間違いだらけの久島くん

魔根喪部荼毘座右衛門

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四章 体育祭編

10.恒例、大玉合戦 下

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『さぁ作戦タイムは終了だぁ!カウントダウン20から始める!泣いても笑っても、全てこの競技で決まる!悔いを残さないように全てぶつけていけぇ!』

 テンション最高潮の岩水生徒会長の実況が響き渡る。双方、今のある全てを並べられた三つの玉を押し合い叩き込む為に、スタートラインに並び出す!

『3!』

 久島は思いだしていた。ただの軽はずみでクラスはバラバラになりつつあった二週間前、自分もやる気が起きないと、そのまま担ぎ上げられ本当に参加が無くなりかけた事を。

『2!!』

 そして、また自身の言葉が生徒会長にクリティカルを叩き込み、学食の割引券の争奪戦になり、競技の端々に秋山が見え隠れして、同じ思考を持っていた事に苛立った事。

『1!!!』

 それら全て含めて、抱えて、呆れ返るくらいに今……自分が体育祭を楽しんでしまっている事に、久島秀忠は笑った。

『0!』

 ピストルを撃ちならし、紅白双方男子達が、作戦通りに動き出す!

『さぁ始まった!紅白入り乱れた激突!互いに全てをぶつけ勝利を掴み取れえ!!』

 うおおおおおお!!

 1クラスの男子20人、約60人同士が!!三つの大玉を取り合い叩き込む合戦!!その始まりはーー同じ思考、作戦のぶつかり合いになった!

 まず、確実に素早く『1つは叩き込む』!中心の大玉ではなく左右の大玉に集中し、それぞれが相手陣地に叩き込むという作戦は、互いにそれぞれの大玉を、1分足らずで叩き込んだ!

「多勢に無勢だいっけぇ!」

 が!ここで紅組が先に数人!中心の大玉へ辿り着いて勢いよく一気に押し込みにかかる!

「誰か止めろーー!」

 勢いがついてしまえば最早負けは免れない中ーー、その大玉に回り込んだ者が1人!

「1人で止めれる思うとんかぁ!」
「このまま轢いてミンチにしてやれや!」

 大玉は合成樹脂の空気で膨らませる物、轢かれてミンチにはならないがそんな希薄で紅組速攻の進軍に……久島秀忠が左足をリラックスさせて、右足で地を蹴り!思い切り左足の脛を大玉へ叩き込んだ!!

「おおらっしゃいああああ!!」
「なにっ」

 ゴ シャ アア !!

「ぅあぁあああああ!!」

 久島に蹴られた大玉が!押せ押せと速攻を仕掛けた紅組数人を薙ぎ倒し!宙に浮き上がって紅組陣地側へバウンドして落下したのだった!

『蹴り抜いたぁあああ!!あれは2年の久島くん!!蹴り一発で最後の大玉を中心ライン超えて白組側まで戻したぁ!あ、ちなみに反則じゃないぞ!過去にはバレー部がボール浮かせてトスで入れたり!ラグビー部が力任せのタックルで叩き込んだりしてるからね!大玉の運び方は何してもOKだぁ!』

 一気に久島が戦況を押し戻した様相に、興奮から岩水生徒会長の実況がグラウンドに響き渡る、同時に過去の実例を出してこの行いはルール違反ではないぞとも伝えれば、久島はそのまま一気に赤と白入り乱れる敵陣を駆け抜けた!

「もう一発!!」

 このままさらに蹴り抜いて敵陣に叩き込んでやる!人並みを超えて、反転した白組の仲間たちも置き去りに先陣まで駆け抜け、二撃目を叩き込もうと左足を振りかぶった!

「させるかハナクソがぁ!!」

 左足が再び大玉を蹴り抜く!だが、響き渡った叫びと共に大玉は飛ばず、何かに押し戻されその場に静止した!

『あーっと!あれは三年生の柔道部!島吹くんだ!180センチ越え100キロの巨体が!久島くんの蹴りによる大玉の侵攻を食い止めたァ』

 そんな先輩がいたのかよ、国体とかオリンピック候補選手まで居たのか!?この学校にと、紅組最終防衛ラインを守る島吹先輩のブロックに、久島は押し戻されつつもこのリード逃すかと左足を抱えあげた!

「シバキあげたらぁ!」
「オーーエェイッシャ!」

 100キロ超級の体当たりVS悪魔の左足から繰り出される突き刺す前蹴り!合成樹脂の大玉が風船みたく凹む!!バムン!!と元に戻った弾みは、やはり体重差というものを突きつけるように、久島を背中から転ばせた!

「くっ!?流石にセンチャイやガオグライみたいにはいかないか!」

 体重差を覆した名ムエタイファイターのように上手く行くわけないかと、久島は倒れた勢いそのまま後転!他の白組がたどり着くまでこのリードを保とうとするが!

「おらぁあ!たった1人や押しつぶしたらんかい!」
「ここで1人に負けたら恥やぞお前らぁ!」
「はうっ!?」

 多勢に無勢と最終防衛ラインに割いていた紅組が久島を一気に押し返す!

「このリードを逃すなぁ一気に押しこめぇ!!」

 ここで白組到着!僅かながらリードを守った白組と紅組が拮抗の押し合いとなった!

「くっそ!紅組もしかしてパワー系多かったりしないか!?こっちがジリ貧に下がってる!」

 退学1名と療養中1名と人数差があるのは認めるが、ジリジリ中心ラインに近づいてきていると白組男子の誰かが言った。先程、実況で言っていた柔道部の先輩を筆頭に、確かに部活でもパワータイプな生徒が集中しているやもしれないと、押してくる紅組を視界に久島は捉えながら考えた。

 どうする、押し合ったらもう負けの未来が見えたぞ……いや、なんでここまで本気でやっている?不参加でやる気もなかったくせに……欲しいけどさ、割引券。

 それだけじゃないのか……多分、久島はふと身体を包む感覚に気付いた。

 キックボクシングの時、喧嘩の時、それとは違う高揚感が今、心地よく身体を温めていた。だからなのか……視界が広がった。

 大玉は、地面に接しているが、力を蓄えるように歪んでいた。久島は白組の中から、目的の人物を探して、声を上げた。

「本田くん!背中貸して!!」

 白組側、押し合いに行けてない姿を見つけ久島は大玉から離れ、本田の元へ走った。声が聞こえたらしい、膝を付いて背中を見せている本田の背後まで回り込み……久島は駆ける!

「っらぁあああしゃああああ!!」

 本田の背中を土台にして、白組の押し合う面々の頭上を飛び越えて、久島は雄叫びを上げた!さながらレッグラリアート気味のジャンプキックが、大玉の上部を蹴り抜き押し合う両陣営の拘束からズレ、そして……弾けるように紅組陣地へ飛んで行く!

「いけぇえええ!!押し込めぇええ!!」

 均衡が崩れ、防衛ラインを突破した白組が流れ込む!!紅組も、まだ横に逃しさえすれば!と大玉に追いつこうと駆け出したがーー。

「わ、わ!わぁああ!?」

 押し合いの中で押しつぶされていたのか、さらに白組の流れに押し込まれた、山城雄一が……飛び出すように白組の流れの最前線に飛び出してしまい、最後の一押しとなって、大玉を紅組陣地へ押し込んだのであった!!

『試合、終了ぉおおーーー!』

 波浜高校体育祭、その最後の種目、大玉合戦は……白組の勝利で持って幕を閉じたのであった。
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