生の野菜が生えている。
俺は慎重にその植物を掘り起こしてみた。
根元には、小さな実がついている。
そしてその近くの地面には、小さな種がいくつか落ちていた。
「種……」
俺はそれを手に取った。
小さくて、茶色い種。
普通なら、これを植えても収穫まで何ヶ月もかかる。
でも――。
俺の頭の中には、あのスキルがある。
【生命活性】
もしこれを使ったら、どうなる?
心臓が、どくんと大きく鳴った。
「……試してみるか」
俺は種を握りしめた。
川の近くの平らな土地を見つめる。
畑。
作物。
森での生活。
もしかしたら――
ここから、全部始まるのかもしれない。
俺は少しだけ口元を緩めた。
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