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第1章
観察対象、アイリス・グラン
しおりを挟むゼレフ「……面白い子が入ったな」
その日の夕方、ルミナリア魔法学園の教師会議室では、魔力を秘めた水晶の映像を見ながら数人の教師が集まっていた。
そこには、アイリスとレオンの模擬戦の映像が記録されている。
光刃の展開、魔力の収束、動作の正確さ――どれも「訓練された魔術士」以上の完成度だった。
リオネル「特に杖を使わずに詠唱・制御まで行ったあの光魔法……どう考えても、初等教育を受けていない者のレベルではない」
メガネを押し上げながら呟いたのは、理論魔法担当のリオネル。
彼は今朝の授業で、アイリスの知識と洞察力にすでに“違和感”を覚えていた。
教師A「しかも、属性が未登録。光系? 精霊系? それとも……“古魔法”か?」
一人の教師がそう呟いた瞬間、部屋の奥の重厚な扉が静かに開いた。
ゼレフ「“古魔法”……その可能性も、否定はできんな」
現れたのは、ルミナリア魔法学園の学園長――ゼレフ=バルネア。
長い髭に深い紫のローブ、その瞳には“魔法の歴史”そのものが宿っていた。
ゼレフ「アイリス・グラン――彼女を、しばらく“特別観察対象”とする。魔導指輪の反応も異常だった。……あれは、ただの村娘の反応ではないのぅ」
教師B「ですが、彼女はまだ一年生です。過度な干渉は――」
ゼレフ「だからこそ、“そっと”見るのだ」
窓の外を見ながら、意味深に微笑む。
ゼレフ「もしかすれば……三百年前の“失われた賢者”が、ようやく帰ってきたのかもしれぬ」
教師たちが沈黙する。
その言葉が、伝説を信じる者の重さで語られたから。
同時刻:寮の一室
アイリス「……なんか、やりすぎたかな」
ベッドに倒れ込みながら天井を見上げた。
勝ってしまったことよりも、注目を集めてしまったことが、何より心配だった。
(あの指輪……なんで途中で光らなくなったんだろ? やっぱり、まだ力が戻りきってないのかな?)
まぁいいか!指輪くらい…
(……私はもう、一度間違ったんだ。今度こそ、正しくこの力を使わなきゃ)
そしてその夜――
学園の地下深くで、長らく沈黙していた封印の魔導書庫が、わずかに反応を示した。
“賢者の帰還”に応じるように――
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