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四章 体育祭編
2.あくまで参考、の筈だった
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体育祭まで、残り二日……。
僕は、必要な書類を提出する為に校内のある部屋まで来ていた。その扉の上に取り付けられた表札には『生徒会室』と書かれていた。
恐らくは、一生入る事なかろうと思われたこの部屋に……僕は入る。とりあえず、ノックをして僕は応答を待った。
「どうぞ」
「失礼します」
この学校のドアは大半が引き戸の中、珍しい普通のドアを僕は、ドアノブを捻り開いた。そこには、深夜アニメやら学園ドラマやらであるような、いかにもな生徒会室があった。
「やぁ、キミが2年2組の新しい委員長だね?まさか2回も変わるとは前代未聞だよ」
そして……いかにもな、校長でも座らないような高価な椅子に座っていたのはこれまた『大人びて学校を裏で支配してそうな、扇子を広げ銀髪の大人びた男』や『天真爛漫ピンク髪のロリッ子』だとか『毎日予習復習欠かさず学年トップを維持する貧乏な家の少年』というわけではなく、今時のカジュアル眼鏡をかけた黒髪の男子生徒だった。
「周防真琴さんに代わり、新たに2年2組のクラス委員となりました、久島秀忠です」
一応、引き継ぎで変わった事は存じているようなので、僕は名前を名乗った。生徒会長は、頷きながら口を開く。
「知ってるよ、有名だよキミ?クラスメイトを合法的にぶちのめしてICU送りにした子ってさ」
「いやICUまで行かなかったと……多分……ブレイキングケイジを見てらっしゃるんですか?」
「見てないけど、人伝てで耳に入ってきてね……生徒会長の岩水です、よろしく」
岩水生徒会長が、自ら立ち上がり一礼するので、慌てて僕も礼を返した。やはり普通の格闘技より、ブレイキングケイジは見る人の方が居るんだな、話題性というのはあるらしいと僕は校内に自分の話題が上がる事に驚いた。
「それで、何の用かな?挨拶回りかい?」
「いえ、体育祭の書類を前任から引き継いでまして……その提出に」
「ああ、キミのとこだけまだだったな、待たされたよ」
要件は挨拶回りかと言われ、周防前委員長から引き継いだ、生徒会に提出するはずだった書類を渡す。待たされたと、少し嫌味を含んだ言い方をされたが、言われても仕方がない事がクラスで起こっていたし、その引き金を引いたのが自分なので、甘んじて受けて岩水生徒会長が、不備を確認するのを背筋を伸ばして待った。
パラリ、パラリ、一枚一枚めくり、メガネのレンズの向こう側の両目が書類に記された文字を確認し、最後の一枚も見て……そして閉じた。
「確認したけど不備は無いね、お疲れ様でした」
「ありがとうございます、では失礼します」
良かった、また書き直しとかストレス極まりない。僕は内心胸を撫で下ろして、一礼してから背を向けてそのまま生徒会室を退出するはずだったのだが……。
「あ、ちょっと待って」
「はい?」
「実はキミに尋ねたい事があってね……いや、キミ以外のクラス委員長にも聞いている話なんだけど」
岩水会長に待ったをかけられた、何やら彼はクラス委員長に尋ねている事があるらしい。何だろうかと振り返り、身体を向けて聴くことにしてみた。
「キミは、今の体育祭にあればいいものって何だと思うかな?」
「え?」
「なに、ちょっとした意見交換だ、思いついた事があれば意見として来季の生徒会にも残したくてね」
体育祭にあればいいもの……か、唐突な質問だったが、少し頭の中で考え、僕は思いついた物を口にしようとして……いや待てよと一時停止した。
そんな軽はずみな言動が、先週の体育祭参加の自由化騒動を引き起こしたばかりじゃないかと、迂闊な事言えたものじゃないと、僕は岩水会長に返答した。
「すいませんが……軽はずみに言ったことで先週痛い目を見たので、何も無しではだめですか?」
「あー、そこまで深く考えなくてもいい、あくまで一意見だからさ」
本当か?大丈夫だよな?僕は少し疑うも、そこまで言うならばと思った事を口にした。
「……商品とかですかね?小市民的で、現金な話ですが……」
「商品?」
僕が最初に思いついたものが、それだった。その理由も僕は会長に語った。
「運動会や体育祭って、毎年優勝旗やトロフィーを返還して、勝ったらまた渡しての繰り返しで……組や色に"勝ったと言う記録"は残りますけど、それだけじゃないですか」
「ふむふむ……」
「思うんですよね、皆で頑張った思い出こそあるけど、それだけでしかないなと……格闘技ってプロにはなりますけど、ファイトマネーとか勝利者賞とか……あと、団体にもよりますが熱い戦いをしたマッチや選手への労いに追加のファイトマネーを渡したりとかするんですよ……流石に学校でゲンナマは駄目なの当たり前ですけど、そんなのがあれば盛り上がるんじゃあないかなー……と」
常々思っていたが、実現なんて無理なので、とりあえず言ってみた。それだけの話……。
運動会に体育祭、勝とうが渡されるのは優勝旗と結果、思い出でしかないと。形に残らないそれは尊いものであるかもしれない……けど、それで腹が膨れたり得をしたりする事は無いのだ。
昔、小学生時代のレクリエーションとかで『宿題免除』や『掃除免除』が勝った商品として出たら、それはもう皆血眼とまでいかないが、やる気を出していたなと。人間、やはりそう言った『得する物』『特典』には惹かれるものなのだと、僕は思っている。
僕の話を聞いた岩水会長は、頷いて言った。
「そう、貴重な意見をありがとうね、引き止めて悪かったよ」
「いえ、では失礼します」
会話を終えて、今度こそ僕は生徒会室を退出した。いや、やっと終わった……これで書類仕事はもう無い、乗り越えたぞと扉を閉めてから僕は背伸びをした。
「あー……ジム行って汗流そ」
さぁ、楽しいジムでの練習へ向かおう、僕は仕事を終えて気分を高めて、荷物を回収しに教室へ向かった。
この時僕は知らなかった、またこの軽はずみの発言で、体育祭がまさかの展開を迎えるなどと。だって生徒会長は『意見の一つ』と言っていたのだから。
まさか……生徒会にまで『あいつ』の爪痕が残っていて、僕と同じこと考えていて、それを生徒会長が悩んでいたところに、僕がピンポイントで射抜くなんて予想できるかよ。
前も言ったかもしれないが、もう一度言おうと思う。
これ……僕は悪く無いよな?
僕は、必要な書類を提出する為に校内のある部屋まで来ていた。その扉の上に取り付けられた表札には『生徒会室』と書かれていた。
恐らくは、一生入る事なかろうと思われたこの部屋に……僕は入る。とりあえず、ノックをして僕は応答を待った。
「どうぞ」
「失礼します」
この学校のドアは大半が引き戸の中、珍しい普通のドアを僕は、ドアノブを捻り開いた。そこには、深夜アニメやら学園ドラマやらであるような、いかにもな生徒会室があった。
「やぁ、キミが2年2組の新しい委員長だね?まさか2回も変わるとは前代未聞だよ」
そして……いかにもな、校長でも座らないような高価な椅子に座っていたのはこれまた『大人びて学校を裏で支配してそうな、扇子を広げ銀髪の大人びた男』や『天真爛漫ピンク髪のロリッ子』だとか『毎日予習復習欠かさず学年トップを維持する貧乏な家の少年』というわけではなく、今時のカジュアル眼鏡をかけた黒髪の男子生徒だった。
「周防真琴さんに代わり、新たに2年2組のクラス委員となりました、久島秀忠です」
一応、引き継ぎで変わった事は存じているようなので、僕は名前を名乗った。生徒会長は、頷きながら口を開く。
「知ってるよ、有名だよキミ?クラスメイトを合法的にぶちのめしてICU送りにした子ってさ」
「いやICUまで行かなかったと……多分……ブレイキングケイジを見てらっしゃるんですか?」
「見てないけど、人伝てで耳に入ってきてね……生徒会長の岩水です、よろしく」
岩水生徒会長が、自ら立ち上がり一礼するので、慌てて僕も礼を返した。やはり普通の格闘技より、ブレイキングケイジは見る人の方が居るんだな、話題性というのはあるらしいと僕は校内に自分の話題が上がる事に驚いた。
「それで、何の用かな?挨拶回りかい?」
「いえ、体育祭の書類を前任から引き継いでまして……その提出に」
「ああ、キミのとこだけまだだったな、待たされたよ」
要件は挨拶回りかと言われ、周防前委員長から引き継いだ、生徒会に提出するはずだった書類を渡す。待たされたと、少し嫌味を含んだ言い方をされたが、言われても仕方がない事がクラスで起こっていたし、その引き金を引いたのが自分なので、甘んじて受けて岩水生徒会長が、不備を確認するのを背筋を伸ばして待った。
パラリ、パラリ、一枚一枚めくり、メガネのレンズの向こう側の両目が書類に記された文字を確認し、最後の一枚も見て……そして閉じた。
「確認したけど不備は無いね、お疲れ様でした」
「ありがとうございます、では失礼します」
良かった、また書き直しとかストレス極まりない。僕は内心胸を撫で下ろして、一礼してから背を向けてそのまま生徒会室を退出するはずだったのだが……。
「あ、ちょっと待って」
「はい?」
「実はキミに尋ねたい事があってね……いや、キミ以外のクラス委員長にも聞いている話なんだけど」
岩水会長に待ったをかけられた、何やら彼はクラス委員長に尋ねている事があるらしい。何だろうかと振り返り、身体を向けて聴くことにしてみた。
「キミは、今の体育祭にあればいいものって何だと思うかな?」
「え?」
「なに、ちょっとした意見交換だ、思いついた事があれば意見として来季の生徒会にも残したくてね」
体育祭にあればいいもの……か、唐突な質問だったが、少し頭の中で考え、僕は思いついた物を口にしようとして……いや待てよと一時停止した。
そんな軽はずみな言動が、先週の体育祭参加の自由化騒動を引き起こしたばかりじゃないかと、迂闊な事言えたものじゃないと、僕は岩水会長に返答した。
「すいませんが……軽はずみに言ったことで先週痛い目を見たので、何も無しではだめですか?」
「あー、そこまで深く考えなくてもいい、あくまで一意見だからさ」
本当か?大丈夫だよな?僕は少し疑うも、そこまで言うならばと思った事を口にした。
「……商品とかですかね?小市民的で、現金な話ですが……」
「商品?」
僕が最初に思いついたものが、それだった。その理由も僕は会長に語った。
「運動会や体育祭って、毎年優勝旗やトロフィーを返還して、勝ったらまた渡しての繰り返しで……組や色に"勝ったと言う記録"は残りますけど、それだけじゃないですか」
「ふむふむ……」
「思うんですよね、皆で頑張った思い出こそあるけど、それだけでしかないなと……格闘技ってプロにはなりますけど、ファイトマネーとか勝利者賞とか……あと、団体にもよりますが熱い戦いをしたマッチや選手への労いに追加のファイトマネーを渡したりとかするんですよ……流石に学校でゲンナマは駄目なの当たり前ですけど、そんなのがあれば盛り上がるんじゃあないかなー……と」
常々思っていたが、実現なんて無理なので、とりあえず言ってみた。それだけの話……。
運動会に体育祭、勝とうが渡されるのは優勝旗と結果、思い出でしかないと。形に残らないそれは尊いものであるかもしれない……けど、それで腹が膨れたり得をしたりする事は無いのだ。
昔、小学生時代のレクリエーションとかで『宿題免除』や『掃除免除』が勝った商品として出たら、それはもう皆血眼とまでいかないが、やる気を出していたなと。人間、やはりそう言った『得する物』『特典』には惹かれるものなのだと、僕は思っている。
僕の話を聞いた岩水会長は、頷いて言った。
「そう、貴重な意見をありがとうね、引き止めて悪かったよ」
「いえ、では失礼します」
会話を終えて、今度こそ僕は生徒会室を退出した。いや、やっと終わった……これで書類仕事はもう無い、乗り越えたぞと扉を閉めてから僕は背伸びをした。
「あー……ジム行って汗流そ」
さぁ、楽しいジムでの練習へ向かおう、僕は仕事を終えて気分を高めて、荷物を回収しに教室へ向かった。
この時僕は知らなかった、またこの軽はずみの発言で、体育祭がまさかの展開を迎えるなどと。だって生徒会長は『意見の一つ』と言っていたのだから。
まさか……生徒会にまで『あいつ』の爪痕が残っていて、僕と同じこと考えていて、それを生徒会長が悩んでいたところに、僕がピンポイントで射抜くなんて予想できるかよ。
前も言ったかもしれないが、もう一度言おうと思う。
これ……僕は悪く無いよな?
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