ガチャで大当たりしたのに、チートなしで異世界転生?

浅野明

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第一章 新しい世界

獣人の謎を解明?

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とりあえず、改めて自己紹介。

「フィリアと申します」

「ぼくはシュウ。事情も説明せずに突然連れてきてごめんよ。こっちはウィザー、ぼくの兄さん」

「先ほどはすまなかった。自分でもなぜあんなにいらだっていたのかよくわかっていないのだが‥‥ウィザーだ」

ウサギ少女が母親で、猫獣人のお兄さんは犬の獣人?ますますもって謎が深まった。

「ふふ、シャナよう。水の精霊よう。あの怖い顔のお兄さんはグレイ。火の精霊ねえ。こっちの黄色い鳥はシャーレイよう」

シャナが一通り紹介する。

「でえ、このかわいい子がレン。私たちの大切ないとし子よう。傷つけることは許さないわあ」

にっこり美しい笑顔でシャナがレンたちを紹介する。見とれるほどキレイな笑顔なのに、なぜかフィリアたちが真っ青になってこちらをみてくるのが不思議だ。

「具合悪いの?」
レンが首をかしげて聞けば、ブンブンと音がしそうな勢いで3人揃って首を横に振る。

「いやいやいや、大丈夫!」

「そう?」

「そっとしておくぞな、レン。シャナも脅すでないぞな」

「やぁねぇ。失礼よぅ、シャーレイ」

2人の会話で、レンにもピンときた。これが俗に言う「笑顔で圧をかける」というやつなのだろう。はじめて見たが、異世界ではよくあるのだろうか?その手の小説や漫画でもよくそういった記載があったし、きっとそういうモノなのだろう。

「⋯おい、なんかレンが勘違いしてないか」

「そんなことないぞな。問題ないぞな」

「なんでもいいからぁ、早く話をすすめるのよぅ。ここは空気が悪いわぁ」

レンはまだ子供だから長くいてはダメ、とシャナが優しくささやく。

「す、すみません!」

ピシッと音がしそうな勢いで、シュウとウィザーが背筋を伸ばす。

「精霊様、愛し子様申し訳ありません。わたしからご説明させていただきます」

フィリアがいうには、ここはもともと孤児院らしい。そもそもここは王都であり、さらには教会もかなり大きいため、スラム街といってもそこまでひどくはなかったのだそう。獣人族の迫害もひどくはなく、この孤児院もそれなりに運営できていたという。

しかし、ある時を境に彼らの状況は加速度的に悪くなっていった。それはまさに、坂を転がりおちるような、という表現がピッタリなほど。

「とある人物が孤児院を訪ねてきたのです」

その人物がだれなのか、誰もどうしても思い出せない。ただ、その人物は誰かを探しているのだといっていた。

「探しびとは異界から来た神の子だといっていました」

「ナニソレ。めちゃくちゃ怪しい」

新手の宗教だろうか?

「神の子だと?」

グレイはチラリとレンを見て、何事か考えはじめた。

「きな臭いぞな」

「ふふ、西の方で異邦人が召喚されたようよぅ」

精霊たちは、なにやら思うところがあるようだ。なんとなくレンだけ置いてきぼりの気分である。というか、もしかして召喚された異邦人って、レンと一緒に白い部屋でガチャを回した中学生(仮)だろうか?まあ、知り合いでもなんでもないし、年齢も違いすぎるから会いたいかといわれると微妙ではあるが。それはそれとして、誰が召喚されたのかはちょっと気になるところである。

「気になるなら調べるぞな」

シャーレイは心が読めるのかな?!

「心は読めないぞな。レンは表情が分かりやすいぞな」

現在進行系で心か読まれた!

「で、結局そいつがなんかしたのか?」
グレイが面倒くさそうにフィリアに尋ねる。

シャーレイの意外な能力に勝手に慄いている間に、話は進んでいた。

とはいえ、たしかに謎の人物がきたくらいではとくに問題ないだろう。

「わかりません」

「わからない?」

「はい、何もわからないんです」

その人物が来た翌日には周囲からの視線が差別的になった。色々なものが売ってもらえなくなり、仕事はまるではじめからなかったかのよう。これまで細々した手伝いで御駄賃をくれていた人たちが、一様に「そんな覚えはない、勝手をいうなら」と突き放してくる。もともとこのあたりにはほとんど獣人族はいなかったが、各地から引き寄せられるようにこの地に集まり、スラム街は拡大。比例するように貧困も深刻になってきた。

どう考えても、あの人物しか思い当たることはないが、なぜこうなったのかは誰にもわからない。

「なぜレンを連れてきた」

グレイの言葉に、シュウに視線が集まる。

「わからない。ただ、一目みて絶対に連れてこなきゃって思ったんだ」

「うーん、意味分かんない」

一目惚れ?⋯冗談です。しかし、本当に意味がわからない。

「なるほど?あの少年は【天啓】のスキル持ちぞな」

「ああ」

「そういうことねぇ」

精霊たちは、シャーレイの言葉でなにやら納得している。意味がわからないレンがこの世界の住人じゃないせいか、と思ったが獣人たちもポカンとしている。どうやら一般常識的なものではないらしい。

「【天啓】スキルは自身ではどうしようもない問題に対して解決策を提示してくれるスキルだ」

「解決策の提示は誰がしてくれるの?」
神様的なアレだろうか?

「スキルに決まってんだろ」
なにを当たり前のことを、とグレイがさらっと答えてくれた。⋯スキルのナゾが深まった。この世界のスキルって意思があるの?なんか怖い。

「そうだったのですね」
スキルの恩恵とは知らなかったが、大抵どうにもならない問題もシュウが絡むと上手くいっていたため、なんとなく今回もこの状況を脱するため、レンたちが鍵になると感じているらしい。

「じゃあ、予言の聖女ってなんのこと?」
さっき、家に入るときにシュウとウィザーは確かに聖女がどうとかいっていた。

「先日南から来た獣人たちのなかに、【予言】のスキルをもつ巫女がいたのです」

その巫女が、近々この地に呪いを解く聖女が現れると言ったらしい。そこで彼らは呪われていることを知ったのだと。

「ちっ、なにが巫女だ」
苦々しげにウィザーが吐き捨てる。

「なにかあったの?」

「あいつらは予言の代償だといって、この家にあったなけなしの食料や金目のもんを根こそぎ持っていきやがったんだよ!」

「それは⋯」
なんとも言いづらいが、代償なら仕方ないのかな?

「コッチが依頼したわけじゃねぇ!勝手に予言が降りてきたとか言いやがってアレコレ勝手言って、あげく代償だと全部かっさらっていきやがったんだ」
⋯それはむしろ強盗では?

「取り返さなかったの?」
「無理だよ。向こうは力の強い大人がたくさんいるんだ。こっちは病気の母さんと子供たちばかり。かろうじて戦えるのはオレとウィザーだけだから」

それは泣き寝入り案件だ、とレンも納得したのだった。それでも強引で勝手な予言だが、予言は嘘をつけない。つまり、確かに彼らは呪われていて、確かにいつか聖女が現れるのだろう。そんなときに、シュウがレンを見つけ、【天啓】に従ってここまで連れてきたというわけだ。

「だからウィザーがあんな態度をとるなんておかしいんだ。巫女に思うところがあっても予言自体は確かなもののはずだから」

「仕方ないぞな。それは呪いのせいぞな」

シャーレイの言葉に、彼らは顔を見合わせたのだった。
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