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三章 クラス派閥闘争編
15.体育祭論争戦 下
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僕は前池くんに尋ねた、僕へ約束した交渉はどうしたんだよと。中村くんの口ぶりからして、全く話をしてないように見られるがと尋ねられ、前池くんは慌てた。
「いやっ、違うんだ、聞いてくれ久島っ……おい、言ったよな?」
成る程、話はした……らしい。しかし悲しいかな、クリアユースとしての立場を失った彼には、説得する力は残っていなかった。恐らく『とりあえず形だけでも折れてくれ、そうしないとマジで体育祭辞退だから』と、人数を確保する為に、外面だけでも今回はと頼み込んだ、だろう。
「前池さぁ、何であたしらが折れなきゃいけないわけ?あっちが間違ってんだよ?」
さぁ、内部崩壊が始まった。ここまで頑張って来た前池くんに、責任を押し付け行き場のない怒りをぶつけにかかろうと、今は不登校な柳と仲良しなテニス部の櫻井悠希が苛立ち混じりに言い放った。
「そもそもこいつらが言い出してんだ、詫び入れてこっちに来るのがスジだろうが!」
中村くんにも追撃された前池は言葉が出なくなった、しかし……比嘉出さんに東城さんも黙っているあたり、序列というか、発言力から影響力も失っているらしいなと、僕は実感した。
というわけで、そっちに居るのは苦しかろう、前池くんに手を差し出そうじゃないか。僕は前池くんに再び語りかけた。
「いや、分かった、ありがとう前池くん……せっかく動いてくれたのにさ、まぁさっきまで話を聞く気だったけど、やっぱり今この場になって苛立ちから嫌になる事もあるよ……歩み寄ってくれたのに申し訳ないな」
僕は前池くんが、形だけだろうが、最悪説得すらしてなかろうが、彼を労う事にした。話し合いの場で心変わりもあると擁護して、労い……こちら側に引き込もうと考えでの発言だった。
「えっ?あ、ああ……すまん久島……」
罵倒される仲間内と、感謝される敵陣営……彼も呆れて、諦める流れを作り……一気に攻勢へ出る事にした。
「しかし……残念だ、周防さん?キミ達参加陣営側は僕達を快く思ってはいないらしい、たとえこのまま合流したところで、かつての体育祭を繰り返すだけと見た」
「な、おい!?」
「ちょっと、本気なの!?」
周防委員長は相変わらず黙ったままで、代わりに中村くんと櫻井さんが言葉に詰まる。今の体育会、リア充組の中心はこの2人かと……僕は岩田先生に確認した。
「岩田先生、体育祭不参加となる場合、この時間まで参加陣営が半数以上を引き込めなかったら、でしたね?」
「そうよ久島くん……それで?」
「この会議は不参加側からして、無意味かつ合流も現実的ではないと見えたので、お開きでも良いかと思います」
こちらの要求を呑まず、謝罪と合流のみが望みとなるならば、最早話すことは無いと、僕の発言に、中村が机を蹴り立ち上がった。
「調子乗んなよ久島コラァ!テメェクラス引き回して楽しいか!?あぁ!?散々迷惑かけてこれか!!」
その勢いに乗じる形で、櫻井も立ち上がって涙ぐみながら声を荒げた。
「ねぇ楽しい!?こっちのやりたい事、楽しむ事、クラス行事邪魔して楽しい!?あんたほんっとう終わってるよね!?性格最悪だわ!!」
言うに事欠いて人格攻撃、ヒートアップして最早議論ではなくなって乱闘間近だ。というわけで、先生に声をかけた。
「先生、僕おかしいこと言ってますか?ただ僕は……体育祭のあまりに強硬で、勝利主義な雰囲気から参加したくないからと、その雰囲気をやめて欲しいとお願いする為に彼らと対話をしに来たのに……これでは相互理解も無理と考えますけど」
僕はただ冷たく、事実と、対話だけをこの場に求めて来た。その果てにあったのがこれかと、呆れたように言えば……岩田先生も悲しそうな顔で、仕方なしと目つきを変えて言い放った。
「どうやら対話もできそうにないと見たわ、この場を持って交渉決裂とし、波浜高校2年2組は、今年の体育祭を事態して通常授業を行う事にします」
「は、はぁ!?」
「そんな、何で!?マジなの!?」
「これにて閉会、各自解散してよろしい」
岩田先生の宣言は無慈悲に教室へ響き渡り、それを止めようと中村くんや櫻井さんも唖然としたが、解散を宣言して岩田先生は教室を出て行った。
そして、僕も立ち上がると、反対陣営のクラスメイトも立ち上がり、伊佐美くん達も、鳥風くんも立ち上がって、次々と教室を退室し始めた。
結局……体育祭参加陣営は、自分たちが楽しみたいだけだったのだ、皆が次々出ていき、参加陣営は呆然とするのを最後に見て、僕は言った。
「最後の人、鍵を職員室返しといてね」
こうして……2年2組は体育祭辞退が決定したのだった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
夕日に染まる2年2組教室……残された参加陣営達は、この惨状に黙るしかなかった。
「あ、のクソ窓際陰キャがぁ!強いからって調子乗りやがって!!」
中村が近場の椅子を蹴りながら文句を吐き散らした。
「委員長いいの!?ねぇ、あんな奴にいいように言われて!?体育祭辞退にマジでなっちゃったよ!?何か言ってよ!!」
謝罪だけを受けた委員長は、最早物言わぬ人形のように俯いていた。櫻井に促されるもただ黙り尽くすなか……1人が、声を上げた。
「櫻井さん、周防さん、ごめん……あたしも今回、体育祭できそうに思えないから、あっち行くね?」
「は!?比嘉出!?」
参加陣営に座っていた比嘉出が、申し訳なさそうに……しかし力無く笑顔を浮かべ櫻井に語った。
「久島くんや鳥風くんの言い分さ、分かるというかさ……あくまで体育祭で学校行事、私らは楽しめてる中で、楽しめない子も居て……勝ちへのプレッシャー与えてたっての、自覚したから……」
比嘉出も体育祭は楽しみだった、勝ち負けはともかく運動は好きだが、彼女も『活躍できる』側だったから、知らずに勝ちへのプレッシャーを、できない、苦手な子達に与えて楽しい雰囲気を奪っていたかもしれないと。
「私も、2抜けするわ……」
比嘉出に続き、私も今更ながら不参加だと東城が、荷物をまとめ立ち上がった。
「おい……東城!テメェまでなんで!?あれか?久島に弱み握られたかよ!?」
クリアユースメンバー2人が、不参加陣営に降ると吐くや、中村はなにか久島にやられたのかと吐き散らす。しかし東城は、冷たい眼差しを向けて中村に言った。
「いや……分かんないの2人とも?あんたや櫻井が声荒げず、私らがあっちの要求飲んで、態度気をつけたら合流してたのよ?あんたらが意地張って怒った時点で、あたしらの負け……体育祭は残念だけど、まぁ水泳があるしコンディション気に掛けれて助かるわ……じゃあね」
比嘉出と東城が揃って出ていく……その姿に、中村は歯軋りして怒りを吐き散らした。
「ふざけやがって陰キャ共が調子に乗りやがって!こうなったら、あいつらにどっちが上か分からせてーー」
「やめろ、中村……マジで、俺みたいになっから……」
いよいよキレ出した中村が、襲撃すら考え始めて……前池は肩を持ち待ったをかけた。ここに襲撃かけてやられた一人いるから、力でも勝てねーよと前池に言われ、より中村は猛り始めた。
「テメェ如きが止めてんじゃねぇよ!前池!!」
手を払われた前池は、その手を眺めて……ため息を吐いて中村に言った。
「中村……その、如きって何よ?お前さ、ここの誰よりも偉いわけ?」
「ああん!?」
「櫻井もさ、あんな奴って久島に言ったけどさ……何様?」
「はぁ!?」
前池は、先程自分に槍玉を向けられた事もあって、そしてこんな幕引きを迎えた議論によって、諦観と呆れが心中に広がっていた。
「運動できて、偉いの?まぁ、それも一要素だよな?けどさ、そこに優劣あんの?俺が言っても説得力ねぇけど、ここで誰も言わないから言うわ……俺ら全員、高二の学生でしかねぇんだわ……仲良い、話が合う奴らが集まって……いつの間にか『違う奴らは間違い』みたいに見下して、憎み合ってるふうになってんだよ……俺も、久島にやられる前までそうだったしさ」
運動部として、そしてクラスを動かしていた者達であると、優越感を持っていた。だからいつの間にか、それ以外への見下す感情があって、今の荒れた言葉から滲み出ているし、俺も前までそうだったと、前池は二人に、他の残った参加陣営に語る。
「あいつら最初から、話し合いしようとしてたじゃん?この場を用意したのも、あっちの本田なんだ、それをお前机蹴るわ、謝ったから詫び入れろとかさ、俺も頼んだよな?頭下げて頼むってさ……なんていうか、あいつらが体育祭サボりたくなる気持ち、分かっちまったわ……」
前池も鞄を抱えて、ため息を吐きながら、参加陣営から離れて退出する為ドアに向かう。
「走って、頭下げてその果てがこれか……仮に無理やり出ても、あいつら走らなかったり動かなかったりしてたと思うぞ……じゃ、あとは好きにしてくれ」
前池の呆れた言葉を最後に、扉が閉まり……残った体育祭参加陣営の者達も、続々立ち上がり、荷物をまとめ始めた。
「こりゃもう無理だな、諦めるしかねぇよ」
「こうなったらもう、ね……」
「数でも、意見でも負けたらもう勝てないよね」
参加陣営が、次々と離れ、崩れ、崩壊していく……そして一人、また一人、教室から出ていき……最後に残ったのは、中村と、櫻井、そして周防だけであった。
「んだよこれ……ああ?これ……俺らが悪いのかよ……」
残された中村は、怒りを失い呆然とし、夕闇に染まる教室を見るしかなかった。
「最悪だよ、薄情だよ、皆久島のやつに乗せられて……」
まだ久島に苛立ちを隠せない櫻井、しかし……ふと何かが床に落ちる音を聞いて、まだ座っている周防を見るや、固まった。
泣いていた、ただ、周防真琴は泣いていた。涙を机に滴らせ、跡がやがて繋がり一面になるくらいに……。
「私……委員長の……器じゃ……なかったんかな……秋山くんだったら……丸く収めたんかな……ありえんよな、クラスバラバラで……体育祭でれんとか……前代未聞やんな……」
秋山千才が倒れ、その代わりを先生から命ぜられた。張り切って頑張ろうとしたら……鳥風から辛辣に正論で貫かれて、最早メンタルは砕け散っていた。
「ごめん、ごめん、ごめん……中村くん、櫻井さん……ごめん……ごめんなさい……」
泣きながら、謝るしかない、明朗活発だった周防の姿は最早どこにもなく。ただ女児のように泣きじゃくり謝るだけの女の子が、そこに居た。
「いやっ、違うんだ、聞いてくれ久島っ……おい、言ったよな?」
成る程、話はした……らしい。しかし悲しいかな、クリアユースとしての立場を失った彼には、説得する力は残っていなかった。恐らく『とりあえず形だけでも折れてくれ、そうしないとマジで体育祭辞退だから』と、人数を確保する為に、外面だけでも今回はと頼み込んだ、だろう。
「前池さぁ、何であたしらが折れなきゃいけないわけ?あっちが間違ってんだよ?」
さぁ、内部崩壊が始まった。ここまで頑張って来た前池くんに、責任を押し付け行き場のない怒りをぶつけにかかろうと、今は不登校な柳と仲良しなテニス部の櫻井悠希が苛立ち混じりに言い放った。
「そもそもこいつらが言い出してんだ、詫び入れてこっちに来るのがスジだろうが!」
中村くんにも追撃された前池は言葉が出なくなった、しかし……比嘉出さんに東城さんも黙っているあたり、序列というか、発言力から影響力も失っているらしいなと、僕は実感した。
というわけで、そっちに居るのは苦しかろう、前池くんに手を差し出そうじゃないか。僕は前池くんに再び語りかけた。
「いや、分かった、ありがとう前池くん……せっかく動いてくれたのにさ、まぁさっきまで話を聞く気だったけど、やっぱり今この場になって苛立ちから嫌になる事もあるよ……歩み寄ってくれたのに申し訳ないな」
僕は前池くんが、形だけだろうが、最悪説得すらしてなかろうが、彼を労う事にした。話し合いの場で心変わりもあると擁護して、労い……こちら側に引き込もうと考えでの発言だった。
「えっ?あ、ああ……すまん久島……」
罵倒される仲間内と、感謝される敵陣営……彼も呆れて、諦める流れを作り……一気に攻勢へ出る事にした。
「しかし……残念だ、周防さん?キミ達参加陣営側は僕達を快く思ってはいないらしい、たとえこのまま合流したところで、かつての体育祭を繰り返すだけと見た」
「な、おい!?」
「ちょっと、本気なの!?」
周防委員長は相変わらず黙ったままで、代わりに中村くんと櫻井さんが言葉に詰まる。今の体育会、リア充組の中心はこの2人かと……僕は岩田先生に確認した。
「岩田先生、体育祭不参加となる場合、この時間まで参加陣営が半数以上を引き込めなかったら、でしたね?」
「そうよ久島くん……それで?」
「この会議は不参加側からして、無意味かつ合流も現実的ではないと見えたので、お開きでも良いかと思います」
こちらの要求を呑まず、謝罪と合流のみが望みとなるならば、最早話すことは無いと、僕の発言に、中村が机を蹴り立ち上がった。
「調子乗んなよ久島コラァ!テメェクラス引き回して楽しいか!?あぁ!?散々迷惑かけてこれか!!」
その勢いに乗じる形で、櫻井も立ち上がって涙ぐみながら声を荒げた。
「ねぇ楽しい!?こっちのやりたい事、楽しむ事、クラス行事邪魔して楽しい!?あんたほんっとう終わってるよね!?性格最悪だわ!!」
言うに事欠いて人格攻撃、ヒートアップして最早議論ではなくなって乱闘間近だ。というわけで、先生に声をかけた。
「先生、僕おかしいこと言ってますか?ただ僕は……体育祭のあまりに強硬で、勝利主義な雰囲気から参加したくないからと、その雰囲気をやめて欲しいとお願いする為に彼らと対話をしに来たのに……これでは相互理解も無理と考えますけど」
僕はただ冷たく、事実と、対話だけをこの場に求めて来た。その果てにあったのがこれかと、呆れたように言えば……岩田先生も悲しそうな顔で、仕方なしと目つきを変えて言い放った。
「どうやら対話もできそうにないと見たわ、この場を持って交渉決裂とし、波浜高校2年2組は、今年の体育祭を事態して通常授業を行う事にします」
「は、はぁ!?」
「そんな、何で!?マジなの!?」
「これにて閉会、各自解散してよろしい」
岩田先生の宣言は無慈悲に教室へ響き渡り、それを止めようと中村くんや櫻井さんも唖然としたが、解散を宣言して岩田先生は教室を出て行った。
そして、僕も立ち上がると、反対陣営のクラスメイトも立ち上がり、伊佐美くん達も、鳥風くんも立ち上がって、次々と教室を退室し始めた。
結局……体育祭参加陣営は、自分たちが楽しみたいだけだったのだ、皆が次々出ていき、参加陣営は呆然とするのを最後に見て、僕は言った。
「最後の人、鍵を職員室返しといてね」
こうして……2年2組は体育祭辞退が決定したのだった。
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夕日に染まる2年2組教室……残された参加陣営達は、この惨状に黙るしかなかった。
「あ、のクソ窓際陰キャがぁ!強いからって調子乗りやがって!!」
中村が近場の椅子を蹴りながら文句を吐き散らした。
「委員長いいの!?ねぇ、あんな奴にいいように言われて!?体育祭辞退にマジでなっちゃったよ!?何か言ってよ!!」
謝罪だけを受けた委員長は、最早物言わぬ人形のように俯いていた。櫻井に促されるもただ黙り尽くすなか……1人が、声を上げた。
「櫻井さん、周防さん、ごめん……あたしも今回、体育祭できそうに思えないから、あっち行くね?」
「は!?比嘉出!?」
参加陣営に座っていた比嘉出が、申し訳なさそうに……しかし力無く笑顔を浮かべ櫻井に語った。
「久島くんや鳥風くんの言い分さ、分かるというかさ……あくまで体育祭で学校行事、私らは楽しめてる中で、楽しめない子も居て……勝ちへのプレッシャー与えてたっての、自覚したから……」
比嘉出も体育祭は楽しみだった、勝ち負けはともかく運動は好きだが、彼女も『活躍できる』側だったから、知らずに勝ちへのプレッシャーを、できない、苦手な子達に与えて楽しい雰囲気を奪っていたかもしれないと。
「私も、2抜けするわ……」
比嘉出に続き、私も今更ながら不参加だと東城が、荷物をまとめ立ち上がった。
「おい……東城!テメェまでなんで!?あれか?久島に弱み握られたかよ!?」
クリアユースメンバー2人が、不参加陣営に降ると吐くや、中村はなにか久島にやられたのかと吐き散らす。しかし東城は、冷たい眼差しを向けて中村に言った。
「いや……分かんないの2人とも?あんたや櫻井が声荒げず、私らがあっちの要求飲んで、態度気をつけたら合流してたのよ?あんたらが意地張って怒った時点で、あたしらの負け……体育祭は残念だけど、まぁ水泳があるしコンディション気に掛けれて助かるわ……じゃあね」
比嘉出と東城が揃って出ていく……その姿に、中村は歯軋りして怒りを吐き散らした。
「ふざけやがって陰キャ共が調子に乗りやがって!こうなったら、あいつらにどっちが上か分からせてーー」
「やめろ、中村……マジで、俺みたいになっから……」
いよいよキレ出した中村が、襲撃すら考え始めて……前池は肩を持ち待ったをかけた。ここに襲撃かけてやられた一人いるから、力でも勝てねーよと前池に言われ、より中村は猛り始めた。
「テメェ如きが止めてんじゃねぇよ!前池!!」
手を払われた前池は、その手を眺めて……ため息を吐いて中村に言った。
「中村……その、如きって何よ?お前さ、ここの誰よりも偉いわけ?」
「ああん!?」
「櫻井もさ、あんな奴って久島に言ったけどさ……何様?」
「はぁ!?」
前池は、先程自分に槍玉を向けられた事もあって、そしてこんな幕引きを迎えた議論によって、諦観と呆れが心中に広がっていた。
「運動できて、偉いの?まぁ、それも一要素だよな?けどさ、そこに優劣あんの?俺が言っても説得力ねぇけど、ここで誰も言わないから言うわ……俺ら全員、高二の学生でしかねぇんだわ……仲良い、話が合う奴らが集まって……いつの間にか『違う奴らは間違い』みたいに見下して、憎み合ってるふうになってんだよ……俺も、久島にやられる前までそうだったしさ」
運動部として、そしてクラスを動かしていた者達であると、優越感を持っていた。だからいつの間にか、それ以外への見下す感情があって、今の荒れた言葉から滲み出ているし、俺も前までそうだったと、前池は二人に、他の残った参加陣営に語る。
「あいつら最初から、話し合いしようとしてたじゃん?この場を用意したのも、あっちの本田なんだ、それをお前机蹴るわ、謝ったから詫び入れろとかさ、俺も頼んだよな?頭下げて頼むってさ……なんていうか、あいつらが体育祭サボりたくなる気持ち、分かっちまったわ……」
前池も鞄を抱えて、ため息を吐きながら、参加陣営から離れて退出する為ドアに向かう。
「走って、頭下げてその果てがこれか……仮に無理やり出ても、あいつら走らなかったり動かなかったりしてたと思うぞ……じゃ、あとは好きにしてくれ」
前池の呆れた言葉を最後に、扉が閉まり……残った体育祭参加陣営の者達も、続々立ち上がり、荷物をまとめ始めた。
「こりゃもう無理だな、諦めるしかねぇよ」
「こうなったらもう、ね……」
「数でも、意見でも負けたらもう勝てないよね」
参加陣営が、次々と離れ、崩れ、崩壊していく……そして一人、また一人、教室から出ていき……最後に残ったのは、中村と、櫻井、そして周防だけであった。
「んだよこれ……ああ?これ……俺らが悪いのかよ……」
残された中村は、怒りを失い呆然とし、夕闇に染まる教室を見るしかなかった。
「最悪だよ、薄情だよ、皆久島のやつに乗せられて……」
まだ久島に苛立ちを隠せない櫻井、しかし……ふと何かが床に落ちる音を聞いて、まだ座っている周防を見るや、固まった。
泣いていた、ただ、周防真琴は泣いていた。涙を机に滴らせ、跡がやがて繋がり一面になるくらいに……。
「私……委員長の……器じゃ……なかったんかな……秋山くんだったら……丸く収めたんかな……ありえんよな、クラスバラバラで……体育祭でれんとか……前代未聞やんな……」
秋山千才が倒れ、その代わりを先生から命ぜられた。張り切って頑張ろうとしたら……鳥風から辛辣に正論で貫かれて、最早メンタルは砕け散っていた。
「ごめん、ごめん、ごめん……中村くん、櫻井さん……ごめん……ごめんなさい……」
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