間違いだらけの久島くん

魔根喪部荼毘座右衛門

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四章 体育祭編

8.勝手に始まる前哨戦

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 昼休み、昼食を挟み……応援アピール合戦を終えた後、競技は残り二つとなった。

 『騎馬戦』そして最終競技の波浜高校伝統の『大玉合戦』である。この二つの競技が、午後の競技だ。

 2年2組の寄せ集めだけで構成された騎馬軍団、それを率いるは新たに2組の委員長となった、久島秀忠。

 その足、騎馬となるは前方、本日二度目の競技出場、本田明日夢。後方、伊佐美光輝と山城雄一。久島軍団騎馬が、今対面に入場した紅組の騎馬たちと相対した。

「……いやちょっと待てよ!相手方めちゃくちゃ殺気立ってるよな!」
「商品着いた途端やる気が出るのは、人間の性なのかな……」

 騎馬戦も学年合同の総力戦となっている。
 
 各クラス12名、4名騎馬を3組作り上げ、9対9の戦いは、割引券を求めた生徒達によって殺気だっている。後部騎馬である伊佐美くんと山城くんが気圧されそうになっているが、そんな二人に僕は言い放つ。

「なに、口は悪くても一切ルール違反してないから分別ついてるよ、口は悪いけどね」

 ライン声の応援はしているが、ルールは破ってないから怪我まではしないと思われる。それはそれでタチが悪いのでは!?と、二人は訝しむ中、実行委員のピストルが空に向けられた。

 鳴り響く火薬の音、始まった騎馬戦!双方が額の鉢巻を奪い合う戦いが始まる!

「よし、行こう!前進!!」
「了解」
「っしゃあ!いくぞ!」

 久島軍団は、わざとピストルの音から少し遅れてスタート!味方とのぶつかり合いを防ぐ為、そして確実に鉢巻を奪える相手を選定する中ーー。

「おらーー!鉢巻よこせやぁ!」
「待ってたぜ!この時をよぉ!!」

 久島達に狙いを定めた二騎の騎馬が勢いよく猛進!明らかに鉢巻を狙うはずの手が開かれてない、拳を握って向かって来ている!

「来たぞ久島!どうする!?」
「正面突破、つっこめ本田くん!!」
「よし!!遅れるなよ後ろ二人!!」

 この体育祭で勝つために、割引券の為にと熱たぎらせる元気な一年らしき紅組騎馬!2騎と、正面からぶつかり合うと僕は指示して、本田くんの勢いとしっかり後方二人を引き離さない速さで突貫!

 そしてーー

「もらっー」
「寄越せやーー」

 騎馬の乗り手役で鉢巻に手を伸ばす2騎、その手を僕は弾いて逆に両手を伸ばし、鉢巻を取り去り、一気に二つを奪い去った!

「はい、失格、座ってなよ」
「「な、なんだぁ」」

 二対一の有利を切り抜けらた相手からしたら驚愕だろう、これで一気に2組を脱落させたと僕は次のターゲットを選定!

 この騎馬戦は、どちらのチームが全滅するまで終わらない!さらにーー。

「うわぁあ!!」
『あーっと紅組の三年、落ちてしまった!騎馬が崩れて騎手が落ちた場合も失格になります!』

 騎手が足を地面についても失格となる!鉢巻を奪う際の騎馬の強固さも、騎手のバランスも求められる競技であった。

 僕達はタイミングを遅らせた為、集団と集団でぶつかり合う範囲から離れて蚊帳の外、だからこそ安全圏から個体として、乱戦を避けて戦える状況にあった!

「久島ぁあああああ!!」

 そんな僕の名を叫び、突貫してくる騎馬が一騎、その馬上に跨る騎手を見て、僕は舌打ちした。

「チィッ!なんだって松原くんが騎馬戦メンバーに居るんだよ!」

 まさかの松原太一が騎馬戦に参加していた、キミどちらかと言うとリレーやら障害物に出てると思ってたよと、迫り来る松原くんの騎馬とマッチアップした僕たち、伸びて来た松原くんの手を弾いてこちらも鉢巻目掛け右手を伸ばす!

「しゃあっ!」
「なにっ」

 しかしフルコン空手をやっている松原くん、僕の伸ばした手を空手の受けか、捌きか知らないが同じように弾くや、ジャージの袖を掴み引っ張って来た!

「もらうぜ鉢巻!」
「させるかぁ!」
「はうっ!?」

 袖を引くのはなしだろお前!僕もやり返してやると伸びて来た松原くんの右手の手首を左手で掴みながら捻り上げてやれば、袖から手を離しながら町原くんは右手を僕の手から引き抜く!

「てんめぇ~手首捻るの反則だろうが!?」
「袖引っぱった自分のことは棚上げとは、面の皮が厚いなぁ?」

 右手首を摩る松原くんに文句を言われたが、先にやったそちらに仕返ししただけだと、言い返してやる。

「上等だ!この騎馬戦をBOFの前哨戦にしてやらぁ!!」
「勝手にやれ!皆!このまま正面に捉えて!」
「「「了解!」」」

 何を勝手に決めてるのやら、この馬鹿は……しかしこちらも、大人しくやられてやる気は無いので、向かって来た松原率いる騎馬に応戦を決める!

 僕と松原くんの手が、幾度も交錯しながら!その手を弾き、袖を引いて阻み鉢巻の奪い合いがヒートアップする!

「「しゃあっ!」」

 ボッ   ボボッ パァン!

   ガシッ! ドァッ!

 パパンッ  ドッ! ボボパァン!

 空気を切り裂く、僕と松原くんの鉢巻に伸びる手は、最早ただの競技の範疇から抜け出し、鉢巻を命と見立てた死合の領域にまでボルテージが上がってしまう!鳴り響く弾き合う音に空気を切る音には、実況の岩水生徒会長も何があったのかと熱が入った。

『あーっと!?乱戦の中に分かれた紅白それぞれの騎馬がタイマンの奪い合いだァ!と言うか腕が見えてないし風を切る音が聞こえるのはどうなってるんだァ!?これは騎馬戦なのかぁ!?』

 寄せ集めの騎馬戦で起こった、まさかのバチバチの奪い合いに生徒達も続々応援が上がる!

「蹴り得意なお前より!殴るのが得意な俺が有利だな久島ぁ!」

 だが、手を動かす回転率はフルコン空手をやっていた松原くんに分があると、こればかりは認めなければならなかった。普通に格闘技の試合ならば足を使ってあしらえるが、これは騎馬戦チーム戦、今の僕の足は伊佐美くん達3人で自由が効かない。

「だからと言ってそれがなんだと言う話だよ、松原くん」
「なにっ」

 僕は、掴みかかる松原くんの左手に、右腕を巻きつけて、肘の内側に右手を引っ掛け左手を伸ばした!鉢巻向かって!

「この!」

 伸びて来た左手を阻む為に、松原くんが右手で防いだ瞬間ーー僕は本田くん達に指示を出した!

「右に思い切り移動!」
「「「っしやぁ!」」」

 まだ数ヶ月だけど、仲良くして来たんだ!息はぴったり!僕は松原くんの左手を固めながら騎馬が移動すれば、それに釣られて松原くんの騎馬も唐突な動きに耐えれなくなりーー。

「崩れても負けだ、そうだったよね?」
「しまっーー」

 体育祭で何使ってんだよとなるが、ふっかけて来た松原くんが悪いんだ。名付けるならば『騎馬戦式首相撲』でもって、松原くんの騎馬は崩れーー。

「きゃああ!?」
「えっ」

 騎馬戦は、紅白のクラスから出場者からなる総力戦だ。松原くんと僕たちの、一騎打ちでは無い。

 多分、この隙を狙いに他の紅組騎馬が、向かって来たのだろう。

 そして、崩れた松原くんの騎馬達にぶつかり、その騎馬もまた崩れたのを視界で見た。

 乗っていたのは女の子で……受け身が取れない、頭から真っ逆様に落ちようとするその様が見えた。

 たとえ、それが紅組の女子だろうが、相手チームだろうが、それはダメだ危ないと……僕は伊佐美くん達の組んだ騎馬から飛び降り、落ちゆく紅組女子を何とか抱えて着地した。
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