間違いだらけの久島くん

魔根喪部荼毘座右衛門

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三章 クラス派閥闘争編

7.担任公認の不参加

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ーーその日の帰りのホームルーム……。

 僕と伊佐美くん、山城くん、そして本田くん四人は整列して教壇に上がっていた。クラスメイトが見守る中、僕は懐から式辞用紙を取り出して、言い放った。

「宣誓……本日この時間を持って、2年2組生徒の久島秀忠、伊佐美光輝、山城雄一、本田明日夢の4名は、体育祭不参加をここに宣言いたします……なお、この宣誓はクラス担任の岩田令奈先生の下、正式に認められた事をこの書状により形と残し、証拠として岩田先生にお納めします」

 その宣言を終えてざわつくクラスメイトの前に、岩田先生は変わって生徒達に話した。

「というわけで聞いた通り、こちらの4人は体育祭に不参加の意を示した為、私が正式にそれを、宣言と書状を持って認めました……彼らは体育祭の時間中は、教室で通常授業を行なう事で、体育祭不参加分の代替をさせます」

 教室がざわついた……前代未聞の事態に騒がしくなる。僕も、伊佐美くん達他の三人も、まさかの事態にまだ浮き足立っている。

 だってこんな事、全国の県立公立私立の高校探しても無いのではないか?

『体育祭参加の自由化』を、この波浜高校2年2組だけ実施しようと、岩田先生が言い出したのだから。


 少し時間を遡る。

 
 ホームルーム前の清掃後……僕たちは、学食の騒動により職員室へ呼び出されていた。まぁそうだわな、騒がしかったし、言われるよなと4人で僕達は職員室の岩田先生の前に立ち並んでいた。

「それで、学食で体育祭のサボりを計画していたのを周防さんに聞かれて……苛立ちもあって伊佐美くんが口論を始めたと」
「まぁ……はい」
「それがヒートアップして、周防さんが、久島くんに秋山くんの話をぶりかえしたから、威圧して……成る程」
「申し訳ありません」

 謝るしかできない、だって僕達の過失10割だから。そもそも体育祭のサボりを正当化なんてできないし、それをあーだこーだ揚げ足とってもただの欺瞞にしかならない。

 最後は凄んで、有無を言わせなかった時点で僕達が悪いに決まっている。こりゃ周防さんにけじめの謝罪だなと、あとはそれを言い渡されるだけ。

 この時はそう思っていたのだが……。

「けど……貴方達がどうして体育祭をサボりたいのか理由もあるわよね?聞いていいかしら?」
「え?」
「そうしたいくらい、体育祭が嫌ってなるなら、それも教師として聞いてあげないとじゃない……」

 岩田先生は、叱るどころか……サボりを会議した原因、理由を尋ねて来たのだった。まさか、それはダメじゃなくて、何故サボりたい?と、聞いてくるのは身構えてなかったから、僕達は皆顔を見合わせた。

「じゃあはい、久島軍団の団長、久島くんから」
「いや、団長では……えっと……」

 聞いてくれるならはなしてみるか、僕たちは岩田先生に、体育祭をサボりたい、参加したくない理由を語った。

 そもそも体育系や運動が得意な奴らだけが活躍しており、文化系や帰宅部には出番がない独壇場である事。

 かといって参加して負けたら、その事で針の筵にされて晒される事。

 さらに、あまりにも雰囲気がガチ過ぎて、楽しむ雰囲気ですらない事。

 というか、やりたい競技がない事。

 所詮は不良学生のわがままだろうが、岩田先生は聞いてくれたのであった。

「まぁ確かに……貴方達の言い分も分かるのよね、体育祭は体育の祭り、本来なら身体を皆で動かして日頃の鬱屈を発散しましょうってものだし?勝敗に括り過ぎて同調圧力や責任の押し付けとかもあるのは、確かな事実だから」
「おお、話が早いな岩田先生」
「けど、それでじゃあサボるというのも違うわよね?学校の生徒として、行事には協力するべき、義務の面であり授業でもあるのだから」
「まぁ……そうですよね、はい」

 キミたちの言い分も分かるが、これは授業でもあるから、サボりは認められない。嫌いだからやらなくていい、は流石に通用しないだろと、至極当たり前を彼女は語り、僕たちを諌めた。

「そうね……ふむ……」

 が、ここで岩田先生……何やら顎に手を当ててしばらく黙り込むと、頷いて僕たちに提案したのだった。

「いいわよ、体育祭の不参加、私の責任で認めてあげるわ」
「「「「えっ!?」」」」

 まさかの返答に、僕達は驚愕した。担任の許可の下、正式な『体育祭不参加』を許すというのだからそれはびっくりするだろう。

「ただし、条件があるわ……今日の帰りのホームルームで教壇に立ち、それを宣誓する事と……体育祭の時間中は代替授業を受ける事、サボりはダメ、貴方達は皆がグラウンドで汗を流している間、教室で勉強を代わりにしてもらいます」

 体育祭を参加しない代わり、条件として提示されたのは、それをクラスメイトの前で宣誓し、体育祭の時間中は通常授業を受ける事。それを聞いた伊佐美くんと本田くんは歓喜の声をあげた。

「マジっすか!?授業で体育祭免除!?」
「無駄な汗をかかずに済むな……好条件だ!」

 体育祭に出なくていい、参加して負けて、針の筵にならなくてもいい、勉強していればいい……一番それを望んでいたのは、僕や伊佐美くん、本田くんではなく、山城くんだろう。

「勉強するだけ……いいんだよね、それだけ……」

 けど、山城くんは浮かない顔をしていた。喜んでいいのか分からない、そんな顔を浮かべていて……僕もどう言うつもりなのかと岩田先生を見るや、彼女は妖しく笑った。

「そしてもう一つ……仮に体育祭参加したい、気が変わった、そうなったらまたホームルームで宣誓し、謝罪してもらうわ……一度言った事を覆すには相応の誠意が必要よ、それをしっかり理解して頂戴?」

 さらに条件が付け加えられた。体育祭参加をしたい場合、ホームルームでクラスメイト達に頭を下げる事、それがもしも、体育祭に参加したくなった時の条件だと聞いて、伊佐美くんも本田くんも嬉々として先生へ答えた。

「心配せんでくださいよ岩田先生、頭下げてまで体育祭やりとうもないんで俺は」
「周防委員長も、戦力にならない生徒が消えれば万々歳と思われるので」

 頭下げてやりたくもないし、委員長からすれば勝手にしている不良で戦力外の生徒は不要だから万々歳だろうと頷いた。

「じゃ、しっかり証拠残したいから……久島くん、一筆認めてくれるかしら?」
「え!?僕が!?」
「あら、あなたこの軍団のリーダーでしょ?」

 そう言うわけでは……だが、言われた以上は仕方ない。僕は岩田先生に言われるがまま、出された式辞用紙に宣誓文を記していった。背後では、嬉々として担任直々の不参加の許可に喜ぶ伊佐美くんと本田くんが小躍りし、山城くんは苦笑していた。

「……久島くん」

 宣誓文を認める最中、僕は岩田先生から呼ばれた。

「何でしょうか?」
「今の貴方の立場、それと影響力……よく考えてこれから行動しなさい?」
「え……」
「もし、どうにもならないとこまで行ってたら……最悪私が覆してあげる」
「はぁ……」

 立場に影響力?そんな物、僕には無かろう……所詮僕や伊佐美くん達四人は、このクラスのはみ出し物で不要な存在。秋山のブレイキングケイジ投票の時から、皆が敵だったのだ。何の影響も無く、体育祭は僕たち四人抜きで行われれさと……この時の馬鹿な僕は、そう思っていたのだった。


 そして、帰りのホームルームに時間を戻そう。

 先生を終えた僕を下げて、岩田先生は教壇に立ち、クラスメイト達へ言い放った。

「まぁ、そう言うわけなんだけど……この4人だけ特別、と言うわけにもいかないわ、だから……彼らと同じように、朝か、下校前のホームルームで同じように宣誓をした子の、体育祭不参加を私の一存で許可します」

 流石に僕たちだけが特別とはいかない、だからキミたちにも同じ権利をあげるのが平等だろう。岩田先生は、そう言い残してホームルームは終わりと、教室の出入り口に向かった。

「体育祭まで二週間、よく考えて皆さん決断するように、私は貴方たち生徒の決断を尊重し、そして責任も負います」

 出て行った岩田先生を僕は見つめ、ホームルームは終わりとなった。騒つく教室の中で、僕は周防委員長の方に顔を向けた。

 その瞳は、見た瞬間怒りに染まってはいたが……僕が目を合わせた瞬間その怒りは鎮火して恐怖に染まり、目線を外したのだった。

 そして……これがまさか、波浜高校2年2組内で起こった一週間の政治闘争……。

『体育祭闘争』の序曲であった事を、中心人物となった僕自身が、全く知る由もなかったのである。
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