間違いだらけの久島くん

魔根喪部荼毘座右衛門

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三章 クラス派閥闘争編

9.知らねえよ、勝手にやってろよ

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 鳥風くんの無慈悲なる冷たい言葉の一撃に、周防さんは体が震えて顔面蒼白になった。

「確かに……僕たちは立候補もしてなければ、推薦も受けてない、選択すらしてない人間だ……だけど先生から、久島くんから"不参加"の選択肢を与えてくれたから選んだ、もしもあの競技取り決めに、不参加の選択肢があれば、それを迷いなく選んでいた」
「あ……え……」
「楽しめない行事……参加しても恥をかかされ、後ろ指さされるなら……やる意味も無いだろう……キミたち"体育会系"の"楽しめる奴ら"だけで"一致団結"したらいいじゃないか?その方が……楽しくやれるでしょ?」

 鳥風くんの弁舌が終わると共に、予鈴が鳴り響く。一時限目の英語の先生は熱心で、予冷と共に教室へ入ってきた。

「おーなにしとるんや、予鈴やぞ?席着いて準備しいよ」

 先生の介入によるタイムアップ……周防さんは言い返す暇も、力もなく……僕の席から離れて、自身の席に力なく揺れながら戻って行くのだった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「しかしまぁ……まさかの援護射撃というか……」
「大事になって来てない?僕たちが不参加宣言しただけで……なんていうのかな、党内闘争?みたいになってるよ」

 いつもの体育館裏で、僕たちは今朝の周防さんの物言いからの、鳥風くん達2組文化部グループの論争から、何やら大変なことになりつつある雰囲気を感じていた。

 さながら、与党内の総裁を決めるための派閥闘争だと山城くんの例えに、ああ確かに、似てるようなと僕は、ブレイキングケイジの勝利者賞でまだ無くならないプロテインシェイクを飲みながら頷いた。

「まぁいいんじゃねぇの?このまま行きゃあ、全員で体育祭不参加から勉強会ってなぁ?もしくは、体育会系の奴らだけでやっとんのを窓から見学なんてできるかもしれんやんけ、想像したら笑えてくるわ」

 体育会系の奴らが少人数精鋭で、ヒーコラやる様は想像したら笑えてくるぞとケタケタ伊佐美くんは笑った、このザマァと考えるのは、周防さんのキツイ暴言から苛立ちを吐いてるのが原因だろうなと、僕はシェイクを飲みながら考えた。

『今の貴方の立場、それと影響力……よく考えてこれから行動しなさい?』
『もし、どうにもならないとこまで行ってたら……最悪私が覆してあげる』

 宣誓文を認める際に、岩田先生が僕にそう言っていた。どうもそれが、引っかかって仕方がない。

 そもそも僕に影響力なんてある立場か?所詮はクラスメイトに迷惑かける、クラスのはみ出し者でしかない。

『また久島と取り巻きが言ってるよ、放っとこうぜ』

 これで、済む話じゃあないのかな……プロテインシェイクを飲み終え、それを傍に置きながら、僕は空を見上げた。

 何とも中途半端なそらであった、雨雲なのに降りもしない、そのくせ湿った空気が煩わしい。そして、気を抜いたらゲリラ豪雨でも来そうな、不安定な空模様だ。あれだ、表面張力ギリギリを保ったグラスみたいだ。

 何かの拍子にバシャン、と溢れ出しそうだったので、僕は3人に声をかけた。

「何かさ、降りそうじゃない?教室早めに戻ろうよ」
「お、確かに……ずぶ濡れは勘弁だな」
「戻りたくないな……何か、運動部や女子から白い目が……」
「気にするなよ山城、こっちには久島が居るんだからさ」

『僕が居る』か……山城くんが教室の居心地の悪さを気にしていると、本田くんが冗談っぽくそう言って来た。

 あり得るかもしれない、僕たちがこうして体育祭不参加、参加自由の始まりを切ったから、その恨みからいじめのターゲットにしてくるのは十分な理由だ。

 そうなったら……僕はどうする?僕自身は構わない、だけど……伊佐美くん、山城くん、本田くんがそれで怪我した時……僕は、恐らく……耐えられないだろう。

 岩田先生の言う、よく考えて行動しろって、そう言う事なのかな?僕たちは渡り廊下を歩く頃、雨が少しだけだが降り出した。

「あ!来た!」
「あん?」

 階段を登り、2年教室の廊下へ僕たちが出れば、それを見て声を上げた男子生徒の、害虫が出たみたいな言い方に、伊佐美くんが苛立ちの相槌を漏らす。

 彼はクラスメイトで……野球部の小山総一くんだったか。体育会系側の一人で、しっかり丸刈りの高校球児を絵に描いた彼が、困った顔で僕たちに近づいて来た。

「な、なぁ久島!頼むよ、お前から鳥風達に説得してくれないか?」
「はい?」
「だから!不参加の取り下げだって!お前が命じたんだろ、文化部と帰宅部のあのグループに!」

 彼は頭を下げながら頼み込んできた、今朝の鳥風くん達5人の体育祭不参加、その取り下げを頼むと。

 それどころか、もしかしなくとも、僕が
鳥風くん達文化系派閥の男子と繋がっていて、裏で命じたみたいになっているのか?今の小山くんの話から聞いたら……そうなっているのかと、僕は目をぱちくりさせた。

「いや、あの、小山くんさ……僕と鳥風くんグループは、全く関係無いんだけど……僕たちは僕たちで最初に、岩田先生に話を通したのはそうなんだけど……彼らは彼らで不参加決めたからさ、僕は関係が……」

 だから、待ってくれと小山くんに聞いて欲しかった。確かに始めたのは僕だが、命じたりとかはしてない……僕に言ってもどうにもできないからと、理解してもらいたかった。

「いや、不参加の派閥で同じだろ?なぁ……頼むって、もしお前らから鳥風達を引き戻してくれたら……俺らお前らには何も言わないからさ……男子半数に割れて今、体育祭出るどころじゃなくなってんだよ……頼むから……」

 その懇願を聞いて、ゆっくり話を読み解いと……僕はより気分が減退していった。

 結局キミら体育会系の派閥は、不参加組を一括りにしか見えてないと。さらに、言えば……島風くん達を引き戻したら、僕たちは何も言わない、触れないからと言うのは……。

『鳥風達を引き戻してくれたら、お前らは用済み』

 と、言う事かと僕は受け取った。

 卑屈な陰キャ思考だ、揚げ足取りだと言われるだろうが……結局小山くん達、体育会系組からしたら、僕たち四人は『排斥すべき邪魔者』でしかないのだと。

 これが、例えば『説得して、お前らも一緒に体育祭へ参加してくれよ、負けを責めたりしないからさ』だったら、関係なかろうが話をしに鳥風くんのとこへ行っていたかもしれない。

「結局……僕らは邪魔者か……」
「えっ?」
「呼び戻したら、僕らはお役御免というわけ?あっそ……じゃあさ、誰に言われたか分からないけど言っといてよ、小山くん……」
「な、いや、違ーーあうっ!?」

 僕は小山くんの襟首を掴み、廊下の壁に背中を叩きつけて、額をつける距離で睨みつけながら、言い放った。

「そっちで、勝手に!楽しく!!やってろよ!!!僕は知らん!!!」

 それだけ言って、僕はシャツを掴んだ襟首を離せば……小山くんはズルズルとへたり込んだので、僕は苛立って叫んだ。

「失せろ!!蹴り殺されたいか!?なぁ!?」
「ひいぃいい!!?」

 這いながら、必死に立ち上がって小山くんは教室へ逃げて行った。僕は一息ため息を吐いて、熱がこもった身体を冷やそうと、全てボタンを閉めたカッターシャツの一番上のボタンを外し、襟元を緩めた。

「行こう、授業始まる」
「お、おう……」
「う、うん……」
「……そうだな」

 ああもう、何が派閥だ、裏で糸引いただ、ふざけやがって。知らねえよ、妄想甚だしい。苛立ちを募らせ、僕は3人を引き連れ、さっさと教室へ戻るのだった。
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