間違いだらけの久島くん

魔根喪部荼毘座右衛門

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三章 クラス派閥闘争編

プロローグ なんで体育祭に銃撃戦があるんだよあーーーっ!?

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 たった二ヶ月で、色々起きすぎた。

 秋山くんとのブレイキングケイジでの戦いに、浦和くんがスカイダイビング並の速度で停学、退学、逮捕となった半グレによる拉致事件。二ヶ月で波浜高校は2件の大事件が起きた。

 その中心、関わった人物として僕こと久島秀忠は居たのだが……大凡被害を受けてなかったのは運が良かったのか否か……。逆に友達が増え……僕を好きになってくれた女性が増えた。

 いや、調子に乗ってはいけない。

 あくまで吊り橋効果と文面に書いてあったから、いずれ冷めると思われる。けど、僕が撮影した羞恥の写真を自分だけにするように編集してたし、下着を見せる自撮りまで送って来たからそういう意味だと男子は捉えても仕方ないし……いやいや、今の女子ならちょっと仲良くなった男子に下着姿くらい送るのが普通とかあり得るやもしれぬ。

 と……元陰キャ窓際族たる僕は、比嘉出さんの自撮りエロ写真にノックアウトされて惑わされながら、取り戻した日常を悶々としながら過ごし……気がついたら6月になっていた。

 こんな話を聞いた事がある。

 高校生にとって、6月とは……『魔の6月』と呼ばれていると。

 入学、進級を経て新たな生活に慣れ始めた一方で……その慣れから反転した現状への不満や不安、中間テストの結果、期末テストへの不安……夏休み中に計画があるならばその準備。

 祝日が一切無く、反面様々な見えぬ苦悩が積み重なる時期であるらしい。

 そんな時期だからこそ、学校は気分転換も兼ねて一つの行事をここに入れるのかもしれない。

 かと言って……その行事を『全員』が楽しめるかと言われたら苦言を呈したい。

 そう……。


『体育祭』である。


「というわけで!今年もやって来ました!波浜高校紅白体育祭!!今日はクラスでの出場種目を決めたいと思います!!」

 一際熱くなっているこの女の子、名前は『周防真琴』といい、2年2組において、クラス委員長の秋山千才が長期入院となってしまったそのポストに就任した、新たなクラス委員長である。所属部活動は女子陸上部の、運動大好き少女だ。

 あれ?この場合、副委員長の比嘉出さんが繰り上げでなるものでは?となったが、新たな僕たちの担任である岩田令奈先生(※前任の担任は、秋山の屋上ブレイキングケイジ隠匿を補助したため、懲戒解雇)が『クリアユース』メンバーが、そのまま委員長になったらクラスメイトが納得しないだろ?と、新たな委員長を立てたのである。

 明朗快活な彼女もまた、2組陽キャ陣営の一人と言えよう。ただ、この周防さん僕も感じているが……。

「進行は私、新たに委員長を仰せつかった周防真琴が執り行わせていただきます!」

 所謂、仕切り屋、仕切りたがりというタイプの女子生徒であった。黒髪ポニーテールボーイッシュと、いかにも活発系委員長キャラだった。

 2組男子グループの中心が『秋山千才』だった、とするならば、女子グループの中心は『周防真琴』と説明すれば早いか。

 それでも、クラスを牽引するリーダーのあり方は、二人ともタイプが違うと思われる。

 今病床で呻く秋山は、自身から周囲を巻き込み、派閥の和を拡大していき賛同者を増やす『アイドル』とするならば、周防さんはガンガン前を走り旗を振り、突き進んでいく『猛将』と評すべきか。

 この猛将タイプのリーダー、独りよがりになり、ついていけなかろうが首根っこ引っ掴んで引き回す傾向があるので、それに嫌気がさしてしまう場合もあるタイプだ。体育会系でも、ガチ方面のリーダーである。

「今回、生徒会が決めたプログラムがこちらになります!まずはそれぞれに競技への推薦、立候補を募って行きますので挙手どうぞ」

 そして、体育祭にも雰囲気という物がある。

 和気藹々、結果は別に体動かして楽しもうぜ!な緩い体育祭か。

 真剣勝負、勝利を目指せ本気になれ!な、ガチの体育祭か。

 波浜高校体育祭は……ガチの雰囲気だ。

 県立の学校ながら、波浜高校というのはスポーツで強い学校だったりする。たまに硬式野球部が甲子園出たり、個人競技系はインターハイ出場がどの部には毎年出たりする。

 それに連なる体育会系の雰囲気は、学校行事にも現れるのだ。

 これがアニメやらラノベだったら『勝った組には宿題免除』だとか『学食無料券配布』だのあるだろうが、この学校には無い。

 しかし、商品が無かろうが高校3年間、3回しか無い行事だから、本気でぶつかるべきであるという空気が蔓延していた。

 その割を喰らうのが、文化系や……陰キャ勢とでも言うのだろう。

 僕は……身が入らないから、陰キャ側の傾向だろうなと、前から渡された今回の体育祭の、進行プログラムと、2年が出る種目の説明を眺めながら自らを区分した。

 さて……周防さん式体育祭の出場種目の埋め込み法は、立候補と推薦を織り交ぜた形式で行われた。自信がある競技には自ら挙手、この競技にはあの人が出たら活躍出来そう!と推薦して埋めていく……そして余った奴らは……『捨て競技』として戦力外通告されるわけだ。

「男女混交リレー、陸上や足早い子で固めて行きます!」
「障害物、出ていいですか」
「パン食い競争でたーい!」

 話の輪に、立候補もせず、競技を確認する僕。今回の体育祭の2年競技は以下のものだった。

・男女混合リレー 8名
・障害物競争   4名
・パン食い競争  4名
・玉入れ     8名
・ペイントボール 4名
・騎馬戦     12名(4名騎馬3組)

 それとは別に、男子全員参加や有志で以下の競技が行われる。

・応援アピール合戦(有志)
・名物、大玉合戦(全学年男子全員)

 波浜高校は1クラス40名で2クラス、それが1組は『赤組』2組は『白組』として2つのチームがぶつかり合うシンプルな体育祭だ。

 そして……現在2組は、秋山が入院、浦和が退学、柳が不登校で37名となっており、3人は2種目に出る必要があった。

「うん?あの……周防委員長」

 と、競技のプログラムを眺めていたら……知らない競技があったので、僕はちょっと気になり手を上げた。

「何かな!久島くん!!」

 うっわ元気いいな、流石陸上部リーダータイプ。今年3年引退したら女子陸上部リーダーは彼女だなと感じつつ……そして僕の挙手で一気に場の空気が凍りついてしまった。

 ああ、窓際族の一番クラスで怖い人間ってなったからこうなるよなと、心中で涙を流しながら、目についた種目が何か尋ねた?

「この、ペイントボールって聞かない競技ですけど……なんでしょうか?」

 確かに、なんだこれ?そういえば……と、皆が今更ながら聞いた事無い競技に気がついて、周防委員長は笑って答えた。

「はい、こちらのペイントボールは……銃撃戦となっています」
「ああ、銃撃せ……銃撃戦!?」

 おい!?いきなり物騒な単語が出て来たぞと、カラーボールと言う可愛らしい名前とは裏腹な競技の内容に、僕は聞き直した。

「こちらは各学年が4人選抜で、運動場をフィールドとし、ペイントガンで撃ち合うサバイバルゲームとなっているわ!YouTubeで外国人がやってるアレ!今年から採用されたわ」

 YouTubeで、外国人がやってる、ペイントガンの……あ!あれか!!あの、塗料が入った丸い玉を銃で撃ち合う!?アレを学校の体育祭でやるのか!?ガチでやる気かよどうした生徒会と、僕は驚愕した。

「おい、明らかに体育祭から逸脱しとるやろ!?一体どこのバカが提案したんじゃあ!?」
「今病床に居る秋山くんが、生徒会で提案したらしいわ」
「あいつかぁ!?」

 どこのバカが、こんな案提案しやがったと伊佐美くんのツッコミに帰って来た答えは、まさかの秋山で、ここにまで彼の痕跡が刻まれている事に、僕は苦笑せざるをえなかった。
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