ガチャで大当たりしたのに、チートなしで異世界転生?

浅野明

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プロローグ〜ガチャで大当たり

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カランカランカランカラン

「おめでとうございます!」

耳障りなくらい大きな鐘の音と拍手。

スーパーなどでよく見る抽選ができるガラガラを回してでてきたのは金色の玉。

「すごい!金の玉なんて初めて見たわ」
「何万年ぶりだ?」
「ものすごい幸運だな」

周りから感嘆の声が上がるが、ガラガラを回した篠宮蓮は浮かない顔だ。

それはそうだろう。このすべてが真っ白な空間は、蓮には恐怖さえ覚える場所。想像してみてほしい。上も下もすべてが真っ白な空間に長くいられる人間がいるだろうか。少なくとも蓮には無理だ。そもそもなぜ彼女がこのような場所にいるのかといえば、実のところよく理解できていない。

蓮はため息をついて、先ほどのことを思い返していた。

※※※

今日は篠宮蓮の38回目の誕生日だ。とはいえ、両親はおらず友人とは疎遠になって久しく、独身なので祝ってくれる家族もいない。蓮は一人でも平気なたちなので、とくに問題はないが。

蓮はライトノベルと呼ばれるジャンルの小説を好んでいるが、オタクというほどではない。なんとなく気になるタイトルの話が出たら購入する程度だ。異世界物の話はそれなりに好きだが、異世界に夢見る年ごろでもない。

仕事はプログラマーで、基本的には在宅勤務である。会社には週に1度行けばよいといった程度なので、ほぼ引きこもり状態といえる。今はネットで注文すればなんでも配達してもらえるので、ここ2~3年で特に引きこもり度が増してしまったような気がするが、気にしない。

とにかく何が言いたいかというと、割と充実した日々を送っているというわけなのだ。

「うーん、でもまあ誕生日だしケーキでも買いに行くかな」
ついでにワインでも購入しようと、財布を片手に外に出たのがいけなかった。ここ最近会社に行く以外は部屋に引きこもっていたのに。今日も引きこもっておけばよかったのだ。なぜなら、家から徒歩1分の所にあるコンビニに入ったとたんに、今いるこの白い部屋に来てしまったのだから。

ぶっちゃけ、意味が分からない。

ラノベにありがちなトラックにひかれたわけでなく、召喚魔方陣みたいなものがあったわけでもない。あえて言うなら、コンビニに入るときに4人の中学生らしき男女とすれ違ったくらいだ。ちなみに、白い部屋にはコンビニですれ違った中学生(仮)たちもいた。

「ようこそいらっしゃいました」
白い部屋にいたのは、白い翼を背中からはやした6人の金髪碧眼の男女。いわゆる天使っぽい感じの人たちだ。顔は驚くほどきれいである。

その天使(仮)立ちの前には、机とよく商店街やスーパーなどで見かける抽選ができるガラガラがある。とってをもって回すと玉が出てくる奴だ。なんとなく安っぽい感じが天使(仮)と驚くほどのミスマッチ。

「こ、これってもしかして異世界転生ってやつじゃね?!」
興奮したように、中学生(仮)の一人が叫ぶ。
「ええそうですよ。最近の方は理解が早くて助かります」
にこにこと天使(仮)がうなずく。
「ええ?何よそれ、家に帰してよ」
少女の叫びに、天使(仮)は首を振った。
「残念ながらそれはできないのです」
「もう家に帰れないの…?」
「いいえ、大丈夫ですよ。召喚主の願いをかなえれば元の世界に戻れます」
泣き出した少女に、天使(仮)の一人が優しくいった。
「どういうこと?」
「あなた方を召喚したのは、我々ではないのです。向こうの世界の誰かがあなた方を召喚したので、その召喚した何者かが召喚時に願ったことを叶えれば、あなた方はもう一度界を渡って元の世界へ帰れるというわけです」
「そう、なんですか?」
それって逆にいえば召喚主の願いによっては一生帰れない可能性もあるのではないだろうか、と蓮は背筋が寒くなった。というか、これって拉致だよ、誘拐だよ。正直蓮には納得いかないことしかない。

「ねえ、それでここって何なの?」
そういった蓮に目を向けた天使(仮)は、ちょっと目を見開いてにっこりと笑った。
「ここは狭間の空間ですよ。異世界に呼ばれたとはいっても、そのままではあなた方はすぐに死んでしまいます。それでは意味がないでしょう?だから、すぐに死なないように、ここでスキルや称号を授けておこうというわけですよ」
それはラノベでよくある、いわゆるチートって奴だろうか。中学生(仮)たちも同じことを思ったらしい。さっき泣いていた少女までも泣き止んで目を輝かせている。まあ、どっちにしても異世界に行くしかないなら、チートがないよりあった方がいいに決まっている。しかし、気になるのはあの抽選のガラガラだ。

「そのスキルとかって自分で選べるの?」
「いいえ、抽選です」
にっこり美しい笑顔で、天使(仮)がそういった。そんなことだろうと思ったわ。

蓮はため息をついた。彼女の38年の人生の中で、運が良かったことなど一度もない。宝くじはすべて外れるし、ビンゴはそろったことがない。基本的に、くじと呼ばれるくじは全て外れてきた女、それが篠宮蓮なのである。

蓮とは正反対に、中学生(仮)はやる気だ。促されて次々とガラガラを回していく。
【称号:聖女を手に入れました】
【称号:賢者を手に入れました】
【スキル:全魔法を手に入れました】
【スキル:剣術を手に入れました】
……
玉の色にもよるが、ガラガラを一回回すと2~4個の称号とスキルが手に入るようだ。次々と流れる無機質なアナウンス。さすがの蓮も、ちょっと期待が高まってくる。

4人が回し終わってそれぞれ光に包まれて異世界に転移させられると、蓮の順番がやってきた。
期待半分にガラガラを回してみる。
ガラガラと回って、出てきたのは金色の球。そして冒頭へと戻るわけだ。

※※※

大きな拍手とともに、これまでほかの人たちにもスキルや称号を授けていた声が聞こえた。
【道具:幸運のアイテム袋を手に入れました】
【所有者印を刻みます】
「…え?それだけ?」
蓮の言葉に、天使(仮)たちも戸惑ったように顔を見合わせる。
「金の玉って伝説の武具とかでは?」
「スキルも相当強力なものがもらえるはずなのに…」
「やっぱり、バグなのかしら」
「とにかく、抽選は終了です」
一番初めに話しかけてきた天使(仮)がゴホン、とわざとらしく咳をして、軽く手を振ると蓮の意識が遠のく。何の説明もありはしない。
「あ、ステータスって言えばあなたたちがやっているゲームのようなステータス画面が見られますよ~」
申し訳程度にそんな声が聞こえたのを最後に、蓮の意識はプツリと途切れた。
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