間違いだらけの久島くん

魔根喪部荼毘座右衛門

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二章 地下格闘技復讐編

1.やめろ伊佐美くん!今は令和だぞ!

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 5月中旬、僕のクラス波浜高校2年2組は……お通夜状態になっていた。

 その理由は明白。このクラスのリーダー格である秋山千才が大怪我により長期入院、そして秋山千才率いる仲良しYouTuberグループ『クリアユース』として共に活動するメンバーで友人の、三浦礼斗と前池翔太が停学したからである。

 クラスの代表陽キャグループの男子全滅ともなれば、統制と陽気を失ってしまうのも無理はなかった。その秋山の彼女である柳朝子も、その姿を見せていない……。

 このクラスは、太陽を失ったのである。

 誰のせいか?

 僕こと、久島秀忠(教室窓側最後列のぼっち)のせいである。

 ゴールデンウィークの時、僕は秋山くんと不良やヤンキーが参加するアマチュア格闘技イベント『ブレイキングケイジ』で、戦った。その結果、秋山くんに僕は勝ち、根治するのに年単位の大怪我を負わせた。

 そして、浦和くんと前池くんに報復されかけるがこれを返り討ちにした。そうして秋山くんは入院、浦和くんと前池くんは停学、さらに彼らが所属していた男子サッカー部と男子バスケ部は、今年の夏大会を参加取り消しになった。

 聞いた話では流石に責任を取れと、部活メンバーの意向から両者は部活から追放されたと聞く。今はその停学期間で、終わるのは5月末らしい。

 気付かされた事は『クラスの中心』というのは居なくなるだけでクラスをこうも静かに、元気を失うという事だ。秋山くん含めた陽キャグループ達は、やった事は許されないけど……陽キャとしてクラスを牽引していた事を目の前に突きつけられた。

 じゃあ時間戻して、あの屋上での凶行を止めず山城くんを見捨てるようにやり直せるけどするか?と、神様が提案したら僕は首を横に振る。それで山城くんが取り返しのつかない事になったら、僕は一生悔やんでいるだろうから。

 お通夜並みに暗くなった教室で、4時間目の終わりのチャイムが鳴り、昼休みが始まった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「えっ、じゃあ本田くんは別の学校の野球部で、秋山くんと対戦したの?」
「ああ、腹立つくらい打たれた、マジの天才の癖してあいつはこんなとこに来やがったんだよ」

 山城くんは自身の弁当、本田くんはコンビニ弁当を食べながら会話をしていた。相変わらずのコンビニパンにおにぎりな伊佐美くんが、その話を聞いており、僕の今日の献立も相変わらずサラダチキンバーにプロテイン……と、ブレイキングケイジで勝利者賞でもらった様々ならサプリメントだ。

 絶対全て消費しきれないくらい送られて、腐らせそうな程貰ったから、折角なので愛用させて貰っていた。

 4月は僕と伊佐美くんだけだった体育館裏が、今は山城くんに本田くんまで来て、4人で昼ごはんを食べるようになった。中学はこんな事無かったし、一年生の時は教室でぼっち飯だったからやはり楽しい。

 楽しいのだが……やはり教室の雰囲気に気が滅入っていた。

「上の空だなぁ久島ぁ、まだ停学中のあいつらと、秋山の事気にしてんのかぁ?」

 伊佐美くんに見抜かれて尋ねられた、僕はしばらく何も言えず……そして十秒経って言いたい事、聞いてもらいたい事を伊佐美くんに話した。

「今さ、思うんだ……教室が、空気が3割り増しで暗いんだよね、授業も間の休みも……」
「おお、それが?」
「秋山くん達のグループがさ、まぁあの2組の中心だったわけで……こう、僕がぶちのめしておいて言うのもだけどさ、ぽっかり穴が空いてるって感じがして……虚無感が半端ないんだ」

 秋山くんが居た時は騒がしかった、外野の僕もそれを感じれた、別に仲良くもないし、羨ましさすら感じた。だけど、触れ合わないなら、関わらないならこんな事にはなってなかったんだろうと思い返す。

「……僕はあの時、勝つにしても道化になれば、こんな事にならなかったのだろうけど……それができないくらい秋山くんに怒ってた、そして秋山くんをぶちのめした結果……浦和くんも前池くんも報復しに来て、停学くらって……お前がやらかしたから、クラスはあんなに暗くなったと突きつけられてる感じがするんだ」

 あの暗い教室は、お前が台本を間違えたからこうなったんだと見せつけられているようでならない。そう語る僕に、本田くんは言う。

「久島、お前自身が柳に言ってたろ……始めたのは、秋山だと……この件にお前に非は無いんだから気にする必要も無いんだ」

 本田くんの話に、確かにそうだと頷きたくなったが……ああ、と僕はため息を漏らして言う。

「なんと言うか、今こうして自分が言葉吐いたのも、キミ達から赦しの言葉欲しさに出てるようで……自責感が凄まじいんだ」

 同意が、許しが欲しいために、僕は今言葉を吐いているようでならない。うじついてどうするのかと、負のスパイラルが止まらない最中……山城くんが言う。

「でも、自分は悪く無いって開き直るより、悪いことしたなって自省できるなら、まだいいと思うよ?報復しに来た2人、全く悪く思ってすらなかったもの」
「言うなー山城ぉ、お前やっぱりあの2人も久島に辱められていい気味って思っとんだろ?」
「ま、まぁ……無いと言ったら嘘になるよ」
「ざまぁみろ、だな全く……」
「本田ぁ、そりゃ俺も思ってる」

 自省できているなら、開き直るよりましだろうと、遠慮がちに笑いながら語る山城くんに、やはり屋上ブレイキングケイジで恨んでてスカッとしたんだろと伊佐美くんがニヤついて言うのだ。

 その言葉で、僕は少し楽になったあたり現金なやつなのだろう。同意が欲しかった卑しい人間であった、4人で食事しながらケラケラ笑って、時間は過ぎていく……。

「居た、あんた達ここに居たんだ」
「あん?」

 そんな僕たち4人が溜まる体育館裏に、声が響く。女性の声、伊佐美くんが唸り僕も山城くんも本田くんも、表に出る場所から一人の女子生徒が覗いていた。

「なんだよ比嘉出……何か用かぁ?」

 伊佐美くんが早速、敵意剥き出しの声色を向けた。立っていたのは2年2組の副委員長である、比嘉出絵梨花さん……秋山くんのYouTuberグループ『クリアユース』の一人でもあった。

「まさか停学した彼氏の前池の報復にでも来たんか?」
「押さえなよ伊佐美くん……」

 本当に噛みつくなぁ、秋山くん関連でキミはと、僕は伊佐美くんを諭した。まぁ、屋上ブレイキングケイジで口裏合わせて工作した一人だから、僕も言いたい事あるけどと内心思いつつ、彼女が何をしに来たのか、言葉を待った。

 しかし、4月に僕と伊佐美くんに進路相談提出を迫った覇気は彼女にはなかった、自信も失って憔悴しきった表情が見える。

「…………ごめんなさい」

 出て来た言葉は、謝罪だった。

「本来だったら、私が……秋山くんの事を、止めなきゃいけなかった……副委員長として、それを……YouTuberのメンバーだから、同調しちゃって……ごめんなさい」

 深々と、頭を最敬礼の90度まで下げる比嘉出さん……だが、その謝罪に伊佐美くんが、唾を吐いて言い返す。

「あ?テメェ今更謝罪か比嘉出コラ!あの報復の時テメェも浦和と前池の後ろで見とったよなぁ!?久島の下駄箱壊して上履きボロにしてなーんも言わずだったよなぁ!!舐めてんじゃねぇぞコラ!!旗色悪くなったら私は悪くないのってイチ抜けしに来たんか!!この、ど腐れオ◯ゲが!!」
「ストップ!!伊佐美くん言いすぎ!!それ以上はマジでやめろ!?」
「◯メゲは駄目だろオメ◯は……せめてど腐れプ◯シーにしとけ」
「それも駄目だよ!?本田くん」

 お前それ訴えられるし10割負けるぞ、今のセンシティブな世間だったらと、僕と本田くんは伊佐美くんの暴言を止めた。そして本田くんの暴言も駄目だろと山城くんが注意した。

 4月までの、彼女だったら……めちゃくちゃ怒って言い返す気力もあったのかもしれない……しかし、顔は見えず最敬礼のままの彼女の顔から、煌めく雫が落ちて、地面のコンクリートに落ちているのを、僕も、伊佐美くん達も見た。

「ごめ……なさ……ごめん……なさい……ごめんなさい……」
「てぇめぇ……この腐れアマぁ!泣けば許すとでも」
「伊佐美くん!!」
「けどよ久島ぁ!!」
「済んだことだ!、もう!!」

 伊佐美くんが、僕のために怒ってくれているのも分かる。泣いたらチャラなんてできないし……僕だって、はい許しましたなんてできない。

 僕は泣き腫らす比嘉手さんに向かって、言った。

「比嘉出さん……悪いけど、もうあの騒動は済んだし、話も終わってるんだ……先生方を介して、僕たちも話をして……浦和くんと前池くんは停学で、僕は清掃……それでもう話は済んだし終わってるんだ……今更謝罪したところでって事なんだ……気持ちだけは受け取るよ」

 あの騒動の沙汰は互いに下ったし、終わった話。今更謝ったところで僕は許す気は無い、やった事は消えないのでと彼女に伝え、その気持ちだけは受け取る事にした。

「行こう皆……次の授業始まるし」
「……うん」
「だな……」
「ちっ!!気が悪い……」

 僕たち四人は、比嘉出さんの横を通って体育館裏から立ち去った、許せないけど……やはり気になるので僕は首を少し背後に向けて比嘉出さんを見た。

 身体を震わせ、こちらも見ずにひたすら彼女は、最敬礼で頭を下げ続けていた。

 そして……スカートも短いが故にエグめなショーツが見えていた事は……黙っておく事にした。
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