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二章 地下格闘技復讐編
8.人面獣心のクソ野郎
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「へー、じゃあキミらはその久島くんって高校生にビビって逃げてきたんだぁ?」
その夜、久島を待ち伏せ襲撃したブラッディレインの者達の内、逃走した二人は……社長室にて正座させられていた。その背後には鼻にガーゼを張られた二人が、そして松葉杖をついて立つ、浦和が居た。
「す、すいません三鬼さん……」
「け、けどあんな化け物の学生、手の打ちようが……」
正座する逃げた二人を見下ろして、三鬼は傍に置かれた装飾のある杖を握りしめて、片方の男の喉へ突きつけた。
「あのさぁ、喧嘩は気合いなんだよ?敵強いとか関係ないんだよ、オタクだろうがヤカラだろうが、気合い持って向かって行くのがまず前提条件、ビビった時点で負けたやつより価値ないんだよ、分かる?」
「ひ……ひは……はい……」
「後ろの三人はいいよ、負けようが勝つまでやればさぁ、けどお前らはぁ!!」
杖を振りかぶり、二人同時にフルスイングで頭に叩きつけ、倒れる二人。
「相手が学生だろうがプロだろうが世界ヘビー級チャンプだろうが関係ねぇんだよ、戦うからこそ!意味!あるわけ!逃げたら負け犬にすらなれねぇだろうがよぉ!なぁ!!」
そして何度も、何度も三鬼は振り下ろして叩きつければ、悲鳴はやがて許しを乞う懇願と謝罪に、そしてそれすらも消えて、血に染まり痙攣するのみの肉塊となった。
「こいつら捨てといて、あ、いつものプレス工場に」
「うす」
ズズ、ズズズ……引きずられた二人を見て、松葉杖をつく浦和は冷や汗をかいたが、そんな浦和に三鬼は笑って返り血を拭いながら語り出す。
「浦和くぅん、先陣切って偉いねぇ?マジ気合い入ってる、サッカーでフォワードやってたのがわかるよぉ?ああけど、大切な脚こんなにされちゃったんだね……かわいそ」
「すいません、せっかく力貸してもらって」
「いいよぉ、キミのケツをキミで拭こうとしたのは僕が認めてあげる!そんな頑張ってる浦和くんに僕も?応えてあげないとね……」
うーん……と子どものいたずらを考えるように、三鬼が椅子に座ってどうしようか考え……うん!と人差し指を立てた。
「ありきたりだけどさ、キミの分からず屋な彼女、そして友人の彼女拉致ろっか、で……久島くんをここに呼ぼう!」
ありきたりな手だが、これがいいとなる三鬼に浦和が尋ねた。
「あの、その場合久島の友人3人を拉致った方が来ませんか?」
久島が動くとしら、今関係が強い伊佐美、山城、本田の男友達の方が来そうな気がする。そもそも女子二人は『こっち』側だ、動くとは思えないのですが、と尋ねた浦和に三鬼が答えた。
「あの手の真面目陰キャは、女の子は守るものって考えるから希薄な関係だろうが彼は来るよ、ああ……浦和くんさ、友達の前池くんに拉致った後メッセージ送ってくんない?明日朝一番にハイエース回して、拉致っちゃおう」
淡々と、子どもの遊びのように人を殺し、拉致を決定する地元一番の悪な先輩に、浦和は冷や汗垂らしながら笑うのであった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
夜……自室で僕は、呆けながら電灯をじっと見ていた。
あの時、浦和くん含めた半グレ相手に僕は、逃げてしまえばよかった。それも選択できた筈だった。
しかし、その選択はせず戦う選択をした。
その理由は……自分がBOFユースの一人として、格闘家として逃げたくなかったからか?
違う。
ならば、逃げたら追いかけられて、皆に危害が及ぶから、ここで痛い目に合わせれば、2度と関わってこないと思ったから?
違う。
……本音を隠すなと、自らに言い聞かせる。
『闘いたかった』
それに尽きる。
いつからだろう……僕の低い体温が、こうして熱を持ち始めたのは。
始まりは、去年のファイナル8だった。
その時まで僕は、キックボクシング自体惰性で続けていた部分があった。キッズ大会に出て、たまに盾を貰ったりとか、一位は取ったことない、地方で強い子の一人だった。
ジムの人が、プロに繋がるBOFユース大会にチャレンジしてみろと、無理矢理気味に出されて……なんだかんだ突破して、ファイナル8に来てしまった。
相手は、3年生のアメリカ人白人と日本人ハーフで、アジア人には無い腕力とボクシングテクニックを使い、一年生で優勝した才能の塊。二年生でスカウトから参戦した久瀬くんに倒され、最後の大会でリベンジの為に這い上がってきた人。
その人と僕は戦って、勝てた。
腕と頭蓋を破壊して、選手生命を終わらせて。
下馬評は相手断然有利、最終ラウンドまで追い詰められたし、ダウンもした。その時まで僕はキックボクシングに執着も無かったから、負けたらやめようかなとすら考えていた。
けど……最終ラウンドの半ばで、唐突に『負けたくない』って心が湧き上がり、僕は逆転勝利した。
そして、大晦日の久瀬くんとの戦い。
『負けたくない』が『勝ちたい』に変わった。
それからだ、僕の中に明確な『戦闘モード』のスイッチが現れたのは。それをカチリとオンにした瞬間、僕は冷酷残忍になれるようになった。
それからだ……『勝ちたい』という『熱』とはまた別に『闘いたい』という『別の熱』までが燃え始めたのは。
それは素人の秋山くんにも湧き上がり、教室の時の喧嘩にも湧き立ち、そして今日の帰りの半グレと浦和くんにも湧き上がって来た。
だから、浦和くんの足を壊した時には、すっかり抜け落ちていた。問題行動によるシード権取り消し、ジムの追放……それよりも今、あの場所で様々な言い訳に口実を使い『闘いたい』という衝動が、僕の足を止めさせた。
口実を盾に自身の力を振るいたいくせに、何が格闘家は素人に手を出さないだ、そんなの僕は……。
「人面獣心のクソ野郎じゃないか……」
寝返りを打ちながら呟いた僕、自省するくせに、今でもジムや学校から電話で話があるのを怯えている癖に、僕は……また闘いたいと思ってしまっていた。
「寝よう、寝て忘れよう、リセットは大事だ」
明日になったら、僕も停学とジムからお咎めが来るだろうな。その時は仕方がない、僕も一から出直そうと、紐を引いて電気を切り瞼を閉じた。
その夜、久島を待ち伏せ襲撃したブラッディレインの者達の内、逃走した二人は……社長室にて正座させられていた。その背後には鼻にガーゼを張られた二人が、そして松葉杖をついて立つ、浦和が居た。
「す、すいません三鬼さん……」
「け、けどあんな化け物の学生、手の打ちようが……」
正座する逃げた二人を見下ろして、三鬼は傍に置かれた装飾のある杖を握りしめて、片方の男の喉へ突きつけた。
「あのさぁ、喧嘩は気合いなんだよ?敵強いとか関係ないんだよ、オタクだろうがヤカラだろうが、気合い持って向かって行くのがまず前提条件、ビビった時点で負けたやつより価値ないんだよ、分かる?」
「ひ……ひは……はい……」
「後ろの三人はいいよ、負けようが勝つまでやればさぁ、けどお前らはぁ!!」
杖を振りかぶり、二人同時にフルスイングで頭に叩きつけ、倒れる二人。
「相手が学生だろうがプロだろうが世界ヘビー級チャンプだろうが関係ねぇんだよ、戦うからこそ!意味!あるわけ!逃げたら負け犬にすらなれねぇだろうがよぉ!なぁ!!」
そして何度も、何度も三鬼は振り下ろして叩きつければ、悲鳴はやがて許しを乞う懇願と謝罪に、そしてそれすらも消えて、血に染まり痙攣するのみの肉塊となった。
「こいつら捨てといて、あ、いつものプレス工場に」
「うす」
ズズ、ズズズ……引きずられた二人を見て、松葉杖をつく浦和は冷や汗をかいたが、そんな浦和に三鬼は笑って返り血を拭いながら語り出す。
「浦和くぅん、先陣切って偉いねぇ?マジ気合い入ってる、サッカーでフォワードやってたのがわかるよぉ?ああけど、大切な脚こんなにされちゃったんだね……かわいそ」
「すいません、せっかく力貸してもらって」
「いいよぉ、キミのケツをキミで拭こうとしたのは僕が認めてあげる!そんな頑張ってる浦和くんに僕も?応えてあげないとね……」
うーん……と子どものいたずらを考えるように、三鬼が椅子に座ってどうしようか考え……うん!と人差し指を立てた。
「ありきたりだけどさ、キミの分からず屋な彼女、そして友人の彼女拉致ろっか、で……久島くんをここに呼ぼう!」
ありきたりな手だが、これがいいとなる三鬼に浦和が尋ねた。
「あの、その場合久島の友人3人を拉致った方が来ませんか?」
久島が動くとしら、今関係が強い伊佐美、山城、本田の男友達の方が来そうな気がする。そもそも女子二人は『こっち』側だ、動くとは思えないのですが、と尋ねた浦和に三鬼が答えた。
「あの手の真面目陰キャは、女の子は守るものって考えるから希薄な関係だろうが彼は来るよ、ああ……浦和くんさ、友達の前池くんに拉致った後メッセージ送ってくんない?明日朝一番にハイエース回して、拉致っちゃおう」
淡々と、子どもの遊びのように人を殺し、拉致を決定する地元一番の悪な先輩に、浦和は冷や汗垂らしながら笑うのであった。
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夜……自室で僕は、呆けながら電灯をじっと見ていた。
あの時、浦和くん含めた半グレ相手に僕は、逃げてしまえばよかった。それも選択できた筈だった。
しかし、その選択はせず戦う選択をした。
その理由は……自分がBOFユースの一人として、格闘家として逃げたくなかったからか?
違う。
ならば、逃げたら追いかけられて、皆に危害が及ぶから、ここで痛い目に合わせれば、2度と関わってこないと思ったから?
違う。
……本音を隠すなと、自らに言い聞かせる。
『闘いたかった』
それに尽きる。
いつからだろう……僕の低い体温が、こうして熱を持ち始めたのは。
始まりは、去年のファイナル8だった。
その時まで僕は、キックボクシング自体惰性で続けていた部分があった。キッズ大会に出て、たまに盾を貰ったりとか、一位は取ったことない、地方で強い子の一人だった。
ジムの人が、プロに繋がるBOFユース大会にチャレンジしてみろと、無理矢理気味に出されて……なんだかんだ突破して、ファイナル8に来てしまった。
相手は、3年生のアメリカ人白人と日本人ハーフで、アジア人には無い腕力とボクシングテクニックを使い、一年生で優勝した才能の塊。二年生でスカウトから参戦した久瀬くんに倒され、最後の大会でリベンジの為に這い上がってきた人。
その人と僕は戦って、勝てた。
腕と頭蓋を破壊して、選手生命を終わらせて。
下馬評は相手断然有利、最終ラウンドまで追い詰められたし、ダウンもした。その時まで僕はキックボクシングに執着も無かったから、負けたらやめようかなとすら考えていた。
けど……最終ラウンドの半ばで、唐突に『負けたくない』って心が湧き上がり、僕は逆転勝利した。
そして、大晦日の久瀬くんとの戦い。
『負けたくない』が『勝ちたい』に変わった。
それからだ、僕の中に明確な『戦闘モード』のスイッチが現れたのは。それをカチリとオンにした瞬間、僕は冷酷残忍になれるようになった。
それからだ……『勝ちたい』という『熱』とはまた別に『闘いたい』という『別の熱』までが燃え始めたのは。
それは素人の秋山くんにも湧き上がり、教室の時の喧嘩にも湧き立ち、そして今日の帰りの半グレと浦和くんにも湧き上がって来た。
だから、浦和くんの足を壊した時には、すっかり抜け落ちていた。問題行動によるシード権取り消し、ジムの追放……それよりも今、あの場所で様々な言い訳に口実を使い『闘いたい』という衝動が、僕の足を止めさせた。
口実を盾に自身の力を振るいたいくせに、何が格闘家は素人に手を出さないだ、そんなの僕は……。
「人面獣心のクソ野郎じゃないか……」
寝返りを打ちながら呟いた僕、自省するくせに、今でもジムや学校から電話で話があるのを怯えている癖に、僕は……また闘いたいと思ってしまっていた。
「寝よう、寝て忘れよう、リセットは大事だ」
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