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二章 地下格闘技復讐編
エピローグ 5月は春、もうすぐ梅雨(下)
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体育館裏、その裏口から伸びている階段に僕と比嘉出さんは横並びに座って、話す事にした。したのだが……話が始まらない。
あれ?話をしたいと言ったのは比嘉出さんだよな?僕から何か話を切り出さなきゃいけない感じか?どうしたらいいんだこれは、女子とまともに話した事無いからわからないぞと、僕は固まった。
「ありがとうね、この前は……助けてくれて」
「お、お!?うん……別に……」
ああ、お礼が言いたいだけだったのかな、比嘉出さんのお礼にキョドりながら、僕は相打ちを打つ。あ、やばい!話終わったかこれ!?いや終わっても別にいいけど……何だか惜しいようなと、僕は話題を探した。
「さ、さっき……彼氏さんと話してたのは……」
出てきた話題が、先程すれ違った前池くんの事とか、お前それを聞くのか久島秀忠と自問した。それプライベートな踏み込んだやつだろ、まだマシな話題なかったんかと。仕方なかろう、女の子の好きそうな話題の一つも知らない、格闘技しか知らない興味ない男に気の利いた話題を出すなどと。
こういうことが出来るから、ぶちのめした秋山くん達は、所謂陽キャ、クラスの中心的な存在になれたのだろうなと僕は実感させられた。
「うん、前池くん……彼氏じゃ無くなったの、別れたいってさ」
それでも、慈悲からか、別に聞かれてもいい事だったのか、比嘉出さんは力無く笑いながら言う、前池翔太と別れたのだと。
「え?それまた、何で」
「私を助けに行かず、久島くんに頼った自分が情けないから……彼女一人守れないやつが、付き合うなんてダメだろって」
思わず聞いてしまった、そしてまた自身のやらかしを知る。あの時に前池くんを愚弄してしまって、それで傷ついて別れを切り出したのだろうと。だから僕は、前池くんのフォローをしようと思った、そもそも僕が彼を罵倒したから、動く力もなかったのだろうと。
「い、いやそれは」
「けど実際、あの時に久島くんだけで……前池くんが着いて来たりとかしてなくて、ショックな私も居て……執着も無くすんなり別れる事ができたんだ、私たち」
遮られた感覚を覚えた。いや、助かったのかもしれないと僕は思った。仮に今、前池くんのフォローをしたら、余計に……前池くんのプライドを傷つけたかもしれないと、思い直してみたらそうなりそうだった。僕の独りよがりな確証も無い推論、いや言い訳かもしれないが。
「……そう、ですか」
もしかして……さっきすれ違いざまに前池くんが言った『すまん、まかせた』とは……比嘉出さんを頼む、と言う事なのだろうか。自分では、彼女を守れないから僕に押し付けたのか?
何を馬鹿な、自惚れるな、少し前までお前は窓際陰キャぼっちだった男だ。何より、暴力に酔いしれている気もある異常者だ。ただ、彼女のお礼だけは受け取ってやって欲しいと言うことだろうと、僕は比嘉出さんに会話を繋げた。
「ま、まぁ、彼も少し心が疲れたんだよ、僕が言えた立場じゃないけど……また、少ししたらほら、よりを戻さないか、とか……あるんじゃない……かな?」
「そう思う?久島くんは……」
「は、はは……無責任だよね、付き合いの経験もない癖にさ、何を偉そうに……」
交際経験なしの陰キャが、何を偉そうに。ここに秋山や浦和が居たら爆笑だろうなと、僕は頭を掻いた。
「じゃあ……比嘉出さんは逆に、前池くんとまだ関係を続けたい?それなら、引き留めるべきだと僕は……素人なりに思うけど」
思いつく事とすれば、まだ未練があるならば引き留めるべきだったのではと比嘉出さんに尋ねてみれば、彼女は少し悩むが返答した。
「うーん……いいかな、別に……確かに昔から近所の幼馴染で、クリアユースの中で、二組が関係進んでたから、私らも試しにって感じだったし……」
「え?あ、そうなんだ……」
あ、そこまで重苦しい関係じゃあなかったんだ、前池くんと比嘉出さんは……と、僕は二人が付き合っていた経緯を知った。秋山と柳、浦和と東城さんが交際したから、チーム内で幼馴染もあり自然とそうなったのかと。
ここで……僕の中の悪魔が囁いた。
『あの話』は真実か、否か、聞いてみろよと。何故?理由はそう、悪魔の囁きだ。決して僕が比嘉出さんが別れて、さらに関係が前池くんと進んでない清い関係だから、ワンチャンあるのでは?とかなったわけでは無い。
と言うわけで本田くん、ここを立ち去って僕を置いていったキミには犠牲になってもらう。別にいいよね?キミはクリアユースが大嫌いだろうし。
「じゃあ去年の冬の……スキー旅行動画の時に全員で盛ったって本田くんから聞いたけど……根も葉もない噂だったんだ」
「え?」
僕は、あくまで『本田くんから聞いた』体で、キミを彼氏以外と乱交する雌豚だと誤認していたよと言えば、比嘉出さんはーー血の気が引いた顔になった。
「そ、それ……本田くんが言ったの?」
「正確には柳さんから本田くんに……本田くん、柳さんが秋山くんと関係が冷えて二股されててさ、当て馬にされて別れる時に口走ったって」
ああ、あくまで『柳経由で、本田くんから』聞いたんだよと、僕はまた聞きだからと軽蔑の矛先からできるだけ離れる卑怯な言い方で尋ねた結果ーー。
「えっと……弁明、していい?久島くん」
「えっ」
頭を押さえて、思い出したくないとばかりな声と苦い顔で彼女は言うので、僕は肝が冷えた。
え?もしかして……ガチの性被害があった?睡眠薬盛られた的な、実は秋山と浦和が嵌めた、いやハメたとかかと、僕の心臓は嫌なリズムの跳ね方し始めた。
「まず、あの時にコテージ用意してくれた秋山くんの両親が……お歳暮のお高いジュースをキミらで消費してと持って来てくれて……その中に、チューハイが紛れていたの……」
「は、はぁ……」
秋山くん、両親はコテージまで持っているのか、金持ちらしいとは聞いたけど凄いなと僕は比嘉出さんの弁明を聞き続けた。
「缶の表記も見ずに、ジュースもあったから気づかず私たち全員飲んじゃって……」
「はい……」
「朗らかな気分で、王様ゲームが始まって……」
「う……うん……」
比嘉出さんは、当時を思い出して羞恥ややらかしに赤面し始めた。それを聞く僕も、何だかいけない気分を煽られて生唾を飲み、熱が身体を沸き立たせた始めた。
「め、命令が過激になっていって、舌入れキスとか……胸を揉んだりとか……えっと、あの……指を……とか……と!兎に角!シテはないから!これは本当!!私らの中でも戒めにしよう!って決めた過ちなの!あの翌日、寒い雪の朝に!!ガチの黒歴史!!で、柳さん盛った!してないから、マジで!!私と前池も、それでキスしたけど互いに後でノーカンにしたから!」
「あ、はい」
若気の至りである、つまりは、お歳暮のお高いジュースに紛れていたお酒を、間違えて飲んで、テンションあがってのやらかしだと赤面して比嘉出さんは否定したのだ。
しかし柳さんも話を盛っていたのか、恐らくは……本田くんをドン底へ蹴落とすために。よし、登校したらサッカーボールにしてやろう、いやティーバッティングか?絶対ダメだし、冗談だけど。
それを聞いた僕は、多少の興奮と、少しの安堵を覚えて、一息吐いた。
……何故安堵している、べつに比嘉出さんが、前池くんと情欲に歯止めが効かずセックスくらいするだろ……リア充陽キャ学生なんだから。
全く馬鹿馬鹿しい、現実を見ろ久島秀忠……またどのみち前池くんから寄りを戻すなり、また別の金髪ヤリチンが比嘉出さんに声かけて付き合うだけだ。
「そっか、まぁ、うん、良かったよ……比嘉出さんへの先入観が払拭できて」
もう昼休みが終わる、食事できなかったがまた休憩の時に詰め込むかと、僕は立ち上がった。
「戻ろう、次の授業始まるからさ……」
授業に遅れる、さっさと戻ろうと僕は比嘉出さんを促した。
「あ、待って、久島くん」
「何?まだ何か……」
まだ何かあるのかと、僕は振り返らず尋ねながら歩き出したのだが。
「あの写真、消したよね?」
その宣告に足が止まった。
写真というのはつまり、あのブラッディレインに拉致られてから、拘束されていた写真の事だ。僕は、首だけ向けて比嘉出さんに答えた。
「い、家に返す時に、見せながら消したじゃないか」
「復元できるよね?確か」
「あうっ!?」
鋭い!!比嘉出さん!!ああ……観念するしかないなと、僕はスマホを取り出して、指紋ロックを解除し、最近削除したデータを開きつつスマホを献上した。
「……どうぞ……」
「……よろしい」
ああ、消されていく。2度と手に入らぬだろう一枚……まぁ犯罪だから訴えられるし、これで良かったんやと僕は、悔しさを噛み締めながらも諦めた。
……にしては、操作が長いような。僕のスマホをタップする比嘉出さんは、消し終えたのか、僕にスマホを返してくれた。
「はい……消したから……だめだよ、あんな事したら」
「……反省します」
「よろしい……じゃあ、ありがとう久島くん、先に戻るね」
用は済んだ、先に戻る。立ち去る彼女を見送って、僕はため息を吐きながら消え去ったデータを戻せないかなと、削除済みデータを見たがやはりなくなっていた。
そして、元のフォルダに戻ると……。
「!!?」
一番最初に……『あの写真』が、『比嘉出さんだけ切り取られて』復元されていたのだった。
は!?え!?消したって、まさか『東城さんだけ消した』って事!?いやいやいいの!?逆に比嘉出さん、いいのかそれ!?仮にもキミ、清い付き合いをさっきまで前池くんとしてたんじゃないのと、画像と戻った姿もない比嘉出さんとを交互に見て、僕は絶句した。
しかし……それだけではなかった。
「え?」
僕のグループチャットアプリから、知らない通知が入り……それを開いた。
そこには……比嘉出絵梨花の名前が刻まれていて、画像とメッセージが来ていた。僕はそれを開くと……そこには……。
『助けてくれてありがとう、これが吊り橋効果でも、今、私は久島くんに好意を抱いています、お礼をさせてください♡』
ハートマークの文章と、バレーユニフォームを着た比嘉出さんが、上着とズボンをずらし下着を見せた自撮り画像が貼られていてーー。
「かはっ……!!」
僕は、大晦日以来のダウンを喫したのだった。鼻血が吹き出して、仰向けに倒れ、まだ太陽が眩しい春の終わりに、僕の遅い青春が……始まった……のかもしれない。
あれ?話をしたいと言ったのは比嘉出さんだよな?僕から何か話を切り出さなきゃいけない感じか?どうしたらいいんだこれは、女子とまともに話した事無いからわからないぞと、僕は固まった。
「ありがとうね、この前は……助けてくれて」
「お、お!?うん……別に……」
ああ、お礼が言いたいだけだったのかな、比嘉出さんのお礼にキョドりながら、僕は相打ちを打つ。あ、やばい!話終わったかこれ!?いや終わっても別にいいけど……何だか惜しいようなと、僕は話題を探した。
「さ、さっき……彼氏さんと話してたのは……」
出てきた話題が、先程すれ違った前池くんの事とか、お前それを聞くのか久島秀忠と自問した。それプライベートな踏み込んだやつだろ、まだマシな話題なかったんかと。仕方なかろう、女の子の好きそうな話題の一つも知らない、格闘技しか知らない興味ない男に気の利いた話題を出すなどと。
こういうことが出来るから、ぶちのめした秋山くん達は、所謂陽キャ、クラスの中心的な存在になれたのだろうなと僕は実感させられた。
「うん、前池くん……彼氏じゃ無くなったの、別れたいってさ」
それでも、慈悲からか、別に聞かれてもいい事だったのか、比嘉出さんは力無く笑いながら言う、前池翔太と別れたのだと。
「え?それまた、何で」
「私を助けに行かず、久島くんに頼った自分が情けないから……彼女一人守れないやつが、付き合うなんてダメだろって」
思わず聞いてしまった、そしてまた自身のやらかしを知る。あの時に前池くんを愚弄してしまって、それで傷ついて別れを切り出したのだろうと。だから僕は、前池くんのフォローをしようと思った、そもそも僕が彼を罵倒したから、動く力もなかったのだろうと。
「い、いやそれは」
「けど実際、あの時に久島くんだけで……前池くんが着いて来たりとかしてなくて、ショックな私も居て……執着も無くすんなり別れる事ができたんだ、私たち」
遮られた感覚を覚えた。いや、助かったのかもしれないと僕は思った。仮に今、前池くんのフォローをしたら、余計に……前池くんのプライドを傷つけたかもしれないと、思い直してみたらそうなりそうだった。僕の独りよがりな確証も無い推論、いや言い訳かもしれないが。
「……そう、ですか」
もしかして……さっきすれ違いざまに前池くんが言った『すまん、まかせた』とは……比嘉出さんを頼む、と言う事なのだろうか。自分では、彼女を守れないから僕に押し付けたのか?
何を馬鹿な、自惚れるな、少し前までお前は窓際陰キャぼっちだった男だ。何より、暴力に酔いしれている気もある異常者だ。ただ、彼女のお礼だけは受け取ってやって欲しいと言うことだろうと、僕は比嘉出さんに会話を繋げた。
「ま、まぁ、彼も少し心が疲れたんだよ、僕が言えた立場じゃないけど……また、少ししたらほら、よりを戻さないか、とか……あるんじゃない……かな?」
「そう思う?久島くんは……」
「は、はは……無責任だよね、付き合いの経験もない癖にさ、何を偉そうに……」
交際経験なしの陰キャが、何を偉そうに。ここに秋山や浦和が居たら爆笑だろうなと、僕は頭を掻いた。
「じゃあ……比嘉出さんは逆に、前池くんとまだ関係を続けたい?それなら、引き留めるべきだと僕は……素人なりに思うけど」
思いつく事とすれば、まだ未練があるならば引き留めるべきだったのではと比嘉出さんに尋ねてみれば、彼女は少し悩むが返答した。
「うーん……いいかな、別に……確かに昔から近所の幼馴染で、クリアユースの中で、二組が関係進んでたから、私らも試しにって感じだったし……」
「え?あ、そうなんだ……」
あ、そこまで重苦しい関係じゃあなかったんだ、前池くんと比嘉出さんは……と、僕は二人が付き合っていた経緯を知った。秋山と柳、浦和と東城さんが交際したから、チーム内で幼馴染もあり自然とそうなったのかと。
ここで……僕の中の悪魔が囁いた。
『あの話』は真実か、否か、聞いてみろよと。何故?理由はそう、悪魔の囁きだ。決して僕が比嘉出さんが別れて、さらに関係が前池くんと進んでない清い関係だから、ワンチャンあるのでは?とかなったわけでは無い。
と言うわけで本田くん、ここを立ち去って僕を置いていったキミには犠牲になってもらう。別にいいよね?キミはクリアユースが大嫌いだろうし。
「じゃあ去年の冬の……スキー旅行動画の時に全員で盛ったって本田くんから聞いたけど……根も葉もない噂だったんだ」
「え?」
僕は、あくまで『本田くんから聞いた』体で、キミを彼氏以外と乱交する雌豚だと誤認していたよと言えば、比嘉出さんはーー血の気が引いた顔になった。
「そ、それ……本田くんが言ったの?」
「正確には柳さんから本田くんに……本田くん、柳さんが秋山くんと関係が冷えて二股されててさ、当て馬にされて別れる時に口走ったって」
ああ、あくまで『柳経由で、本田くんから』聞いたんだよと、僕はまた聞きだからと軽蔑の矛先からできるだけ離れる卑怯な言い方で尋ねた結果ーー。
「えっと……弁明、していい?久島くん」
「えっ」
頭を押さえて、思い出したくないとばかりな声と苦い顔で彼女は言うので、僕は肝が冷えた。
え?もしかして……ガチの性被害があった?睡眠薬盛られた的な、実は秋山と浦和が嵌めた、いやハメたとかかと、僕の心臓は嫌なリズムの跳ね方し始めた。
「まず、あの時にコテージ用意してくれた秋山くんの両親が……お歳暮のお高いジュースをキミらで消費してと持って来てくれて……その中に、チューハイが紛れていたの……」
「は、はぁ……」
秋山くん、両親はコテージまで持っているのか、金持ちらしいとは聞いたけど凄いなと僕は比嘉出さんの弁明を聞き続けた。
「缶の表記も見ずに、ジュースもあったから気づかず私たち全員飲んじゃって……」
「はい……」
「朗らかな気分で、王様ゲームが始まって……」
「う……うん……」
比嘉出さんは、当時を思い出して羞恥ややらかしに赤面し始めた。それを聞く僕も、何だかいけない気分を煽られて生唾を飲み、熱が身体を沸き立たせた始めた。
「め、命令が過激になっていって、舌入れキスとか……胸を揉んだりとか……えっと、あの……指を……とか……と!兎に角!シテはないから!これは本当!!私らの中でも戒めにしよう!って決めた過ちなの!あの翌日、寒い雪の朝に!!ガチの黒歴史!!で、柳さん盛った!してないから、マジで!!私と前池も、それでキスしたけど互いに後でノーカンにしたから!」
「あ、はい」
若気の至りである、つまりは、お歳暮のお高いジュースに紛れていたお酒を、間違えて飲んで、テンションあがってのやらかしだと赤面して比嘉出さんは否定したのだ。
しかし柳さんも話を盛っていたのか、恐らくは……本田くんをドン底へ蹴落とすために。よし、登校したらサッカーボールにしてやろう、いやティーバッティングか?絶対ダメだし、冗談だけど。
それを聞いた僕は、多少の興奮と、少しの安堵を覚えて、一息吐いた。
……何故安堵している、べつに比嘉出さんが、前池くんと情欲に歯止めが効かずセックスくらいするだろ……リア充陽キャ学生なんだから。
全く馬鹿馬鹿しい、現実を見ろ久島秀忠……またどのみち前池くんから寄りを戻すなり、また別の金髪ヤリチンが比嘉出さんに声かけて付き合うだけだ。
「そっか、まぁ、うん、良かったよ……比嘉出さんへの先入観が払拭できて」
もう昼休みが終わる、食事できなかったがまた休憩の時に詰め込むかと、僕は立ち上がった。
「戻ろう、次の授業始まるからさ……」
授業に遅れる、さっさと戻ろうと僕は比嘉出さんを促した。
「あ、待って、久島くん」
「何?まだ何か……」
まだ何かあるのかと、僕は振り返らず尋ねながら歩き出したのだが。
「あの写真、消したよね?」
その宣告に足が止まった。
写真というのはつまり、あのブラッディレインに拉致られてから、拘束されていた写真の事だ。僕は、首だけ向けて比嘉出さんに答えた。
「い、家に返す時に、見せながら消したじゃないか」
「復元できるよね?確か」
「あうっ!?」
鋭い!!比嘉出さん!!ああ……観念するしかないなと、僕はスマホを取り出して、指紋ロックを解除し、最近削除したデータを開きつつスマホを献上した。
「……どうぞ……」
「……よろしい」
ああ、消されていく。2度と手に入らぬだろう一枚……まぁ犯罪だから訴えられるし、これで良かったんやと僕は、悔しさを噛み締めながらも諦めた。
……にしては、操作が長いような。僕のスマホをタップする比嘉出さんは、消し終えたのか、僕にスマホを返してくれた。
「はい……消したから……だめだよ、あんな事したら」
「……反省します」
「よろしい……じゃあ、ありがとう久島くん、先に戻るね」
用は済んだ、先に戻る。立ち去る彼女を見送って、僕はため息を吐きながら消え去ったデータを戻せないかなと、削除済みデータを見たがやはりなくなっていた。
そして、元のフォルダに戻ると……。
「!!?」
一番最初に……『あの写真』が、『比嘉出さんだけ切り取られて』復元されていたのだった。
は!?え!?消したって、まさか『東城さんだけ消した』って事!?いやいやいいの!?逆に比嘉出さん、いいのかそれ!?仮にもキミ、清い付き合いをさっきまで前池くんとしてたんじゃないのと、画像と戻った姿もない比嘉出さんとを交互に見て、僕は絶句した。
しかし……それだけではなかった。
「え?」
僕のグループチャットアプリから、知らない通知が入り……それを開いた。
そこには……比嘉出絵梨花の名前が刻まれていて、画像とメッセージが来ていた。僕はそれを開くと……そこには……。
『助けてくれてありがとう、これが吊り橋効果でも、今、私は久島くんに好意を抱いています、お礼をさせてください♡』
ハートマークの文章と、バレーユニフォームを着た比嘉出さんが、上着とズボンをずらし下着を見せた自撮り画像が貼られていてーー。
「かはっ……!!」
僕は、大晦日以来のダウンを喫したのだった。鼻血が吹き出して、仰向けに倒れ、まだ太陽が眩しい春の終わりに、僕の遅い青春が……始まった……のかもしれない。
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