異世界とチートな農園主

浅野明

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4巻

4-3

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 4 杵と臼、素材探し


「グレアーの木?」

 私が頭をさすりながら聞くと、涙目になったリオールが頷く。

「ああ。……にしてもリン、石頭だな、お前」
「失礼な。私だって痛かったんだから」

 にしても、グレアーの木とは何ぞや。この際、丈夫であれば文句は言うまい。何せあれもこれもと望むとろくなことがないからだ。
 一番重要なのは、竜が踏んでも壊れないくらい丈夫であること。他の条件は二の次だ。

「グレアーは、いわゆる魔物の一種だな」

 魔物というと、トレントみたいな感じだろうか。よくゲームとかであるよね、森に入ったら動き出した木の魔物に襲われる、とか。
 そう言うと、良く知っているな、とリオールに驚きの目で見られた。
 まあ、ゲーム好きだからね! 引きこもっている間に【楽しもう! セカンドライフ・オンライン】以外にも色々やったからね!

「簡単に言うと、グレアーという魔物を倒すと、木材が素材としてドロップされるんだが……」
「しかし皇子、このような幼い少年や少女を行かせるのはいささか……」

 なぜか、皇子お付きの人たちが渋い顔をしている。

「そうですよ、さすがにあそこはちょっと。どうしてもということであれば、ご命令いただければ我々で……」
「そうか? そうだな、確かに具合が悪いか。女性も多いしな」

 いやいや、なんだかわからないけど。
 さすがに餅つきに必要な素材を皇子お付きの騎士さんたちに取って来てもらうのは悪いですよ?
 一体、何が問題なのだろう。魔物を倒しに行くだけだよね? よっぽど危険だとか?

「なんで私が行くのはよくないの?」
「ふむ、わかりやすく言うと魔物がいる場所が歓楽街なんだ」

 さらっと言われたリオールの言葉に私は耳を疑った。

「……ごめん、もう一回言ってくれる?」

 たぶん聞き間違いだ、という私の願いもむなしく、同じ言葉が聞こえてきた。

「だから、歓楽街だ。ちなみに歓楽街というのは……」
「それは知ってるから説明はいらないよ!」

 説明をしようとしたリオールの言葉を、思わず遮る。
 まあ、あれだ。引きこもっていた私は、お金はあったがもちろんホストクラブなどに行ったことはない。それどころか、飲み屋にもほとんど行かなかったのだ。お酒は自分の部屋で飲む主義です。
 にしても、歓楽街に魔物とかどうなのさ。そもそも歓楽街っていえば街中だよね? 魔物が出るとかおかしいでしょ。
 ジト目でリオールを見ると……お、狼狽うろたえてる狼狽うろたえてる。

「いや、勘違いするなよ!? 俺は行ってないからな!?」

 え、別に行ってたって問題ないけど。そこは狼狽うろたえるところなのか? リオールだって年頃の男の子だし、ねえ。まあ身分が身分だから、ばれないようにしたほうがいいとは思うけど。いや、やっぱりだめなのかな? 奥さんで我慢しといたほうがいいよね。

「ごほん、いや濡れ衣だ。そんなジト目で見ないでくれるか。何を勘違いしているか知らないが、俺は独身だ……って、そんなことはどうでもいい」

 そうなのか。てっきり奥さんが何人もいるものだとばかり。だってもう二十歳前だよね? 結婚、王族にしては遅くないかね。偏見かもしれないけど。

「とにかく、グレアーは特殊な魔物でな。トレントとはまた違うのだ」

 強引に話を戻すリオール。
 リオールの女性関係には大して興味ないので別にいいや、と呟いたら、リオールは肩を落としてしまった。なんでだ。あと、なぜそこで勝ち誇ったような顔をしているんだ、グリーよ。わけがわからんなあ。

「あら~リンは~罪な女ね~」
「小悪魔ってやつね。うふふふ」
「やるな、リン」
「くくく、男を手玉に……」
「シオン、その顔やめろ、変質者にしか見えん。だが、さすがだ、リン」

 シオンをたしなめたかと思えば、なぜかどや顔でサムズアップするスレイ。
 というか、本当に何なのさ。「吹き抜ける風」の面々がニヤニヤしていて気持ち悪い。ミネアもドン引きしてるぞ。
 さすがにヴェゼルの前だからなのか、発言はともかくとしてマナカは口の端をぴくぴくさせているものの、一番まともな表情である。

「もういいよ、ほんとに。で、結局どう特殊なの? なんで歓楽街なんかにいるのさ」

 いい加減に話を進めよう。

「そうだった。つまりだな、グレアーというのはその、人の欲望をかてにする魔物なのだ」

 それだけ聞くと嫌な魔物に思えるのだが、案外役に立つらしい。
 グレアーは死んだときに、種と木を残す。
 グレアーの木は、木工師に渡して特殊技術で加工すると、ものすごく丈夫な杖や弓、家具などになるので非常に人気がある。
 もう一つのグレアーの種は、魔法加工をしたおりの中で育てて大きくするらしい。そして一定以上に育ったら殺して種と木材を回収する、ということのようだ。育てるのに最も適しているのが歓楽街なのだという。
 殺すために育てるとか残酷だな、と思ったが、考えてみれば食用の豚とか牛を育てるのも同じようなものなので、文句は言えない。それも立派な産業の一つなのだろう。
 ちなみにグレアーはかなり凶暴で、国の発行する資格証を持った者でなくては、たとえ【調教】のスキル持ちだろうが勝手に「飼育師」にはなれないそうだ。

「だったら、その『飼育師』にお金を払って、木材を回収させてもらえばいいんじゃないの?」
「リンの疑問はもっともだ。だが、それはできないのだ」
「なんで」
「『飼育師』は育てるだけで、素材の回収はしないからだ」

 さっぱりわからない。どういう意味だろうと私が首を傾げると、リオールもどう説明をしたものかと首をひねる。

せんえつながら、私がご説明させていただいてもよろしいでしょうか?」

 このままではらちが明かないと思ったのか、いつもリオールのかたわらにひっそりと控えている青年が進み出てきた。
 どうでもいいが、結構な回数顔を合わせているはずなのに、この人の声を初めて聞いたわ。顔はどこにでもいそうな一般人Aって感じだけど、声は渋くてものすごい美声である。声だけで女性が一ダースは落とせるに違いない。

「あの?」
「は、はい!?」

 ううむ、思わず返事が裏返ってしまった。

「コホン、失礼しました。よろしく」

 この声で説明されて頭に入るかなあ、とか思いつつ、とりあえず頷いてみる。

「つまりですね、グレアーという魔物については、飼育する者と倒して素材を回収する者が別なのです。飼育師はあくまで育てるのみで、グレアーを倒せるほどの強さは持ち合わせておりません。逆に言えば、グレアーを倒せるほどの強さを持つ者は、グレアーを飼育することができません。グレアーとは、飼育師が弱いからこそ育てられる魔物なのです」

 つまり、【調教】のスキルを持っていても強ければ飼育師になれる可能性はほぼない、ということらしい。なかなかに面倒な魔物だね。

「グレアーが自然に死ぬのを待つ飼育師も少なくないのです。寿命が三年から四年ほどなので。ただ、やはり素材回収を目的とする者は半年ほど育てた後に、冒険者なりに依頼をしてグレアーを倒してもらうことが多いですね」

 私のようにグレアーの素材が欲しいという場合は、冒険者に依頼せずに自分たちで倒したほうが安上がりなんだとか。実力があるなら、なおさら。
 グレアーはAランク指定の魔物、しかもパーティ推奨で、冒険者ギルドに討伐依頼をするとなると、とてもお高いらしい。
 それでも素材すべてを売却すれば、冒険者に依頼料を支払っても十分なもうけが出るというから驚きだ。そして人気素材ゆえに、じょうでだぶついていることもない。
 飼育師に討伐や素材の買い取りを申し込んでも、三年は待つとのこと。

「……マジですか」

 冒険者ギルドへの依頼金額を聞いて、目が点になった私である。確かにそれだけの金額を払って討伐し、さらに飼育師に素材代まで払うとなれば自分たちで狩ったほうが断然いい。グレアーの木の素材代も非常にお高いのだから。

「はい。ですので、『吹き抜ける風』の皆様、並びにフェイルクラウト様がいらっしゃるのでしたら、皆様で倒して素材を手に入れられたほうがよろしいかと」
「って、ちょっと待って」

 良い声だなあ、とか聞きほれている場合ではない。

「三年待ちってことは、直接行ったって駄目じゃない?」
「いや、それは当てがある」

 リオールの知り合いで、飼育師がいるらしい。少々頑固ではあるが、ちょうど今一年くらい育ったものがいるはずなので、交渉次第では狩らせてもらえる可能性があるとか。

「それなら行こう、すぐ行こう」

 他の人に狩られる前に! と意気込んで私が立ち上がると、なぜかみんなに止められた。

「いやいやいや、歓楽街とか教育に悪いから。俺たちで行くからここで待っていろ」

 フェイルクラウトの言葉に、私は首を傾げる。だって今、真昼間だよ? そっち方面の人は、みんな寝てる時間じゃないかな?

「本格的に人が動きだすのって夜からだよね」
「なんでリンが知ってる? だが、言われてみればそう……かな?」

 確かに今なら大丈夫か、と納得するフェイルクラウト。
 結局、『吹き抜ける風』メンバーとフェイルクラウト、私とグリーで行くことになった。
 ミネアはイタチョーからお餅のことをもう少し詳しく聞きたいと言って、ここに残ることに。
 リオールはいろんな意味で危険だからとお付きの人たちに止められて、同行は断念。仕方なく、手紙に事情と私たちにグレアーを譲って欲しい旨をしたためて、渡してくれた。あと、その飼育師さんのいるところまでの地図もくれました。
 というわけで、意気揚々と狩りに向かったのだが……グレアーを見た途端に後悔した私であった。



 5 歓楽街へ


 歓楽街は、街の北、中心部からかなり離れた場所にあった。
 その一画だけ、高い壁に囲まれている。これは主にグレアーの盗難防止のためなのだそう。値段を聞いたあとだから納得である。
 歓楽街は、さすがに昼間なだけあって閑散としていた。というより、ゴーストタウンと言ったほうがいいだろうか。人の気配がまるでないのである。
 並んでいる建物はきらびやかで、なんというか、ちょっと高級っぽいというか。私の貧弱な力では表現が難しいなあ。
 あと五時間もすれば、独特の熱気に包まれるのだという。ちょっと興味はあるが、あえて来たいと思うほどではないかなというのが私の感想だ。男だったらね~。
 歓楽街は入り口近くが高級娼館で、奥に行くほど安くなるらしい。で、グレアー飼育所は最も奥まったところにあるのだとか。

「思ったよりも広いねえ」

 わりと需要があるってことかな。

「人間とは愚かなものですね」

 冷たく言い放ったグリーは、どうやら歓楽街がどんなところか知らなかったらしい。
 来る途中にフェイルクラウトから詳しい話を聞くや否や、「そんならちな場所に母上を行かせるわけにはまいりません!」とか言って、私を引きずって帰ろうとしたよ。その際、周りのみんなを睨みつけ、金縛りにしてたしな。
 しかし、らちって。どこでそんな言葉を覚えたのやら。つい笑ってしまった私は悪くないよね!
 ここまで来て帰るわけにはいかないので、なんとかグリーを説得しましたとも。いやー、納得させるの苦労したよ。

「ここは近隣の村や街からも客が来るようだから」

 そう言って笑ったのはラグナ少年……あれ?

「いつの間に」
「あらほんと、どこから現れたの?」

 どうやらラグナ少年に気づかなかったのは、私だけではなかったようだ。
 思い返してみれば、グレアーの話をしていたときいたっけ?
 ふとそんな疑問を口にすると、ラグナは顔を真っ赤にして怒った。

「いたよ!」

 キレイな目立つ容姿のくせに、何気に影薄いな、少年。
 ちなみに、ヴェゼルはもちろん留守番だ。ついてきたがっていたけど、子供だからね!
 私? 私はだから。これでも中身は大人だからいいのだ。それに、一応こっちの世界でも成人してるし。

「影の薄いところがラグナの長所だ」

 それって長所なのか?
 ニヤリと笑って言ったフェイルクラウトに、膨れっつらでラグナが抗議する。

「なにサラッとひどいこと言ってるんですか、勇者様。リンもアリスさんも。俺はずっといましたよ」
「悪い。にしても、確かにここまで誰にも気づかれないとか、お前本当に生きてるか?」
「ちょっ、ひどすぎです!」

 ちょっぴり涙目のラグナ少年。
 どうやらフェイルクラウトはラグナのことがお気に入りらしい。「これで脳筋でさえなければ……」と呟いていた。残念。脳筋は死んでも直らないというのが私の持論である。

「だが、本当に気づかなかった」

 首をひねってフェイルクラウトが言えば、ナゼか胸を張って得意気にニヤリとするグリー。おお、可愛い。
 うっかり振り返ってグリーを見たアリスは、鼻を押さえて下を向く。鼻血ですか……? 下手すると犯罪者一直線だな。

「母上、先ほどまで共にいたのに気にならなかったのは、高度な認識阻害の魔法がかかっていたからです」

 それは気づかなかった。それを察知するとは、さすが魔王。伊達だてではない。

「なんだって!」

 私よりもラグナのほうが驚いている。おや? 私をだますほどの認識阻害の魔法なんてスゴいや、とか思っていたけど……

「自分でかけたんじゃないの?」
「なんでそんなことをする必要があるんだ? だいたい俺は、自慢じゃないが魔法関係は身体強化しか使えない!」

 身体強化ねえ。確かに自分に合った魔力の使い方だとは思うけど、なんで胸張ってドヤ顔?

「ラグナが魔法を使える必要はないからな。……脳筋だし」

 最後だけ小さく口の中で呟くフェイルクラウト。

「しかし、誰が魔法をかけたんだ?」

 そこは重要だ、というフェイルクラウトに全員が頷く。
 確かに気になるところだ。もしかして、気づかないうちに誰かに監視とかされているのかも。

「それは私です、母上」

 ……あれ? 意外なところに犯人が。
 高度な魔法も逃がさずキャッチしてくれるなんて、と感心していたのに、おかしいな?
 私も含めた皆の視線がグリーに突き刺さるが、全く悪びれた様子はない。

「なんでそんなことを?」
「奴の母上に向ける視線が気に入らなかったので」

 何を言ってるんですか、息子よ。
 だが、私以外はなぜか「ああ~」と納得した模様。え、仲間外れ?
 ラグナも首を傾げていたが。魔法をかけられた本人にも理由はわからないようだ。
 グリーがかけた魔法なら、私が気づかなくて当然だねえ。原因がわかってすっきりしたよ。理由は不明だけど、まあ、きっと単なるいたずらだよね。まったく、可愛いんだから。
 すっきりした私たちは、未だ釈然としない様子のラグナを放っておいて、さくさく奥へと向かう。

「あ、待ってくれ!」

 追いかけてくるラグナ少年。びん
 いらんトラブル(?)もあったが、そうこうしている間になんとかリオールに言われた場所に着く。

「……ここ」
「地図によると、そうだな。間違いない」

 貰った地図を見ながら黙々と先頭を歩いていたシオンに、ラティスが地図をのぞき込んで頷く。
 目の前には、掘っ立て小屋みたいなのが三つ並んでいる。周りの建物より小汚いというか、みすぼらしいというか。

「おーい、誰か」

 スレイが一番手前の小屋をのぞき込んで声をかけたが、すぐに青い顔をして離れた。

「スレイ? どうしたの」

 げんそうなアリスの問いに、口をパクパクさせて小屋の中を指差すスレイ。

「もう、なあに?」

 ちゃんと口で言ってよね、とプリプリ怒りながら中をのぞいたアリスもまた、同じようにずざっと後ずさり、真っ青な顔で小屋を指差す。
 スゴく気になるが、二人の反応からするにイヤな予感しかしないよね!

「母上はめましょう」

 つい好奇心に負けてのぞこうとしたら、グリーに止められてしまった。いや、だって気になるじゃないか、二人のあの反応はさ。

「おい、誰だ! 泥棒か!?」

 突然大きな声がした。私はビクッとして辺りを見回す。だが、私たち以外は誰もいない。

「おい!」

 また声がしたが、やはり誰もいない。
 おかしい。私だけでなく、他の皆もキョロキョロしている。声の主がどこにいるのか、誰にもわからないようだ。

「答えないなら警備隊に通報するぞ」

 そんなことを言われても、姿が確認できないのだから答えようもない。なんだか理不尽である。

「我々はリオール皇子に紹介されて来たのだが」

 フェイルクラウトが視線をさまよわせながらも、とりあえず答えてみる。もちろん、警戒は怠らない。姿が見えず、声だけ聞こえるのだから当然だろう。怪しさ満点だ。

「皇子の紹介だと? ふむ、ならば証拠を見せてみろ」
「見せるのは構わないが、まず姿を現して欲しい」
「何を言っとるんだ。ワシはずっと目の前におるだろうが」

 その言葉にまた辺りを見回す。

「目の前?」
「いたか?」
「……」
「困ったわね~」
「わからないわ」
「なんか特殊なスキルでも使ってるんじゃないか」

 フェイルクラウトも「吹き抜ける風」もラグナも探すが、やはり見当たらない。もちろん、私とグリーも探したけどね。

「馬鹿たれ。きちっとワシに渡さぬか」

 と、言われましても。
 しばらくキョロキョロして、ようやく見つけた。
 それは、私の足元にいた小さな人だったのだ。



 6 グレアーの飼育師


 小さいにも程がある。いくらなんでも小指くらいの背丈ってどうなのさ。
 なのに声は普通にヒトと話しているように聞こえるのだから、見つからないのも当然だ。
 その小人を発見した私は、思わずビクッとして飛びのいてしまった。踏みそうで怖すぎる。

「どうしたの、リン」

 アリスに一言返す。

「いた」
「いたか、どこだ?」

 フェイルクラウトがやれやれ、といった感じで聞いてきたので、私はその小さすぎるヒトを指差す。


「ん?」

 首を傾げて、じっとのぞき込むラグナ。

「……って、ちっさ!」

 目を凝らすフェイルクラウトの横で、「息を吹きかけたら飛ぶんじゃないか」とラグナが失礼なことをわめいている。その気持ちはわかるが。
 というか、風が吹いたらそれこそ飛んでいってしまうのでは? ……試したらダメかな。

「娘、なにやら失礼なことを考えておらんか」
「気のせい、気のせい」

 小人に言われてぷるぷると頭を振る私の背後からのぞき込んできたのは、マナカだ。ちらりと見ると、心なしか目がきらきらしているような?

「あら~もしかして、幻族かしら~。こんなところで会えるなんて~」

 相変わらずのんびりした口調ながら、どうやら感動しているらしい。

「ヴェゼルも~連れてくればよかったわ~」

 マナカさんや、いくら昼間といえども、さすがに歓楽街に子供を連れてくるのはめようね?
 マナカって、たとえ夜でも小人に会わせたいってだけでここにヴェゼルを連れてきそうなくらい、思い込んだらまっしぐらなんだよね。見た目はどこにでもいそうなオバチャンなのになあ。いろんな意味で、パーティいちの大物だと思うね!
 ……あれ? 今サラッと流したけど、大事なとこあったよ。

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